衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
建物の構造、配置、セキュリティシステムに関しては自己解釈です。
『ココカラサキハ、タチイリ─────』
『っ、光よ!!』
(ドガァァァァァン!!!!)
セミナーの中央作戦司令室、ここはミレニアムタワーの最上階。
そんな所まで振動が伝わるほどの、轟音とともに相手方の作戦が始まった事を理解する。
アリスはセミナーがいるミレニアムタワーのロックのかかった防壁を力ずくで破壊した。
「嘘でしょ.....どんな手段で来るかと思ったら力任せの強行突破なんて......エレベーター前の扉を守っていた警備ロボットが全滅....」
確かに衛宮先生が率いているのだかららしいと言えばらしい....が、
いくらなんでも短絡的すぎる。
間違いなく彼女は囮!
「A-1からC-15までのカメラを再チェックして。
防衛システム起動!目標、アリスちゃん!」
「りょ、了解。」
一通り指示を終えため息を吐く。
「あの子がアリスちゃんですか....可愛らしい子ですね。」
アカネのアリスを捉える目が一瞬だけ可愛い生徒を愛でるようなものに変化する。
「この戦闘に勝ったら
「それはダメ!絶対にダメ!」
(ダダダダダダダダッ!!)
『あ、くっ!
や、やられてしまいました...復活の....呪文を....』
モニター向こうではヘナヘナと膝を着いて倒れるアリスの姿が映っていた。
特攻とは案外馬鹿にできない戦術である。
その証拠に、生徒1人の為にエレベーター前のエリアは扉事セキュリティシステムを破壊されてしまった。
「あぁ....修理代が....もう....。
とりあえずアリスちゃんは制圧次第、反省室にでも入れて置いて....」
現状破壊されたセキュリティは入れ替える事でしか対応できない。
何せエレベーターとエレベーターセキュリティの配電は別々だ。
あれはセキュリティシステムなどが停電によって停止した際に困らないように独立して動くようになってしまっている。
つまり、このまま放置すればモモイ達にエレベーターを差し出すことになる。
「........アリスちゃんのレールガンはエンジニア部製....なら敵に回っている可能性も捨てきれない.....。
セキュリティはエンジニア部製以外のシステムを導入して。
敵にはヴェリタスメンバーも居るはずだからなるべく強固な物をお願い。」
「わ。わかりました!」
30分かけて新しいシステムが導入された。
「作業後にエレベーター区画へ立ち入った生徒は?」
オペレーターに念の為、カメラの映像を確認させる。
「いえ!セミナーの生徒だけです。」
これでモモイ達には差押え室の階に上がる方法が無くなった。
チェックだ。
「あっけなかったわね....」
安心したのもつかの間の事、慌ただしく報告が上がる。
「本階のA-2エリアに未登録生徒を確認!」
「なんですって!?見せて!」
そうして拡大映像がモニターに出される。
「衛宮先生にモモイとミドリ!?
え!.....いつどこから侵入したのよ!!」
作戦開始2時間前。
俺たちは再びヴェリタスの部室に集まっている。
「.....この付近一帯に強力なジャミングをかけた。
何があっても大丈夫.....有線回線じゃない限りね。
じゃあ始めようか。
私たちの目標である「鏡」の在り処、セミナーの差押え品保管所へ到達するための作戦会議を。」
「セミナーが使用している部屋はミレニアムタワーの最上階。
そして差押え品保管庫は、西側に存在しているんだ。
まず入口から差押え品保管所へ辿り着くために約400台の監視カメラ及び約50体の警備ロボを突破する必要があるみたい。」
「あ、ついでに旧カイザーコーポレーションとの戦いで接収した戦闘用ロボットも100体ほどいるみたいだよ!」
小塗マキという赤髪の少女が口にしたことに首を捻る。
........早瀬が予想外の収入があったとか言ってたけど、まさかな....
「というか、お前達がなんでそんなに詳しいんだよ。
また情報のはっきんぐ?だっけか?」
「いいや、親方。
それは違う。」
俺の疑問に対して、ウタハがかなり大きめの見取り図を机に広げる。
「ミレニアムタワーのセキュリティシステムの構築の基礎を作ったのは私たちエンジニア部だからで、前もってその話を先程伝えておいたんだよ。」
「えっ!?じゃあ実質突破した様なものじゃん!」
とモモイがノリに乗っている。
それを飛び出た釘を叩くように小鈎が本題を切り出した。
「そうだね。
保管所に行くための「エレベーター」を君たちが使えるならの話だけどね。」
「エレベーター?
それがどんな問題に繋がるんですか?」
ミドリの質問にウタハが答えた。
「このハレの言うエレベーターの前の区画には、生徒会の役員と限定登録されている人にしか開くことの出来ない指紋認証システムのドアがあるんだ。
これをどう突破するか、だね
仮にエレベーターを突破したところで私たちの構築したセキュリティシステムが立ち塞がるよ。
火事が起きた際に出火元だけを隔離したり、万が一強盗に入られたとしてもセキュリティシステムによって自動的にシャッターが下りたりする。
ちなみにこのシャッターも先程の指紋認証システムでの解除が必要になる。
ちなみに強引に解除したり、未登録の指紋を認証させようとしたりすると次はチタン合金製のシャッターが降りてくる。
二度目に限っては指紋だけではなく虹彩による認証も必要になるんだ。」
俺とアリスは首を傾げた。
......はっきり言って何言ってるか分からない。
それを、ユズが分かりやすくまとめてくれた。
「.....つまり「鏡」の元にたどり着くためには1階からエレベーターに乗らなきゃいけなくて....けどその手前にはセミナーしか開けられないドアがあって...
しかも、最上階まで上がってもカメラが数え切れないくらいあって、見つかったら廊下や部屋に閉じ込められちゃう。
ってことだと思います....。」
「何それズルだよ!大ズルだよ!
どうにかならないの!?ウタハ先輩!ハレ先輩!」
泣きそうなモモイの助けに猫塚とウタハが答えた。
「弱点ならある。
まず、外部電力の遮断に弱い事。
電力を絶つと自然と外部のネットワークに繋がるようになってるの。
外部ネットなら、セミナーのセキュリティシステムも弱体化するし、隙が生まれる。」
「それとカメラならハッキングだけでどうとでもなる。
問題は使える手を全て使っても、確実に差押え品保管所へ辿り着ける保証がない事だね。
だろう?ハレ。」
「うん。
流石にC&Cの配置情報は探っても出てこなかった。
......どちらにしてもC&Cを3人相手どらなきゃいけない。
今回、システムは私達やエンジニア部で誤魔化したところで、最大のセキュリティシステムが残るわけだね。
見つかってシャッターを閉められたらアウト。
戦闘になって倒したところでその間には包囲される。
ので、少し作戦を考えてみた。」
ホワイトボードにチャートを書き始める小鈎。
「まず、エレベーター前の扉を一旦強引に火力で破壊する。
セキュリティシステムは1箇所でも死ぬと全体がダメになるようになっているからね。
破壊したタイミングで彼女達はシステムを別のものに交換するしかなくなる。
その間に前線組にはミレニアムタワーに侵入してもらう。
ウタハ先輩が「トロイアの木馬」を用意しているから、それをユウカ達に使用させるように誘導する。
これはエンジニア部に入部する前にウタハ先輩が作ったシステムで信頼度も高い。
エンジニア部の関与を仄めかせば、エンジニア部以外のセキュリティシステムかつ高度なものを導入するはずだよ。
このトロイの木馬にはここに居る生徒と先生の指紋と虹彩しか認証しない裏のシステムを設定してもらってあるんだ。
エンジニア部の作成した超小型EMPにより電力を遮断、その隙に私が外部ネットワークを、通じてシステムをハッキングし、裏コードを起動する。
ということで扉の破壊はアリス。君にやってもらいたい。」
「アリスがですか?わかりました!!」
二つ返事で了承したアリス。笑顔を浮かべながら物騒なことを言い出す。
「つまりアリスは「やぁやぁ、我こそは!」と口上を述べながら注意を引きつつモモイやミドリ、ユズ、マスターの侵入する隙を作って、最後は
「無念なりぃっ」と言ってハラキリすればよいのですね!?」
「待て待て待て!そこまでやる必要は無い!!
特にハラキリはダメだ!」
俺の必死の説得に納得したかと思えば────
「!アリスの場合はハラキリではなく「ハラウチ」でした!」
「違う!そうじゃないだろ.....ったく。」
「漫才は後にして欲しい。話を続けていいかな....?」
小鈎の冷たい視線に当てられて2人して「スミマセン」と謝った。
「そうしてモモイとミドリ、ユズが行くルートの監視カメラはループ映像にしておく。
....次に敢えて「デコイ役」をユウカ達に認識させてC&Cの注意を引く。
これはモモイとミドリのフリをした生徒を2人、本人達の後に侵入させて監視カメラにわざと映る。
これでだいぶ戦力を引っ張れると思う。
これはマキとコトリ、そして衛宮先生にやってもらおうと思う。
衛宮先生が「デコイ側」に入れば絶対に本人達と思う筈だよ。」
「OK!任しといて!」
「了解です!よろしくお願いします、先生!」
「俺も文句なしだ。よろしくな2人とも。」
小塗と豊見と握手を交わす。
確かに理にかなってる作戦だ、しかし─────
「相手は3人、俺達の方で1人しか引っかからなかったらモモイとミドリとユズは2人相手にすることになるけど────それで大丈夫か?」
俺は3人を見る。
「メイド部2人、相手にできるか?」
「......そうだね、多分無理だと思います。」
そうしてミドリが小鈎の持っていたマーカーを借りる。
「そもそも私とお姉ちゃんはユズちゃんと別れて足止め組。
ユズちゃんには単独行動してもらって差押え品保管所へ向かってもらう「Bプラン」。
アリスちゃんにはわざと捕まってもらって電力遮断による停電の際に反省室から脱出、最悪私たちがC&C2人を抑えている間に差押え品保管所へ向かってもらって「鏡」を回収してもらう「Cプラン」を用意します。
私達は別にC&Cやセミナーを打倒するのが目的では無いので、誰か一人でも差押え品保管所へたどり着ければそれでいいと思います。
それに、C&Cの1人は狙撃特化の生徒、カリン先輩が居るので私たちが相手にするのは実質1人ですから。」
ウタハがミドリの肩に手を置く。
「ならそれでいこう。
最上階となれば狙撃ポイントも絞られる、カリンは私とヒビキが抑える。」
そして、現在──────
「じゃあそっちは順調なんだな?モモイ。」
『うん!大丈夫だよ!今のところカメラの視界をヴェリタスが奪ってくれてるからバレてない!
ヒビキとウタハ先輩は?』
モモイからの通信に小鈎が応答する。
『もう、「お客さん」を出迎える準備は出来てるって。
先生、こちらは何時でもいいよ。』
『私達はそろそろ警備ロボを掻い潜るのも限界だからお願い!先生!』
俺は監視カメラ一歩手前で待機している。
その1台の監視カメラだけはタイムリーな映像がセミナーの中央作戦司令室に映っている筈だ。
『......正直、衛宮先生のこと誤解してたかも。
本当はね、衛宮先生が敵に回るんじゃないか、ってずっと思ってたんだ。』
モモイのテンションが下がっていく。
「........まぁ、訳を話すとちょっと事情があってな。
でも次はもう少し穏便な方法でやろうな?モモイ。」
通信向こうからは溜息が1回。
『......ちょっと認めたらこれだよー。あー真面目先生はヤダヤダ。』
なんて今度は俺をからかうように笑って話すモモイ。
『でも、危険なことに巻き込んじゃってごめんね。
「鏡」で「G.Bible」を開けてテイルズ・サガ・クロニクル2が出来たら一番最初に衛宮先生にプレイしてもらうから覚悟しておいてね!』
それは無事でいてね、というモモイからの言葉。
「....あぁ、楽しみにしてる。
お前こそ、腕とか怪我するんじゃないぞ?
モモイだけじゃない、ミドリもアリスもユズもだ。
みんな無事で部室に戻ること。
じゃないとお説教だ。」
『はーい!』『はい!』
『はい....分かりました。』
そうして、最後の通信が終わった。
「よし、行くぞ「モモイ」「ミドリ」」
「オッケー!準備万端だよ!」
「わかりました!」
そうして、俺たちは一歩、差押え品保管所に1番の遠回りの道へと、足を踏み出した。
「.....っと、この辺りでいいのか?」
「すごく奥の方まで来た感じですが.....恐らく間違ってはいないかと。」
「───!!」
2人を庇うように前に出る。
なるべく時間を稼ぐのであれば2人の正体を暴かれない方がいい。
「こんばんわ、良い夜ですね。
あなた方のここまでの行動は監視カメラで全て把握させて頂きました。
もうお気づきかと思いますが、あなた達の計画はもう失敗しています。
こちらは「押収品」の保管庫から離れていますしね。
お早めに投降することをお勧めしますが、それでも抵抗なさいますか?」
彼女はスカートの裾を掴み礼儀正しく挨拶をした。
「失礼しました。
改めまして、私はC&Cのコールサイン・
本名は.........秘密ですので、謎多き美女メイドとでも。」
突飛すぎる.....なんだそれは。
「───────────は?お前そういうキャラだったのか?」
「「え?!」」
後ろのふたりが何か物申すことがあるのか裾を引っ張る。
「....衛宮先生、アカネ先輩のこと知ってるの?」
あ..... しまった。
つい口を滑らせちまった。
とは言いつつ「モモイ」も本名を知っているなら別になんの問題も────
「アカネ先輩の特技って「暗殺」なんだよ?」
「あぁ、道理で気配が察せないわけか。
つまるところ、アサシン、って所か。」
彼女は遺憾の表情を浮かべた。
「......一応秘密のエージェントのはずなのですが、いつの間にそんな知られ方を....正体を明かさない系ヒロインは、もう時代遅れなのでしょうか?」
「いや?そんなことは無いと思うぞ?
本名や正体を隠すってのは相手に手の内を悟られない一種のアドバンテージとも言えるからな。
頭の良さそうな室笠にピッタリだ。」
そう褒めると彼女は顔を赤らめて笑う。
「あ、あら?
ありがとうございます。
何でしょう褒められるとこんなにもポカポカするのですね.....。
ふう、.....さて。
そろそろ始めましょうか....「先生」。」
室笠の目つきが切り替わった。
殺気と敵視。
完全にこちらを倒す対象として見ているその目にゾクッと背筋が痺れ出す。
「
俺はホシノの盾を構える。
「あら?「剣」は出さないのですか?
それとも、私相手には必要ないというお考えで?」
「何言ってんだ。
お前が戦うのは俺じゃない。「モモイ」と「ミドリ」。
だろ?」
実際は、俺は生徒に刃を向けられない。
もどかしいが、仕方がない。
「なるほど....衛宮先生が盾となり、後ろの2人が銃座という事ですね。
私の攻めにいつまで耐えられますか!!」
「!!!」
(パパパンッ!!!)
こうして、囮役の俺達の戦闘がここに始まった。