衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
「という訳だ、衛宮。
言うなれば言峰綺礼という人間を構成する物が魂の悪性、精神の善性なのであれば今度こそ言峰綺礼という人間は死んだ事になるな。」
フフフ、と笑っていいやがる。
「ふざけるな!!そんな絵空物語信じられるか!
第一、なんで聖杯がキヴォトスに繋がってることになるんだよ!」
俺の質問に言峰は揚げ足を取るように返した。
「私は一度も、聖杯が此処に繋がっているとは言っていないが?」
「じゃあどうやってきたって?」
「聞いていなかったのか?「根源」と言ったのだが。
凛から、魔術特性の話については聞いているだろう?」
俺は頷く。
人には「起源」って奴があって。俺は「剣」らしい。
「知ってるけど、それがなんだってんだよ。」
奴は解説する。
「「根源」とは世界における「起源」そのものと思え。
この世界における何もかもの源流だ。
10であり、1であり、また0でもある。
全ての原点。」
そういえば遠坂からそんな話をされたような、されてないような。
「魔術師が目指す目標そのものだ。
それが聖杯に繋がっていた。」
「....勿体ぶらずに説明しろよ。
自慢話ってわけじゃないんだろ?」
やつは俺に向き直る。
「いいだろう。お前にもわかるように説明してやろう。
「根源」とは原点、万物の始まりだ。
逆を言えば「根源」からなら何処にでも繋がっている。
私はその道を通してキヴォトスに降り立ったに過ぎない。」
「じゃあ俺は。」
「お前がここにいる理由など、私が知る由もない。」
俺は聖杯戦争の終わった6年後にここに飛ばされた。
つまり、言峰とは違う方法で此処に来た事になる。
「他に、質問はあるかね?
今日の私は随分と機嫌がいい。
いくらでも質問に答えてやろう。」
まぁ、初めて来る場所で、なれない常識や光景を目の当たりにして、質問なんていくらでもあるんだが。
手始めはこいつのことだ。
今のこいつの立場を理解しておかないと、不安で仕方ない。
「....さっき言ってた「悪行による幸福を感じたい」ってのはどういう意味だ?」
ふむ、と顎に手を当てながら真剣に考える言峰。
「ひとつ聞くがね、衛宮。
人間を構成している要素は知っているか?」
は?
「そんなの水が70%~80%で鉄分とか塩分とか、詳しくは分からないけど。
「違う、科学的な事を聞いている訳では無い。
人間とは「肉体」「精神」「魂」の3つで構成されているとされている。
サーヴァントもだいたいは同じだっただろう?」
あぁ、その説明なら納得はいく。
聖杯の力により肉体を形作り、精神、魂を召喚する。
そして召喚したサーヴァントの魂を夜にとどめるのはマスターの役割だった。
「私の肉体はお前の一撃で死にかけていた。
いや、死んでも生きてもいない状態だ。
そして、精神は聖職者としての正のもの。
反対に魂は「他人の不幸にしか生きる意義を見いだせない」負の性質を持っていた。」
「.....あんた、随分とぶっちゃけるな?」
「何、今の私は言峰綺礼であって言峰綺礼ではない。
身の上話にもならないのでね、痛くも痒くもないのだよ。
話を続けるぞ衛宮。
私は根源に至る途中でアレに出会った。」
「アレって、なんだよ?」
「この世界において、「色彩」と呼ばれている、超常的なナニか、だ。」
話している言峰の顔が真っ青になっていく。
「おい、大丈夫かよ。」
「あ、あぁ。済まない、少し気分を悪くしただけだ。」
コイツが俺に対して素直に謝った?
「その色彩はあの聖杯の泥のように例外なく汚染し、発狂させ、その性質を反転させる。」
反転させる?
「じゃあお前はその「色彩」って奴に触れられて悪い性根を洗い流されたってのか?」
「フッ、単純だな。衛宮。
それならばどれだけ救われたか。」
あいつは額に汗をかきながら俺を小馬鹿にした口調で話す。
あぁ、なんか腹が立ってきた。
「事はそう単純では無い。
言っただろう。私の精神は元より「正」であると。」
??
話が見えない。
こいつはわざわざ分かりにくい言い方をする。
いい加減腹が立ってきた。
「つまりだ。
今の私は根っこが善人。
表面は悪人という事だ。
善行でしか楽しみを見いだせないが、私の精神は過去の行いによる愉悦を覚えている。
しかし、魂が善性を持つため、悪行をどれほど行おうが満たされない。
いざ欲しがっていた他人の価値観を手に入れればこれだ
これならば、以前の方がマシだったろうにな。」
フッ、と笑みを零し、姿勢を正した言峰は言う。
「故に衛宮、私を信じるな。私の言葉を鵜呑みにするな。
二重人格のようなもの、この身はかなり不安定だ。」
結局、こいつのことは信用出来ずじまい、という事だ。
「じゃ、次。
この世界の武器はかなり攻撃力が高いみたいだな。
投影した剣がすぐに銃弾で破壊された。」
「─────────それは違うぞ衛宮。
聞いた限りだが、3つほど要因が挙げられる。」
驚いた、3つも要因があるのか。
情報の足らない俺には答えが出せなかったってのに。
随分とこいつは
「まず、1つ目だ。
この世界にも神秘が溢れている。
それは生徒一人一人の体の中に宿っていてな。
彼女たちが放つ銃弾はただの弾丸では無い。
言うなれば凛の使う「
とはいえ、それでもお前の投影精度ならばすぐさま破壊される恐れは無い。」
ならどうして。
「疑問が顔に出ているぞ、結論をそう急ぐな。
2つ目だ。
世界の強制力、またはそれに近いものによる圧力だろう。」
───は?
「いや、それはおかしい、だって現にあっちでは投影したものはずっと残り続けたんだぞ?」
遠坂の言っていた世界の強制力による崩壊なら────
「では、聞くがね、衛宮士郎。
この銃弾の飛び交うキヴォトスにおいて、剣の存在が、居場所があると思うか?」
「いや、それは────」
無い。
投影の問題はあったとはいえだ。
一度戦ってみたが少なくとも今の俺では太刀打ちできない。
「全盛期の私であれば、黒鍵を用いて銃弾を弾く行為など簡単だったろうが、それでは意味が無い。
銃には銃を
大砲には大砲を。
故にこの世界においての剣の存在は著しく希少だ。
それこそ、あって数本だろう。」
「じゃあ、剣という概念が消えかかってるから、俺の投影した剣が壊れやすいって事なのか?」
やつは淡々と説明する。
「あくまで推論の域を出ないがな。
なんなら魔術、という概念が使えなくなっても不思議では無い。
なぜなら元よりこの
そして、3つ目だ。
お前の「起源」であるものが変質している可能性だ。」
「俺の起源が....?」
「元より「剣」という概念が脆くなっているというのであればお前自身の「起源」である「剣」が変質、または弱くなってきている可能性がある。
変質しているなら希望はあるが、「起源」は人をそれたらしめる。
言うなればお前の存在そのものだ。
それが無くなったとしたら、さて、その時お前はどうなるだろうな?」
ニタニタと笑いながらあいつは言いやがった。
俺の起源───剣は心象風景と同義だ。
剣は、俺自身を意味している。
となれば───
「俺が、消える。って事か?」
「いずれそうなってもおかしくは無いという事だ。
仕事に熱が入っているところに水を指して悪いがその場合、残されている時間がどのくらいなのか具体的には分からない。
覚悟しておけ。
それと魔術の存在の有無に関してだが、使用しようとは思うな。
お前は自らの爆弾のタイマーを早めることになる。」
「───────────」
「当然ながらお前は元の世界に戻れない。
確かにこの世界において聖杯による「孔」でもあれば話は違うがな。
お前が今セイバーを連れていないのであれば聖杯が存在している、という私の予想外れていたようだな?」
「は?」
何を言って居るのか訳が分からない。
何だってここでセイバーの名前が出てくるんだ?
奴は愉快なフリをして笑う。
言うなれば「他人の苦痛に悦びを見出す」フリをしていた。
とにかく、魔術を使おうが使わまいが、身の危険が、存在が危険に晒されているということらしい。
「 ....くそっ、時間制限付きの『先生』って訳か。」
「そう悲観することもない。
喜べ、青年よ。
君の願いはようやく叶う。
何、誰も悪くない、何も悪くない。
ここに居るのはなんの責任も持たない無垢な子供たちばかりなのだから。
お前は全ての生徒を救う事が出来るだろう?
そうだ、それについてひとつ情報を渡しておこう。
この世界には子供を利用して何かをしようとしている大人達が居る。
その集団の名前は「ゲマトリア」」
「ゲマトリア...?」
「そうだ。
彼らはこの世界において 子供を道具としてしか見ていない探求者の集まりだ。
その1人がアビドスにいるとある少女を随分と気にかけているようでな?
裏で随分と手を引いているようだ。
気にかけてやるといい。」
そんなの言われるまでもない。
俺はその言葉を聞いて振り返る。
「せいぜい気をつけたまえ、衛宮士郎。
相談であればいつでも乗ろう。」
「いいや、二度と来るもんか!」
(ギギギギ.....!───バタンッ!)
俺は乱暴に扉を閉めて。
聖堂を後にした。
もう少しステイナイト要素を取り入れたく思い、下記から希望を選んでください。尚セイバーはとある事情で省いてます。遠坂凛はうっかり意外人間性が完成しすぎてるので省きます。
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間桐桜 (士郎の背中を追い先生に)
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無銘寄りのアーチャー(執事)
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イリヤ(シッテムの箱所属)
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上記三人とも。
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士郎と麻婆だけでいい