衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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はい。どうも最終話です。

8位入賞してたりモモイがディスプレイだけじゃなくて錯乱して部室全体を攻撃してる改変を入れてますがあしからず。

士郎がモモイを怒らなかったのにもある程度の筋があったんですよ、って話です。


#18 ミレニアムプライス(1000年かけても得がたいもの)

そうして3日後。

 

「ミレニアムプライス....始まりましたね。」

 

 

俺たちはゲーム開発部の部室で1台のテレビを眺めていた。

 

「もし受賞してたらクラッカー鳴らそうか!

でもそうじゃなかったら....」

 

「...

すぐに、荷造りしなくちゃね...。

私たちはともかく、ユズちゃんとアリスちゃんは.....」

 

「.....。」

「....。」

 

2人して押し黙る。

 

 

「もしも、のことを話すのは建設的でいいんだけどさ、後ろ向きすぎてもダメだぞ。

 

あんなに頑張っ.....最後の方はかなりその......だらけてたけど。

皆全力を尽くしたじゃないか。

信じよう、お前たちの「テイルズ・サガ・クロニクル2」を。」

 

「え~!士郎!そこは余計なことは言わずにぴしっ!と決めようよ!」

 

 

画面には豊見が映り、ミレニアムプライスの司会を務めているようだ。

 

『これより、ミレニアムプライスを始めます!司会進行を担当するのは私、コトリです!

 

今回はこれまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。

おそらくは生徒会の方針変更により、部活維持の為に「成果」が必要になった影響かと思われます!』

 

 

 

 

「なぁ、生徒会の部活動の運営方針が変わったって本当なのか?」

 

ちょっと気になったのでモモイに聞いてみる。

「うん、 去年までなら部活動の定義が「部員が4人いること」だけでよかったんだけど....」

 

「今年から急に?なんでさ。」

 

俺の問いにモモイは答えられず、ユズのみがそれを知っていた。

 

「....一応部活動の説明会に出た時には「原因不明のミレニアムの予算の減少」らしくて.....。」

 

つまり、お金が.....無くなった?

 

「そんなことあるのか....って現に早瀬ずっと頭抱えてるからなぁ....

苦肉の策か。

そりゃみんな焦るわけだ。

 

まさか解説好きの豊見が司会進行するとは思っていなかったけどな。」

 

テレビの向こう側ではワクワクした様子の豊見が面白そうに今回提出された作品について語っている。

 

 

「それにしても史上最多、だって、お姉ちゃん。」

 

「うん ....それはちょっと困るなぁ....。」

 

『昨年の優勝作品であるノアさんの「思い出の詩集」は本来の意図とは少し違ったようですがその形而上(けいじじょう)的な言葉の羅列が、ミレニアム最高の不眠症に対する治療法として......』

ん?ノアが優勝した....って、これ個人でも登録できるものだったのか.....。

 

「というか、本来の意図と違うのに副次的効果で優勝って.....いいのかよ.....」

 

 

 

そうして、結果発表が始まる....のだが、何故か7位から上しか発表しない。

 

しかも初っ端の内容が無茶苦茶とんでもない。

製作者はウタハで、「光学迷彩()()セット。」

 

 

「───────は?」

 

ちょっと追いつけない。

 

『これはどうやらとある露出癖のある知り合いからの依頼で悩んでいたところに、さらに別の方から制作物を依頼されその設計図を見て「これだ!」とインスピレーションを貰うきっかけになったそうです。』

 

 

「この「別の制作依頼者」って.....衛宮先生の.....」

 

皆が一斉に壁に立てかけてある黄金の剣を見る。

 

「ち、違うぞ!絶対違う!」

 

何がどうして風王結界(インビジブル・エア)が光学迷彩下着になるんだよ....。

 

その後も次々と受賞した部活の作品が発表されていく。

 

されど、何時まで待とうと「ゲーム開発部」の名前は、呼ばれなかった。

 

『待望の1位....それは、新素材開発部の──────』

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

(ダダダダダダダダダダッ!!)

 

「お姉ちゃん!ダメ!!」

 

「モモイッ!」

 

部室に向かって銃を乱射し始めたモモイを止めに入る。

その弾丸は、皆の頑張って作ったゲームのオリジナルが入っているPCへ──────

 

『ちょ、ちょっとシロウ!!

やめなさ─────』

 

銃口を掌で塞ぐように被せた。

 

(ザシュッ......)

 

「あ...が───!!」

 

放たれた弾丸の内数発がテレビに直撃し、粉々になった。

 

しかし、どうやらPCは被害を免れたようだ。

 

 

 

 

「!!先生!!?」

 

「衛宮先生!!」

 

「マスター!!」

 

「────────し...ろう....な、なんで、そんなこと....手、手に穴が!!」

 

 

「このバカッ!!」

 

風穴の空いた手で、銃を(はた)き飛ばした。

 

「血、血が...」

 

「そんなのどうだっていい!!

お前、一体何をしようとしたのかわかってるのか!?」

 

激情に駆られ、両手でモモイの肩を激しく揺らした。

それほどまでにモモイのしたことはやってはならない行動だった。

 

「ど、どうせもう全部持ってかれ──────」

(パシッ!!!)

 

 

 

「「────────!!」」

 

 

初めて、生徒に、まともに手を挙げた。

俺の血がモモイの頬に付着する。

 

右手なんて、もう血だらけだ。

でも、そんなこと、本当にどうだっていい。

 

「お前は、皆であれだけ頑張って作ったゲームが「成果」として認められなかったからって、結果を受け止められなかった。

それはいい!

別に事実を認められなくったって。

 

だけどな、それで自分達のこれまでの努力を破壊しようとした。

 

なぁ、モモイ、答えてくれ!

 

それはお前達が心を込めて作ったものじゃなかったのか!?

 

 

「テイルズ・サガ・クロニクル」も「テイルズ・サガ・クロニクル2」もほかのゲームも皆お前にとっては八つ当たりするための物なのか?

 

ゲーム開発部ってのはそんな自分の手で壊せるような安いものだったのか!!!!!」

 

モモイの肩から手を離した。

 

制服は俺の血で汚れ、頬も肩も。

 

 

「だ、だって....だって....」

 

泣きじゃくるモモイ。

 

入賞出来ず悔しかったのだろうか、それとも部活が無くなることへの悲しみなのか。

 

「別に何処に行こうが、何を手に入れようが、それはお前たちの選択だし、言ってしまえばお前たちが得る「結果」で経験値みたいなもんだ。

 

別にそれはいいよ。

 

だけどさ、ダメだ。

自分のやったことに最後にはケチをつけて、激情に駆られて思い出を壊すなんてのはダメだ。

 

俺がゲーム開発部に来てから最初に言ったことを覚えてるか?」

 

 

 

「『物をちゃんと大切に扱いなさい』って言ってた.....」

 

思い出す素振りも無く、モモイは言葉にした。

 

ゲンコツが効いたのか、それとも本人にその意識があったからなのかは分からない。

 

 

「そうだ、お前が投げたゲーム機のコントローラも、部室も、そこの穴だらけになったテレビも、そしてPCの数々のゲーム達も。

 

お前にとってはそんなに簡単に捨てられるようなものじゃないだろ....?

だからこれまで頑張ってきた。

 

入賞出来なかったかもしれないけど、だからって無駄になったのか?無価値なのか?

 

違う.....ガラクタじゃないだろ。

少なくとも俺でさえ「テイルズ・サガ・クロニクル2」は協力して作った大事なものになったってのに。

 

俺はお前達にとってのゲームがそんなものであって欲しくない。」

 

泣いたまま、こくんと頷くモモイ。

もう、嗚咽に塗れて声を返すことも出来ないだろうが、しっかりと俺の言葉を聞いていた。

 

「同じ思いを胸に抱いて、今度こそ心を一つにして思いの詰まったものをつくれるこの環境が楽しかったんだよな?

嬉しかったんだよな?

 

間違いなくお前たちはこの1ヶ月、「ゲーム開発部」だったんだから。

 

だから悔しいんだよな?

悲しいんだよな?

 

だけど、全力を尽くしたなら、ちゃんと結果を受け止めなくちゃ。」

 

モモイを抱きしめて、背中をさすってやる。

 

これまでなんだかんだあったけど、ゲーム開発部をここまで引っ張ってきたのはモモイだった。

稚拙さはあれどしっかり成し遂げた事がある。

 

「モモイなら受け止められるって信じてるよ。

 

それにまだ、この間のネットにあげた評判だってミレニアムプライスと同時に見るって言って楽しみに取っておいたじゃないか。」

 

ミドリが言ったのだ。

 

『最初の段階での感想はやってもいない人による前作を前提に踏まえた否定的な意見しかない。』と。

 

だから3日後のミレニアムプライスと同時に見てみようと言ったのだ。

 

「う、うんっ...ご、ごめん、ごめん士郎、私、私酷いことした....」

 

「分かったから、もう泣くなモモイ。」

 

 

(ガチャッ)

 

そうして、モモイ達の心の余裕のないまま、早瀬がやってきた。

 

 

「モモイ、ミドリ、ユズ!それにアリスちゃんに先生!

お疲れ様でした!!」

 

満面の笑みで。

それは本当に意地悪がすぎるぞ、早瀬。

 

「..........」

「ひぃ!もう、ユウカが....」

 

 

 

「え....ど、どうしたのモモイ!

それに衛宮先生!?なんですかその手!!

 

やだ!直ぐに誰か呼んできますから!」

 

「ま、待ってくれ早瀬、モモイ達の立ち退きの件ならもう少し時間を与えて欲しいんだ!」

 

 

「はい?」

 

本当にキョトンとした顔で、首を傾げた。

 

 

 

「あなた達見てないの....?

私おめでとう、って言いに来たのに....」

 

 

「だって....わたしたち7位以内に入れなくて.....」

 

「はぁ?

何を言ってるのよ、今も放送中....あぁ、そういう事....」

 

早瀬がモモイをギッと睨んだ。

 

「そのテレビ、モモイが壊したのね、それで衛宮先生が止めようとしてこんな事になってる...と。」

 

 

「ま、待て説教は後回しだ!早瀬、それに俺がさっき怒った!

それより状況を伝えてくれ。」

 

「え、衛宮先生が怒るだなんて....本当に何しでかしたのよモモイ....

 

わ、わかりました。

端的に言えば、「ゲーム開発部」は特別賞を受賞したのよ。」

 

 

そう言って早瀬は中継が流れている端末を俺達に見せてきた。

 

 

 

 

『ミレニアムプライスはこれまて生徒達の才能と能力で作られた作品に対し、「実用性」。軸に据えて授賞を行ってきました。

 

これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています。

 

しかし今回の作品の中には、新しい角度から「実用性」を感じさせてくれたものがありました。

 

その「ゲーム」は前回は製作者サイドの各担当者が重要視する要素がバラバラであまりに酷かったことを記憶しています。』

 

 

これは前回の「テイルズ・サガ・クロニクル」の事だろう。

 

「ですが、今作はひとつにまとまったゲームとして、我々に懐かしい過去と初心を思い出させてくれました。

 

また、前作の評価から一辺「8位」にまで食い上がってきました。

 

 

制作期間が1ヶ月半ということもありこれは普通ではありえない事です。

 

この「ゲーム」は「製作者」達の未来の可能性を見せてくれました。

 

故に、私たち審査員一同は検討の末、異例の選択をすることにしました。

 

今回は「特別賞」を設けます。

その授賞作品は......

 

ゲーム開発部の「テイルズ・サガ・クロニクル2」

です!!」

 

 

 

俺達全員、困惑して固まっていた。

 

「8位」。

つまりゲーム開発部は正規の入賞は出来なかった。

 

が、「特別賞」を授かった。

 

 

「早瀬....つまりこれってさ...」

 

「本当におめでとう!

 

私もあなた達がアップロードした物をプレイしてみたのよ。

 

「前作」の要素を引き継ぎつつブラッシュアップと統合性の取れたゲーム。

 

とても面白かった!!

今あなた達の「TSC2」はとてつもない大騒ぎになってるわ!」

 

早瀬の言葉を聞いて、ユズが真っ先にPCを付けた。

その隣にアリスが立って一緒に情報を確認している。

 

「3日前にアップロードした時の最終チェックでは「テイルズ・サガ・クロニクル2」ですが、先程まではダウンロード回数8823、合計1372のコメントでした.....

 

しかし、ミレニアムプライスの発表以降には役26秒間でダウンロード回数が2万を超えました。

 

いまでも増え続けていて....」

 

「う、嘘.....こんなことあるの....?」

 

 

信じられないと、言った表情でモモイが立ち上がって自らの目で確認しに行った。

 

「ほんとだ.....でも低評価コメントも多いね......。」

 

「ううん、ミドリ、こっちを見てほしい....。」

 

ちょっと落胆したミドリにユズが別枠ウインドウでふたつのコメントを表示した。

 

「いいね、の多いコメント。

 

『実際にプレイするか、また時間を無駄にすることになるのではと何度も迷いました、ですが今はこう言えます。

 

「このゲームに出会えて、よかった。

製作者に感謝を。」』

 

 

 

『これまでミレニアムに対して偏見を持っていました。

冷静さと合理性しかないというミレニアムの生徒達への偏見は、今回のミレニアムプライスと「テイルズ・サガ・クロニクル2」を通して、完全になくなりました。』

 

 

って......ねぇ、アリスちゃん、お願い、私の頬つねって」

 

 

「わ、わかりました....」

 

(ギューッ!パシッ!)

 

「ゆ、夢じゃない....」

 

「じゃあ本当に....」

 

 

モモイとミドリが早瀬に向き直る。

 

「えぇ、ゲーム開発部の存続はとりあえず確定よ。」

 

 

「「や──────────

やったぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」

 

モモイとミドリはハイタッチしていて、アリスも嬉しそうにコメントの続きを読んでいる。

 

緊張の糸が切れたのか、気絶して椅子からユズがずり落ちた。

 

「お、おい .....全く、厳禁なヤツらだ。」

 

苦笑いして見守る俺の横を通り抜け、早瀬はモモイに謝った。

 

 

「ごめんなさい、モモイ。

ここにあるゲーム機の事をガラクタって言って.....。

 

あなた達のおかげで思い出したの。

あの時「テイルズ・サガ・クロニクル」を深夜までやりこんで

そしてこの「テイルズ・サガ・クロニクル2」をプレイして。

 

小さい頃に遊んでいた色々なゲームの事を。

久しぶりにあの頃の.....新しい世界で旅をする楽しさを感じられた....。ありがとう。」

 

 

「ユ、ユウカ.....」

 

仲直りもそこそこに。

 

「よし、実は今日のためにシャーレの皆にパーティの準備を

してもらってたんだ。

 

今日はお祝いするぞ!!」

 

「「おーーっ!!!」」

 

 

「って、衛宮先生!!怪我!怪我!先に治療です!!

 

モモイ!この件に関しては後でみっ~~~~~~~ちり聞かせてもらうんだから!!」

 

「げっ!?もう勘弁してよぉぉぉ~!!」

 

 

「「ははははははっっっ!!!」」

 

 

 

 

Vol.2 第2章 END To Be Continued...

 

Next chapter Vol3 第1章

 

 




この後は

絆インタールード
・モモイ
・アリスpart1
・ネル
・リオpart1
・ウタハ
・ユウカpart2

その後弊社キヴォトス時間軸の関係上エデン条約編に入らせていただきます。
誠に申し訳ありません。

以上Vol2前半戦お疲れ様でした。

Vol1は先生VS大人、という構図が多く書きやすかったのですが、
Vol2はその真逆 生徒VS生徒、

尚且つ先生概念に縛られ自由に戦えないという縛りをしたので最初からこの章が大きな壁になることはわかっていました。
右往左往しながら書いていたので皆さんからしても醜い様だったと思います。

え?エデン条約編はどうなのかって?
こっちはもとより想定していた抜け道と健在な壁があります、が推しが沢山いるので、やる気倍増─────

違う!Vol2に推しが全く居ないとか、書きにくいから逃げるわけじゃないやい!!

むしろVol2の2章はやりたいこと沢山あんだけど!
それをやるためにはエデン条約編を4章まで終わらせないといけないんだよ!!(迫真)

士郎&ネルVSトキとか。
士郎とリオの関わり合いとか!!

そこでやっと登場する鶴翼三連とか!!

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

  • 要る。
  • 後回し、本編に進んで
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