衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
絆ストーリーと交互に投稿したかったんですが、絆エピが難航している為先出し。
他人が怒っていると、冷静になれるっていう効果、あれなんて言うんだろ。
心は少年のまま大人になった。
それがこの衛宮士郎です。
多分、モモイと同級生だったらすんげぇ仲良さそう。
「嘘....あの「史上最悪のクソゲー」を」
「1時間で....しかも」「1度も死なずになんて.....」
みんなの反応がおかしい。
なんだろう。何か間違えたのだろうか?
もしかしてこのゲームをクリアすると爆発でもするのだろうか。
『凄いけど.....シロウの判断基準どうなってるのかしら。
普通は選択しないものばかり選んでない?
....あれ?アロナ。どうしたの?』
『......イリヤさん....ごめんなさい、判断回路に故障が......暫くアロナはお休みします。』
なんていってアロナは倒れた。
─────選択......。
この選択は果たして俺の下したものなんだろうか.....
なんて考えていると
ガタガタとロッカーがまた震え出す。
「な、何、今度は何を持ち込んだのよモモイ!」
「え!、私なんにも知らないよ!!」
「ッ!」
生徒を庇うように前に出る─────しかし。
「ち、違います....私は...その。」
ロッカーから出てきたのは羊のように真っ白なコートをきた俺と同じオレンジ色の髪の女の子。
「わ、わたしはユズ、って、いいます。」
ユズ、というと....。
「ゲーム開発部の花岡ユズ....か?」
その姿を確認した2人がその子に駆け寄っていく。
「え!?何時からロッカーにいたのさ!」
「あなた達ふたりが部室に来た時から。」
「「ぇ....」」
まさか何時間もロッカーの中に隠れてたのか?
何で?何のために?
「その.....先生。どうでしたか?」
そのロッカーから出てきた生徒から何かを尋ねられた。
「え?ゲームの感想か?まぁ、確かに誤字脱字は見られたけど。
このゲームは「誰かに楽しんで貰えるよう色んな機能をつぎ込んだ」んだろ?
ゲーム、っていうのが他人に楽しんでもらうための娯楽なんだとしたらこれは立派に「ゲームしてる」よ。
それにゲームって言うよりか人生だ。
想定されただけのルートやレールなんてつまらないし、奇想天外な選択肢もコマンドもいいと思うぞ。」
構造把握の得意な俺にとって中身のジャンル分けや内訳なんてのはやっていくうちに理解出来た。
「......え。」
真剣な眼差しに、少しだけ熱弁したことを恥ずかしく思う。
「.......単純に面白かったってことだよ。 俺は。
ほら、これでいいか?」
そう言うと、目の前の少女は泣き始めてた。
「うっ....うぅ....」
「えっ!!?なんでさ!!
なぁ、なんか変なこと言ったか!?」
「.....多分嬉しかったんだと思いますよ。
衛宮先生。」
俺の前ににたって答えたのは、モモイとミドリだ。
「テイルズ・サガ・クロニクルはネットの評判が酷くてさ。
私達も口にしたくないような言われようだったんだ。
失礼しちゃうよね!」
「そうだったのか......で?早瀬。お前、ユズ達がこれだけ思いを込めて作ったゲームを、さっきなんて言ったんだ。」
(ギロッ)
そんな話を聞いたからか。
どうしても早瀬の放った言葉に苛立って睨んでしまう。
「あ、えっと....確かに衛宮先生には簡単だったかもしれませんが、それだって偶然で....戦闘コマンドの選び方だって論理的じゃないです。
そんなものを成果と呼ぶには───きゃっ!」
(パシッ)
俺はさっき自分で注意したことを早瀬にやった。
そう、コントローラーを軽く投げ渡したのだ。
「ならやってみろよ。
俺はサクッとクリアしたけど、罠だらけだって言いたいんだろ?
その試行錯誤してゲームをクリアするのだって一興じゃないのか?
この世界全部が全部1+1が2になる訳じゃないんだ。
もしそうなるならモモイやユズの努力だって足し算できるぞ。
その結果をお前はガラクタだって言ったんだ。
なぁ、早瀬、ガラクタって言葉の意味、知ってるか?
「中身のない」「形だけの意味の無いもの」「無価値なもの」って事だぞ。」
それはこの子達が思いをかけて作ったゲームなんかより、俺のような奴に使われるべき言葉だ。
「そ、それは言葉の綾と言いますか....」
「言葉の綾で、どうして貶すような言葉が出てくるんだ。」
早瀬に一歩、歩み寄る。
「ちょ、ちょっと衛宮先生、それ以上は───」
「待ってよそんなにボロクソに言ったら逆にユウカが可哀想だよ!」
モモイとミドリに止められるがそれを払い除ける。
「評価する奴が実際に見たり、使う前から思い込みに流されてるなら話にならない。
そんなやつ評論家失格だ。
それにもしダメな点があったとして、それを優しく指摘してやるのが普通じゃないのか。」
「なっ....先生は普段のゲーム開発部を知らないから─────」
「ミレニアムじゃ結果が全てなんだろ?
じゃあその道中で何したってい──────」
「待って!衛宮先生!」
俺と早瀬の言い合いを止めるためにか、モモイが一歩踏み出した。
「いいよ、ユウカ。
成果を出せばいいんでしょ?」
その言葉に俺達の論争は止まった。
「え?えぇ、そうだけど.....」
「今度のミレニアムプライスに私たちの作ったゲームを出店して、入賞すれば、ゲーム開発部の存続を許してくれる?」
「「えっ!!?」」
ゲーム開発部の面々はミドリどころか泣いていたユズでさえその単語に顔を上げた。
「....ミレニアムプライス....ってのはなんだ?」
俺の質問に、ミドリが答えた。
「ミレニアムプライスって言うのはミレニアムで開かれる評価コンテストの事です。
ミレニアム全ての部活が競い合う大会みたいなものです。」
「つまり運動部におけるインターハイみたいなものか。」
早瀬が叫ぶ。
「何言ってるのよ!?
インターハイどころじゃないわ!
数百もの部活があるこのミレニアムの上位10位に入賞するなんて!
高校球児がいきなりメジャーリーグに出るようなものよ!?」
腰に手を当て宥める早瀬。
「関係ないもん!絶対認めさせてやる!
その為の準備だって、もう出来てるんだから!」
「えっ?」とミドリとユズが驚く。
「おいおい、大丈夫か?」
「うん、こっちには「切り札」があるんだもん。
その切り札を使って、今回の「ミレニアムプライス」に私たちの汗と青春をかけた
モモイの熱気に当てられたのか、一歩、二歩と後退する早瀬。
「い、いいじゃない。今日からミレニアムプライスまで2週間。
こんな短期間でどんな成果が出せるのか楽しみだわ。」
さっさと去ろうとする早瀬を引き止めた。
「待った、早瀬。」
「あ、衛宮先生....その....なんでしょう。」
早瀬の態度に文句を言うつもりはない。
彼女にだって仕事がある。
言ってしまえば限られた予算や部室を管理するのも厳正な予算配分をするのもセミナーの一員であり、会計の責任者である彼女の「正義」である。
だが、どうしてもこれだけは言っておきたかった。
「早瀬、俺から言うことは一つだ。
もし、こいつらがその「ミレニアムなんたら」で賞をとったら、さっきの言葉を撤回しろ。」
「....さっきの、言葉?」
「....こいつらの大事なゲームと、作った物をガラクタ呼ばわりしたことだ。」
それだけは譲れない。
明確にしておかなければ気が済まない。
例え何か欠けているとしても、人を楽しませようと作ったものを貶すなんて言うのは間違っている、と。
「........。
わかりました。
もし、彼女たちが受賞出来たら、の話ですが。」
「あぁ、それでいい。」
早瀬は再び背中を向けると、聞こえないくらいの声で去り際に呟いた。
「本当は.....こんな形で会いたくなかったのに......。」
(バタン....!)
耳に聞こえてきた言葉にハッと我に返った。
散々っぱら迷惑をかけ、手助けをしてもらった生徒に対して、俺はたった今。
しかも知ったような口で、なんと告げたのか。
胃から、アレがせり上がってくる。
「衛宮先生!見直したよ!
あんな短歌書けるなんてさ。」
「お姉ちゃん、それを言うなら啖呵を切る。だよ.......あれ?衛宮先生?」
「ヒッ....ど、どうしたんですか先生。お顔が真っ青.....」
ただ、ただ楽になりたくて、部室の3人を放置して、早瀬の後を追った。
「早瀬ッ!!」
「え!?衛宮先生!?」
廊下をかけ抜け、その腕を引っ張った。
引き止めたはいいものの、言葉が出てこない。
「その.....だな。
悪かった!」
頭を下げる。
「えっ?え...?」
「ミレニアムの事もセミナーのことも知らないのに好きかって言った挙句にお前を悪者扱いしちまった。
すまん。」
俺がそう言うと彼女は微笑を浮かべる。
「いいんですよ、慣れてますから。
あの子が、言ってましたけど、「冷酷な算術使い」は間違いでは無いんです。
ミレニアムは見た目以上にお金の出費が激しくて、これでもかなりやりくりしてる方なんですよ。
だから感情とかは二の次で、学校を存続させるための判断基準が成果でしかない。
.......これが合理かつ論理的なミレニアムサイエンススクールの現実なんです。
あの子達だけじゃありません。
他の色んな部活の生徒から私は嫌な奴だと、恨まれてすら居るんでしょうけど。」
「それは違う。
早瀬は優しくて良い奴だ。
これは絶対だ。」
それを自分で否定しちゃいけない。
「えっ!?そんなわけないじゃないですか?あれだけ酷いことを言ったのを聞いていなかったんですか?」
もしかして、無自覚なのだろうか?
確かに、早瀬の優しさは他人から見たら分かりにくいものだ。
「早瀬、ミレニアムサイエンススクールって数百もの部活があるんだろ?
だって言うのにあいつらのやらかした事を細かく覚えてた。
それだけあいつらが目立ってた、なんて可能性もあるけど。
たかが3人の部活でそこまで大太刀回りが出来るとは思えない。
それに情状酌量の余地だってもう与えた後なんだろ?
普通、余裕が無いんだったらそんな部活なんてパッと切り捨ててる。」
「うっ....でもそれは仕事で。」
「仕事なのはそうかもしれないけど。
だからってわざわざ廃部になった部室に注意喚起しに来るか?普通。
そんなの生徒会長だってしないだろ。」
心の中で訂正。
一成は厳しくはあれどその辺手を抜かなかった。
なんなら備品の修理を俺に頼むくらいだったからな。
「..........俺が言いたいのは酷いこと言って悪かった、って事だ。
別にお前は冷酷なんかじゃない。
お前は優しい良い奴だよ。」
「.....先生。その.....」
「いいんだ。後はあの3人が結果で示してくれる。
その時にあいつらにはちゃんと謝ってやってくれ。
それとあのゲーム、しっかりお前もプレイした方がいいぞ。
じゃあな。」
「あ、ちょっと....!」
早瀬から逃げるように、トイレに向かった。
限界だった。
心は軽くなるが、身体はそうはならなかった。
「──────ゴ....ア....ァ....」
またも口から鉛の弾を戻した。
「.....ゲーム開発部の部室に、戻らないと。」
そしてトイレから出た瞬間に左右が分からない。
「........しまった、ここ何処だ。」
構造把握するにしてはこの校舎は大きすぎる。
流した魔力なんて途中で霧散するだろう。
「お困りですか?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!び、びっくりした。」
廊下の角から現れたのはメモ帳をボールペンをもった白い髪の生徒。
「.....ゲーム開発部の部室に戻りたいんだけど、場所が分からなくって。」
「でしたらこちらのマップをお持ちください。
現在地はここです。」
とまるで俺の言葉を予測していたように彼女は俺に地図を手渡した。
「で、ここがゲーム開発部の部室です。お一人で大丈夫そうですか?」
「あぁ、ありがとう。地図と現在地さえあればなんとかなる。」
「どういたしまして。あんまりユウカちゃんをいじめないでくださいね?
あれで結構傷つき安いので。」
その生徒はその長髪を振り乱し、俺とは別の、というか早瀬の行った方向へ歩き出した。
「あ、名前....聞くの忘れたな。」
再開した時に次は尋ねておこう、と心に誓ったのだった