衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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初対面の生徒の呼び方が許可がない限り苗字で書くのは許容してください。

士郎そもそも気軽に女の子の名前呼ばないし
「親しくないのに名前で呼んだら失礼だ。」
はセイバーとの初対面で名前を呼ばれたことに対して

「なんだって下の名前で呼ぶんだよ!」とSN本編でセイバーに述べています。
原作先生がフレンドリー過ぎるだけだ!!

ちなみに作者も士郎が未だ許可貰ってないユウカの事を「ユウカは~」と描きそうになってます。

あ、ただ例外として切羽詰まった時は意識せず生徒の事を名前呼びします。

「ハスミッ!」「セリカ!」とか。
細かいですがアビドス編のセリカと士郎が便利屋68に奇襲される時には許可を得ていませんが士郎はセリカのことを名前呼びしてます。

私自身バイトで小学生2~30人数日預るみたいな仕事をしてましたが一切意識してませんでしたね。

ただ私の兄が教師なんですが当然というか暗黙の了解として名前呼びは禁止されてるらしいです。
「は?連絡先?そんなもん交換するわけないだろ?馬鹿かお前?」って言われましたね。

ゲームとか小説の読みすぎで頭バグってたけどそれが当たり前なんだろうなぁ。


#3 廃墟/少女達はその日、運命に出会う

「じゃあ廃墟へレッツゴー!!」

 

部室に戻るとモモイが元気よく腕を振り上げている。

 

「...... 」

 

「お姉ちゃん。

確率の高さで言うなら、2週間でゲームを作るより、部員を募集する方が早いんじゃない?」

 

ミドリの提案を、モモイは突っぱねた。

 

「それならこの1ヶ月散々やったじゃん。

結局、誰も入ってくれなかったし。

 

「VRですら古いのに、何がレトロ風ゲームだよ!」

 

ってバカにされたし。

みんなレトロの良さをわかってないんだもん。

そんな人達をこの部活に入れたくなんてないよ!」

 

「.....その「VR」ってのが何なのかわからないけど、とにかく志が一致しない生徒を部活に入れたくないんだな?

 

それは間違ってないと思うぞ。

意見の食い違い以前に、考え方が全く異なる奴とパートナー組んだところで明るい未来なんて無いしな。」

 

「わ、わたしも新しい部員はちょっと......」

花岡がそわそわしながら言う。

もしかしたら極度の人見知りなのかもしれない。

 

なら何で部長をしているのか、なんて疑問には思う。

正直引っ張っていくリーダー性も強引さも、モモイの方が十分部長に見える......。

 

「いや、だからこそ、この子が部長なのか。」

 

「何ブツブツ言ってるの!先生。」

 

モモイ達に目を向ければ、バッグやリュックを持って出かける準備をしている。

 

 

「....ん?何処かに行くのか?」

「何言ってるのさ!先生も来るんだよ!」

 

モモイに袖を引っ張られる。

 

「待った、待った!!

ゲーム作りはどうするんだ?早瀬にあんなこと言ったばかりじゃないか!」

 

 

「ゲームを作るために切り札を取りに行くんだよ。」

 

「切り札?」

 

一切説明をしないモモイに代わりミドリが説明してくれた。

 

「はぁ、少しは説明したら?お姉ちゃん。

.....先生はG.Bibleって知ってますか?」

 

「G.Bible?

バイブルってのは聖典とか経典とかそういうものだろ?

なんだ?あの黒い虫の聖典か?

俺は誓ってそんなもの見たくないぞ。」

 

まぁしかし本物はそうはいかない。

どれだけ部屋の片付けをしていようと、そいつは存在する。

いや、部屋の整理整頓が出来ているからこそ、ヤツラはこぞって食材を探そうと動き続けるのだ。

 

「んなわけないじゃん!!」

 

(ゲシッ)

 

モモイに思い切り脛を蹴り上げられた。

 

「痛った!!じゃあなんなんだよ、そのG.Bibleって。」

 

「GはGAMEの「G」!。

つまりゲーム開発における最強の秘訣が載ったものだよ。

かつて、キヴォトスには世界を震撼させたゲーム開発者(クリエイター)がいたの。

その人がミレニアム在学中にゲーム制作に関する極意を遺したただ1つの聖書だよ!

その中には、「最高のゲームを作れる秘密の方法」がはいってるんだって。」

 

「そんなものまであるのか.....。」

 

「それが廃墟にあるの!だから探索に行くの!わかった!?」

 

モモイが捲し立てる。

 

「....ここぞって時の切り札か....でもどうして廃墟なんかに....」

 

「どうやらG.Bibleが起動されたのがその廃墟.....の、様なんですが...

そこは....連邦生徒会長が管理してて、情報らしい情報が存在しない秘密の場所らしくて....」

 

つまり、なんだ。

その為に「何処にでも行けて、何処であろうと戦えるシャーレ」の存在が欲しかったと。

 

まぁ、ゲーム開発を手伝ってくれ、なんて言われても困るし。

 

「.....事情はわかった。けど───────」

「けど ...?」

 

──────けど、なんだ?

 

お前はそうして、また自分勝手な理屈を、生徒に押し付けるのか?

他力で得た成果など、成果とは呼べないと?

 

ツギハギだらけの、歪な、自分のない「ガラクタ」のオマエがそれを言うのか?

 

 

「けど、何なの?」

 

モモイの視線に我に返る。

 

「───いや、なんでもない。

俺は「先生」として、お前達に同行するよ。」

 

「やった!これで万事解決だね!」

 

 

───今は生徒の希望に添い、手助けする先生に徹する事にしよう。

 

ただ、行動と、言葉を奪われた俺にとって、いざとなった時のこの枷は邪魔だ。

 

アビドスで、風紀委員から皆を守れなかった時のように。

今の俺には目的より「手段」の方が欠如している。

 

考えはある。

 

ただそれは此処での─────────

 

「.....先生!なにしてるのさ!行くよ!」

 

モモイに袖を掴まれる。

 

「あ、あぁ。」

 

花岡の事はミドリが説得したのか、隠れるように俺の後ろについて来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、お姉ちゃん。

こんなロボットが徘徊してるなんて話、聞いてないんだけど!!」

 

「わ、私だって知らないもん!!ヒマリ先輩は「キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所.....(仮定)」って....!!」

 

「ヒマリ先輩って!!?まさか、ヴェリタスの部長で車椅子に乗った美人のヒマリ先輩!?

知らない物は無いって豪語してそうなあの人が「仮定」って言葉を使うなんて、それ明確な危険度が分からないってことじゃ...!!」

 

「ひっ....ど、どうして、こんなことに.....」

 

(ダダダダダダダダダダッッッ!!!)

 

連邦捜査部の調査任務という扱いにして、俺達はモモイが言うゲームの聖書がある地点を目指していたのだが、その地区には大量のロボット兵がたむろしていた。

 

そいつらは俺達を認識した途端戦闘行動を開始。

 

「喧嘩なら後にしてくれ2人とも。

完全に包囲される前に前方を一点突破するしかないんだ。

で!目的の建物は結局どこなんだ!!」

 

 

俺の言葉に慌てふためいてモモイが答えた。

否───それは回答とは言えない。

 

「わ、分からないよ!ヒマリ先輩から貰ったナビ、逃げてる最中に落としちゃったもん!!」

 

「────なんてこった!

イリヤ!アロナ!起きてくれ!!」

 

 

俺の呼び掛けに待機していたイリヤが声を出す。

 

『アロナは無理みたいよ。

あのゲームの情報を脳内整理してて思考回路がショートしちゃったみたい。

今休息中。

 

私もその『G.Bible』がどういうものなのか分からない以上探しようがないし、シロウのカバーだけで精一杯!』

 

つまり、四方八方に居る敵を倒しながら、形状も場所もわからない建物を探し回るしかないってことか。

 

 

「きゃっ!!」

 

俺の後ろを走っていた花岡が瓦礫に躓いてベタンと地面に転んだ。

 

俺達との距離が一瞬離れ、彼女にロボット兵が追いついた。

 

「..........──────」

その光景に、起き上がった彼女が失神して倒れ込む。

 

 

「せ、先生!ユズがっ!!」

 

モモイとミドリが銃を構えたが、引き金を引けない。

当然のごとく着弾点が倒れたユズと被るからだ。

 

「させ─────」

 

「───────投影、開始(トレース オン)。」

 

それを理解して銃を下げ、遮蔽物を乗り越え走り出すモモイより、1歩先に足を動かした。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

両手に作り上げた干将と莫耶を両方投擲する。

 

「■■■■■■??!」

 

両剣はバツ印を描くように交差し、ロボット兵達の腕や体を切り裂いていく。

しかし、崩れた街中から無尽蔵のように湧いて出てくるロボット。

 

止まって投影をしている暇などない。

 

走りながら空の両手に再度同じものを作り上げる。

 

「は─────ああっ!」

 

ユズを守るため、ロボットの体を八つ裂きにする。

 

 

「先生!!後ろ!!」

 

駆け寄ってくるミドリが悲鳴のような叫びをあげる。

 

振り返れば壊れた銃を振りかぶり俺を殴る動作に移行したロボット。

 

『シロウ!ダメ!避けて!!』

イリヤは周囲からの射撃から俺を防いでいて、近接防御の余裕なんてない。

 

「間に合─────」

「先生─────」

 

 

敵の振りかぶった打撃は、俺の顔面に────────

 

 

(パパパパパパパッ!!)

(ジャキィン!!)

 

「■■■■■■....」

(ドサッ)

 

 

当たらなかった。

 

敵は倒れている。

モモイとミドリは首を横に振っていた。

 

「私達ではない、」と。

 

(パパパパパッ!)

(ウィーン、ウィーーーーン)

 

次に聞こえたのは1輪のタイヤの上にモノアイと装甲とサブマシンガンらしき物を装備した鉄製の小さな戦車の走行音。

 

それも1台ではない、5~6台とどんどん廃墟から出てきた。

そいつらはこちらには攻撃をせず近寄ってくるロボットに呑み、射撃をしていた。

 

 

(ウィーン....グポーン)

指揮車らしき個体のモノアイの視線が俺と重なる。

 

まるで「行け」と言わんばかりに俺の前に出る。

 

「な、なんなんだアイツ。」

 

側面にはミレニアムサイエンススクールの校章と、「AMAS」と書かれている。

 

「先生~!」

 

「無事ですか!!?」

 

モモイとミドリが駆け寄ってきた。

 

「あぁ、俺もユズも無事だ。」

俺は倒れた彼女を背中におぶった。

 

「というかこの状況何!?何が起きてるの!?」

 

「わからない!けどそんなのどうだっていい。

とにかくこの機械達がやってきた廃墟に逃げ込もう!」

 

俺の言葉に不安そうな反応をする2人。

 

「えぇ....大丈夫かな?」

「....でも、他に安全そうな場所ないし...行くしかないよ。お姉ちゃん。」

 

「とりあえずユズは俺が運ぶから!急いで走るんだ!!」

 

 

何故か俺たちを庇ったロボット達に背中を向け、俺達はその工場のような建物に走り出した。

 

 

Interlude 3-1 甘さ

 

 

モニターにおける彼等がレーダー範囲から消失した。

 

あの建物に入ったのだろう。

 

 

「........どうして」

どうして、動かしてしまったのか。

捨ておくべきだった。

 

AMASが攻撃した個体だって、手を出すべきではなかった。

彼が投擲した剣が、二本とも物理的にありえない軌道の変更の仕方をして、敵を切り倒したのだから。

 

倒れたイレギュラーを見捨て、本来の目的に徹しておくべきだった。

 

「.....でも、この程度の損失なら別に─────」

 

そう、あの場にいるAMAS達が損傷したところで、まだ予備は配置してある。

 

問題は一瞬崩れた監視体制から抜け出した「アレ」が数体廃墟から抜け出し、街に飛び出して行ったこと。

 

「追跡は─────ダメね。

位置情報が捉えられない。いえ、壊れているからこそ捕捉出来ないのね。」

 

数体程度ならいつかは発見できる。

 

そんなことより問題は、「彼」を通してしまったことだ。

甘い理想を掲げ、生徒を救うため動く、あの青年───いえ「先生」を。

 

 

「彼は、賛同して.......くれないでしょうね。」

そんな予感がする。

 

彼が本当に「正義の味方」を目指しているのであれば、私の意見に、行動に、同意してくれる筈だ。

その結論はもう出ている。

 

だと言うのに、それは叶わない。

彼は私の意見と相対する、と感情が言っていた。

 

「感情的判断.......学校を導く者にそんなものはあってはならない。」

 

これから私が目標にし、動くことは合理かつ現実的行動で、機械的行動で、誰にも否定できない、正しいものだ。

 

つまり、感情を切り捨てないと出来ない。

残酷で、冷酷で、冷徹で、彼の考えと一致することなどありえない。

 

「アレ」を見れば恐らく彼は────────

 

「フッ...何を馬鹿な事を。」

 

いや、何も変わらない。

これまでやってきたことと何も変わらない。

 

正しいと信じた事を信じ、誰にも理解される事が無くとも。

 

「これが最善の決断よ。リオ。」

 

モニター越しのAMASはここぞとばかりに周囲の敵を殲滅し、その周辺には意志のないタダの鉄の人形の残骸だけが残った。

 

Interlude 3-1 甘さ END

 

 

「な、なんなの!あのロボット?私達を助けてくれたの....?

それとも仲間割れ?

 

何でかよく分からないけどラッキーだね!私達。」

 

「........違う。俺たちを守ってくれたのはミレニアムの校章が描かれてた。

多分俺たちの動向を知った誰かが助けてくれたんだ。」

 

「え、じゃあ私達監視されてるって事ですか....?」

 

ミドリが不安気に聞いてくるが答えを出してはやれない。

 

「とにかく辺りの安全を確認できるまでこの建物────」

 

(ガラガラ.....ズザァ......)

と思えば入口の壁が崩れ、唯一の出口が無くなった上、差し込んでいた光が閉ざされ真っ暗になる。

 

「えっ!!?何何!!」

 

(ポチッ)

 

声の主はモモイ。

壁に手を触れたのか、入口から正面斜め上のモニターが点灯する。

 

 

『外部操作が行われました。熱源の接近を確認。』

 

モニターから発せられているのは機械音声。

 

「えっ!?今度は何なの!」

「モニターにスピーカーらしきものは無いし、音全体が部屋に響いてる.....?」

 

俺は2人庇うように前に出た、しかし。

 

『対象の身元を確認します。

 

ミレニアムサイエンススクール所属・才羽モモイ、資格がありません。』

 

「えっ!?何で?!私の名前!?」

 

知り合いの施設か何かなのかと思えば本人も驚いている。

何だ?どうやって認識しているんだ?

 

『ミレニアムサイエンススクール所属・才羽ミドリ、資格がありません。

 

ミレニアムサイエンススクール所属・花岡ユズ、資格がありません。』

 

「私とユズちゃんの事まで...一体これは。」

 

 

『連邦捜査部 顧問・「衛宮士郎 先生」。』

 

とうとう、俺の名前が告げられる。

おかしい。

 

この施設はボロボロだ。

 

モニターだって傾いていつ落ちてきてもおかしくないと言うのに。

そして俺がキヴォトスに来てからまだ1~2ヶ月しか経ってない。

 

だって言うのに俺の情報が告げられるのはありえない。

 

まるで、俺がキヴォトスに来ることを知っていたかのようだ。

だとすると、これは俺を呼び出したという「連邦生徒会長」の管理している───────

 

 

『資格が取得、出来ません。』

 

「あれ?!じゃあ何で溜めたのよ!

今のは絶対「承認しました!」の流れじゃん!!」

 

期待を裏切られ俺の前で扉を蹴り始めるモモイ。

 

「や、止めなよお姉ちゃん、壊れて攻撃してきたらどうするの!」

 

扉はあかず、周囲には出口も見えず。

 

誰もが「終わった」と思ったその時。

 

 

『第二次承認工程へ移行。

 

デバイス「シッテムの箱」と「大人のカード」をスキャナーへ提示してください。』

 

(ギギギギギ.....)

 

施設が動きだし、モモイの横の壁の一部が開いていく。

 

「うわっ!凄っ!!」

 

(ガコンッ....)

 

「スキャナー」と思われるそれは台のようで、それぞれ端末とカードの型がある。

 

「ここにはめ込めって事なのか。シッテムの箱とカードを。」

 

『.......いいわ。シロウ。

恐らく安全よ。』

 

イリヤに視線を送り許可を貰った。

 

(ウィィィィン)

 

それは青白いレーザーの様な光を放ち、文字通り置いた物をスキャニングした。

『資格を確認しました。入室権限を付与します。』

 

「えっ!?」

「凄っ!これは流石の魔法使いじゃん!!」

 

────いや、俺は何もしてないんだが。

困惑する俺達をよそに機械音声は続ける。

 

『才羽モモイ、才羽ミドリ、花岡ユズの3名を、先生の「生徒」のして認定、同行者である「生徒」にも資格を付与します。

 

承認完了。

 

下部の扉を解放します。』

 

 

────嫌な予感がした。

このままではいけない。

 

 

俺はとっさにシッテムの箱と「大人のカード」を回収し、眠るユズを抱き抱えた。

 

「今下部って言った?目の前の扉じゃないんだ。

......え?」

「それよりミドリ。下部って」

 

「いや....まさか」

 

(ガシャッ!!)

 

床がパッと開いて、俺達は当然のごとく──────

 

「え!?床!床がないよ!ミドリ!」

 

「せ、先生────!!」

 

暗闇に包まれた縦穴へと吸い込まれるように落ちた。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」」

 

「くそっ....」

床は見えない。

落下ダメージはイリヤでもどうしようも無い。

俺も当然ミンチ。

 

残りの3人...は──────

 

走馬灯のように、頭から血を流して倒れる3人の光景が、目に浮かんだ。

 

鎖、紐、なんでもいい。

今うってつけなのは────ライダーの短剣!!!

 

投影、完了(トレースオフ)!!」

(シュッ!─────ジャラジャラ!!)

 

投影した鎖のついた短刀を天井へ投擲して打ち込んだ。

 

「モモイ!ミドリ!!無事か!!」

 

「何とか先生のおかげです。」

「た、助かったぁ......」

 

2人は俺の腰にしがみついている、が、ユズを片腕で担いだ状態でこの状況を維持するのは無理がある。

 

幸い鎖の長さはまだ十分にある

 

「下に降りるぞ!」

 

鎖を緩め、少しずつ下っていく。

 

その際に────

「あれ.....ひっ!?衛宮....先生!?なんでわたし担がれ.....ひっ...!?」

 

起きたのか、担いでいるユズが暴れ始める。

 

「馬鹿ッ!下を見るな!あっ!!」

 

その反動で鎖から手を離し────

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「きゃぁぁっっ─────!」

「結局こうなるのぉぉぉ!!!」

 

 

そのまま終点へと落下した。

 

「ガッ....」

最初に落ちたのは俺。

背中を地面に強くうちつけ、呼吸もままならない。

 

ただモモイとミドリが落ちてくるのにユズを抱えたままでは彼女が危ないと思い、反射的にユズを放り投げた。

 

「あうっ....せ、先生!!」

 

彼女の視線と手ががこちらに向けられる。

 

 

「 あぁ....ユズ。

強く、生きて─────」

 

 

(ドスッ)

「痛っ!!!」

 

(ボンッ!)

「ううっ....!」

 

 

俺は落下してきた2人の衝撃で────────

 

 

DEAD END

 

 

 

 

 

 

 

 

意識が途切れることはなかった。

 

 

ん?いや、思ったより痛くないぞ?

 

というか、もしかしてそこまで高くなかったのか?

 

「あれ?先生は?」

 

モモイとミドリは俺を踏んでいることに気づいていない。

 

「とりあえず、悪い、モモイ、ミドリ、そこを、どいてくれ。」

 

「あ、ごめん!先生。」

 

 

そうして最後にはモモイが俺の腹を足で踏み抜いた。

 

「ぐぁ.......」

 

 

痛みに悶絶して寝転がる。

 

「ちょ、お姉ちゃん!先生が下にいるんだから足場には注意しなきゃ!!」

 

「あー.....ごめんごめん....ありがとね、先生。」

 

なんて謝罪ZEROの「ごめんなさい」と本心からであろう感謝を受けたのでよしとしよう。

 

ただ、ミドリはちゃんと頭を下げてくれた。

 

「助けてくれてありがとうございました。」

 

「い、いいんだ....あー....痛たた.....ユズ。

無事か?」

 

 

彼女の体がビクン、と跳ねた。

 

「は、はい。わたしは...なんとも。

それより衛宮先生....」

 

「ん?」

 

彼女が何が言いたいのか分からない。

モモイが俺を踏み付けた所に肘鉄を入れてきた。

 

 

「あ──────っ......な、何すんだよ!!」

「衛宮先生!名前だよ名前。

ユズって呼び方変わってるの。」

 

あ....そっか。

それで俺は今モモイに怒られたのか。

 

「わ、悪い花岡。

.......呼び方、どっちがいい?」

 

「.....ユズで、いいです。わたしのことも助けてくれてありがとうございました。

 

覚えてるのはロボットに囲まれて頭が真っ白になったことだけなんですが.....ここは?」

 

「悪い、ここが何処なのかはてんで分からない。」

そう言って花岡─────ユズは当たりをキョロキョロと見回した。

先程と違って周囲は明るい事が救いだ。

 

「先生!こっち!!部屋があるよ!」

 

「お姉ちゃん!待ちなって!」

 

なんてもうモモイとミドリが勝手に通路を走っている。

 

「あのなぁ....何があるか分からないんだからもう少し慎重に───?」

 

歩こうとすると、ユズに袖を引っ張られる。

 

「.....一緒に行ってもらえますか?」

と。

 

 

まぁ目開けたらどこだか分からない場所にいるんだ。

そりゃ不安にもなるか。

 

俺はユズの手を握った。

 

「これでいいか?」

「....は、はい。....//」

 

そうして、モモイが走っていった通路をユズとゆっくり歩いた。

 

 

 

一本道。

 

たどり着いたのは、広めの部屋。

 

その中央にはベッドのような物が配置されている。

 

 

「先生!入っていいよね!きっとあれが「G.Bible」だよ!」

 

「....あぁ、無闇矢鱈に物に触るなよ!」

 

許可を出せば楽しそうにモモイが部屋を探索し始める。

 

「ミドリ、モモイのこと頼むぞ。」

 

「は、はい。

 

お姉ちゃん!気をつけてよね!!」

 

俺の言葉にミドリが素直に頷いてくれた。

 

 

「先生....ここは何の部屋なんでしょう?」

「.....うーん。わからん。」

 

 

 

「えっ....!?」

 

「えっ.....!?なにこれ、女の子?」

 

モモイとミドリが中央のベットのような機械を覗いている。

 

 

「女の子....?

誰か居るのか?」

 

もしかして失踪した連邦生徒会長か?

 

ユズと一緒に歩いていこうとする───が。

 

 

「先生は来ないでください!!」

 

とミドリに推しトドメられる。

 

「なんでさ。 」

 

「そ、その、そこに女の子が1人寝ているんですけど.......何も着てないんです.....。」

 

「あっ.....。」

 

こんな廃墟で裸で寝ている理由も気になるが、まずはその状態をどうにかしなければ。

 

「だ、大丈夫です、

こんなこともあろうかと、服は予備分1着持ってきているので......」

 

 

と、ミドリは相当用意周到だった。

 

 

「......悪い、頼んだ。」

 

「は、はい.....。」

 

 

その子に服を着せていく最中、ミドリから報告が上がる。

 

 

「先生。もう大丈夫です。」

 

 

「分かった。」

 

周囲を警戒しながら、その少女の元に向かう。

 

 

「この子は───────」

 

そこには綺麗な人形のような女の子が1人、死んだ様に眠っている。

 

「まるで電源が入ってない、って感じだよね。」

 

モモイがそんな言葉を言った。

言い得て妙だが、そんなことより────────

 

「なんで────────」

 

夢に出てきた、少女に、そっくりなのか。

 

「あれ?文字が書いてある。

えーっと....AL-IS....?

「アル・イズ」

「エーエル・アイエス」?

 

このこの名前かな?」

 

 

 

 

────アリスはマスターの事が──────

 

 

 

 

 

「アリス...?」

「アリス....だ。」

 

 

モモイと俺の発言が被る。

 

 

「え?先生、知り合い?」

 

「い───や......─────────」

 

知り合いでは無い。

しかし、何故か俺はこの子の事を()っている。

 

「で、でも先生。

これ『I』の所『1』みたいで、

 

『AL-1S』みたいですよ?」

 

ミドリがそう報告してくる。

 

「えー....でも先生はアリス、って言ったよ?」

 

俺は無造作に、その子の頬に、触れた。

 

 

(ピピピ......ピッ...!)

 

『状態の変化、及び第1級接触許可対象を感知。

コードネーム「名も無き神々の王女」の休眠状態を解除します。』

 

横の端末がそう言うと。

 

 

(スッ......)

 

彼女は、立ち上がった。

 

「..........。」

 

「状況把握、難航。

コミニュケーションを試行。

 

本機の自我、記憶、目的の一切が消失状態。

データがありません。

 

状況を説明できますか?」

 

 

「───────」

 

やはり、夢と同様の声で彼女は話す。

 

 

「ど、どうなってるの!?

いきなり攻撃してきたりしないよね!」

「な、何もしてないのに、私達。」

 

 

3人は俺の後ろに隠れた。

 

 

「肯定。

接触許可対象への遭遇時。

本機の敵対意思は発動しません。」

 

 

「ロボット市民と....全然違う!!面白ー!!」

 

安全が確認できたのか、モモイはアリスに近づいた。

 

「先生.....どうしましょう....。」

 

 

俺はミドリの問いには答えず、『アリス』に話しかけた。

 

 

「なぁ。『アリス』....。お前は─────」

 

「─────本機の名称、「アリス」。

 

確認をお願いします。」

 

 

「───────────。」

 

違う。

夢で見た、彼女とは違う。

 

勝手に困惑する俺とは違って、モモイは顎に手を当てて考え事をしている。

 

「うーん......廃墟にある工場の地下。

ほぼ全裸の女の子。

オマケに記憶喪失ねー.......

 

 

ふふーん.....私いいこと考えちゃった!!

 

帰ろ!先生!!この子連れて!!」

 

 

「え?」

 

別にそれはいいが、お前──────

 

「ちょっとお姉ちゃん!!

私達何を探しに──────」

 

ミドリも同じ疑問を抱いたのだろう。

 

「いいこと考えた!って言ってるじゃん!!

 

アリスちゃん!私たちと来ようよ!」

 

 

無機質な彼女は淡白に、かつ設定されたかのように笑って言った。

 

「....本機『アリス』の名称を登録。お気に入りに追加。」

(にこっ)

 

「「は?」」

 

俺達は困惑しながら、アリスの手を引くモモイの後に続いて、反対側の出口からゲーム開発部の部室を目指したのだった。

 

 

 

 

 

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