衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
ので、「士郎」の足枷と思っていただければ。
あと、アリスの体重が分かりません。
ネルの足、大丈夫かな?
あとアリスって血、流れるのかな?
「モモイ!ミドリ!無事ですか!」
早瀬と室笠を引き上げたアリスが再び2人へ向く。
「......。」
「アリスちゃん....」
「「うわぁぁぁぁぁん!!!」」
ひしっとモモイとミドリがアリスに抱きついた。
「え? ....あ、アリス何かしてしまったのでしょうか....もしかしてアリスがモモイとミドリを泣かせてしまったのでしょうか?
2人とも砲撃に巻き込まれたのですか?」
「んいや、いいタイミングだったしコンビネーションも完璧だったとおもうぞ。
俺からも言わせてくれ。ありがとな。」
「アリスは「鏡」より、モモイとミドリの身が心配でした。
ですが良かったです!2人とも無事でした!」
ニッコリと笑う彼女。
「うぅ....ありがとうアリスちゃん....本当にありがとう!」
「やっぱりウチのアリスはいい子だよぉぉ....!」
泣きながらアリスに抱きつく2人を微笑ましく眺めているとユズに裾を引っ張られる。
「遅くなって...そのごめんなさい。
支援に行ってて。」
だから途中から狙撃が止まっていたのか。
「いやむしろ助かった。ウタハは?」
「まだ戦闘中です....。
でもヒビキちゃんの閃光迫撃弾で視界を奪われているので...おそらく...」
目と感覚を奪われた狙撃手がどうなるかは非常にわかりやすい。
「いや、狙撃が続いてたら今頃万事休すだった。
よし、4人とも、「鏡」、回収しに行くか。」
「
俺達はいつ崩れてもおかしくないようなガタガタの内装になった差押え品保管所へと足を踏み入れた。
周囲は割れたガラスの破片が散乱しており、棚もあちらこちら倒れている。
「....「鏡」無事かな?」
確かにその点だけ心配だ。
あれだけ派手に暴れたのだから跳弾や振動で破壊されていてもおかしくは無い。
が、ミドリの不安など必要無かったかのようにモモイが棚にあったそれを手に取った。
「─────!
あったよ!皆。「鏡」だ!!」
「「おぉぉ.....」」
それは手のひらサイズのポートのついたモバイルバッテリーのような外装をしていた。
「....そりゃ「鏡」って言ってもシステムツールの愛称みたいなもんだからまんま鏡なわけないか。」
「よし!早く帰──────」
モモイが、勝利宣言をしようとした、その時だった。
「 .....静かに、ミュートでお願いします.....。」
「..?アリス?」
アリスがその短い腕を俺たちの前を遮るように伸ばして静止したのだ。
「誰かがこちらに接近中....足音から考えて、恐らく人数は一人。」
「......このタイミングで?」
誰だ?C&Cの主要メンバーは全員倒したはずだ。
「大丈夫!全員揃った今の私たちなら相手が誰だって───」
そうして、「鏡」を持ったまま、モモイは駆け出した。
「ま、待ってお姉ちゃん!ハレ先輩から逃げろって連絡が────」
ミドリの言葉にアリスが相手の特徴を話した。
「身長、146cm、ダブル
「────────え?」
2人の言葉があと少し早ければ、隠れるなり誤魔化すなりできただろう。
が、もう遅く、やってきた相手の鋭いその眼孔が、俺たち5人を捉えた。
「おう、テメェら。」
(ビクッ!)
その一言だけで、モモイが凍りついた。
「こんな所で一体何してやがる。
つーか、めちゃくちゃだな、おい。」
現れた彼女は部屋や廊下を見渡して、こちらを責めるように言った。
「うそ.....ネル先輩....?」
「ミレニアムには居ないはずじゃ.......。」
「どうにかごまかせない?」
モモイが弱音を吐くが、もう無理だ。
相手は俺達がここに居ると、その目で捉えてしまった。
まるで獰猛なドラゴンのようなその瞳が、「逃がさない」と告げている。
相手の動機や犯人かどうかなど関係ない。
目の前の敵は叩く、そんな雰囲気を漂わせながらこちらに1歩1歩、近づいてくる。
「さすがにネル先輩相手は無理だよ!」
「どうにか隙を作らないと.....」
モモイとミドリ、そしてアリスまでもが後ずさりする。
「アリス、体が震えてます.....これは、一体....!」
「そいつは恐怖って奴じゃないか?」
(ジャキッ)
美甘の銃口が俺達に向けられた。
しかし、唯一、ユズだけが、逃げずにネルを正面から見ている。
「....戦おう。」
「えっ!?」
「ちょっとユズ!?正気!?」
モモイやミドリの制止を振り切って、ユズは話す。
「.....この状況じゃ、ネル先輩から逃げ切るのは....無理。」
「.......」
現状を再確認する。
俺たちは差押え品保管所から一、二歩外に出ただけ。
上がってきた階段の方からC&Cのリーダーが歩いてきている。
反対側といえば、行き止まり。
否、非常用階段がある為行き止まりと言うには語弊はあるものの、背中を向ければ確実に蜂の巣になるだろうことは明白だ。
結論から言うと、ここは廊下の突き当たりの部屋であり、帰るにはどうしても美甘ネルと正面から対峙する事になる。
「だな。モモイ、ミドリ、アリス。
疲れてるところ悪いが帰るまでが遠足だ。」
俺もユズの言葉に賛同する。
「.....あ?なんだよ、根性あんのは部長とあんただけか?。」
睨みを聞かせた美甘の嫌味に、モモイが反応した。
「そ、そんな事ない!ユズが戦うなら私も戦う....1人でも掛けたらその時点で私たちの最高のゲームは作れないから!!
行こう!ミドリ、アリス!
ネル先輩に
モモイの激にミドリの表情が切り替わった。
「....そうだね、みんなで帰るんだ!」
「おうおう、そう来なくっちゃな!
んで?そこの無駄にデケぇ武器持ってるあんた。」
美甘がアリスを指差すが、当の本人は俺の後ろに隠れたままキョロキョロとしている。
「.....?」
「あんただよ!あんた!
ミレニアムの生徒か?見覚えのねぇ顔だな。」
(ギクゥッ!)
モモイが勢いよく美甘から顔を背け、ミドリと内緒話をし始める。
(ア、アリスの件、まさかバレちゃった!?)
(それこそまさかでしょ。
いくら何でもミレニアムの生徒一人一人顔と名前を覚えてる生徒なんて居ないよ。
それこそ
「........」
アリスは怯えたまま、俺の前に出る。
─────しかし。
「.....マスター・シロウ。」
「おい!てめぇ、無視すんな!ゴラァ!」
振り向くことなく、彼女は言った。
「これは限りなく負けイベントの予感がします。
ですが、マスター達となら、そんなイベントだって、乗り越えられるはずです!」
ギュッ、と拳を握りこんで、初めて感じるであろう「恐怖」に立ち向かう。
「なぜなら私たちはこの先の長い道、苦楽を共にするパーティーだからです!!」
(ガコンッ!ウィィィィィィィン....!)
「─────ハ、やる気満々ってか?
悪くねぇ。
いいぜ、C&C、コールサイン
アリスが砲撃体勢をとると同時に、相手も走り出した。
いや走り出すなんて生易しいものじゃない。
あれは前方への跳躍だ。
彼女は廊下空中で前転するように身を翻らせこちらに迫る。
「────!?
速い、アリス!待────」
「行きます!魔力充填100%.......!
光────」
「─────遅せぇッ!!」
「───!?」
彼女はアリスの
(ドガァァァァァンッッ!!!)
白い閃光に続き、青白い爆発が廊下を包む。
俺が美甘の動きを察知した時にはもう、アリスはチャージしたエネルギーを全て解放し、廊下一帯を削るようにレールガンを発射していたのだ。
「うわっ!!」
「何....これ!」
辺りには煙が充満し、敵の位置も、モモイ、ミドリ、ユズの位置すら見えなくなった。
「.....やりました...か....?」
にも関わらず───────
(ダダダダダダダダッ!!!)
「あうっ!」
「アリス───ッ!!」
美甘ネルはこの爆煙の中でさえも、放った弾をアリスに全弾命中させた。
美甘の位置を探ろうと、アリスは
「だからよ───────」
その爆煙が2つに切り裂かれそうな程の速度で疾走する影があった。
体制を低くし、なるべく風の抵抗を受けないように走るそれは、身長が低く、身のこなしが軽いものにしか出来ないものだ。
彼女の強さはホシノとも、ヒナとも違う、なんというのか身動きの軽さは、それこそランサーのそれだった。
「──────遅せぇつってんだろッ!」
(ドガッ!!)
「─────あ....。」
その影はそのまま、アリスの横っ腹を蹴り飛ばし────
(ズダァァン!)
「アリス────!!」
彼女は反対の非常口まで、それこそ弾丸のように飛翔し非常用階段の扉を凹ませるほどの衝撃を身に受け、ようやくとまった。
距離は目算で300mくらいだろうか?
ありえない。
アリスの体重がどのくらいなのかは分からないが、140kgもあるレールガンと共に、美甘ネルは蹴り飛ばしたのだ。
「あ...え... アリスは..................。」
そうして何が起きたのか分からない様子のアリスはグラりと、体を起こした。
しかし、人間で言う脳震盪のようなものを起こしているのか、彼女の体は二本の足では支えれなくなっていた。
バタっと膝と手を床につく。
ここまで、ほんの一瞬の出来事だった。
「─────そんな、バカな。」
視界が晴れていく、がそれに関わらず、今の音、声と現状を視認することで、何が起こったか後ろにいた3人は凡その事態を把握した。
「嘘.......」
「アリスちゃんが......一瞬でのされちゃった。」
(ダダダダダダダッ!!)
「あ?」
(スッ!)
ミドリの隣、モモイの銃口が火を吹いた。
当てるつもりがなかったのか、牽制射撃は美甘の足元に着弾する。
「ぼーっとしてないで!
アリス!挟み撃ちしよ!いくらなんでもネル先輩でも分身はできない─────」
「チッ.....わかってねぇな、てめぇ。」
イライラしながらこちらを振り向く美甘。
「わかってないって....」
「なんの事....?」
首を傾げたモモイとミドリ相手に「はぁ」と溜息をついた彼女は嫌々説明する。
「あそこのチビが今ビームをあたしに向けて撃ったら、お前らはどうなんだよ。」
「あ!!」
それで気づいた。
クロスファイア所では無い、敵を巻き込んだフレンドリーファイアと言った方が正しい。
そして、美甘ネルが最初にアリスに標的を定めた理由を、ユズが理解し説明する。
「....アリスちゃんの銃は火力が高すぎて、私達に向けて使えない.....だから、自分が挟まるようにして直線上にアリスちゃんを......」
「そうか火力が高すぎるのが仇になったのか...アリスが今撃ったら同士討ちに────」
「頭悪いな「先生」。
アビドスで陣頭指揮してたのと同じ奴とは思えねぇな。」
「.....」
彼女はやる気が削がれたとばかりに、俺に向かって言う。
「あ~ぁ。ガッカリだぜ。
魔法使い─────いや魔術師だっけか?
お前が指揮してるなら面白そうな戦いが出来ると思ったんだけどな。
なんだよ、その程度かよ。
アリスつったか?
てめぇの武器は確かに強ぇ。
だがな、チャージは勿論、引き金を引いた後の発射まで最低でも
それだけ余裕がありゃ懐に飛び込むくらいあたしには余裕なんだよ。」
コンマ数秒が余裕というのは大袈裟な言い分ではないだろう。
何しろ目の前でそれを見せられている。
100mはあろうその距離を一瞬で縮めた彼女にとっては射線や射程など論外。
何せ見えるし当たらない、そして────
「んで、あたしの持ってんのはサブマシ。
つまり中~近距離の得意なあたしに懐に潜り込まれ、見失った時点でてめぇの負けは確定してんだよ。」
美甘がアリスに叫ぶように伝えた。
(ガゴンッ!!!)
その会話相手の彼女といえば、頭や至る所から赤い液体を流しながら、レールガンを支えにして立ち上がった。
髪は至る所ちぎれ、左腕はあらぬ方向に曲がり、足さえもガクガクと震えている。
「悪ぃな、ある程度加減したつもりだったんだけどな。」
「アリスは.....まだ、やれます....。」
それでもなお立ち上がるその姿にどうしても既視感を覚える。
「このっ!!」
「よくもアリスちゃんを!!!」
その姿を見たモモイとミドリが激昂して走り出す。
最初は怯えていたにも関わらず、美甘に向かって走り出しながら指先を弾いた。
(ダダダダダダダダダダダダッッッ!!)
「待てお前ら─────?!」
何も考えずではない、モモイが先頭に、ピッタリとミドリが背後に潜むように直線上に並んでいた。
「ハッ!そう来なくちゃなぁっ!」
駆け抜けるモモイに対し、ぶつかる気なのでは無いかという速度で美甘が突撃してくる。
モモイと美甘が衝突すると思ったその瞬間。
「とぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっっっ!!!」
(ズサァァァァ!)
(ダダダダダダッッッ!!!)
「うぉっ!?」
サブマシンガンの銃弾をその身で受けながらも、モモイがスライディングで美甘の足を蹴り飛ばした。
当然美甘は体勢を崩し、手前に倒れ込む。
美甘とすれ違いざまにモモイが振り返って叫ぶ。
「今だよ!ミドリ!!」
「OK!お姉ちゃん!!!」
(パァン!!パァン!!パァン!!)
それを逃さず、阿吽の呼吸でミドリが脳天に弾丸を数発狙い撃った。
「ガハッ!?」
空中で、支えるものもなく、回避運動も取れずに美甘は頭から床に倒れ込んだ。
「やった!!」
「仇はとったよアリ──────」
勝ちを確信した2人。
しかし─────
「躊躇いなく頭になぁ.....やるじゃねぇか!!」
彼女は体を起こした。
間違いなく、弾丸は眉間に命中していたはず。
それで、俺はようやく美甘ネルの力の根源に気づいた。
「アイツの強さは、速度だけじゃない、タフさもか.....」
いわば根性。
何度撃たれようと立ち上がる底力。
それが美甘ネルを最強と言わせしめている。
「嘘だっ!なんでミドリの射撃を受けて立ってられるのさ....!」
「あ?あれしきでくたばるやつはC&Cに居ねぇよ。」
「......そんな...」
(カシャッ....)
ミドリが銃を床に落とした。
彼女を倒すには、やはりアリスのレールガンレベルの火力がなければ─────
「っと、お返しだ。
今度はあたしのターンだッ!!」
放心するミドリに美甘ネルが迫る。
「さ、させないっ!!!」
ユズが前に出てグレネードを数発撃ち込んだ、が、彼女はそれを
「おらおらぁぁぁっ!!!!」
(ダダダダダダダダッ!!!)
(チュンチュイーンッ....ドカァァァン!)
───走りながら迎撃して、爆散させた。
「ミドリッ!!!」
美甘が、ミドリに迫り────俺は。
(ガキイィィィン!!)
(ダダダダダダッ!!)
その二丁の銃口を、ウタハから預かった剣で弾き、射角をそらした。
「─────なっ!?───────」
美甘の息を飲む声が聞こえる。
見えない何かに防がれたからか、それとも「先生」である俺が前に出たことか。
が、そんなのどうだっていい。
神速の、それも大気を切り刻む風に挑もうと言うのだ。
集中しなければ、こちらが死ぬ。
「.....いいぜ!面白ぇ!!」
彼女のエンジンに火がついたのか、目付きが変わる。
先程までとは違う、殺気に身の毛がよだつ。
「イリヤ!守りを頼む!!」
が、銃弾はともかく、近接攻撃でのダメージは相殺できない。
つまり、俺が美甘に蹴り飛ばされたその時は、内蔵という内蔵が破裂して死ぬことになる。
『シ、シロウ!』
「生徒の為に、命掛けられなくて、何が「先生」だ!!」
「よく言った!なら容赦しねぇぜ!!」
(ダダダダダダダダッッ!!!)
彼女が構える二丁のサブマシンガンが弾幕を放つ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっっ─────!!!!」
それを夢中で払い除ける。
(カンカンカンッ!!)
軽い金属音、それが数十回は続いた。
相手だって弾が無限な訳じゃない。
リロードする瞬間だって出てくる。
その隙に距離を詰めて、ミドリとモモイから彼女を引き剥がす!
「チッ!!どうやって防いでんだよッ!!」
それ見た事か、彼女はリロードするために後方へ跳躍した。
そんな暇は与えない。
足をバネのようにして飛び込む。
「あぁぁぁぁぁっっっ!!!」
剣を振りかぶり。
それで──────終わり、俺は生徒に剣を振り抜くことは出来ない。
そんなことは分かっていた。
体がとか、制約がなど、関係ない。
結局のところ美甘が、何をしたというのか。
彼女はC&Cだが、私用でミレニアムを離れていた。
故に演習などではなく、C&Cとして、暴れているゲーム開発部を制圧しようと、自らの責務を全うしようとしているだけなのだ。
頭に引っ張られ、走る勢いが、落ちる。
「は?てめぇ、あたしをバカにしてんのか!ぁあ?」
その姿に激昂したのか、リロードの終わったネルが俺の懐へ入り込んだ。
思考に耽ったのは本当に一瞬だった。
彼女は大きく足を折りたたみ────────
「戦う気がねぇなら出てくんなッ!!!」
俺を蹴り飛ばした。
「─────!!」
蹴り自体は剣で防いだ。
しかし勢いを殺せない。
俺もアリスのように壁に打ち付けられる。
「衛宮先生────!!」
しかし、俺の体はミンチにはならなかった。
非常用階段の扉との間に緩衝材になったもの────否、者がいた。
「......ユズ!」
「......。」
割って入った彼女は頭を強く打ったのか意識を失った。
このままでは全員全滅する。
俺は戦えず、モモイとミドリの攻撃が通用しな─────
──────違う、アリスの攻撃なら美甘ネルを退かせることはできる。
「アリス!!撃て!!」
俺は向かい側の廊下奥にいるアリスへ叫んだ。
「 .....ですが!それではモモイやマスターも!」
「なんとかする!だから撃て!
俺を信じろ!アリス─────!!」
「はぁ?この期に及んで相打ち狙いか?
ったく、つまんねぇなぁ......」
「そんなんじゃない!!モモイ!どうにかネルを撒いてこっち側に!!」
何するにしても、アリスの剣の斜線なら、ネルより先にモモイに当たる。
「わかった!!私、士郎を信じるからね!」
ボロボロになったモモイがこちら側に走ってくる。
「行かせると思って──────」
モモイに美甘が振り返った直後。
「撃たせない、例え銃弾が効かなくても!!」
背中を向けた美甘の頭上の蛍光灯を、ミドリが破壊した。
降り注ぐガラスには目もくれず、美甘がモモイに手を伸ばした。
それを────
「ドットを打つように緻密に……シュート────!」
(パァァァァン!!)
(チュインッ!)
「痛った!」
ミドリの放った弾丸が、ガラス片を弾き飛ばして、ネルの行動を妨げた。
そうして、
(ガコンッ!......ウィィィィィィン.....)
「魔力量と体の損傷からして、これが最後の一撃───────
ですが外しはしません!
貫け!バランス崩壊!!」
(ドゥォォン!!)
アリスのレールガンからビームが発射された。
当然最初と同じく、廊下の柱、壁、全て丸ごと抉るように、白い光がこちらへ迫ってくる。
「バカッ野郎!それじゃあそこのチビ共も─────」
ネルは何か、焦るようにこちらへ駆け寄ってくる。
"
ネルが、モモイを庇うように抱きしめた。
そうか、焦っていたのはその為だったのか。
そうして、花弁が、この場の全員を護る為に開いた。
「てめぇ馬鹿か!何てこと──────は!?」
衝撃に瞳を開く。
そこに映ったのは淡いピンク色の、まるで花のような壁を展開し、右腕で支える男の姿。
それで気がついた。
今のは同士討ちでも無ければ相討ち狙いでもない。
コイツは、あのアリスとかいうよく分からねぇガキを信用して、アリスはこの衛宮士郎とかいう訳の分からねぇ「先生」を信じてお互いに取れる最善の手を尽くしたのだと。
(バリン!!)
赤い壁が割れる。
「ガ────あああぁっ!」
「お、おい!!」
明らかに押されている。
あたしには魔術師なんてオカルトじみたもんは一切分からねぇが、これだけは言える。
この盾は最強だ。
あたしの弾丸だってこれを貫けるかどうかわからねぇくらいに硬ぇ。
だって言うのに、この壁は、盾は崩れかけている。
白い光と赤い光が火花を散らしている。
「衛宮先生!!」
「士郎!」
見ればあのチビ共があの先生の体を支えている。
何を言ってもいいわけにしかならねぇが、あたしは今、この男が作り出した盾に守られている。
チビ共もそれに協力してる。
「だってのにあたしだけ何もしないでこのまんま見物だァ?」
腸が煮えくり返りそうだ。
その原因の男を睨みつける。
ふと、視線が何かを捉えた。
いな、それは本能か感覚か。
幻覚に見えるそれはあの男の前の床に突き刺さっている。
先程まで散々っぱらあたしを邪魔してくれたあの剣だ。
「美甘!」
そんな折、話しかけられた。
「あ!?」
「悪い!俺が馬鹿だった!モモイとミドリとユズを連れて離脱してくれ!
そのくらいの時間しか稼げない!!」
1枚、また1枚花が散る。
「頼む!!お前なら─────」
で?てめぇはどうするんだよこの馬鹿野郎が!!
「あぁぁぁ!!!ざっけんなよこのまま借りつくったまま逃げれるかよっ!!」
無我夢中でその剣を掴み取った。
「おりゃぁぁぁぁぁぁ、」
指先がトリガーを押し込んだのと同時に振りかざす。
「あたしはコールサイン
この名前に誓って、負けなんて許されねぇんだよ────ッ!!」
(ブンッ!)
その瞬間、黄金の輝きが、白い閃光を切り裂いた。
それは、アリスとかいうチビの放ったビームを相殺するどころか、ミレニアムタワーを真っ二つに。
まるでケーキを切るように。
「は!?」
「やばいよ先生!建物が崩れるよ!」
(ギギギギギ)
軋む音と共にミレニアムタワーが倒壊する。
「アリス!!」
「マスター・シロウ!どうすればいいのでしょう!!」
駆け寄ってきたチビが大慌。
「んなの脱出するしかねぇだろぉが!!ついてこい!このアホ共が!」
「で、でもさっきまでアリス達は────」
「──ああああああ!!!こんな時まで馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!!死にてぇのか!」
「美甘の言う通りだ!アリスとにかく完全にミレニアムタワーが倒れる前に脱出するぞ!」
「こっちだ!非常用の階段が─────」
切り裂かれてる。
いや、うん。
溶けてねぇかこれ。
「ったくよ!エンジニア部の奴は何作ってんだよバカ!」
「いや俺が作ってくれって頼んだんだ!ウタハ達は悪くない!」
どんなからくりか知らないが剣はその姿を顕にしていた。
群青と黄金で塗装された剣。
つーかちゃっかり回収したのかよ。
崩れ掛けの階段を飛び降りる。
「急げ!時間がねぇぞ!!」
「う、うん!!」
そうして、倒壊するミレニアムタワーから、あたし達はなんとか脱出した。