衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
今だからこそ書ける展開もあると思うのです。
P.S. またタイトルを少しだけいじりました。
多分こっちのほうが本来の意味っぽいし、面白いと思う。
最初からこうするべきだったかも。
数ある「先生 概念作品」の中でも「登場した主人公先生に"先生"という"概念"が押し付けられ、自由に動けない」という奇抜な作品は無いんじゃないかと(自分で言うな、自分で)
「敵発見、対策委員会とシャーレの人員です!こちらに対して攻撃を開始しています!!
どうしますか!理事!」
「全兵力を持って当たれ!!」
対策委員会による攻撃後、損傷した四肢は取替で十分だった。
しかし、変形した頭部装甲だけはどう足掻いても戻らなかった。
「北と東からも呼び寄せておけ!!北方のデカグラマトン大隊もだ!!」
何故だあの男が来てから全てが崩壊した。
馬鹿、無鉄砲、現実を見ない愚か者1人に。
「エミヤ....シロウ....!!」
(ダンッ!!)
座っている座席の肘掛を拳で叩く。
「....!!北方にかなりの数の部隊を確認!恐らく一個大隊並の戦力と推定!」
「な!?北方に大部隊だと!?」
北方.....まさかS.R.......いや、あれはもう存在しない上に少数精鋭部隊。
では、レッドウィンターか?
違う、奴にはそんなツテはない。あるとすれば────
「敵部隊の識別を急げ!!!」
悪寒がする。悪寒がする。悪寒がする。
「確認できました!....っ!これはゲヘナ学園風紀委員会.....それと
「ぐっ......衛宮士郎め、どこまで勢力を抱き込んだのだ....!」
報告など聞かずとも分かっていた。
あの男の所属、いや率いる勢力がどういうものであるかも理解していた。
連邦捜査部シャーレ。
それは各学園の生徒を無制限に指揮下に置くことが出来るキヴォトスでも異例の部活。
しかし簡単には振るう事の出来ない力であり、当人は甘さを残した小童。
だからこうなる事は無いと、高を括っていた。
故に、敗因になり得るとしたら衛宮士郎という男を理解していなかったことだ。
奴がただの子供の夢を持ったままの少年であればこのような後手には回っていなかった。
「正義の味方」を名乗るその男は我々の想像を凌駕する力を持っている。
魔術?魔法だと?
誰がこの現代でそんなものの存在を信じるというのだ。
倒さなければ。
権力も実力も兼ね備えた甘さを残したあの男をこのまま生かせば我々はとてつもない代償を払うことになるだろうと予感がする。
「理事!北方の部隊は合流できません!!戦闘を開始します!」
「!!いかん!一個大隊程度では空崎ヒナの足止めにすらならん!!さらに二個大隊....いや四個大隊程.....!」
足りないか?いや確実にそれでは足りない。
『戦う相手を見ていなかったようだな、理事。』
通信が突如として入った。
「!!プレジデント!?」
『理事。
カイザーグループの理事としての全権利を剥奪し、解雇処分とする。』
「───────.ッ!!!」
『今日までよくやってくれた、が、お前の行為は目にあまりすぎた。
投降を────』
「ふざけるな!!ここまで来て投降しろだと!?」
通信を切断する。
「こうなれば、お前達も同罪だ!
生き残るためにはカイザープレジデント諸共倒すしか無いぞ!!
覚悟を決めろ!!」
退路などはない。
私の積み重ねてきた全てがこんな所で終わるなど────
「お前たち!アレの準備を始めさせろ、いざとなれば.......」
(パシュッ....!ドカァン)
『....ん、目標、撃破。』
(ダダダダダダダダッ!!)
『さぁ、次!次っ!!』
『ノノミ~行きまーす!!』
(ウィィン.....バリバリバリバリッ!!)
(パンッ!!パァァン!!ズドォォン....!)
『さて....次のお方はどちらに....』
現場に到着すればもう日は暮れていて、砂漠の荒野は闇に包まれた。
直ぐにも戦闘が始まり、
敵はカイザープレジデントの投降勧告を誰一人として受け入れず、数の差は縮まらない。
再び踏むアビドス砂漠の砂地。
一度は敗北した場所に俺たちは足を踏み入れている。
『先生、こちらも交戦を開始した。
......敵の後続が増え始めた。』
ヒナからの連絡によれば、こちら側に回されている戦力が
アルが言うにはカイザー理事も空崎ヒナの率いる風紀委員会はかなり警戒しているらしい。
風紀委員会は一個大隊並の人数らしいので相手側が回すならその四倍くらいの数だろう。
「ヒナ、持ちこたえられるか?」
『.....このくらい問題ないけど。倒してしまって良いのよね、先生?』
「───────────程々にな....うん。」
こちらに対する気遣いなどではなく本気だろう。
ヒナ達なら四倍近い兵数だろうとひっくり返すだけの力がある。
『分かった。そっちも気をつけてね。衛宮先生。』
「あぁ、また後でな。ヒナ。」
そうして通信を切った。
等間隔で砂漠の駐屯地に配置されている敵勢力を無力化。
これが出来ているのは側面から伏兵として工作をしている便利屋68と美食研究会のお陰だ。
唯一建物内に残っている兵士たちもシロコやセリカ達が無力化している。
昨日の戦闘の疲れなどないかのように、頼もしく駆け回っている。
『火力支援!行きますッッ!!』
(バリバリバリバリッ!!)
(パシュッ、パシュッ.......ズドォォン!!)
そして、逃げ出した敵の兵士達はアヤネの狩る戦闘ヘリからのミサイル攻撃や機銃掃射に為す術もなく吹き飛ばされていく。
『屋外、残敵見当たりません!皆さんの方はどうですか!』
上空からのアヤネの通信。
それにいち早くタブレットを動かして敵の配置と兵数を計算し、早瀬が報告した。
「データによるとこれ以上はここにはいないみたい!!」
.......データ?
そんなもの俺は用意してないぞ?
シッテムの箱を見ればアロナとイリヤも首を横に振っていた。
「なぁ、早瀬。
敵基地のデータなんてものを、どこから入手したんだ?」
俺の質問に慌てふためく早瀬。
「あっ、いえ!これはその.....ミレニアムの情報部から.....」
「ふーん....そんな部活があるんだな。
そういえば風紀委員会にもそんな部があるみたいだし、普通のことなのか。」
「そ、そうです!あ...あはは.....。」
何故だろう、やましい事をしているのだろうか、様子が変だ。
「ま、いっか。」
早瀬やハスミ達は敵の最終防衛ラインまでは弾薬を温存する為にほぼ動いていない。
弾薬を消費しているのは狙撃しているハスミくらいだった。
これはヒフミの率いるティーパーティーの小隊も同じ。
そして、俺も来るべき時のために魔力を温存している。
恐らく敵の本拠地での戦闘は苛烈を極める、兵力差による不利を退ける為にも、奥底に手を伸ばす。
「.....衛宮先生、ここが最後の駐屯地のようです。」
早瀬のナビゲートと作戦計画はここまで想定通り。
「了解だ。シロコ、セリカ。ノノミ、ワカモ。
合流した後、補給してくれ。
次が最後で一番長い戦闘になる。」
『『了解!』』
『こちらアヤネです。燃料が心もたないのでこの子はその駐屯地においていきます。』
「了解だ、アヤネ。」
アヤネのヘリの着地と同時に皆が建物から戻ってくる。
補給と言っても弾薬も弾倉も、アビドスや各学園から持ってきたものだけを使っている。
最初藤河達に
『せっかく駐屯地制圧するんだから敵の利用したら?』
と言われたのだが却下した。
俺たちの目的は略奪じゃない────なんて言う言い訳はアヤネの強奪したヘリコプターの目の前で砕け散った。
しかし『未整備や未確認の可能性がある弾丸などを使用してもしもの事があっては意味が無い』というハスミの意見もあり、その案は無事却下になった。
ちなみに1番嘆いていたのはユウカだった。
「せめて手榴弾くらい.....」
なんて理屈ではわかっているのだが、財布事情が心配なのだろう。
戦後にシャーレで負担する、といったらさらに怒られた。
そして移動すること数十分。
物陰から敵の拠点を目視で確認する。
前回は警戒を解かれ誘い込まれていたとはいえ、よくここまでホシノ達4人で来れたものだ。
「では先生、ここは正義実現委員会と、ティーパーティー、ミレニアム、藤河組で応戦します。」
藤河のバンの運転席にアヤネが対策委員会全員、そしてワカモが乗り込んだ。
「悪いな、早瀬、ハスミ、ヒフミ。
無理だと思ったら即座に撤退してくれ。
.....って、ここまで来たら無理か。」
もう敵の陣地目の前。
撤退する場所がどこにあるというのか。
「先生、信じてください。
私たちが負ける確率は極めて低いです。
それに、私は衛宮先生の力を信じてますから。」
弱気になった俺を早瀬が叱咤してくれた。
かつて、俺に「前に出るな」と言った彼女は、今俺を信頼し、頼りにしてくれている。
「サンキュ、早瀬。」
勝率なんかよりよっぽどそっちの方がやる気が入る。
「あう...大丈夫でしょうか.....ここで倒れてしまっては私、ナギサ様に合わせる顔が....」
「大丈夫ですよ、ヒフミさん。」
ハスミが励ますヒフミの頭の上に手をポンと優しくおいた。
「大丈夫だ。ヒフミは優しい女の子だけど、やる時は容赦なく戦える子だ。
多分この中で1番しぶといと思うぞ?」
「.....え?そうでしょうか?」
目をぱちくりさせるヒフミ。
となりのハスミからは少し睨まれ気味だ。
「衛宮先生、それは励ましの言葉として相応しいのですか?」
「うぐっ.....いつも鋭い正論痛み入ります....今度ちゃんとした褒め方も勉強してくるよ。
でも。粘るとかしぶといとかそんなんじゃなくて、皆怪我なく圧勝して帰れる方がいいんだけどな。」
「それは当たり前です!」
なんて、やっぱり容赦のない早瀬だった。
「士郎!!さっさと乗って!!」
セリカに大声で呼ばれ皆に別れを告げる。
「じゃ、行ってくる。」
そう言えば、皆は快く、送り出してくれた。
「「行ってらっしゃいませ、先生。」」
車の助手席に乗り込んだ。
ここから先は先程とは違う。
完全なる強行突破である。
「ねぇ、士郎!本当に大丈夫なのよね!?」
「....多分な。」
俺の確信を得ない答えにイライラするセリカ。
「えぇ....多分じゃ困るのよ!」
「大丈夫だ。この手が通用するのはゲヘナ自治区で確認済みだ。」
どうするかと言えば、普通の人が聞いたら無謀な作戦───否、作戦とも呼べない突飛な行動。
何せ、このバン一台フルスロットルで敵防衛戦を突っ切り、ホシノの居るカイザーPMC拠点まで突っ込もうと言うのだから。
「.......まぁまぁ、セリカちゃん。他に方法もありませんし。」
「....なんかさ、アヤネちゃん吹っ切れすぎて心配なんだけど。」
「大丈夫さ。昨日見ただろ?」
「.....正直あれだけの敵から掃射されたら数秒も持たないと思うんだけど.......」
当たり前な話、このバンは普通の車とは言えない。
何故なら、昨夜のうちに藤河達と総出で分解し、各パーツに強化の魔術を叩き込んだからだ。
車体強度は勿論のこと、速度は恐らく170kmは出るだろう。新幹線より少し遅いくらいだ。
当然この作戦を提案した時には全員に却下された。
が、実際に鉄板を強化した物をアルに撃ってもらい、貫通するどころかはじき飛ばしたのを皆が見て少しは納得して貰えたらしい。
撃った本人も『こんなのデタラメよ!』と言っており、この方法以外に俺達がカイザーPMCの基地にたどり着く方法もなく、採用された。
ついでにアルのプライドに傷がついたらしいので、後でどうにかしてやらないといけない。
ふとこれまでのことを思い出す。
何が起きたところで、元の世界では絶対に経験しなかったであろう日々。
「先生、ってこんなに大変だったんだな。」
なんて独り言をつぶやく俺をみんなが笑った。
「いいえ、士郎さん、あなた様は働きすぎなのです!」
「こんな事が出来るのはシロウだけ。」
「そうよ!こんな馬鹿みたいな作戦思いつくのあんただけよ!」
「......なんか貶されてるのか褒められてるのか分からないな....。」
なんて肩をすくませた俺の首筋に冷たいペットボトルが当てられる。
「ひっ!?」
「何を言ってるんですか~先生。この後始末の方がよっぽど大変なのでは?
それに────」
「それにまだ終わってません!
ホシノ先輩を取り返して、アビドスの土地も返してもらって、やっと『疲れた』って言えるんです!!」
ノノミとアヤネに窘められた。
「.....そうだな。行こう。皆。」
「「はいっ!!」」
(ブロロロロロッッッ.....)
アヤネがアクセルペダルを全開で踏み込む。
一瞬、窓の向こうで皆が手を振っていたように見えた。
加速する。
とんでもない重力で体が座席に押し付けられる。
ガタガタと揺れる車の中。
文字通りの弾丸の雨が横殴りでフロントガラスに直撃すした。
(バシィッ!!)
(ガキィィィン!)
アヤネは目を背けず、前だけを見ていた。
目指すは基地。
それ以外には用はないそこを退け、と。
振り返ることは出来ないが後部座席に座っている皆もそうなのだろう。
『タイヤを狙え!!』
と聞こえてくるが、残念ながら銃弾や機銃掃射ではそのタイヤもビクともしない。
ぐんぐんと近づく基地との距離。
しかし、敵も容易くは通そうとはしない。
「衛宮先生!!戦車です!!!」
目の前には開けた敵の隊列。
そしてその裂け目に複数台の戦車。
その砲塔が、こちらを捉え、厚みのある砲弾が発射された。
それは放物線を描き、こちらへと落下してくる。
まるで流れ星のようだ。
対弾装甲並に強化したとはいえ、戦車の砲弾を喰らえばひとたまりも無い。
「────
「"
直撃間近で盾を敷く。
(ガキィィィン!!ガコォォン!!)
その7枚の花弁は車体を包むように、戦車の砲弾をいとも容易く防いだ。
「士郎!それじゃアヤネちゃんが前、見れない!」
セリカが後部座席から身を乗り出す。
そう、花弁は俺達の目の前を塞ぐように立ちはだかる。
つまり、運転手のアヤネにはもう前は花弁の放つ淡い赤色の光しか見えていない。
しかし、関係ない。
こちらには一切の障害物を無視する鷹の目がある。
「アロナ!!イリヤ!!戦車と車の相対位置を出してくれ!」
「わかりました!!」
「いいわ!」
イリヤが目を通し世界を俯瞰し、アロナへ引き継ぎ、アロナが渡された情報と車の相対速度、戦車の砲弾による直撃による減速及びその他諸々を物理演算を経て叩きだす。
タブレットのマップに浮かび上がる2つの赤い点。
戦車は下がっている。
当たり前の反応だろう。
見た目はただの車。
しかし、その外装は弾丸を弾き返し。
迫撃砲の雨をかいくぐり、砲弾すら受け流す。
戦車の搭乗者の心境を表すなら恐怖。それも理解出来ない、という意味合いでの恐怖。
「アヤネ!時速50kmまで減速してくれ!!」
「わかりました!!」
敵の戦車は揃って後退していく。
「逃がしません!」
アヤネが車体をカーブさせ、ノノミが扉を開き、銃撃を開始した。
(バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!)
もう片方の扉からはワカモが飛び降り、1人敵陣へ駆けていく。
「あなた様!お先へ!!ここは私が!」
「あぁ────頼んだぞ!ワカモ!!」
回収している暇はなく、なんなら頼もしいまである、彼女。
こちらの車両と違い、戦車の装甲はノノミやワカモが放った弾幕によって容易く貫かれた。
その車体は燃え上がり、砲塔の先まで火が周り始める。
アヤネが車を再度走らせ、そのまま閉まる門ギリギリをすり抜ける。
こうして俺たちは敵の本拠地に侵入した。
「目標の座標地点に到着しました!!
この辺りに、ホシノ先輩が閉じ込められているはずです!
この周囲のどこかに....きっと!!」
全員が止まった車から飛び降りる。
何も指示を出していなくても分かるのだ。
今から行うのはこの作戦の意義であり意味。
ホシノの捜索および救出なのだから。
「衛宮先生...!あれは?」
ノノミが指でとある建造物らしき何かを指し示した。
それは、砂に埋もれた校舎。
「何よ....ここ、学校?
間違いないわ。これ学校よ。」
セリカは周囲を観察し発言して、その認識が全員共通となった。
「砂漠の真ん中に学校.....多分これは本来のアビドス高等学校。」
「あぁ、正解だ。砂狼シロコ。」
シロコがボソリと呟けば、聞きなれた声で返事が返ってきた。
そこに立っているのは兵を引連れたカイザー理事だ。
スマートなフォルムをしていた頭部は1部が潰れている。
「あんた.....そんな面で良く顔を出せたものね。」
笑い飛ばしているが、セリカが理事を睨みつける。
「よくぞここまで来たものだ。シャーレの衛宮士郎とその生徒達よ。」
いつもの事ながら腹が立つ。
今になっても、コイツは彼女達を見ていない。
「ここに来たのは対策委員会の生徒達の意思だ。
いい加減戦う相手を認識したらどうなんだ、カイザー理事。」
「......」
奴は何も話さず手を上げる。
すればいたる所からカイザーPMCの機械兵士が出現する。
「っ!当たり前ですけど敵の増援、多数です!
パッと見た限りこの基地において防衛に回っている以外の全兵力。
カイザー理事はここで総力戦に持ち込むつもりです.....!!」
アヤネがタブレットを開き周囲の状況を確認した。
具体的な数字は言わない、つまり言っても意味が無いのだ。
総戦力なのだから。
奴はアヤネの言葉を無視し、俺に話しかける。
「砂漠化が進行し、捨て去られ、忘れられたアビドスの廃墟。
そう、ここが元々のアビドスの中心だったのだよ。
かつてキヴォトスで一番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋まっているのだ。
アビドス生徒会が邪魔だった私は、ゲマトリアと手を組み。
小鳥遊ホシノ排除の要求としてここに実験室を立てることになった。」
「......」
「そんな話はどうでもいい...。」
「そんなことよりホシノ先輩はどこですか!?」
セリカは無言で理事に圧をかけ、シロコは過去の話を一笑に付し、ノノミは責め立てる。
「ふん、あの馬鹿な副会長殿はあの建物にいる。」
奴は校舎付近にある、異質な建物を指さした。
否、建物と言うより地下への入口だ。
真っ黒い、石のような鉄のような地下へと続く階段。
「彼女の元に行きたいのであれば、私たちの事を振り切って行けば良い。
その戦力で出来るのなら、の話だがな。」
「.......この戦力差ではいくら何でも厳しいですね。」
敵兵士は総勢2000人はいる。
問題ない。
俺はスーツの上着を脱ぎ捨てた。
「皆、ここは──────」
(ズドォォォォン!!!)
この場を引き受けようとした矢先。
閃光と爆発が俺達の目を塞いだ。
「こ、この爆発は!?」
「じゃーん!!やっほ~☆メガネっ娘ちゃん!」
そこに居たのは便利屋68。
敵後方で暴れるよう、指示を出していた彼女たち。
「アル!!」
「あら、先生、お困りの様子ね。」
「先生!お邪魔します...!」
「ムツキ、カヨコ、ハルカ!?」
アルとカヨコが俺たちの前に背を向けて立ちはだかる。
「やーっと追いついたー.....けどなんかこれ、皆集まってるし、もしかして修・羅・場って奴~?」
「こっそり助太刀しようかと思ったけれど、そう上手くいかないものね。」
「まさか....この展開って。」
「ん....理解した。」
カイザー理事と対峙する便利屋68を見て、シロコ達は何かを察したようだった。
「対策委員会──────ここは私たち───」
「シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネ。ここは俺とアル達に任せて何としても全面突破しろ!」
「───────────────」
「あ、アル様!!?しっ、しっかりしてください!!アル様!!」
アルの決め台詞に被せたようで悪いが指示を出す。
プライドの次は完全に魅せ場を潰した。
彼女は白目を向いている。
それを置いて問うシロコ達。
「何言ってるのシロウ。」
「そうよ!あんたが来なくてどうするのよ!!」
「いや、悪いけど俺も残る。
お前たちもそうなんだろうけど、ずっとカイザー理事をぶん殴りたいと思ってた。」
ぶん殴って、目を覚まさせないと気が済まない。
「ひー。おっかないね~先生♡」
ムツキが抱きつくように俺の横に並んだ。
「......社長、せめてしっかり見送らないと。」
カヨコに背中をさすられ、意識を取り戻したアル、あぁ、よかった。
「え、えぇ.....行きなさい!対策委員会!」
ちょっと照れたように頬をかくセリカ。
「わかったわよ!!でも必ず無事でいること!!いいわね!?
あんた達!士郎の事頼んだからね!!」
「このご恩は必ず!」
「ん、シロウ。後で待ってるから。」
彼女達は全面に射撃を開始し、地下への階段を目指した。
「させると思っているのか!撃て!!」
「それこそさせるかってんだ!!!」
上空に投影した大剣を、セリカ達の背中を守るように砂地に刺した。
「チッ.....」
「わーお!やるじゃん先生!じゃあ始めていいよねッ!!」
(バァン!!バリバリバリバリ!!ズドォォン)
ムツキの言葉と共に、便利屋68のメンツ全員が揃って銃撃を開始した。
アリスの士郎に対する呼び方。
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「士郎」、「士郎先生」
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「シロウ」、「シロウ先生」
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「マスター」、「先生」
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「衛宮先生」、「先生」
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「エミヤ先生」、「先生」