衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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#14 into the staynight/アビドス攻防戦(Ⅱ)

「こんにゃろっっ!!!どけ!」

 

「....!!!」

(ダダダダダダダダッッッ!!!)

前衛としてシロコとセリカが全面にいるPMCの兵士を薙ぎ払っていく。

 

「ぐはぁっ!!」

 

「か、カイザー理事!これ以上は!」

 

 

 

「カイザー理事....っ?

ってことは......」

 

『衛宮先生!!車両が1台!こちらに接近しています!!』

 

アロナの声で遠くを見据える。

 

「シロコ!セリカ!ノノミ!!あいつが来た!!」

 

その言葉ひとつで察したのか、前線にいた2人は戻ってくる。

後ろを制圧していたノノミも俺の隣に並び立った。

 

 

奴が指揮車から降り立つ。

 

「ほう?学校まで向かうつもりだったのだがな?

お出迎えとは感心だ。」

 

 

上から目線で言うカイザー理事の通り道を、全員で阻んだ。

 

「これは何の真似ですか?

企業が街を攻撃するなんて......いくらあなた達が土地の所有者だとしてもそんな権利は無いはずです!!」

 

「ん、それに学校はまだ私たちアビドス高校のもの。

これは明確な不法行為。」

 

 

シロコの言葉に賛同する....するが、そんなこと言われずともカイザー理事は分かっているはずだ。

 

俺は1歩前に出る。

 

奴は、会話する相手として対策委員会を見ていない。

セリカとシロコの言葉を無視して前進してくる。

 

「おい、待て。」

 

見下げるように俺を下に見るカイザー理事。

お互い足先が当たりそうな距離までやって来てやっと相手の足が止まる。

 

まるで「俺の方が上だ」と言わんばかりに。

 

 

「おい、理事。

何でこんなをことしたんだ。

 

立場の悪くなったおまえがこんなことすればどうなるか分かってるだろ?

 

連邦生徒会所属の学校を襲えば戦争になるってお前自身が言ってたじゃないか。

だって言うのにこんな──」

 

「ハッ!連邦生徒会所属だと?面白いことを言うじゃないか。

なら今すぐ連絡してみるといい。

 

お前にもわかっているのだろう?

小鳥遊ホシノが退学したその重要性を。」

 

 

「 ......やっぱりオマエ─────」

 

「え、士郎...どういうことよ。」

 

告げなければ、ならない。彼女達の納得出来る情報を、嘘など織り交ぜずに。

 

「 .......アビドス対策委員会は、正式な部活じゃないんだ、セリカ。」

 

「えっ!?」

 

「これまではホシノが生徒会の役員だ、という肩書きが残ってた。

だからアビドスは存続できていたんだ。

 

でもそのホシノが退学届をだした。

だからコイツはアビドス高校を乗っ取りに来た。」

 

俺はカイザー理事を睨みつける。

 

「乗っ取りに来た、とは人聞きの悪い。

 

公認の部活のなくなったアビドス自治区を私達カイザーグループが統制下に置いてやろうと言うのだ。

むしろ感謝してもらいたいものだな。

 

喜べ少女達よ、お前たちはとうとうあの地獄から開放されるのだからな。」

 

 

 

「.....そんな!そんなことになったら.....今までの私達の努力が!」

 

ノノミの言葉を奴は笑った。

バカにして。

 

「フッ....フハハハハハハハハハッッッ!!!

 

なんだ、お前たち、まさか本気だったのか?

本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったと!?

これは笑い種だ。

てっきり最後諦める時に「頑張った」という事実が欲しいのだと、そうして程々に頑張っているものだと思っていたのだがな。

 

まさか本気だったとは、ハハハッッッ!!!」

 

 

────────────────

 

 

「それで?こうして学校が、自治区が我々のものになり。

 

─────お前達はどうしてあんなに努力していたんだ?何のために?」

 

 

 

ふざけ──────

 

(ダダダダダダダッッ!!!!)

 

「あんたそれ以上言ってみなさい......二度と喋れなくしてやる......!」

 

セリカの弾丸が指揮車を貫いた。

 

それに続いてノノミとシロコも銃を構えた。

 

 

 

「ほう?それで?

ここで戦ってお前たちに突きつけられた現実の、一体何が変わると言うんだね?」

 

 

「────!!」

 

「まだ私はカイザーPMCの本隊を出していない。

お前達が戦ったのはまだ斥候だ。

そして戦って勝ったところでその先は?何がある?

 

結局はこんな冴えない土地でまた借金返済の生活だ。

そして、アビドス自治区は我々のものだ。

 

 

私達と戦って勝ったところで、何も残らんのだよ?」

 

(ブロロロロロロロロ)

勝ち誇ったかのように言い張るカイザー理事の上空には一機のヘリコプター。

 

「ッ....だからって!!」

 

「そんな事で私達の思いは止まりません!!

自治区も取り戻します!!

借金の件だってどうにかします!!

ホシノ先輩も取り戻します!!

 

これが私たちの未来です!!

これが私達の夢です!!」

 

「ん、私達は叶える。

諦めるな、ってシロウは言ってくれた。でしょ?」

 

ノノミの力強い言葉と、俺に向けられた笑顔。

折れない。

1度折れた彼女達の心は立ち上がっている。

 

 

「カイザー理事。諦めろ。

そんな現実じゃ、言葉じゃこの子たちを折ることなんて出来ない。」

 

 

カイザー理事は少しの間黙り込んだ。

 

しかし、その後に出した結論は俺たちと同じもの。

 

「そうか....では戦うしかないな。殺れ!!」

 

 

奴はヘリコプターに指示をだし、その機銃が動き始める。

 

「っ....!」

 

「大丈夫!!あんなヘボなパイロットになんて─────」

 

セリカが悪口を言った直後。

 

 

(バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッッッ!!!)

 

ヘリコプターの機銃が、発射された─────────。

 

 

 

Interlude 14-1 立ち上がる(アヤネ)

 

皆がカイザーと戦う為に学校から出ていった。

 

 

 

私は役に立てなかった。

いつもいつも、後ろで見ているだけ。

 

前線で戦えるほどの力は無い。

 

ホシノ先輩を取り返す?

借金も返済する?

カイザーと戦って勝つ?

 

そんなの無理だと。

 

私の心は折れてしまった。

 

何より傷つく先生も見ていられなかった。

 

私達が戦おうと、抗おうとすれば先生はその責を負い、私たちの代わりに、私達より前で血を流す。

 

そんな傷だらけの先生の姿を、もう見たくなかった。

 

風紀委員会との戦闘で、見ていることしか出来なかったあの時点で、私の心はもう、折れかけていた。

 

その後のアビドス砂漠への調査だって反対したのもそうだ。

衛宮先生を待とうなんて言うのは都合のいい言い訳だった。

 

─────誰にも傷ついて欲しくない

 

 

 

「───ええ─────生は?────もう。」

 

 

話し声が聞こえる。

 

「もう.....いいんだ。」

もう、諦めて、立ち止まってしまった私には関係の無いことだ。

 

 

 

「へぇ、あなた諦めたの。」

 

襟首を掴まれる。

 

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く。

 

それがあなた達覆面水着団のモットーじゃなかったのかしら。」

 

 

視界に映るのは便利屋68社長────

 

「陸八魔....アルさん....?」

 

彼女は私に愚痴のように話し始める。

 

「何をしても行き止まりにたどり着いて。

助けてくれる者は居ない?

どうすればいいのか最適な道も分からない?

やる事なす事全部裏目に出て失敗に終わる......?

 

この場を切り抜けたところで、この先にも逆境と苦難しかない......?

 

それで?だから何なのよっっっっ!!!

 

椅子に突き飛ばされ強引に座らされる。

 

「痛っ....!」

 

「そこの藤河って生徒から全部聞いたわ!!

仲間が危機に瀕してるんでしょう!?

 

それなのに下らないこと考えてそのせいで思考停止して?

 

そのまま全部奪われてどうするのよ!!!

納得出来るわけ!?

出来るわけないわよね!?

 

そんななら、あんた達は敵を見定めるためにブラックマーケットの闇銀行を襲うことなんてしなかった!!!

違う!?」

 

突きつけられたのは闇銀行の、私達が手に入れ、失った集金記録。

 

「どうして .....あなた達がそれを.....」

 

 

「どうして....ってあんた達が私たちの目の前に置いていったんでしょうが!!

 

真の標的は誰か、私たちに教える為に。」

 

 

「真の......標的?」

 

彼女は何を言っているのだろう?

 

「ええ、そうよ!

私達を雇ったのはカイザーローン、いえ、カイザー理事よ。

でも狙った動機も理由も全部マッチポンプ!!

 

バカにされてたのは私達学生全員よ!

だから反逆するわ!」

「.....つまり便利屋68は....」

 

「そう!一時的に味方になってあげるって言ってるの!!この陸八魔アルが直々にね!

 

それだけじゃないわ!あんた達には衛宮先生っていうこのキヴォトス最高で最強の男が付いてるじゃない!」

 

 

そうして彼女達の後ろにいるのは────

 

 

「.....かなり、いえ、極限まで怒りが溜まっていますが衛宮先生の手前、協力いたします。」

 

「.....まさか衛宮先生がカイザーグループに喧嘩を売るなんてね...

まぁ業界に至ってはいい風かもしれないわね。」

 

 

それはD.Uのシャーレ支部奪還の際にいた生徒たち。

 

 

「失礼します。一部条件付きですがシャーレの戦力に加わります正義実現委員会副委員長とその一同です。」

 

「アビドスとはあまり親交はないけれど衛宮先生を助けるためだし仕方なくよ。

あ、私はミレニアムの─────ってたしか知ってるのよね、奥空アヤネさん?」

 

 

 

「どう?わかった?あんた一人が諦めた所で立ち上がる生徒はいくらでもいるわけ!

 

衛宮先生が来てからキヴォトスは変わってるの!

 

いつまでも悲劇のヒロイン気取れると思ったら大間違いなんだから!!」

 

「ア、アルちゃんの辺で勘弁してあげなよ、メガネっ娘ちゃんは繊細なんだからさ。

こういう時もあるって。」

 

「い、いいじゃない!

せっかくやる気を出したのに不貞腐れてるこんな子を見たら腹も立つわよ!

 

で?あなたはどうしたいわけ!?

どうせ何もかも無くすなら仲間の傍の方がいいと思わないの!?」

 

 

「─────────────!!」

 

それが、私のスイッチをONにした。

 

「おい!!皆!校庭にカイザーの強襲揚陸ヘリが!!!」

 

 

「ッッ!!!」

 

足に力を入れる。

 

 

今度こそ、私の足は、立ち上がってくれた。

 

そうだ、いつも私は皆と一緒に戦えなかった、だから今こそ、こんな時だからこそ─────────

 

 

 

「ちょっ!!!どこに行くのよ!!!」

 

 

生徒をかき分けグラウンドに出た。

いつも使わない、その拳銃を走りながら、目の前の的に向ける。

 

 

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───────」

 

(バンッ!!バンッ!!!バンッバンッバンッ!!!)

 

「ぐはぁっ」

「うわぁっ!!!拳銃一丁で────」

 

 

 

目の前にいる全ての兵士を撃ち倒し、ヘリコプターに乗り込んだ。

 

 

「こ、コイツ────」

 

「退いて──────」

 

コックピットにいる操縦員を───────

 

 

「───────ください!!」

 

蹴り飛ばし、操縦席から外に叩き出す。

 

「ぎゃあああああああああっっっっ!!!」

 

 

「行かなきゃっ!!!動いて!!」

 

ヘリの操縦免許は持っている。

重機も車も皆が運転できないからせめて私だけは、と昔取った杵柄を今更になって取り出した。

 

 

 

離陸(テイクオフ)!!!」

 

 

私は総勢20人はいた部隊を丸々倒して、ヘリを奪って前線へ飛び出した。

 

「戦わなきゃ、私自身が前線で戦えなくてもせめて心だけは、皆とおんなじところに居なきゃ!!」

 

ここで私だけ折れる?

そう、それはみんなに対する裏切りだ。

 

「お願い!!届いて!!!」

 

 

 

Interlude 14-1 立ち上がる(アヤネ)END

 

 

 

ヘリの機銃が発射された。

 

 

 

カイザー理事へ向けて──────

 

 

「何っ!?」

 

(バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!)

 

 

「貴様、何処を、誰を撃っている!!」

 

 

『私達は─────屈しません!!

そんな現実に!!』

 

 

 

「「アヤネ」ちゃん!」

 

 

そのヘリコプターから聞こえてきたのはアヤネの声だった。

 

 

「チィィッ!構わん!撃ち落とせ!」

 

 

打ち上げられた対戦ヘリのミサイルを機銃で悉く迎撃するアヤネの駆るヘリコプター。

 

 

「凄いな....いまのヘリコプターって自動迎撃機能も着いてるのか....」

 

なんて俺が言うとシロコが否定した。

 

「違う。あれはアヤネの操縦。」

 

「......え.....…」

 

 

 

そうして思い出す。

対策委員会で1番怒らせてはいけない生徒が誰なのかを。

 

 

『とぉぉりゃぁぁぁぁぁっっっ!!!』

 

俺とシロコ達は呆気に取られている。

何故ならアヤネは1人で無双していたからだ。

 

放たれる歩兵の弾幕を全てその巨体なヘリで掻い潜り、機銃を上から雨のように浴びせている。

 

「ぐあああああああああああああっっっっっっ!!!!?

 

貴様!!よくも────よくも!!」

 

 

その数発がカイザー理事に直撃した。

 

左腕は吹き飛び、右足は地面に弾丸で釘付けにされ、頭部はひしゃげている。

 

 

 

『あら、お困りのようね、カイザー理事、いえ、依頼主(クライアント)さん。』

 

 

 

俺たちの通信に割り込んできたのはアルの声。

 

 

「あ、ああ!

便利屋68、良いところに来た!!

今こそアビドス生徒を─────!」

 

 

カイザー理事が残った右腕を伸ばした、まるで助けを求めるかのように。

アイツにはアルのいる場所が見えているようだ。

 

 

「良いわ、実にいい展開じゃない」

 

 

 

後ろを振り返る。そこには片手でスナイパーライフルを構えたアルが居た。

 

 

「引導を渡してあげるわ───貴方の。」

 

 

 

「何ッ!!」

 

 

 

その言葉と共にアルのライフルの銃口が火を吹いた。

 

弾丸は理事の右腕をはじき飛ばした。

 

「理事!損傷が!!」

 

「ぐあああああっっ!!

貴様ッ!!飼い犬の分際で────おのれぇぇぇぇ!!!

覚えておけぇぇぇぇ!!

 

このツケは必ず払わせてやるぅぅっっっ!!!」

 

機械の右腕と左腕を失ったカイザー理事は味方の兵に回収され撤退した。

 

 

「退却!退却~!!!」

 

「HQより退却命令!

繰り返すHQから退却命令が下った!!」

 

「戦列を整えHQに帰投せよ!!」

 

 

(ブロロロロロロロロロロッ!)

 

『敵勢力、撤退していきます。』

 

 

 

アヤネのヘリが着陸した。

 

 

「......」

 

「 .......ん。」

 

 

「皆さん、お待たせしました──────ってどうしたんですか、そんな足をガクガクさせて────」

 

 

「いや...あ、うん、別になんでもない。」

 

 

対策委員会におけるみんなの共通認識として「アヤネは怒らせてはならない」という暗黙の了解が出来上がった瞬間だった。

 

 

 

「いやぁ、あれこそ正に本物の三流悪党のセリフだよねー。

「覚えておけー」だなんて、実際に初めて聞いたよ。」

 

「......そこの眼鏡の子がヘリコプターを奪った時にはどうなる事かと思ったけど、上手くいってよかったね、衛宮先生。」

 

なんて笑いながらムツキとカヨコがアヤネを見る。

内心は笑ってなどいない、むしろ口角が引き攣っている。

 

 

..........アヤネ、怖い子。

 

 

「それはそうとして、なんで依頼主を裏切ったんだ?アル。」

 

俺は振り返り、アルに聞いた。

 

 

「べ、別に!?

あんな奴より衛宮先生との方が仕事しやすいってただそれだけの話!!

 

悪い!?」

 

そんな顔を真っ赤にして言うアルがどうにもおかしくて。

 

 

「いいや、全く。」

 

 

と、右手を差し出した。

 

アルはその手を握り返してくれた。

 

 

 

「便利屋68、私含め全員、シャーレとアビドス対策委員会に助力するわ。」

 

「改めて、連邦捜査部シャーレの衛宮士郎だ、よろしくな、便利屋68。」

 

 

ここに再び、対策委員会と便利屋の共同戦線が成り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




くだらない展開ですが。
これが私がアヤネの心を砕いていた理由です。

本編と違い、士郎が全員立ち上がらせていますからね。

このままだとアルの出番が .....それならいろいろと利用してもう少し面白い展開にしたいと思いまして。

殺る気になったアヤネ....好き。

アリスの士郎に対する呼び方。

  • 「士郎」、「士郎先生」
  • 「シロウ」、「シロウ先生」
  • 「マスター」、「先生」
  • 「衛宮先生」、「先生」
  • 「エミヤ先生」、「先生」
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