衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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GEHENNA Aru's Interlude「ヴィラン」

『.....先生聞いてるの?。』

 

「あぁ、聞いてるぞ、カヨコ。」

 

俺は公衆電話を掛けてきた相手から相談を受けていた。

 

「アルの様子がおかしいってんだろ?

何がどうおかしいんだ。

急に冷酷冷徹アウトローの道をバリバリ進み始めた、とか?」

 

それはそれで本人にとっては嬉しいだろうが、教師────いや、正義の味方としては何ともいえない。

 

 

『そんな事だったら電話してない。

あとその言い方はどうかと思う。

 

.......ずっとブツブツ言ってるんだ。何か呪文みたいに。』

 

 

「──────────まさかな。」

『.....正直気味が悪くて、士郎からも注意するよう言ってくれないかな?』

 

士郎....?

なんというか最近シロコにしろセリカにしろ、かなりフレンドリーに接されている。

 

確かに距離が近いというのは心を開いている証拠であり、いざとなった時にも頼ってもらえる。

 

「お前も名前で俺の事呼ぶんだな。まぁいいけどさ。」

 

『.....もしかして名前にコンプレックスがあるとか.....だったりする?』

 

と、こちらのことを心配するカヨコ。

 

彼女は強面のせいで誤解されがちだが、人一倍周りを観察し、気にかけているぐらい優しい健気な少女だ。

 

「いや、そんな事ないけど、名前で呼ばれると先生としての威厳が.....」

 

確かに天雨に「今更体裁だけ保っても」とは言ったが正直先生を辞めるつもりなど毛頭ない。

ので、出来れば先生として生徒からは扱われたい所なのだが....

 

 

『.....はぁ....

生徒の忠告を聞かず無茶して怪我して死にかけてる人に、そんなものあると思う?』

 

「.....すみませんでした。」

 

前言撤回。

怒らせると怖いのはアヤネと同じだ。

 

『まぁでも大人にも体裁ってのがあるもんね。なら他の子がいる前では「先生」って呼ぶことにするよ。』

 

なんだその、人前では生徒と教師、プライベートでは男女の関係、みたいな。

恥ずかしいので...むしろそっちの方がやめて欲しい。

 

「いくら信頼されてるって言ってもなぁ...なんで皆揃って名前呼び捨てで呼びたがるんだ?

もう好きに呼んでくれていいけど....。」

 

カヨコから新しい事務所の電話番号を教えて貰って電話をかける。

 

『もしもし、こちら便利屋68の────。』

 

「アルか?」

 

『あら?その声は先生ね、こうして電話をかけてくるなんて、珍し──

.......私、先生に連絡先教えたかしら.....。』

 

アルが俺の声を聞いて電話相手を予想する、ということは画面に電話番号などがでない、又はそもそも画面がないタイプなのかもしれない。

まぁ、まさか、いくらなんでも黒ダイヤルの電話機などはないだろう。

 

「俺が電話かけてくるのは意外か?」

『いいえ、衛宮先生なら何時でも歓迎よ。

それよりもシャーレの「正義の味方」である衛宮先生が、「キヴォトス一のアウトロー」であるこの陸八魔アルになんの御用かしら。』

 

かなり直球だ。

....正直、俺はアルの性格や思考を把握しきれていない。

わざわざ「貴方は法的機関の人間」「自分は悪人」と明言するのはどうしてだ?

この言葉がただの格好をつけた挨拶なのか、それとも俺を嫌がっての事なのか、はたまた単純に不思議に思っているのか。

 

「......それはどういう意味なんだ?」

 

『えっ?』

 

とりあえず自分で考えても分からないので聞いてみる。

まぁアルが「嫌な事は嫌」と言える生徒であることはハッキリとしている。

何てったって、紆余曲折あれど、最終的にはカイザー理事からの依頼を

蹴ってまで、アビドス高校の味方をしてくれた奴だ。

 

まぁ正直嫌われているとまでは考えていないが、俺は1度彼女に対して剣を振りかざしている。

苦手意識があっても何もおかしくないのだ。

 

「いや、わざわざ会話の冒頭に「私と貴方は敵同士ですよ」って付けるのはなんなんだろう?って思って。」

 

『....そ、そうよ!あなたと私は敵同士よ!

再度確認したの!自分で!!

そ、それに衛宮先生だって、私と悠々連絡してるのがバレたら不味いんじゃないかしら?』

 

......解せぬ。

 

「いや、だってシャーレ(うち)にはワカモだっているぞ。

.....まぁあいつはちゃんと書類を通した上で預かってるんだが。」

 

キヴォトスの犯罪を取り締まるヴァルキューレ警察学校、その責任全権を預かるのが連邦生徒会の防衛室長、不知火カヤ。

あいつはかなり話のわかるやつでこちらで更生したい生徒がいると言ったらあっちで調整してくれた。

 

まぁ、ワカモに関しては何度も矯正局から脱走している為、手に余っていたと言うか悩みの種だったのもあるのかもしれないが、藤河達の成功例の報告をきいて連邦生徒会の会議においては正式に法案を提出してくれた。

 

いつも笑っていて品行方正だし、正直あいつみたいな良い奴ばっかりだったら良かったのにとか、思ってしまう。

 

とは、言え人は十人十色なんて例えもあるわけだが、十色なんて今思えば少なすぎるような気もする。

んなわけで、薔薇が好きな少女がいれば黒百合が好きな少女もいる。

 

だからハードボイルドに憧れている少女がアウトローを目指すのも─────悪く....ない.....。

 

ダメだやっぱり悪い奴に憧れるなんて言う気持ちは尊重はするものの、わからないし理解できない。

 

『こう、戦隊モノにだってあるだろ?ヒーロー達とヴィランが土壇場で和解して協力する場面。

そんな感じだ。』

 

正直そんなものは見た事ないので高校時代の後藤から聞いた話だ。

 

まぁ、ガキの頃の俺には特別ヒーローが居たもんで、そんなもん見なくたって目の前にいたんだから俺には必要なかっただけの話。

 

『た、確かにあの時はそうだったけれど、ほ、本当にいいの?

迷惑だったりしないかしら....?』

 

「そんなことは無いぞ。お前だってもうシャーレで受け持っている生徒なんだから。」

 

『そ、そうなのね....じゃあ今からそちらにお邪魔したりしても...

構わないのよね?』

 

「いいぞ。俺もお前と話したかったしな。」

 

 

 

 

 

 

 

そうして、俺はアルをシャーレのオフィスに呼び出すことに成功した。

したのはいいのだが....。

 

「先生!私を弟子にしてくれないかしら!!」

 

「はぁ?」

 

 

第一声がこれなので困ったものだ。

なんの弟子かなど、聞かなくなってわかる。

しかも本気も本気だろう、さてどう断ったものか。

 

マコトの時もそうだが、教えるつもりは毛頭ない。

 

確かにアルが求めるアウトローなハードボイルド像って言うのは正真正銘衛宮切嗣の姿に他ならない....。

 

「悪いんだけど、お前だけに限らず、魔術は誰にも教えるつもりは無いんだ。」

 

「....やっぱりそう来るわよね....。

でも、アビドス砂漠で何をしたのかくらい教えてくれてもいいんじゃない?

魔術や魔術師って言うのがどういうものなのか興味があるの!

それに対策委員会の生徒から聞いたわ!

 

先生元いた場所では命を懸けたデスゲームをしてたらしいじゃない!!」

 

ソファーに座っていたアルは興奮気味にテーブルに手をついて身を乗り出した。

それはもう彼女と俺の鼻先がくっつきそうなくらいの距離。

 

「うわぁっ!?

ストップストップだ!!アル!」

 

俺は肩を掴んで遠ざけた。

内心は子供であるが、その容姿は美人そのもの。

そんな彼女がタイガーストーンのような目をキラキラ輝かせて急接近してくるんだからもうお手上げだ。

俺の脳みそはテンパって破裂寸前の風船だ。

 

 

「あ、あら?ごめんなさい。近かったわね....//

つい興奮してしまって....」

 

「お前は子供かッ!」

 

いや、うん。間違ってない。

アルはまだ子供だ。

 

むしろ俺が、その容姿に大人の色気を感じてしまっただけで─────

 

「ったく.....何考えてんだ俺。」

 

この位で動揺するなんてまだまだ修行が足りないな。

 

「そ、それで?弟子入りは諦めてもいいけれど先生の昔話を聞かせてもらうまで私はここを動かないわよ!!」

 

「....そりゃ大変だな.....。」

「それで!先生の知り合いの魔術師にアウトローは居なかったのかしら!」

.....

 

アウトローつうか、魔術師なんて人の道からそれた様なもんだから皆アウトローみたいなもん─────いや、待.....てよ...。

 

「─────────」

「そ、その顔、居るのね!?先生が身の毛のよだつような冷酷で、残酷な魔術師が!!!」

 

 

居るには、居た。

いや、俺はそいつを見ていない。

 

「.....聞いたのは、そいつが自身の望みや願いのために、どんな手段だろうと、相手だろうと上手い事立ち回ったり、人質をとったり、外道な事をしてまで勝利をもぎ取ろうとしたって話しかしらない。」

 

「そ、その人は衛宮先生とどんな関係だったの!?」

 

 

.......

「俺の──────」

 

口にしたら、崩れてしまいそうな。

イリヤや言峰から聞いただけで、俺の知っている、その人 本人とはかけ離れすぎていた。

 

だが、いい加減に認めなければ。

「正義の味方はエゴイスト」だと、言っていた当人が一番それに近かったということを。

俺の求めている「セイギノミカタ」とはもう一切、相容れない憧れの原初を──────。

 

 

「そいつは.....俺の親父だったんだ。」

 

「衛宮先生の....お父上?」

 

アルは目を丸くして、されど興味深そうに聞いていた。

 

「俺の親父は勝つためなら「誰かを害する人を倒す為なら手段を問わない」奴だったらしい。

敵にはどこまでも冷徹で冷血な手を使って─────殺したらしい。」

 

目をつぶって言峰から聞いた「衛宮切嗣」の像を語る。

自らの憧れの象徴を否定しながら、肯定する矛盾を孕むように......。

 

「───────。」

放心したように、アルも俺の話を聞いていた。

 

「でもさ、子供心そのままのあの時の俺にとっては、諭す時は優しくて、怒る時は厳しくて。

自由奔放の言葉を体現した、だらしの無い大人でさ。

わざわざ引き取った息子を1人置いて勝手に旅行に出かけるような奴だった。」

 

「え!?それ全くアウトローじゃないじゃない!」

 

「あぁ。

でもアウトローであることと、自分らしさは両立出来る。

だから──────」

 

 

 

『衛宮先生にだって、理想の自分がある。

「正義の味方」とか「子供を守る大人」とかさ。

だから私や、皆の言葉ばっかりに縛られないで。

 

衛宮先生は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「だから、アルはアウトローって概念だけに縛られずに、()()()()()アウトロー像を探せばいい。」

 

「私だけの....アウトロー。」

 

「あぁ、下手に冷酷冷血なハードボイルドよりそっちの方がずっともっと道は険しいし

 

なによりカッコイイと思うぞ。」

 

そうだ。

俺には俺だけの「先生」や「セイギノミカタ」があるように。

 

「カッコイイ...私だけのアウトロー....」

 

息を呑んで、アルは────

 

「やるわ!!きっと私だけのアウトローを見つけてみせる!!」

 

 

 

 

 

 

アリスの士郎に対する呼び方。

  • 「士郎」、「士郎先生」
  • 「シロウ」、「シロウ先生」
  • 「マスター」、「先生」
  • 「衛宮先生」、「先生」
  • 「エミヤ先生」、「先生」
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