衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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Q.#11-2は何処へ行った?!
A.君のような勘のいいガキは嫌いだよ。

本来のタイトルは「手をすり抜けたもの」ですがFateクロスオーバーなので敢えて「零れ落ちる欠片」にしました。

これはThis illusion(disillusion)の歌詞のフレーズの1部です。

#14以降辺りでちゃんと#11-2は回収します。
いやこの話、タネを明かすとつまらなくなるタイプのお話。



さて、総額約17億円を取るか、それともホシノを取るか。
大金という重圧に押しつぶされる彼女達。


このお話はお涙頂戴みたいな感じですね。
This illusion (piano)を聴きながら読むことをおすすめします。



#12 零れ落ちる欠片

『嘘!なんで....っ!!』

 

次の朝俺はアヤネの悲鳴で飛び起きた。

 

「士郎さん!一体何が!」

 

それはワカモも同じようだった。

俺のベッドの前に立ち、周囲を警戒している。

 

「分からない。声の発生源は何処だ。」

 

『シロウ、対策委員会の部室よ!』

 

シッテムの箱がひとりでに起動し、端末にイリヤが表示される。

 

 

イリヤと再び会えたことが、夢ではなかったのだと、一瞬安心したがそれどころではない。

 

「イリヤ、敵はいるのか?」

 

『ううん。居ないみたい。

悲鳴も、敵に襲われて、っていうよりありえないものを見た、に近い物だと思うわ。』

 

寝ているアロナの横で俺を見てくるイリヤ。

その目は「行かない方が良い」と告げている。

しかしそうは出来ない。

 

「確かめに行く。」

 

「では、私も。」

 

ワカモが校内を警戒しながら先導する。

 

 

部室の扉を開く。

 

 

「衛宮....先生!!!」

 

ドン、と胸に誰かがぶつかってきた。

 

「どうして....どうしてホシノ先輩を引き止めてくれなかったんですか!!!

『俺に任せてくれ』って仰ったじゃないですかッ!!!」

 

初めて、泣きながら怒られた。

 

アヤネは俺の胸を数回叩くと、そのまま泣き崩れ、床にぺたん、と座り込んだ。

 

手元には握りしめた手紙。

 

 

「う、うぅぅっ......どうして、どうして.......」

 

 

「悪い、その手紙読ませてもらえるか?」

 

 

悪い予感がする。

『さよなら。』

 

そう、昨日の別れ際にあいつはそう言った。

 

 

アヤネは話すことなく首を横に振った。

いや、話さなかったのではなく、喋れなかったのだ。

彼女の口からはずっと嗚咽が漏れていたのだから。

 

ずっと、彼女が落ち着くまで、俺とワカモは泣き続けるアヤネを介抱する事しか、出来なかった。

 

 

「おはよう....って!アヤネちゃん!?

士郎!ワカモ!何これどうしたのよ!!」

 

「....アヤネに何したの?」

 

次々に登校してくる対策委員会のみんな。

 

俺はどうして必死でホシノの姿を探しているのか。

 

セリカは不思議に。

シロコはこちらを睨んで。

 

ノノミは全てを理解したように。

 

 

「.......わからない。」

 

嘘だ

 

「多分アヤネが握ってる手紙が全部なんだと思う。」

 

本当は理解している

 

アヤネは1時間ほど泣き続けた。

心労も相まって限界だったのだろう。

 

何せ悪く言ってしまえば、アヤネはいつだって傍観者の立場だった。

せめて自分の出来ることを、と情報収集やオペレーター、交渉役を自ら引き受けていた。

 

そんな彼女は、無力感を感じていたのかもしれない。

 

何も出来ない、と。

一緒に戦えない、と。

 

 

そんな事は無い。

アヤネは自分の出来ることをしてきた。

 

アヤネが対策委員会の皆のためにD.Uへ来なければ、俺に伝手は出来なかった。

アヤネが居なければ、リーダーであるホシノと接触して断られて、断念していたかもしれない。

 

 

 

だから、場違いでもいいから、それを今言うべきだ。

 

 

「アヤネ、ありがとな。」

 

「....ぇ?」

 

「.....やっぱりさ、アヤネがいなかったら対策委員会はもっと大変だったと思うんだ。」

 

「....違う、違いますっ!衛宮先生....私、何も出来なかった.....今回も...」

 

そうして、やっとアヤネは震える手で、俺に手紙と、1枚の書類を見せてきた。

 

 

「.......」

 

 

それを見て対策委員会の部室に置いていた鞄の中から同じ1枚の書類を取り出す。

 

見比べた。

昨日シロコから渡された書類はシャーペンの筆跡。

 

しかし、今回の書類はボールペンで書かれていた。

 

それは退学届け。

ホシノの字で清書された退学届けだったのだ。

 

「......手紙を...。」

 

と、座り込んだアヤネがボソリと呟いた。

 

渡された手紙を読み上げる。

 

『アビドス対策委員会の皆へ』

 

『まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許して欲しい。

おじさんにはさ、こういう古いやり方が性に合ってると思うんだ。』

 

もう、その最初の文面で全てが理解出来た。

結局、ホシノは相手からの要求を呑んだのだ。

 

『みんなにはずっと話してなかったことがあって。

実は私、昔からずっとスカウトを受けてたんだ。

カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする....そういう話でね。』

 

『.....うへ、中々良い条件だと思わない?

おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさー。

借金のことは、私がどうにかする。

すぐに全部を解決は出来ないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。』

 

 

 

『セリカちゃん、ごめんね?

ブラックマーケットでは生意気な事を言っちゃったのに、私自身があの言葉を守れなくて。』

 

 

「.........」

 

セリカは何も言わず、その先を促した。

 

 

『アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私のことは気にしないで?

 

あ、でも勝手なことをしてごめんね

でもさ、これは全部私の取るべき責任なんだよ。

なんせ、私はアビドス最後の生徒会役員なんだから。

 

シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん。

お願い、私達の学校を守って欲しい。

砂だらけのこんな場所だけどさ......私にとっては唯一残された意味のある場所なんだ。

 

私は私に出来る形で、アビドスを守るよ。

 

だから、ここでお別れ。じゃあね。』

 

 

「ホ、ホシノ先輩.....」

 

「.....こんな....こんな終わり方ないわよ!!!」

 

皆が涙を流している。

 

 

 

ふと手触りに違和感を覚え、封の中を探った。

封筒にもう1枚、手紙が入っている。

 

『衛宮先生へ。』

 

「────────」

 

それは俺に宛てた手紙だった。

 

息を呑んで、その手紙と、しっかり向き合う。

 

 

『実は私、大人が嫌いだった。

信用してなかった。

私達(子供)のことなんて気にも止めず。騙し騙され、他人のことを利用して責任を押し付ける「大人」って言う生き物がとても嫌いだった。

でもね、藤河ちゃんを裏路地から連れ出す衛宮先生をみて堪らず思っちゃったんだ。

 

"この大人は大丈夫"、"それどころか危なっかしくて見てられない"なんてね。どうしてだろうね?』

 

 

「!!」

 

見られていた、のか....?

確かに殺気の籠った視線は感じていた、てっきり藤河達から向けられているのだと思っていた。

 

 

そういえば俺の事の印象を聞いた時、一目見ただけでわかる、と言っていた。

あれは、部室で対面した時ではなく───────

 

 

『蓋を開けてみればそんなこと無かった。

衛宮先生は結局、()()の事なんて見ていない。

あ、でもさ、それが悪いとは言わないよ。

見えない理想を、ずっと追いかけてる。

 

私は衛宮先生の思いを無視して、ずっと私自身の「大人」の枠に先生を当てはめようとした。

「大人の先生」なんて初めて会ったから、無意識に理想像を先生に押し付けてたんだと思う。

 

でも間違ってた。

 

衛宮先生にだって、理想の自分がある。

「正義の味方」とか「子供を守る大人」とかさ。

だから私や、皆の言葉ばっかりに縛られないで。

 

衛宮先生は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ホシノは全て見透かしていた。

俺に前線に出るな、とずっと言ってきた彼女は、対策委員会の中で1番俺を見て、心配してくれていたのだ。

そして、こうであって欲しいという理想を教えてくれた。

 

でも、その理想の人物と俺は違っていた。

 

『いやぁ、おじさんにも昔そんな頃────あ、ごめんなかったや。

昔の私はつまらない女の子だった。

届かない、叶わない夢なんて無駄、って冷めた人間だったんだよね。

 

でもさ─────』

 

 

『叶わないから諦めるのも何か違うんだ、ってここ最近、衛宮先生を見ていて思ったんだよね。

 

先生は夢を形にするために、何をしたらいいか、どんな手段があるか、ずっと考えながら前に進んでる。

 

だから"こんな大人がいてもいいんだ"って救われた気もする。

何度も「──す」とか、「間違ってる」とか生意気なこと言ってごめんね。

 

大丈夫、私が居なくなってもさ、みんな賢くていい子だから何とかなるよ。

 

だから最後のお願い、みんなの事を。

 

シロコちゃんは良い子だけどさ、横で誰かが支えてあげないとどうなっちゃうか分からない子で、悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげてほしい。

 

セリカちゃんはただひたすら真っ直ぐで、でもその分目の前の現実を直視しちゃう癖がある。

ま、気づいてるだろうけどさ。

先生と同じで最後まで諦めずに足掻いたりする訳だけど、ほら、セリカちゃん騙されやすいじゃん?

 

それが悪い方向へ行かないように見守ってあげて。

 

 

ノノミちゃんは....正直怖いんだ。

普段あんなにのんびりとした態度をとってるけどさ、ふとした拍子に何もかも放り投げてしまいそうな、そんな感じ。

 

アヤネちゃんは衛宮先生が心配する通りの子。

働き者なのに、アヤネちゃんは自分で思っている以上に、私たちを助けてくれてるのにさ。

何かとある事に自分を責めたり、一緒に戦えないーって嘆いてるんだ。

だから励ましてあげて。

 

あと藤河ちゃん達に謝っておいて。

酷いこと言ってごめん、って。

私は危なっかしい衛宮先生を彼女達が守ってくれるならホントにそれで良かったんだ。』

 

 

皆への心配。

自分のことなんて全部置き去りにして。

 

『最後にお願い。

もし私と敵として相対する時は、多分みんなを傷つける。

その時は先生が私の「ヘイロー」を壊して。

じゃあ、短い間だったけど、ありがとね。

 

さようなら、先生。』

 

 

読み終わった手紙を机に置いた。

 

セリカとアヤネは床に座り込み、互いの肩を抱き合って泣いている。

ノノミとシロコは椅子に座ってただ手紙を見つめていた。

 

見渡せば教室の扉の影に制服の裾が見える。

藤河がただ一人、扉に背を預けて、俯いていた。

 

 

認められない。

納得できない。

 

皆が助かるためにホシノが犠牲になるなんて──────

 

『先生がいた世界ではそれで誰かを助けられたのかもしれないけど、キヴォトス(此処)では誰も守れないよ。

誰かを守れたとしても、本当に自分の命をかけたら誰も救われない。

ましてや「先生」なら尚更、私達より先に倒れちゃダメだよ。

勝手に死んで、全部めちゃくちゃにして、色んな人の心に傷を作って逝くだけだから。

本当に皆を守りたいなら、安直な手段は取らないで。

私達のために、助かる手段を模索して、生きる方法をとって。』

 

そんなことを言ったアイツは、自分から約束を反故にした。

 

しかし、その思いは尊いものだ。

誰かのためにどうにかしようと、例え悪い結果になったとしても、その思いだけは間違っていないのだから。

 

 

だから、俺がしてやれる事は─────

 

「皆はさ。」

 

俺の言葉を、ここに居る生徒たちは顔を上げて聞いてくれた。

 

「皆は、どうしたいんだ?

 

ホシノが居ない対策委員会、いや、アビドス高校がいいのか。

それとも、アビドスを捨てて、5人で一緒に────」

 

意地悪な質問、残酷な二択。

 

 

 

口火を切ったのはシロコだ。

 

「そんなの.....選べる訳ない....。

アビドスを、私達の学校を捨てても、ホシノ先輩を切り捨てても、どっちもその先の結果に私達の求めてる結果なんて......」

 

「はい.....私には、私達には到底、受け入れられません....。」

 

ノノミが、ここに居る全員の気持ちを代弁した。

声の出ないセリカとアヤネもこくんと頷いている。

 

「なら、ホシノを取り戻してから借金の事は考えよう。」

 

「「え...?」」

 

俺は、その二択が間違ってると、彼女達が見ている現実は、自分たちで作りだした絶望だと。

まだ決まってないと、諦めてはいけないと。

 

教えてあげることだけだ。

 

「俺には策なんて思いつかない。

ホシノが言った通り、これまでは行き当たりばったりで何とかなってきた。

 

でも、人生ってそんなものじゃないのか?

 

何が起きるか分からない、絶対なんてないんだ。

だから目の前の現実にだけ囚われちゃダメだ。

 

本当は、自分が何をしたいのか、どうしたいのか。

自分の夢がなんなのか、もう一度、思い出すんだ。」

 

 

 

 

 

 

『砂漠に覆われて、吹き付ける風にはいつも砂が混じっていて。

人も居なくて、寂しい。

 

けど、それでも自転車で通学する時の景色は

 

アビドスの景色は、なんていうか、その....綺麗だった。

 

ホシノ先輩がいて、ノノミがいて、セリカとアヤネが居てそれでいい。

便利屋68に襲われたり、借金の返済で忙しかったけど。

 

私は少なくとも何一つ不満に思わなかった。

だって、これまでそれが、私の「普通」だったから。』

 

 

シロコはアビドスを美しいと言った。

砂に覆われても、人が居なくなって寂れても。

 

それは皆がいたからだ。

ホシノを含め、対策委員会があったからだ。

 

「そうだ。

シロコ、選べる筈ない。

 

それでいいんだ。

 

だって、アビドスも、ホシノも、皆にとってかけがえの無い大事なものなんだから。」

 

大事なものが幾つもあるんじゃない。

全ての要素を含め、それが大切なものなのだ。

 

それを、失わない為に、彼女達はこれまで戦ってきた。

その半身を奪われ、苦しくて泣いている、悔しくて泣いている。

 

俺はこれまでの分かれ道、後悔しない方を選んで進んできた。

当然失ったものもあるし、手放したものもある。

それでも、後ろ髪を引っ張られても、振り返らずに前へ進み続けた。

 

失ったものに報いるために、間違っても、それを無価値にしないように。

 

起こったことは戻せない。

でも、これからどうするかは今から決められる。

 

 

「俺は後悔なんてしない。

例え失ったものがあったもしても、引き返すことも振り返る事もしない。

何故なら俺は自分が歩んできた道が、

────その道が間違いじゃなかったって信じている。」

 

 

俺は荷物をまとめる。

 

「ちょっと!!何処に行くのよ!」

 

「俺はホシノを助けに行く。

借金の返済方法だって、まだ皆でまともに話し合ってないじゃないか。

 

連れ帰って、叱ってやらないと。

そうだろ?セリカ。

 

間違ってるって。

その方法は違う、だから正しい道は皆で見つけるんだって。

あいつを叱ってやらないと。」

 

そうだ、ホシノは正しい、だけど間違っている。

 

「俺はホシノの「先生」であり続けたい。

だから、連れ戻す。

 

.........皆はどうしたいんだ。」

 

 

再び問われる。

 

「.......その結果、全てを失っても、シロウは前を向けるの?」

 

シロコの鋭い目。

 

俺は間違うことなく、自分の思いを口にする。

 

「....あぁ、前を向いて、胸を張って、精一杯進むよ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は士郎が弱いと思ってた。

初めてあった時は「軟弱者」と思い、見ようとさえしなかった。

 

彼を知ってから、その印象は変わった。

 

無鉄砲、考え無しのバカ。

すぐに血反吐を吐くし、傷つくし、死にかけるし、連れ去られるし。

 

魔法の代償の話を聞いた時からは「守ってあげなければ」とすら思った。

 

でも違った。

 

士郎は私の思っていた何倍も強かった。

腕っ節とか、権力とか、そんなくだらない事なんかじゃない。

 

その意思が、心の在り方が強かったんだ。

 

心が強いから、体が傷ついて、血が流れようと、自分の正しいと、これだと思ったことをそのまま実行する。

 

「そっか.....そんな、単純な事だったんだ。」

 

士郎はアビドスを守ろうとしてた訳じゃない。

ううん、結果的には私たちと一緒。

 

でも、士郎が守りたいもの、それは私達の心だったんだ。

 

バカは私だった。

軟弱者も私だった。

 

すぐに折れて、方向を変えて、自分自身の「正義感」すらねじ曲げて結果だけを見ていた私だったんだ。

 

士郎にホシノ先輩、それとアヤネちゃんだって、

ずっと、ブラックマーケットの時から「それは間違ってる」って言ってくれたのに。

 

そんなことにさえ、私は今になって気づくなんて。

なんて私は馬鹿なんだろう....。

 

「....セ、セリカちゃん....?」

 

「何なのよ.....あれだけ偉そうに話しておいて.....切羽詰まったら何でもしちゃうよ、って窘めたくせに.......」

 

弱音を愚痴と共に吐き捨てる。

膝に手を当て、立ち上がる。

 

負けたくない。

 

弱い自分に腹が立ってしょうがない。

 

前を向かなくちゃ。出来ることをしなくちゃ。

ううん、今、私のしたいことをするために。

 

立ち上がらなきゃ。

 

 

結論なんて、もうとっくの始めから出てるんだから────!

 

「──────こんなの、受け入れられるわけないじゃない....っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──その道が間違いじゃなかったって信じている。』

 

 

 

 

私は後悔ばかりしている。

今だって、「こうなるくらいなら強引にカードの、お金の力に頼っていれば」と、心の片隅にそんな思いがある。

 

実家を飛び出して、その家の事業が潰れた事も。

 

アビドスへ来てからも、もっとなにか出来たんじゃないかと。

 

頼りにしてきた今手元にあるゴールドカードでさえ、私の力ではない、家の、お金の力。

 

それでも、自らに出来ることなら率先して行った。

私には皆に気を配る事しか出来ない。

 

 

だから、私が倒れたあと、衛宮先生が────しようとしたと聞いた時には心底嫌な気持ちになった。

 

あの時だけじゃない。

先生が傷つく度、守ってあげられなかった、庇ってあげられなかった。

力になってあげられなかったと。

 

自身の怪我や傷などより、そちらのほうが何十倍も痛く、そして苦しかった。

 

 

 

 

しかし、実際の所、守られているのは私達だった。

 

()も子供の分際で、大人を守ろうということ自体が矛盾していた。

 

『お前のような大人は俺が否定する。

子供の夢を導いて見守ってやれないお前を、俺は大人だとは認めない。』

 

 

大人とは、本来子供を守るものだ、と彼はそう言った。

 

私は今までそんな事も知らなかったのだ。

 

 

彼の声が、頭の中で響いて離れない。

 

『俺は後悔なんてしない。

例え失ったものがあったもしても、引き返すことも振り返る事もしない。』

 

 

ホシノ先輩も強かった、ううん、ホシノ先輩が強く、そしてとても脆い人であることを私は知っていた。

 

だから、こんな手段を取ってしまうことも、薄々わかっていた。

 

ホシノ先輩には、悔いは無いのだろうか?

 

 

「.....」

 

先生は私たちに聞いている。

それに対してセリカちゃんは言った。

 

「納得などできない」と。

 

私は?

 

「 ....私だって....納得出来ません。

ホシノ先輩は間違っています、衛宮先生。」

 

 

「え....?ノノミ.....、大丈夫か?」

 

彼が不思議そうに呟く。

今の私の表情は、相当────

 

「連れ帰って、きちんと叱ってくださいね?」

 

笑顔を見せる。

 

笑顔だけは絶やさぬように、と何時どんな時だって、私は笑った。

 

そんな私は()()()()()()()()()をしているのだろう。

 

「ですから、私にも、そのお手伝いをさせてください。

一緒にホシノ先輩を迎えに行きましょう....!」

 

 

─────それでも、思うのだ

彼の大きな背中を、ずっと見守りたいと。

 

 

アリスの士郎に対する呼び方。

  • 「士郎」、「士郎先生」
  • 「シロウ」、「シロウ先生」
  • 「マスター」、「先生」
  • 「衛宮先生」、「先生」
  • 「エミヤ先生」、「先生」
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