衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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時系列を述べておくと後の全員ほとんどがミレニアムプライスまでの待ち時間1ヶ月内に起こったことになります。


M.S.S Momoi's interlude 「無邪気な笑顔」

(てーれーれーれーてれれー)

 

テレビにYOU DIEの文字が映し出される。

 

「うわーーーん!!」

 

「惜しかったな、あと一歩だったってのに。」

 

 

 

「な、なんのこれしきで!」

 

 

 

ミレニアムプライスへ向け、ゲーム制作をしていたモモイ達だが、制作と休息の割合は3:7だった。

もちろん3が制作、7は休息。

いや....大半が休息って、それもう休息じゃないだろ。

 

 

その内のモモイは他のゲームをプレイしたり、寝転がったり、お菓子食べたり。

 

はっきり言って酷かった。

 

「なぁ、モモイ。」

「ま、まだだよ!」

 

 

ここをクリアしたら、と何度聞いた事か。

 

ゲームを始めて早3時間。

同じところで詰まっている。

 

「モモイ、さすがに往生際が悪すぎるぞ。」

 

モモイがプレイしているのは「ソウルライクシリーズ」と言ってかなりの理不尽や初見殺し、そして敵一体一体のステータスと行動が自分のキャラとほぼ同じで一瞬たりとも気の抜けないという難しいゲームだ。

 

「次に攻撃が来るから盾で防い────あ!これガー不(防御不能)攻撃────!」

 

(ズダンッ!)

 

(てーれーれーれーてれれー)

 

「ええぇ!!反則だよ!ガー不なんて!」

 

「なぁ、モモイ?」

 

「やだ!クリアするまで挑戦するんだもん!」

 

 

 

なんという事だ。

俺はモモイを見誤っていた。

 

頑固者。

 

自分が「こうだ!」と決めたらそれを終えるまで諦めない、というか諦めの悪い。

 

「し、士郎も助けてよ!この「black hound」すごく面白いのに難しいんだよ!」

 

「いやいや、俺全くわかんないぞ!」

 

コントローラを渡される。

 

敵は病に犯されながらも墓地を守る元狩人の神父。

対してこちらは初期装備。

 

モモイは全てHPに経験値を振り分けており、スタミナや強靭性などは皆無。

 

「ガード不可能一撃必殺技使ってくるって知ってたらこんなにHPにステータス割り振ってないよぉ!再分配なんてできないし!

 

お願い!士郎。」

 

「.....仕方ないなぁ。

とりあえずやってみるけど負けても知らないからな?」

 

「プレイするだけならタダだし!」

 

そんな訳で俺はモモイに半ば強要されてゲームを始めた。

 

 

 

「士郎!そこ、回避すれば一撃入れられるよ!

 

って!なんで散弾銃!?」

 

「いや、これパリィ取れないかなって。」

 

(ドガンッ!)

 

「よし、来た。」

 

スタミナがないのにパイルバンカーと散弾銃以外を売り払ってしまったせいでこちらも一撃必殺のスタンスである。

つまり隙を見逃せばそれだけ戦闘時間は長くなる。

 

(グシャァッ!)

 

「おー!

初めて致命の一撃が入った!」

 

俺のボタン操作に応じて自キャラが敵の胸部に手刀を差し込み、その心臓をえぐり取っては握りつぶした。

 

「よし、やった!!」

「お、おい流石にえぐ過ぎないか ...?」

 

 

モモイはこれで終わった、とそういうものの、そんなことは無く。

 

「っ!!コイツ、バーサーカーかよ!」

 

俺はバックステップを踏み敵との距離をとる。

 

「え!第二形態!?嘘だぁ!」

 

「モモイ!目に見えてるそれが現実だって!」

 

 

 

相手は完全に獣人の形になった、もう元の姿の1割も保てて居ない。

 

そうして奴は四足で歩く獣のようにこちらへ突進してくる。

 

「あ!士郎、赤い光が見えた!これガー不だよ!」

 

「はっ!?マジかこんちくしょう!」

 

横へと転がりながら回避を数度繰り返し、墓標という障害物を使って敵の攻撃をやり過ごす。

 

それこそセイバーがバーサーカーと初めて対峙した時の状況だ。

 

すばしっこいが一撃が重い奴にとって、障害物というものはかなり邪魔なようだ。

 

とはいえど、その障害物は相手が振り回す腕によって次々と破壊されていく。

「そ、そんな!

 

このままじゃここ更地になっちゃうよ!

そしたらあの突進防ぐ手段か無くなっちゃう!」

 

「それだけじゃないぞモモイ!」

 

やはりというか、奴は遮二無二突っ込んできた。

 

「うわぁ!墓を飛び越えて大ジャンプ!?」

 

せっかく回復したスタミナを回避に消耗する。

 

ここからは完全に持久戦だ。

地道に敵の体力を隙のない初段攻撃で削りながら耐え続ける。

 

「も、もう少し....あ、今だよ士郎!」

 

「よし、コノヤロっ!」

 

(ザシュッ)

 

武器を持ち替え、変形式の鎌で相手を切り払う。

 

相手のHPは僅か。

 

「これでトドメじゃないか?」

 

 

(ザシュッ)

 

しかしHPゲージが無くなったにも関わらず、敵は動き出した。

 

(ガルルルルッ!!)

 

(グシャァ!バリバリバリ)

 

 

「「あ....。」」

 

 

(てーれーれーれーてれれー)

 

「「あぁぁぁぁぁぁっっ!」」

 

2人して膝を着く。

 

いや元々座ってゲームしてたんだから当たり前のように元から膝なんて着いていた訳だが。

 

「な、なんで油断したの!」

「い、いやだってHP無くなったじゃないか!」

 

「あれはメモリが見にくいだけで残ってるの!

 

はぁ...くだらない終わり方したなぁ。

そうだよね、だって士郎ゲームやった事ないんだもん。

 

わたしゃ興醒めだよ....。」

 

 

「そうだな、じゃあそろそろ....」

 

今度は別のゲームのコントローラーを押し付けてくるモモイ。

 

「じゃあそろそろ対戦ゲームしよっか!まずはレースゲームだよ!」

 

「お、おい...あのなぁ....」

 

こうしてやはりモモイはそれとなく俺をゲームに誘ってくる。

 

 

 

 

 

次の日も。

 

 

「ねぇ!Near Robotsプレイしてみない!?

 

このゲームすごいんだよ、オープンワールドで、しかも景色が無茶苦茶綺麗なんだ!

 

ええっと....なんて言うんだっけ人が放置して荒廃した世界観のこと.....ディストピア?」

 

 

「違う、それを言うならポストアポカリプスじゃないのか?」

 

「そうそれそれ!」

 

 

その次の日は────

 

「士郎!空飛んでみたくない?」

 

「はぁ?」

「そう言うと思ったよ!はい!これエアーバトルフォース!」

 

いや、俺は何も言ってないんだが....。

 

 

「今度はなんのゲームなんだよ。」

 

「だから戦闘機に乗って、空飛んで、敵を倒すゲームだよ。」

 

モモイはありとあらゆるジャンルのゲームを俺に勧めてはプレイさせようとする。

 

その際は何故かゲームそのものに身が入らない。

というか全身を刺すような視線が降り注いでいるかのような。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、士郎、今日はさ─────」

 

「あのなぁ、モモイ。

流石にいい加減制作取り掛からないと怒るぞ?」

 

流石に1週間、まともにゲーム制作せずにプレイするだけなのは頂けない。

 

「え...でも、まだ沢山士郎にやって欲しいゲームが───」

 

「俺の事はいいから!

ゲーム制作はそんなことより、もっと大事なことだろ!」

 

 

「そ、そんなこと.....?

な、何さ!人がせっかく勧めて上げてるのに!!」

 

いや、オススメのゲームを教えてくれ、なんて一言も言ってない。

 

「なんだって俺にそんなゲームやらせたがるんだよ!」

 

俺がそう、問いただすと、モモイは答えた。

 

 

「だって出会ってから士郎全然()()()()んだもん!!」

 

 

「─────────────────。」

 

俺は、モモイという生徒を少し軽く見すぎていたのかもしれない。

そう言えばこの数日間、俺がゲームをプレイしている時にやたらと感じた視線の主はモモイだったのだ。

 

「んな事無い─────」

 

「嘘だっ!

 

誤魔化したって無駄だよ!

唯一笑ったのだってシャーレにいる生徒の話をした時だけだもん。

 

テイルズ・サガ・クロニクルをプレイしてる最中もずっと真顔だったし.....本当は面白くなかったんじゃないのかなって.....私怖くて....。」

 

 

見ればモモイの手が震えているし、何故かロッカーもガタッと揺れた。

モモイは、俺に笑って欲しかったんだろう。

 

だからありとあらゆるゲームをプレイさせて楽しんでるところを見たかっただけなのだ。

 

しかし、この3日間俺はどんな顔でプレイしていたのか。

 

「士郎、本当はゲーム好きじゃないんでしょ。

なら無理に付き合わなくてもいいよ。

 

シャーレの先生ともなると忙しいだろうし、後は私たち4人で────」

 

 

嘘を、ついたと思われているのか。

 

 

「馬鹿言え。

笑う事だけが楽しんでるって事にはならない。

 

ゲームで緊張するのも楽しさだろ。

それでも俺が楽しんでないっていうなら、単純に俺が笑うのが下手なだけだよ。」

 

 

「.....ホント?」

 

「あぁ、それに、お前たちのバカ騒ぎ見てる方が俺としては安心する。」

 

衛宮士郎にとって、何かを楽しむなどそんな余分は許されない。

それでも、面白いと思えるものなどこの世にいくらでも存在する。

 

「 .....答えになってない。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

そう言って誤魔化しながら頭の上に手を置いた。

 

「じゃ、そう思ってくれるなら俺が楽しめるゲームを作ってくれ。」

 

少し卑怯な言い方をする。

 

「わかった!このモモイ様に任せて!

絶対士郎が笑えるような、心の底からワクワクするようなゲームを作ってやるんだから!」

 

そう彼女は無邪気な笑顔でそう言った。

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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