衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
本編のアヤネはこれほど脆くないとは思いますが。
どうしてもやりたい展開があったので現在進行形でアヤネの心がポッキリ折れたことにしています。
本当にすみません。
お話の作り方としては邪道です。うん。
(ズドォォン!!)
「うわっ!?」
「きゃっ....!」
校舎が揺れる。
初めて、アビドス高校に来た時のように。
唯一、レーダーの観測方法を知っているアヤネは座り込んだまま動かない。
「イリヤ、アロナを起こしてくれ!」
『えぇ。
こら起きなさい寝坊助さん。』
と、画面向こうでイリヤが机にうつ伏せになって寝ているアロナの頭にチョップを入れた。
『痛っ!!な、何するんですかイリヤさん!!!』
ふんす!と頬をふくらませて怒ったアロナ。
直後、目を見開いて驚きの表情を見せる。
『こ、これは.....アビドス自治区が襲撃を受けています! 』
透明なコンソールをいじって街の様子を確認したアロナは画面にその映像を映し出した。
砲撃により建物が破壊、破砕され逃げ惑う住人たち。
『うわぁぁぁっっ!?』
『早く──、早く逃げ───』
声が途絶えた。
街に火の手があがり、次々と炎に飲み込まれていく。
耳を塞いで、助けを求める声を無視して逃げていく人々。
「やめ.....」
『... え!これって!!』
アロナの声にハッと我に返る。
「どうしたんだ!?アロナ!」
『衛宮先生.....カイザーコンストラクション....いえ。
カイザー理事がアビドス全自治区に向け、退去勧告を出しました。
「なんですって!?」
どうして、このホシノが居なくなったタイミングで───────やはり黒服は.....。
「士郎、カイザーPMCが校舎の内部まで入ってきてる!!」
藤河の叫び声と同時に廊下で発砲音が響く。
(ダダダダダダタダタッ!!!!)
(バァァァンッ!)
「あうっ!!!」
「藤河──ッ!!」
教室の扉を開けば、そこには1人で応戦している彼女の姿。
「
俺はホシノの盾を展開し、藤河の前に割って入る。
「士郎、何が起きてるの!!」
「話は後だ!どうにかこいつらを学校から押し出すぞ!!」
俺の後に続いて、ノノミが───────盾の前に出た。
「おい!待て!ノノ─────」
「───────悪い子は」
(ウィーーン......バリバリバリバリバリバリッッッ!!!)
「お仕置きですっ!!!!」
「ぐあっ!!!!」
彼女はそのガトリングの弾幕を広いとは決して言えない廊下で展開した。
押し寄せるカイザーPMCの兵士達は避ける事も、隠れることも出来ずに圧倒的火力の前に為す術もなく倒れていく。
当然だ、彼女持っている「リトルマシンガン
そのいくつもある銃口を取っかえ引っ変えして発射される弾は1秒間に約100発にも及ぶのだ。
その圧倒火力こそ、やはりこの対策委員会においてノノミしか持ちえない、最大の武器だった。
「藤河さん、立てますか?」
敵が居なくなった事を確認したノノミは藤河に手を差し伸べた。
「.....ありがとう、ええと....」
「ノノミ、でいいですよ~☆」
再び見るノノミの笑顔はいつもの物に戻っていた。
『衛宮先生、申し訳ないのですが───』
『シロウ!まだ来るわ!!』
(ダダダダダダダッ!)
自分の役目を取られたアロナはむくれているが、正直にいってなだめている時間は無い。
「アロナは街の被害状況を頼む!」
『は、はい!!分かりました!!敵部隊の様子と配置、住民の位置と避難経路を確認します!!』
なだめている時間が無いので、最適解を出すしかない。
「ノノミ、藤河、少し時間を稼いでくれ!」
「「はい!!」」
「イリヤ、これまで対策委員会の目だったアヤネがダウンしてる。
その間だけ─────」
言わずもがな、俺は聖杯戦争中、イリヤと何度も視界を共有してきた。
一句相伝、イリヤが内側から端末のディスプレイに手を伸ばす。
『いいわ、シロウ、私に身を委ねて。』
そう言われて俺はその手に、自分の掌をかさねた。
「──────────!!」
体が動かない、その代わり、視界が動いていく。
しかも視界の移動方法は強引だ。
自分が転移しているのではと錯覚するくらい。
見せてくれる風景は精々5秒。
廊下や教室に数人また、数人とカイザーの兵士がたむろしている。
それが何処の教室や廊下など、判別はつかない。
『いける、シロウ?』
─────しかし、それで十分だ。
「あぁ。」
床に手を置き、校舎全体に、微弱な魔力を流して、大まかな場所を把握する。
気配は察知できないが、構造なら────
「
視えているぞ────ッ!」
校舎屋上、壁をラペリングして、窓から侵入して来ようとするPMCの兵士に向け投影した弓を構える。
「セリカ!!校舎の壁に敵が張り付いてる!窓を開けてくれ!!」
「えっ!?え、でもその位置からじゃ─────」
「いいから早─────」
何が何だか分かっていないセリカの代わりに、ワカモが窓を開け放ち、飛び降りた──────グラウンドへ?飛び降りた?
落下中、彼女は地面に背を向け銃を構えた。
「ちょっ──────!?」
(パパパパバンッッ!!!)
続く数発の銃声。
まるで夏の終わりのセミのように、機械兵士が壁から地面に落ちた、いや叩きつけられた。
『外はこのワカモにお任せを!
士郎さん達は校舎内の兵士を一掃してください!!』
あいつ.....何があっても前に出るな、って言ったはずなんだけど───────頼りになるんだから責められない。
「わかった!!
シャーレの「先生」として命じる。
頼むワカモ!
外は任せる、俺たちは中から奴らを叩く!!
また後で合流しよう。」
俺の指示を聞いたワカモの表情が満面の笑みに変わった。
....まずったかもしれない。
『はい!ご武運を!あなた様!
そこの猫!!一時、士郎さんをお任せします!
傷一つでも負わせてご覧なさい、その時はこのアビドスを火の海にして差し上げますからっ!!!』
「誰が猫よ!!誰が!
良いわよ!
任されたわ!
アンタこそこれ以上校舎に1人足りとも敵を侵入させないでよねっ!」
ワカモとセリカのやり取りを聞いていて、少しホッとした俺とノノミだった。
なんと言うか、力に関しては変な信頼関係ができているようだった。
「居たぞ!災厄の狐だ!!」
「情報通りだ!!近寄るな!一斉に攻撃を────」
(パァン!!!)
「ぐあっ!!!」
「......私と士郎さんの愛の巣を、襲っているのは貴方々ですね?
─────────久々に暴れられますわ。
ささ、泣き叫びたい方は順番にどうぞ。」
楽に───してなんてやらない。
「士郎さんの敵は全て私が───────」
(ジャキンッ!!)
再度弾丸を装填する。
「殲滅致します!!」
外でド派手な爆音と銃声が鳴っている。
大丈夫だろうか。
いや、ワカモじゃくて相手側とこのアビドス高校が更地になって消え去らないか、心配だ。
「アヤネ、動けるか?」
「......。」
意気消沈している。
「.....ノノミ、アヤネを頼む。部室に残って守ってやってくれ。
俺とセリカで校内の兵士を迎撃する。」
「....わかりました。」
「.....シロウ。私は?」
敢えて名前を挙げなかったのは、シロコの意志をまだ確認できてなかったからだ。
「....いけるか、シロコ。」
「ん、私もシロウと同じ。
最後まで諦めず足掻いてみる。」
その言葉を聞いたノノミとセリカ、そして藤河は安心したように微笑んだ。
「士郎、私は各教室を回ってウチの奴らと合流しながら迎撃してみる。」
「わかった、シロコも連れて行ってくれ。
藤河組は任せるぞ。
よし、じゃあ皆、手始めはまずホシノの帰ってくるアビドス高校を守るんだ!!」
「「はいっ!!!」」
「俺が盾を作って前に出る。
挟み撃ちはゴメンだからセリカは俺の向くのとは反対側を攻撃してくれ!
イリヤ、背後の守りを頼む!!!」
「....ええ、わかったわ。」
『人使い荒いなぁ、シロウ。
でもいいよ。私今すごく機嫌がいいの。』
言葉とは裏腹にふふん、と笑って障壁を展開した。
というか、さらりと指示を出したけど、肉体が無くても魔力って通ってるもんなのか.....?
いや、そんな事を考えるのは後回しだ。
「.......
左手には盾を。
そして────
「
右手には、ホシノの使うショットガンを作りあげる。
「征くぞ────────!」
(ドカっ!!!)
部室の扉を蹴破って飛び出した。
「出てきたぞ!シャーレの「先生」だ!!撃て!撃ち殺せっ!」
(ダダダダダダダッッ!!!)
(カンカンカンッッ!!)
放たれた銃弾、その全てを展開した盾で弾き返す。
「そんな弾が届くかってんだ──────コノヤロウ!!!」
情報を抜き取る。
ホシノの銃から彼女の戦い方を
本来盾は持ち主を守るもの。
つまりは防御主体だ、特にこんな分厚い鉄の板なんて、走って戦う者にとってデメリットにすらなりうる。
なんせ彼女達は銃弾程度では傷つかないのだ。
対してショットガンの有効射程は精々50mあるかないか。
火力と制圧力に優れているが遠距離戦は苦手分野。
ホシノの戦い方は本来矛盾している。
一般人が片手でショットガンを撃とうものなら反動で腕が持っていかれる。
それでもホシノはこの戦い方を選んだ。
傷つき、自らが的になっても敵を撃つ、
攻撃は最大の防御、ではなく攻防一体の戦闘スタイル。
「あぁ、ホシノ。俺達はやっぱりさ──────」
余計な物が流れてくる。
ホシノの過去なんてどうでもいい、今はアイツの未来を守ってやらなきゃいけないんだ。
廊下のタイルに埋め込むように刺した。
「────
シェルを装填。
速度優先、二の手など不要。
盾の横から銃身を出し、適当にアタリをつけ、引き金を指で弾いた。
(バァァァン!!!)
慣れない部分を他人の経験値でリカバリーする。
あぁ、─────実に、自分がない俺にとって、らしい戦い方だ。
「ぐぁっ!!!」
「何!?魔法で銃を生み出しただと!!?そんなの寄越されたデータには─────」
盾を引き抜き───────
「はっ、あぁぁ─────!!!」
(ドンッ!!)
そのまま突撃してシールドバッシュを見舞う。
その反動で俺自身が後ろに倒れそうになる。
結局はそうだ、衛宮士郎には何も使いこなせない。
体勢を崩した敵が立ち上がる。
「この!たかが一般人如きにやすやすと!!」
アサルトライフルの銃口が向けられた。
対してこちらはショットガンと盾を手放し、徒手空拳。
しかし、頭の中で部室にいた時から組み上げている剣があった。
「─────
手にしたのは魔剣、
このキヴォトスで誰が知ろう。
この剣はイングランドの叙事詩である『ベオウルフ』に登場する剣そのものである。
フロースガール王の家臣であるウンフェルスの所有物だったが、魔物を討伐に赴くベオウルフに貸与された。
その人の世で名を馳せた名剣すら、ベオウルフが相手取った魔物に対して傷の1つすら付けられなかった。
その後、ベオウルフはまた別の武器を手に取り、その魔物を討伐した。
そうして「役立たずの剣」としてその名が知れ渡ってしまう。
しかし実際は、倒れぬ相手を倒すため、何度もその猛威を奮ったのだ。
最適最速の初撃、避けられれば二撃目を。
敵か自らの主が倒れぬ限り、その剣は獣を追う猟犬の様に追い回す。
「喰らいつけ!緋の猟犬!!」
真名解放をせずとも、投影したその瞬間に剣が体を動かした。
俺が剣を振るったのではなく、剣が俺の体へ振るように指示を出したのだ。
「攻撃が、見え──────ガハッ....」
「避けきれないぞ!」
俺の投影した猟犬は当然のごとく相手の兵士を切り捨てていく。
「ひっ... !!」
「ば、化け物!!」
相手は慄きながら後ろへと退却していき、遂に昇降口まで追い詰めた。
こちらはまだ階段ホール、距離がありすぎる。
「逃がすがってんだ─────セリカ跳べ!!!!」
「え....あぁもう!!重いとか言ったら承知しないんだから!!!」
盾を構え、背中を丸めて合図を出す。
背に靴が乗るのと同時にセリカが体重をぐっと足にかけた。
「────やぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
「ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!」
跳躍すること10m。
セリカは敵数人を纏めて飛び蹴りとその衝撃で吹き飛ばした。
「─────────どんなもんよ!!」
とVサインを出してこちらに笑いかけるセリカ。
あぁ、うん、やっぱり何処と無く遠坂っぽい。
足癖悪いとことか、ミニスカで足技出すとことか。
「シロコ、藤河、そっちはどうだ?」
『ん、今藤河組の皆とカイザーの兵士を撃退してるとこ。ノノミ、無事?』
『はい、こちらは大丈夫です。』
勢いの乗ってきたこの辺りで攻めに出たい。
「士郎さん!敵が撤退致しました、いかがいたしましょう?」
と、ここで昇降口にいた俺とセリカの元にワカモが合流した。
「─────打って出よう。」
俺の言葉を聞いて待ってました、と言わんばかりのセリカ。
拳と掌をパシンと叩きつけている。
「そう来なくっちゃ!!」
『ですが.....アヤネちゃんは....。』
ノノミの懸念もわかる。しかし、このままではジリ貧だ。
「アヤネと学校の防衛は藤河達に任せる。
いいか?」
『....あぁ、私達は士郎の指示に従うよ。』
その言葉を聞いて、少し申し訳ない気持ちになった。
「....悪いな。巻き込んで。」
その言葉を藤河がどう捉えたのかは知らない。けれど、彼女は「いいんだ」と言ってくれた。
『私達だって、いつかは
でしょ?皆。』
藤河の言葉にみんなが同調していた。
『そうだね姉御。』
『見たくない現実から逃げたツケがこれだって言うなら、喜んで払います。』
『だって、アタシら先生に拾ってもらえて幸せだもん。
こんくらいしないと、罰があたるよ!』
と、みんな前向きに言ってくれた。
「....そっか。」
『学校とアヤネの事は任せなって。それよりホシノを頼んだよ!士郎!』
ノノミとシロコが階段から降りてきた。
「......良かったんでしょうか.....アヤネちゃん1人残して...」
「仕方ない。
でも、アヤネならもう一度立てるって、信じてる。」
俺はノノミの不安に対して思いのままに言葉を紡いだ。
それが合図になったのか、集まった皆で、アビドス自治区へと繰り出した。
アリスの士郎に対する呼び方。
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「士郎」、「士郎先生」
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「シロウ」、「シロウ先生」
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「マスター」、「先生」
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「衛宮先生」、「先生」
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「エミヤ先生」、「先生」