衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
「食うか?」「食うか!」
「"おまえたちが幸福と感じるものが───"
"──────私には、幸福と感じられなかった"」
大河ー殺シアム
「私は───誰なんだ──名前も思い出せない?」
「麻婆!!!」
「久しぶりに泰山の麻婆豆腐を食したい。」
Fate EXTRA
「健闘したな、ランサー
マスターとして褒美を与えたい。
────令呪を以って命ずる。
紅州宴歳館・泰山の麻婆豆腐を10皿。1分で完食してくるがいい。」
by.言峰神父
前書き。
言峰綺礼の回想はギャグです。
というのも、真面目に書きすぎるとボロがでます。
ふざけていないと書いてられません。
私は言峰綺礼を理解しきれていません。
故に、シリアスなのは設定のみにしておきます。
と、すみません、前半は士郎の惚気展開が含まれるため、苦手な方は飛ばしてください。
#6 聖堂の神父(I)
起きる。
キヴォトスで何度目かの朝を迎える。
毎朝のジョギングは出来なくなった。
なぜなら朝から弾丸の飛んでくる日も少なくないからだ。
危険だと、当番で手伝ってくれている生徒にも無理矢理止められた。
ゆえにビルの階段を駆け上がっては降りるという日課に変わっていった。
しかし、変わらない事もある。───いや変わりはした。
「先生。今朝も早いですね。」
「あぁ、おはよう。羽川。」
こうして、誰かに朝食を振る舞う事が、あの邸宅にいた時とは何も変わっていない。
「ですが...いいのでしょうか、こんな役得を。」
「何言ってんだ。右も左も分からない俺をサポートしてくれてる皆の為になってるなら等価交換だろ?
羽川はなんでか知らないけどスタイル良くてよく食べるのにカロリーばっかり気にしてるからな。
そら、出来た。」
「───そういう、歯の浮くような────────────朝から野菜炒めですか!?」
「大丈夫、食べやすい様に塩分と脂分を───」
むしろ提案した側の俺が少し心苦しい。
何せ、今の時刻は朝の6時過ぎ。
トリニティからここまで近いとはいえ、朝早くから起こしている上に何も腹に入れずの状態で来てもらっている。
「衛宮先生の作った料理は美味しい。」
いつの間にかSNSでそんな噂が広まってしまっていた。
最初に料理を振舞ったのは早瀬だ。
「へぇ。先生自炊出来るんですね。」
なんてニヤニヤしながら言っていたあいつは俺の作った料理をものの数分で平らげやがった。
「悪い、和食は合わなかったか。」
「い、いえ!ですが、このように報酬があるのでしたら先生のお手伝いもしがいがありますね!」
なんて言ったので。
「じゃ、当番の子にはメシを馳走しよう」
と冗談で言ったら、あいつは朝早くから来るようになった。
何時からか俺の意志とは無関係に、生徒の間で当番のローテーションが出来上がっており、食材を買ってきてくれる生徒まで出てくるしまつだ。
多分、七神リンに知られたら叱られるだけでは済まない。
そのローテーションにおいての今日の当番が、羽川ハスミという少女だ。
「いただきます。」
「いただきます...。」
「いただきますっ♪」
こうして食卓を生徒と囲う日々。
生徒との関係は悪くない───俺は。
「それで、何故脱獄中の狐坂ワカモがこちらに?」
「ンフフ♪」
そう、生徒間での言い合いや撃ち合いだ。
「待ってくれ羽川。ワカモは────」
俺がワカモの名前を出した瞬間に羽川は俺を睨みつける。
「....『ワカモ』ですか?
随分と仲の良いご様子ですね。」
「───じゃなかった。
その、こ、狐坂とは約束をしていて。」
────────────────────────────
回想
────────────────────────────
あの後、俺はアロナに手伝ってもらい、不良生徒の名前と居場所の洗い出しをした後、一人一人と会話をしに行った。
どうもアビドス自治区という周辺に居座っていた「カタカタヘルメット団」という生徒たちのグループ?らしい。
当然アロナには止められたが、何とか説得した。
「あ?何アンタ?」
「はぁん?先生ね、何してくれんの?」
皆そんな感じだった。
学籍の無いもの、停学処分されたもの。
大人や他人から利用されるだけされて、指示を受けなければ何も出来ない。
しかし1人前に感情はある。そんな子達だった。
「できる限りの事はするよ。」
そう言って住む場所、働く場所。それを言葉通りできる限り一人一人に対して手を尽くした。
「先生、アンタさ。皆にこうして回ってる訳?」
とあるヘルメットを被った生徒に言われる。
「あぁ、当たり前だろ?俺は────」
「ふーん....ま、せいぜい利用させてもらうわ。」
なんてニヤニヤ笑いながら聞いてきたので、
「あぁ、そうしてくれ」
なんて言うとその少女達は気持ち悪いものを見たような目で俺を見る。
「アンタ、大丈夫?頭オカシイんじゃねぇの?」
「せいぜい自分の身には気をつけなよ、アンタ純粋みたいだからな。」
とむしろ俺の事を心配してきた。
そんな毎日を、送っていた頃だ。
ようやく名簿に乗っていた生徒は1人になった。
「狐坂ワカモさんですね。」
アロナが集めた情報曰く、「暴風」「災害」「破壊と略奪の化身」らしい。
そして、写真を見た。
服装を見たら、あの時、シャーレ地下室にいた生徒と記憶が一致した。
「あの子が───」
狐坂と呼ぼうとして、遠坂の顔がチラつく。
発音が似ているだけだ、と自分の脳を誤魔化した。
そして、端末に送られてくる、未登録アカウントからのメッセージ。
「初めまして、あなた様。」
その名前は、「狐坂ワカモ」だった。
俺は彼女をシャーレのロビーに呼び出した。
「ようやくお会いすることが出来ましたね♡
もう逃がしませんわ。」
「なぁ、狐坂──」
「ワカモ、とお呼びくださいまし。」
と、どうしてか懐かれてしまい、周りに迷惑をかけないことを条件に、側にいることを許可した。
とは言うものの、本当に何処にでも着いてくるようになってしまった。
あ、トイレと風呂は別だ、顔を赤らめてどこかへ行ってしまう。
当たり前だ。そうでなきゃ困る
─────────────────────────────
つい数日前の出来事を食事後の皿洗い中に羽川に話した。
「では、彼女は先生の常駐当番生徒、という事ですか?」
羽川が彼女を睨む。
「何でしょう、害虫が私になにか───」
隣でエプロンをつけ、片付けをしてくれている彼女も皿を置いて銃を持つ始末。
「待て待てっ!!」
どうしてそうなるんだ!
二人の仲は険悪だ。
「衛宮先生、彼女は害悪でしかありません、騒動を生む原因。
悪行の根源です。
間違いなく「悪」です。」
羽川はそう言った。
「確かにそうだけどさ、悪いことをした生徒にも反省の機会はあって然るべきだと思うんだよ。
ワカモは俺の隣にいる以上、悪いことはしないって誓ってくれた。
だから頼む、この通り!」
俺は羽川に対して頭を下げる。
もはや学籍があろうとなかろうとワカモはシャーレの所属だ。
ので、一生徒である羽川ではどうしようもない。
ないのだが、権利を振りかざし納得させるのは違う。
「こいつにだって悪気は───そりゃあったかもしれないけど、それにだってしっかりした理由があったはずだ。
もちろん理由があれば何してもいい、なんてわけないだろうけどさ。」
「あなた様....。」
とりあえずそんな呼ばれ方をされる覚えは無いのでせめて名前で呼んで欲しいのだが。
「.....分かりました。
ですが、今日のトリニティ訪問は席を外してください。」
「 ....わかった。」
「あなた様!!」
ワカモが俺の腕を掴んだ。
「悪い、数時間だけ、待っててくれ。すぐ帰るから。」
俺が頼むとワカモは「はい」としょんぼりしながら答えた。
「それと前から言ってるけど、「あなた様」なんて呼び方はやめてくれ。なんかこそばゆい。」
「で、ですが──」
「せめて名前にしてくれ。」
「それでは士郎....様?」
「違う、様も要らない。」
そうして彼女は噛み締めるように言った。
「士郎...さん?」
まぁその辺りが及第点といったところか。
「いいです!新婚夫婦みたいで....//」
「は!?なんでさ!」
いや自分で言って顔を赤く染めるんじゃない!!
「あらもう嫌ですわっ♡士郎さんっ。」
(バシィッ!)
「────へ───」
(パリンッ!)
俺は背中を叩かれてその勢いで窓ガラスを割り、叩き落とされた。
「──あ、士郎さんっ!」
「!!衛宮先生ッ!」
ここ何階だと思ってるんだ!あいつ───
羽川が俺を追い窓から身を投げ出した。
「悪い!ハスミ!!着地任せるっ!!」
「!!分かりました!」
彼女は落下する俺に追いつき、抱きしめたまま羽を開き、ゆっくりと着地した。
「助かった。ありがとう、羽川。」
「大したことは。
して、先生。
先程私の名前を呼びましたね。」
それでハッとする。
「わ、悪い、あの時は無我夢中で───」
不快になったのかと思えばそうでは無いようだった。
「いえ、それより。
宜しければ私のことも「ハスミ」と名前でお呼びください。」
「へ?いいのか?」
「構いません。他人行儀に「羽川」と呼ばれるより、その.....」
彼女の目線があちこちに移る。
「わかったよハスミ。」
「....ええ//」
そして部屋に戻ればワカモが土下座をしていた。
「申し訳ありませんでした。あなた様。」
呼び方が前に戻っている。
「貴女は全くもう。」
とハスミの説教が1時間続いた。
珍しくワカモが他人の言うことを聞いている。
そうして部屋の片付けをワカモに任せ、俺はハスミと共にトリニティに向かった。
「なんだ、俺以外とも仲良くできるじゃないか。」
と呟くと。
「何を言っているのですか?
ワカモのあの態度は先生を突き落としたから反省しているだけです。」
と「朴念仁」だの「唐変木」だの言われたが、なんの事か。
そうして問題の場所にたどり着く。
「ここが大聖堂。」
どうやらここに俺を招いた人物がいるらしかった。
「では、私はここまでです。」
そう言って彼女は仕事に戻っていった。
本当に中にいる人物が嫌いらしい。
俺は扉を開けた。
「お待ちしておりました。衛宮先生。」
オレンジ色の髪の毛をしたキツネの耳をした生徒が俺を出迎える。
「私は伊落マリー。
マリーとお呼びください。」
「あぁ、宜しくマリー。
早速で悪いんだけど、俺は誰かに呼ばれてここに来たんだ。
知ってたら案内してくれないか?」
俺がそう言うと太陽のような笑顔をして彼女は言った。
「はいっ♪分かりました♪」
ヤバい、眩しすぎて直視できない。
魔性の笑み、と言うやつか。
なんならライダーの魔眼のようだ、1度認識しちまうと抜け出せない。
俺は雑念を消すために顔を伏せ、目を閉じ、
───が、それはその一言で中断された。
「それには及ばぬよ。伊落マリー。」
「──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────」
言葉が出ない。
体は猫のように全身のありとあらゆる毛が逆立ち、臨戦態勢をとる。
俺は目を開けられない。
顔をあげられない。
「よく来たな。衛宮士郎。
いや。今は衛宮『先生』と、呼ぶべきか?」
声でわかる。
「─────────────────なんでアンタが生きてるんだ、言峰。」
言峰綺礼。
言峰協会のエセ神父。
遠坂の師匠であり後見人。
して16年前に死んで、衛宮切嗣に呪いを与え、聖杯戦争中に何度も遠坂やイリヤ、桜を傷つけた本人。
そして、聖杯戦争中、俺が遠坂から預かった剣で倒した男。
「いや、何。
私は元々──」
隣にはキョトンとしたマリーが居る。
「シスターマリー、私とそこにいる衛宮先生は知人でね。
積もる話もある故に悪いが席を外してくれたまえ。」
「は、はい。」
神父の不気味な笑みを見てマリーは怯えたように外に出ていった。
「あ、また後でな、マリー。」
「...はい。衛宮先生。」
扉が閉じられる。
「さて、何から話すべきか。」
「まずお前がここにいる理由だ。
俺の幻覚で無いのなら、俺の目の前にいるのは死んだはずの言峰綺礼って大悪人だ。」
俺の言葉に言峰はフッと笑う。
「フフフッ....大悪人ときたか。
良いだろう。
私のわかる範囲であれば話そう。
まず、お前に倒されたあとの話だ。」
『投影魔術────貴様、何者────ッ!』
『言峰綺礼─────ッ!!!』
油断により生じた一瞬の隙に、疾走する少年に胸元に剣を突き立てられた。
問題は無い。
元よりこの身は死に体であり、この程度ではどうにもならない。
間に合う、間に合う。
そう信じ、振り返り手を伸ばす。
しかし反応は少年の方が先だった。
『"
少年は私より先に反転しこの身に刺さったアゾット剣へ、"解放"の意味を持つ言葉と共に魔力を流し込んだ。
胸に刺さった短剣の先が、青白い閃光を伴って四散した。
────戦いは終わった。私の敗北で
「────なぜ、お前がこの剣を持っている。」
「それは俺のじゃない───遠坂から預かったものだ。」
「そうか。以前気紛れでどこぞの娘にくれてやった事があった。
あれは確か十年前か。
────なるほど、私も衰える筈だ。」
そうして私は聖杯に飲まれ、消えたはずだった。
私の意識はそのまま『根源』へと至り、全てを理解して全てを忘れ滅んだ。
筈だった。
私の望み、私の願い。
「そうか、私は他人を羨んでいたのか。」
私には持ちえない一般的な幸福。
望んでも、努力しようとも得られない一般的な人間としての────
私はそこに到達して、ようやく得たのだった。
しかし、世界はそれを許さない。
「────────────────」
私の全てが変貌していく。
敗北した私がこのように納得して消えることを世界が許さなかった。
しかし、敗者である私をどうすることも出来まい。
この身は既に死者。
そうであった筈なのだが──────
そこは気づけば、教会のような場所の前に倒れていた。
「どうしましたか?」
と修道女に声をかけられる、が。
「思い、出せない。」
自分の存在を。
名前も
何者であるかを。
私を助けた者は若葉ヒナタといった。
大の大人である私を担ぎ、そのまま休憩室まで運んでくれた。
聞けばここはひとつの学園の敷地だという。
「初めまして──神父様。
私は歌住サクラコと申します。」
神父?私は神父だったのか?
そんな事すらも分からない。
「初めまして、お嬢さん。実は───」
私は記憶が無いことを話した。
「わかりました。
これも何かの縁ですから、シスターフッドで保護させていただきます。」
「であれば、なにか私にも仕事を。」
そうして神父として過ごすうちに私はトリニティの聖堂付近での生活に馴染んでいた。
しかし───────休暇に立ち寄った山海経で、ソレと出会った。
匂いで何かを思い出しそうなソレは私の今まで満たされなかった食欲に火をつけた。
「はい!激辛麻婆豆腐、お待ち!!」
狐のような耳をした生徒に出されたその料理を食べた瞬間に、身体が思い出した。
「ふ、フフフフフフフッ!ハハハハハハハハハッ!!!!
そうだ!これだ。」
私は
言峰綺礼。
人の善行を良しとせず、悪こそが唯一の悦びとする人間。
の筈だった。
が、しかし、今や他人の不幸に幸福を感じられない。
私はありとあらゆる善行を成した。しかし、過去それでは幸福と感じられなかった。
今やその価値観は逆転し。
未だ歪な人間に、変わり無かった──────。
もう少しステイナイト要素を取り入れたく思い、下記から希望を選んでください。尚セイバーはとある事情で省いてます。遠坂凛はうっかり意外人間性が完成しすぎてるので省きます。
-
間桐桜 (士郎の背中を追い先生に)
-
無銘寄りのアーチャー(執事)
-
イリヤ(シッテムの箱所属)
-
上記三人とも。
-
士郎と麻婆だけでいい