衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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ABYDOS Nonomi's interlude 「責務(すべきこと)権利(したいこと)

定例会議に呼ばれ、アビドス高校に訪れた。

───のだが。

 

「....不味いな....一応間に合うように出たはずなんだけど...」

 

電車が2時間も止まり、大遅刻。

 

「まぁ、こんな日もあるか。」

 

走って階段を駆け上がり、目的地が見えたところでそれは起こった。

 

 

「い い 加 減 に し て く だ さ い ッ ! !」

 

「い い え、や め ま せ ん ッ! ! 」

 

 

2人分の怒声が教室から聞こえてくる。

 

声の主はアヤネと....ノノミだ。

不安になってドアを慌てて開く。

 

「お、おい、どうしたんだよ。」

 

会議中なのか、5人揃って話し合いをしていたのだろう、椅子から立ち上がり真剣な表情で互いを見つめる2人を、その他のメンバーが心配そうに見ている。

 

この2人が言い争う姿は初めて見た。

正直対策委員会ではあまり見ない組み合わせでもある。

 

普段から真面目で聡明なアヤネ。

のんびりとした印象の優しいノノミ。

 

何をどうしたら口論になるというのか。

 

 

「ノノミ先輩、今がどのような時期か分かっていますか!」

 

「だからこそ、です!皆さんは頑張りすぎだと思います!」

 

 

撃ち合いになる、という程の雰囲気では無いのでとりあえず状況確認から始めよう。

 

「なぁ、ホシノ何があったんだ?」

 

隣に座って何があったかを聞いてみる。

 

「あ、先生、おはよー。

 

いや~、「借金返済計画」のお話なんだけどさ。

私たちが提出したのはアヤネちゃんに却下されるのはいつもの流れだったんだけどね。

 

ノノミちゃんが──────」

 

ホシノ曰くノノミが出したものはもはや「借金」とは一切何も関係なく、ただ「週末の旅行計画書:ピクニック」というものだったらしい。

 

「ん、ノノミの言い分にも一理ある。

確かにここ最近はずっとバイトか行政しかしてない...。」

 

「わ、私もだわ....。」

 

シロコもセリカも表情から疲労が見て取れる。

 

 

 

 

 

一時的とはいえ、アビドスの土地が戻ったことは彼女たちに負荷を与えていた。

 

 

ゲヘナを見てきたからわかるが、普通1つの学校が治める地区は大人数の生徒会メンバーがいてこそ行政が成り立つのだ。

それを、たった5人でどうにかしているのだから、体力と時間はともかくメンタルまでもつわけがない。

 

かと言って、自治区を手放せるわけも無い。

人が離れたとはいえ、治権を誰に託すというのか。

アビドスの自治権を取り戻すなら、まず環境と人の出入りを改善してから。というのが正しい流れだったのだ。

 

()()()()()()()()が今や彼女達の最大の重荷になっていた。

 

故に、この間の藤河達の一件に繋がる。

 

対策委員会は藤河達をアビドスの正式な生徒として迎えようとした。

それは藤河達への感謝の気持ちだけではなく、行政員としての戦力を見込んでのことだった。

しかしその本心が伝わることはなく「中途半端は嫌だ」と言って藤河は断ってしまったのがこの間の一件。

 

行政(これ)ばかりは、他の学校の生徒を頼る訳にはいかず、

出来ることといえばアビドス生徒会の顧問である俺が業務処理を受け持つことくらいである。

 

「確かに双方の意見、両方とも筋が通ってるからな....」

 

確かにアヤネは溜め込む分、怒った時の反動は物凄いとはいえ、基本的には冷静だ。

対してノノミはいつも穏やかである。

 

この2人が眉をひそめて大声を出すのだから、ストレスが溜まっているのは疑いようのない事実。

彼女達には休息が必要だ。

 

かと言って、俺が彼女達の代わりを務められる訳ではない。

 

「とりあえず、一息入れよう。

ジャスミンとカモミールどっちがいい?」

 

持ってきたバックから魔法瓶を取り出した。

 

何故この選択かと言うと両方とも自律神経の調整によるリラックス効果を与えてくれるとされるものだからだ。

 

聞くと、大半はジャスミン茶を希望する中、ノノミだけがカモミールを選んだ。

 

「えー、ノノミちゃん、カモミールって確かあれでしょ?薬みたいな味がする紅茶。

ジャスミンの方が良くない....?」

 

ホシノの質問に彼女はこう答えた。

 

「皆さん、カモミールの花言葉を知っていますか?」

 

みんなこぞって首を振る、もちろん俺も。

 

 

「えっ!?

衛宮先生はこうなることを予測してこれを持ってきてくれたのではと思ったのですが ...」

 

何故か苦笑いしているノノミ。

 

「カモミールの花言葉は私たちにピッタリなんです。

 

「忍耐」「逆境により生まれる力」

 

─────そして、「仲直り」」

 

「あ────。」

 

香りを楽しんだ後、ノノミは上品に口をつけて茶を飲み始めた。

 

「......うん、美味しいです。衛宮先生。」

 

 

 

 

「し、士郎先生、私にもカモミールを!」

 

ノノミのその様子を見て、そう言い出したのはアヤネだ。

 

「士郎!私も!」

 

「ん、初めて飲む。」

 

「うへぇ.....じゃあせっかくだし。

おじさんも頂こうかなぁ....?」

 

セリカ、シロコ、そしてホシノまでが。

 

想像していたのとは少し違ったが緊迫していた空気は一気に和らいだ。

 

 

「....ごめんなさいアヤネちゃん....場違いな意見を────」

「あ、い、いえ!私の方こそ─────」

 

「「痛っ!」」

 

 

席から立って謝った2人、しかし下げたお互いの頭がゴツンとぶつかった。

 

「「あははははっ!!!」」

 

 

 

その後はシャーレから持ってきた作業用のPCを寄付という形で7台ほど設置。

 

そして早瀬に組んでもらったマクロとやらの解説する。

 

 

パトロールの要らないよう、数時間をかけ各地区に監視カメラを皆で再設置、対策委員会室からでも治安の確認をできるようにしたり。

 

皆で掃除を依頼された場所に行ったらまさかのゴロツキと遭遇し、戦闘。

 

「掃除ってそういう事!?」と勘違いしたまま「お掃除」を続行した。

そして帰ってみたらまさかの場所が違ったとかいうオチ。

 

結局藤河にバンを出してもらっては現地へ向かって、ごみ拾いをした。

 

 

 

 

 

「暗くなって来たので衛宮先生は私がシャーレまで同行します。」

 

とノノミが言い出してその日はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました。

衛宮先生のお陰でアヤネちゃんと喧嘩せずに済みました。」

 

「.....ノノミが喧嘩なんて言うと物騒で仕方ないんだが....

実は無茶苦茶怖かったりする??」

 

「あは♪

秘密、ですよ?」

 

もしかしたら1番怒らせてはいけないのはノノミダッタノカ?

ワスレルコトニ、シテ、オコウ。

 

サワラヌカミニ、タタリナシ。

 

 

「それにしても、本当に知らなかったんですか?カモミールの花言葉。」

 

「.....そういやアーチャーがなんか言ってた気がするけど....」

 

「だとしたら運命みたいで、ロマンチックです☆

やっぱり....私達の為に、ですか?」

 

カモミールのことだろうか。

 

「まぁ、お前たちを少しでも楽にしてやりたいと思ってさ。」

 

「それは衛宮先生が心から()()()()()()()なのですか?

それとも、()()()()()ですか?」

 

 

 

「え?そんなの両方だぞ。

俺はアビドス生徒会と対策委員会の顧問だし、それ以前に困っている奴を助けるのなんて当たり前だ。

 

俺のするべきことだし、当然したいからやったんだ。

 

もしかして迷惑だったか?」

 

「い、いえ....先生の場合はするべきこととしたいことが一致していたんですね.....。」

 

何か悲しい顔をして考え込む少女。

のほほんとして、ノンビリとして、それでいて大人な雰囲気を見せるノノミが子供に見えた一瞬だった。

 

 

「おい?ノノミ。大丈夫か?」

 

「あ....いえ!大丈夫ですよ。

私にもしたいことがあるんです!

ノートに沢山書き留めてあって....シャーレについたらお見せします!

 

さぁ、マコちゃん達のいる所に帰りましょう☆」

 

ノノミに手を引かれ、夜道を2人で駆け出した。

 

 

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