衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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Q.もし、黒服が魔術を知識として知っていて、封印指定レベルの魔術師の魔術を見たらどうなるでしょう?


#11 大人の戦い(Ⅰ)

「「黒服」?本名じゃないよな?」

 

我ながら馬鹿みたいな質問だ。

 

端末から聞こえてくる声は男のもの。

 

『....やはりその反応では小鳥遊ホシノは何も貴方に伝えていないのですね。

衛宮先生。』

 

小鳥遊ホシノ....って言ったか?

 

『失礼、先生の知っている名前で名乗りましょう。

私達は「ゲマトリア」。』

 

「ゲマトリア───っ!?

お前が!?」

 

その一言でここが何処かも忘れ、ただ怒鳴った。

 

「ホシノを狙ってるやつが俺に一体何の用があるってんだ!!」

 

『用ですか....?

そうですね。少々お時間を頂けますか?「先生」。

出来ることなら先生おひとりで今から言う場所に─────』

 

「───断る。信用できる要素が一切無いし、行く理由もない。

それに初対面で一方的に人を呼び付けるなんてどうかしてるぞ。」

 

ゲマトリア。

言峰の話では生徒の纏う「神秘」を探究し、研究し、利用しようとする魔術師のようなものらしい。

 

元々魔術師とは戦う者ではない。探求者の集まりであり、「魔術」とて「魔法」「根源」に至るための手段である。

 

魔術師とはそれそのものが生き物の総称で、人間とはもはや別種だと切嗣は言った。

それは子孫を残すために生きるのではなく。

「根源」へ至るための「魔術」を未来へ残す為に生きて子供を作るものだと。

 

つまり、魔術師は魔術師であろうとする者ほど、人としての感性を欠いている────。

 

『「君子危うきに近寄らず」ですか?

 

用心深いようで何よりです。

 

ですが衛宮先生、用心ばかりしてどうするのですか?

否、そのような余裕が貴方───いえ、アビドス高校にはありますか?』

 

 

「────────────。」

 

一言で全てを察した。

私ははそちらの状況を知っている。とこの「黒服」という男は言った。

 

この件はカイザーだけでは無い。本当の黒幕はこいつなのでは無いか────

 

「.....お前!」

 

『衛宮先生、1つご忠告を。

思いつきで発言しないよう。

 

私が貴方の敵であれば、相手を怒らせたその時点で、手がかりとチャンスは途絶えてしまう。

 

故に、相手を怒らせないように。

 

この前のカイザーPMCとの戦闘は切り抜けさえしたものの、その後の後始末が大変だった────いえ。

まだ済んでいない話でしたね。

アビドスの生徒達は大丈夫ですか?』

 

「こ、この.....」

 

 

腹が立つ。

なんだ?敵に窘められている?

 

コイツの目的は一体.....。

 

 

『「怒而撓之(怒らせてこれを撓せ)

これも孫子でしたか?

 

ですがこれは相手と対等か、相手の実力や目的を知っている時のみ。

相手の正体も分からないまま実践するのは如何なものかと。』

 

「別に俺は孫子を意識してなんて......」

 

待て。

なんでこいつ、向こうの世界の知識を────

 

『そうですか、それは失礼しました。

 

ですがせっかくなので私もそれに則りましょう。

 

能使敵人自至者、(よく敵人をして自らを至らしめるには、)自之也(これを利する事也)

 

「お前.....一体.....。」

 

あいつは俺の疑問には答えず、告げた。

 

 

 

『───────衛宮先生。貴方に1つ、断れない提案を。』

 

 

Interlude 11-1-1 芝居

皆と話し合いをした翌日

私は何度も呼びつけられた建物を睨んでいる。

最初は1年生の頃だったか?

 

オフィスの一室に迎えられ、その姿を凝視する。

 

 

「.......カイザー理事は?」

 

 

「.....彼はここには居ません。ですが必要な書類と手続きはここでやって頂きます。」

 

 

椅子に座って、書類によく目を通し、サインをした。

 

そう、シロコちゃんの言う通り、真っ当な手段で17億なんて返せない。

だから──────もう、私にはこの手段しか残されていなかった。

 

 

 

「.....これで良い?」

 

「はい、確かに。」

 

 

アイツは私がサインを書いた書類を機械に渡した。

 

「契約書にサインも頂いたことですし......これで、ホシノさんがお持ちの生徒としての全権利は、私の元に移譲されました。

これで正式に、アビドス高校が背負っている借金、預託金、損害費その()()をこちらで負担しましょう。」

 

 

「────────え?」

 

聞き間違いだと思った。

 

そう、最初に勧誘された時の条件は「借金の半額」だった。

この前呼び出された時には利息の半額も追加すると言った。

 

しかし───────

 

「え.....なんでさ?

半額って話じゃ.....」

 

おかしい、話が美味すぎる。

 

「まさか────。」

 

黒服を睨みつけた。

 

 

「えぇ、私たちの目的はそもそもあなたです。小鳥遊ホシノさん。

その他諸々には興味などありませんでした。」

 

カイザーグループ所属の黒服が、全額を支払うと言ったのだ。

よく良く考えればおかしい話だった。

 

つまり、アビドス高校は買収された事になる。

 

私が、自分の身を売ったことで、なおさら、あの高校は、アビドスは要らなくなったのだ。

 

その存在を保つ必要がなくなったのだ。

 

「違う......違う.....違う!!!

話が違う!!黒服!!」

 

動揺を隠せない。

 

指先が、銃を保持する掌が、震える。

 

銃をガタガタ震えた腕で、黒服へ向けた。

 

「貴様!何をする!!」

(ガシッ!)

護衛らしき機械兵に取り押さえられた。

 

「離せ....離せっ!!」

 

 

私のせいで、全てが──────。

 

────と過ごした─────が。

 

私の─────で。

 

 

「....ふむ。

ここで絶望してもらって、()()の顕現を観察するのもいいですが.....今はよくありませんね。

 

ご心配なく、ホシノさん。

アビドスは無くなりませんよ。

 

今の私にとってはまだ存続していただかなければなりませんので。」

 

 

黒服の言葉でハッとする。

 

「なん.....だって?」

 

最初の部分はイミがワカラない。

 

しかし、黒服は言った。

 

「アビドスが....無くならない?」

 

「えぇ、ですが、契約は契約。貴方。彼女を車まで。

 

アビドス砂漠に向かいましょう。」

「了解しました。」

 

 

「待って!どういうことなのさ!?黒服!!」

 

何も分からない、考えたくない。

自分のせいで、もし、アビドス高校が無くなったら。

 

 

そして、車に乗せられた。

 

その車中、街でとんでもない光景を目にした。

 

 

カイザーのPMCが、アビドス自治区を攻撃している様子だった。

 

「な、なんで......何をしてるの!?

 

ど、どうして!どうしてアビドスを、街を攻撃するんだ!!!」

 

 

車の中、黒服は告げる。

 

 

「何もおかしいことなどありませんよ、ホシノさん。

全て契約通り、借金はカイザーローンにきちんと返済させていただきますとも。

 

それはそうとして、.....あなたが退学してしまい、残念ながらアビドス高等学校にはこれ以上、公的な生徒会メンバーが残っていないようですね?

 

それでは学校は成り立ちません。

 

 

 

ですが、安心してください。

 

あなたの「先生」とその「生徒」はとても強い。

ですから────」

 

 

 

「.......そうか、私が最後の────」

 

そう、私が最後の生徒会メンバーだった。

 

アビドス生徒会、副会長。

 

 

トドメと、言わんばかりに、黒服は手の内をさらした。

 

「何故私が、あんなくだらない企業の詐欺紛いの行為を支援していたのだと思いますか?

 

学校の土地を奪ったところで、ブラックマーケットのような無法地帯が一つ増えるだけです。

そんな場所はこのキヴォトスにいくらでもあるでしょう?

 

先程も言いましたが、ホシノさん。

()の目的は最初からあなたでした。

 

あなたに契約書へサインしてもらうこと、あなたに関する全ての権利。

 

その目的の為に、利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションを利用した。

ただそれだけの話です。」

 

 

「なん....だって?」

 

違う、私は勘違いしていた。

 

黒服はそもそもカイザーコーポレーションの人間じゃ、なかった?

 

「先程と今の反応から察するに、何か勘違いされていたようですね?

 

 

私は1度も「私達の企業」がカイザーコーポレーションだとは一言も言っていないはずです。」

 

 

思い出す。

確かにコイツは、一度も自分のことを「カイザーの社員」とは言わなかった。

 

「あなたのような、キヴォトス最高の神秘を手に入れたというのに、まさか勿体ない形で消耗させるなんて事は致しません。

 

あなたを実験体として研究し、分析し、理解する。

 

この興味深い実験こそが、私達が観測を渇望していたもの。

つまりはそういう事だったのですよ。。」

 

「私....?私のせいで....」

 

目的地に着いたのか。

 

乱暴に真っ暗な密室に拘束された。

体は見えない糸で縛られたかのようにうんともすんとも動かない。

 

部屋が閉ざされる。

なんの光も見えない。

 

まるで、今のアビドスのように。

 

「.....そっか。

 

私は.....また、大人に騙されたんだ。」

 

結局、私のしたことは、無駄だった。

間違い────────

 

 

────間違いなんかじゃない!

 

 

 

ブラックマーケットで、先生が言った言葉を思い出す。

 

 

我武者羅でも、何かを守りたいって、誰かを笑顔でいさせたいって。

その思いは、お前たちの行動は、これまでやってきた事が全部間違いなんかであるはず無い。

それが間違いだって思うなら、それは違う。

誰がそう言おうと、例えシロコ達が諦めても。

 

俺は絶対に否定する。』

あの人だけは、私の、私たちの行いを、肯定してくれた。

 

 

先程のアビドス自治区の惨状。

 

「.....ごめん、みんな。」

 

 

いくら皆が強いと言っても、衛宮先生が強いと言っても、限度がある。

 

私抜きの5人で出来ることなんて、限られている。

 

「シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん.......。

 

───先輩。」

 

 

 

 

私は、暗闇の中、祈る。

 

神でもなく、主でもなく、ただ一人、私を、私達を守ろうとしてくれた人。

 

 

「.....衛宮、先生.....お願い.....どうか....」

 

私がどうなってもいい。

でも、皆だけは。

 

 

 

「どうか─────」

 

 

皆の事を守って、と。

 

私は祈った。

 

Interlude 11-1-1 芝居 END

 

 

アリスの士郎に対する呼び方。

  • 「士郎」、「士郎先生」
  • 「シロウ」、「シロウ先生」
  • 「マスター」、「先生」
  • 「衛宮先生」、「先生」
  • 「エミヤ先生」、「先生」
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