衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
アル達が撃ち合いを始めた弾丸の嵐の中でもなお、俺とカイザー理事は1歩も動かず、互いを睨み合った
不意に奴が口を開く。
「正直貴様を侮っていた。」
「───え?」
奴は不満そうに続けた。
「どのような死線をくぐり抜けてきたのかは知らんがお前は肝が座っている。
判断能力も一流だ。
その甘さと強さを両立させ、「正義の味方」などという公衆の奴隷を目指す位にはな。」
奴は俺を認めた。
認めたはいいものの、認めている自身に腹が立っているらしく、嫌味めいた言葉を俺に浴びせた。
「...ご高説どうも。
「正義の味方」がどういうもんかは、アンタに言われなくたってわかってる。
その成れの果てをこの目で見たからな。」
「フン、まるで未来の自分でも見たような口ぶりだな。
なら分かるだろう」
馬鹿にするような視線。
何が可笑しいのか、笑い飛ばした。
「今度はこっちの番だ。
アンタは強者を「望む結果を得られる者」って言ったな。
俺はそうは思わない。
強者ってのは目立ち安い。
その分敵も作りやすいけど、その敵から当然のように周りの皆を守れるヤツを強者って言うんだ。
腕が立つだけの奴や力だけあるやつはただの暴れん坊だ。
欲しい玩具を与えられて周りに自慢しているだけの子供に過ぎないんだよ。」
言葉を言い終えるとカイザー理事の態度が変わった。
「 ......貴様は私が子供だと言いたいのか?
青二才の分際でよく吠える。
魔法使いとて所詮撃たれれば死ぬ人間だろう?」
彼の持っている拳銃が俺に突きつけられる。
「お前、いつまで勘違いしたままいるんだ。
お前の敵は本来俺じゃない。いまホシノを助けに行ったあいつらだ。」
「ハッ、それこそ寝言は寝て言え。
あの娘達とて、お前がいなければ何も出来ず、とっくのとうに学校を捨てて───」
「あいつらはそんなヤワじゃない。
仮にもし、ここに居たのが俺でなかったとしても。
アイツらは立ち上がったし、ホシノを助けただろうし、歩みも止めなかった。
俺はその手助けをしてやっただけだ。
むしろ俺はアイツらに助けられてばかりいる情けない大人だよ。」
「謙遜もそこまで行くと嫌味だな。
まぁ、いい。武器を作る前に私が引き金を引き、貴様は死ぬ。
教え子が倒れていく様を見せてやろうと思ったがそれだけの余裕もない。
では、さらばだ。衛宮士郎。」
(パァン!!!カキィン!!)
奴の放った銃弾は、いとも簡単にアロナが跳ね返した。
『衛宮先生、ご無事ですか!?』
「なっ!?」
「.......俺にはアロナがついてるし、アル達だっている。
でもお前はどうなんだ?」
俺の言葉を聞かず引き金を引き続けるカイザー理事。
「何故だ!何故それほどの力を欲してもいないお前が────」
「力が欲しい、なんて当たり前だろ。
誰だって力がなければ何も守れないんだから。
でもな、カイザー理事。おれは自分が強いなんて1度も思ったことは無い。」
「─────────────何?」
「俺より強いやつなんて沢山いた。
俺が弱かったせいで守ってやれなかった奴もいるし、助けたくても助けられなかった命があった。」
「─────貴様の都合などどうでもいい!」
カイザー理事は拳銃を投げ捨てた。
ここまで来てわかった、カイザー理事は諦めたのだ。
自分の望み、願い。
力がなかったせいで最後まで貫けず、心が折れている。
彼が何を望んだのか、何が欲しかったのかは分からない。
されど───
「なぁ、諦めなかった奴がたどり着いた境地を、見たことあるか?
そこは地獄だ。
理想に裏切られれば、得たものがあっても、自らの歩んだ道は間違いだと勘違いしてしまうような。
俺だって分かってる。
全てを救うことなんて出来やしないって。
多分解ってるんだと思う。
大人になったから、それが現実なんだって、理解してる。
誰かが犠牲にならなきゃ救われないから俺は身を呈して誰かを助けようと足掻き続けてきた。
だから多分俺は、強者にはなり得ないんだと思う。」
右手を伸ばす。
掴みたいものがあった。
いて欲しい人達がいた。
ずっと、それを見ないふりをしてきた、振り返らずに前だけを見てきた。
それでもやはり進む事に救えない人々がいる。
それはたまらなく嫌だ。
嫌だった。
「お前もそうだった筈なのに、どうして歪んでしまったのか。」
俺がカイザー理事に向けるそれは、もう怒りではなかった。
限りなく憐憫に近い、何か。
そして、やはり倒すべき敵ではなく、救うべき相手なのでは無いかと。
カイザー理事の見るべきは対策委員会ですらなく、己だったのではないか、
その心をすくい上げるためには────
やはり、諭すしか無いのだと。
俺の全身全霊を持って、その怒りに応えるしかない。
「ちょっとちょっと!!」
肩を叩かれる。
「アル....。」
「言いたいことがあるんならはっきり言えばいいじゃない。
気に食わないなら気に食わないって言えばいいし、言葉がダメなら殴ってでも聞かせればいいのよ。」
俺の迷いはアルに両断された。
「先生、ここはキヴォトスよ?言葉だけで解決しないから私達はコレを持ってるんじゃない」
「そっか、倒すも倒さないも、結局は同じなんだよな。
ありがとう、アル。今ので、吹っ切れた。
アロナ、イリヤ。少しだけ、守りを頼む。」
『....?は、はい。』
『いいわ。シロウ。魔力はまだ余裕がありそうだし。』
祈るようにしゃがみこむ。
「え、衛宮先生!?どうしたのよ!?」
「待って!社長、様子を見よう。」
俺に近づいたアルをカヨコが引き止めてくれた。
その様子に安心し、一言目を口にした。
「─────I am
「─────なんだ...?何をするつもりだ!撃て!撃ち殺せ!」
その言霊を戦闘行動と、捉えたのか、カイザー理事は一斉射撃を命じた。
その弾をアロナとイリヤが防ぐ。
ハルカが前面に立ち、その射撃に対して反撃した。
「邪魔させない邪魔させない邪魔させないっ!!!」
(バァン!!バァン!!!)
「──── steel
今度こそ、自らのために、その言霊を一つ一つ呟く。
しかし、もうかつての言葉は機能しない。
衛宮士郎のいる世界そのものがもう別物になってしまった。
故に、あの剣の丘も変わっている。
なら自ずと働きかける為の言霊も変わるのは必然だ。
「─────
徐々に移り変わる世界。
真っ暗だった空は、日が登ったように青く変わる。
それを見るなりここに居た全員の戦闘行動及び銃撃が、止まった。
カヨコの声がする。
「何.....これ.....」
目の前で次々に実態化する剣達。
それが大地に刺さる事に新しく緑の
怯えるアルとハルカ。
大丈夫だ。
俺の世界は間違ってもお前たちを傷つけたりしない。
「────With stood
lonely
ギルガメッシュと戦った時とは違う。
魔力のバックアップなどない。
イリヤはああ言ったが、1度も使ったことがない為展開させられるかどうかも分からない。
試し無しのぶっつけ本番であることしか、同じ点はない。
魔力は溢れだす。
作りかけの
「───I
Some
真名を告げれば炎が走り始めた。
瞬間、大地も空気も自身さえもが消え、そのまた全てが再構築された。
その炎は瞬く間にこの場にいた全ての人間の視界を遮り、瞳を開けた時には砂漠などありはしなかった。
あるのは荒れた大地。
異質なのはその大地に乱立する剣達だろう。
理解しきれないのか、カヨコですら腰を抜かして両手を地面に着いていた。
「俺に力なんてない。
ただ出来るのは自分の心を形にすることだけだ。
本来銃どころか、剣なんてのもまともに作れるほど器用なわけが無いんだから。」
ただ無限に広がる剣の丘。
それが衛宮士郎の世界。
「これは固有結界、心象世界を具現化し、世界を上書きする大禁呪。
まぁ、魔術を知らないお前に言ったところで世話無い話だが。」
「 ..........」
アルの瞳は輝いている。
それどころか辺りをずっと見渡して、剣を観察していた。
「このキヴォトスにおいては特になんの意味も持たない、お前たちにとってはガラクタ同然の剣達だ。」
先生となった衛宮士郎はもう戦う者では無い、教える者になった。
故に、あの世界において、無限の剣など役に立つはずもない。
「だがな、理事。
剣が銃に絶対に敵わないなんて、道理はないんだ。」
「.....は、ハッタリを────」
ここまでしても、奴は
「試してみるか?どれだけ風に晒されようと、砂に塗れようとこいつらが、錆ることも切れ味が落ちることはない。」
干将・莫耶を手に取り、奴を睨みつける。
「
お前達が相手にするのは無限の剣だ。
恐れずしてかかって来い。」
アリスの士郎に対する呼び方。
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「士郎」、「士郎先生」
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「シロウ」、「シロウ先生」
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「マスター」、「先生」
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「衛宮先生」、「先生」
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「エミヤ先生」、「先生」