衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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時系列、アリスの絆インタールードの続き。
この話を思いついたのは当初のウタハ絆インタールードを書いている最中でした。

まさか「伏線を張っていたように見せかける」とかいう高等技術(笑)をこんな所で使うことになるとは...ww
本編ゲームのヒビキの絆ストーリー5話を元手に手を加えました。


なお、作中のスケジュールから見るミレニアム中心部では発電施設と思わしき施設は2つしかありません───が、あくまで中心部。
工場地帯やショッピングアーケード街などもある筈なので、発電施設の数は多いと考察しました。






M.S.S Utaha&Hibiki&Kotori's Interlude 1「Black Out」

 

「待て待て待てっ!」

 

こんな屋根もない壁もない昇降口前で寝泊まりするってのか!?

いや....どうせ明日になったら復活してるだろうし泊まりではない、なんて思いながらアリスの両肩を掴んで揺らした。

 

「大丈夫です!シロウ。

 

こういうイベントの場合、休憩テントを出してくれる妖精がどこかにいるはずです!」

 

「んな馬鹿な。」

 

アリスには悪いがこれは現実だ。

そんな存在がいる訳─────

 

 

「!!来ました、マスター!」

 

「はぁ?!」

確かに3人ほど、こちらへと走ってきている者たちがいる。

 

「親方!!」

 

ウタハと猫塚と豊見、エンジニア部のメンツだ。

 

 

「どうしたんだ?そんなに慌てて。」

「どうした....って、あぁ、そうか。

あなたはミレニアムに元からいた訳ではないからこの異常事態が飲み込めていないのか。」

 

 

そういうと彼女は豊見へと目配りをした。

 

「衛宮先生!

電力というのは風力や火力によって電力発電所のタービンを回すことにより──────」

 

「コトリ───」

 

「そ、そうでした、全てをお話している時間はありませんでした。

 

簡単に説明すると、ミレニアムでは日夜複数の発電施設が動いているため停電、電力遮断という状況は極めて起こりえないのです!」

 

説明好きで話し始めたら止まらないとまで言われる豊見が途中で言葉を切るなんて.....よっぽどの事なのか。

 

 

しかし起きえない、といっても現状起きていることが全てなわけで。

 

「たまにはそんなことも起こるだろ。

停電してるのはあくまでこのスタディエリア(中心部)だけなんだろ?」

 

どうもその認識は違ったのか、3人ともため息をついている。

 

「確かに此処にも発電施設が二箇所あるし、それは今正に停止している。

だけれどここだけじゃない。

 

.....50箇所の発電所が同時に稼働停止し、()()()()()()が停電したとしてもそれは本当に「偶然で仕方ない」で済ませられるというのかい?」

 

あくまで例えば、の話だ。

そうウタハは付け加えた。

 

それこそ、そんなもの偶然なんて言わない。

 

「悪かった、早とちりしてたよ。

 

ここ以外でも似たようなことが起きてるってわけか.....」

 

「そういうことさ。

原因不明なのはこの際置いておこう、だが、ひとつも動力が付いていない夜中の作業だ。

 

人も足らなくてね。

学校そのものがこの有様だから。」

 

理由も判明していない謎の大停電、しかもミレニアム全域で。

状況が分からなかった先程とは話は別だ。

少しでも復旧のために出来ることがあるなら手伝おう。

 

「道理でどこかしこも照明がついていないわけか。

よし、わかった。

俺に手伝えることはあるか?」

 

「あぁ、人では多い方がいい。

生憎と校舎が完全に閉じていて開かない。

故に増援も見込めないのが現状でね。

 

むしろ外にいる人たちには声をかけているくらいだ。

親方には私たちの手伝いを頼みたい。」

 

なるほど、そこまでするってことは情報の伝達すらできていないのかもしれない。

携帯とは便利なものだが基地局が動いていなければそれこそ声など届くまい。

 

「わかった....。

ア────」

 

「マスター。

アリスもお手伝いします!」

 

『お前も手伝ってくれるか?』と聞こうとしたが即答。

 

暗闇の中でも光を放っているのでは無いかと思うほどの明るく優しい笑顔。

「困っている人がいるなら助ける」と、表情が物語る。

 

「─────だと思った。

ウタハ、アリスも連れていくぞ?」

 

「あぁ、彼女なら重い材料なども軽々と運んでくれそうだ。」

 

 

エンジニア部と俺とアリスは停電した発電所へと向かった。

 

 

 

 

「オープン・プロテイン!」

(ギギギギギ.......ガゴォン....)

 

聞きなれない言葉と共にアリスが強引にドアを次々と開けていく。

なんだその全てのことは腕力で解決できるみたいな謳い文句は。

 

開けゴマじゃないんだぞ。

 

「.....凄いね、アリス。」

 

「いいえ、アリスではなくこの呪文が素晴らしいのです。

 

この呪文を唱えれば開かない扉などないのだと、トレーニングスペースにいた大柄の生徒が言ってました!」

 

猫塚がアリスを褒めるが、当人はそれを否定しあくまで「こじ開けていない」と主張。

おいおい、なんだよそれ......。

 

どうみたって力技だ!

これが科学技術の発達したミレニアムの最終奥義かよ....。

 

アリスの後ろでは携帯のライトで前方を照らしているウタハと豊見。

 

「でもお陰で助かりました!

 

120kgもあるこんな大型扉、私達では........

─────あれ?でもどうしてその呪文とやらを発するだけで扉が軽くなるのでしょう.....」

 

なにやらアリスの言葉を本気に捉えた─────下手するとアリス自身本気に捉えている節があるが────豊見が考え始めてしまう。

 

「多分アリスだけの魔法なんじゃないか....?

鍵がかかっていても、一言口にするだけで解錠できる魔法の言葉。」

 

なんてちょっと適当な事を言って誤魔化せ......るはずもなく、今度は俺が豊見に質問攻めに会うのは、また別の話だ。

 

 

「アリスだけの....魔法?」

 

「.....親方...それで言うならもうミレニアムには一人その「魔法」とやらを修得している人物がいるよ。

 

まぁ彼女は電子端末におけるパスワードや暗号の解錠に特化しているが。

それこそアリスとは対になる存在だね。」

 

......ヴェリタスのメンバーの誰かだろうか?

 

などと話をしている間に大型の発電機がある部屋へと足を踏み入れる。

 

目の前にあるのは発電施設を制御するためのパソコンらしい────が当然のように電力が来ていない為当然......

 

「....なんでついてるんだ?」

 

このデスクトップ

 

「ご説明しましょう!

ここのPCの電源がついているのは無停電電源装置───通称UPSが接続されているからです!」

 

俺の疑問に対して豊見が背後にある巨大な棚のようなものを指さした。

イメージ的には、それはスーパーコンピュータだ。

 

「この無停電電源装置....ってのはなんなんだ?」

 

「これは停電時などの緊急時用のバッテリーです!

最近は直流と交流の可変式が開発されており、纏めてUPSと呼ばれていますが、この2つは50年ほど前までは区別されて識別されていました。

 

さらにUPSには3つの給電方式が存在していまして接続した本体製品から電力を得ながら即時稼働するものと、常日頃製品から電力をもらって蓄電し緊急時に稼働するもの。

 

そして場合によって切り替えられるハイブリッドタイプのものがありますが、こちらはそのハイブリッドタイプになります。

 

ですが、このデスクトップパソコンはAC電源供給なので実質蓄電タイプとなんら変わりありません。」

 

 

ええと....つまり。

 

「.......そのUPSってのは電力の銀行みたいなもんで、何かあった時蓄えていた貯蓄を引き出してるようなもんなんだな?」

 

「そういう事です!

 

もともとUPSのバッテリーにはフライホイールや真空管などを──────」

 

とりあえず分からないことは置き換えて理解するに限る。

して、隣を見れば猫塚が変な目をしてこっちを見ていた。

 

「.....衛宮先生、変な例えを用いるね...」

 

「ん?そうか?」

 

銀行に例えたのが不味かったか。

遠坂のやつが魔術の何たるかを教える時、毎度のこと金の話に例えて話をしてくるんで、そんな癖がついているのかもしれないな。

 

 

「とりあえず、それは置いて。

 

で?」

 

カタカタとPCを弄るウタハに視線を向けた。

 

対する彼女はこちらへ顔を向けることも無く─────

 

 

「ダメだね。

タービンと炉に異常を知らせる警報は出ていないのにも関わらずエラーが発生している....。

 

どうしてこんなことが起きるのだろう....。」

 

 

本体に問題は無いのに動かない、とそう主張した。

それを聞いて猫塚も画面へと寄った。

 

「部長、システム同期エラーの可能性は?」

 

「いやそれもないと思う。

何せ炉内温度の表示は変わっているようだ。

つまり同期自体はしているんだよ。」

 

頭を抱えだす2人。

 

 

「......ちょっと待った。

プロフェッショナルと言っていいほどの2人が頭を抱えるって事は、多分システムの問題ではないんじゃないか?」

 

「と、言うと?」

 

「ほら、俺の家はあんまりなった事ないけど、一般家庭って一定供給量以上に電力を要求するとブレーカーが落ちるんだろ?」

 

電力に限った話ではなく、魔力も同じだ。

 

魔力を生成したところで行き場がないのでは基盤(肉体)そのものを破壊するのだ。

 

 

ウタハがハッとした表情を浮かべ部屋を駆け出す。

 

「─────緊急用遮断器か!」

「ウタハ先輩!アリスも行きます!」

 

 

 

 

「ウ、ウタハ、アリス!」

 

追いかけようとすると、今度は猫塚が「有り得ない」と呟いてPCへ対峙する。

 

「........

何処からこんな膨大な電力量を.....」

 

猫塚の開いたウィンドウには膨大な桁の電力量の要求履歴。

 

「これはあれですね!

発電施設で生み出せるエネルギー量を超えた結果安全装置として遮断器が起動し、発電施設が停止。」

 

「行き場も無いのにエネルギーを作る訳にも行かないからシステム側での安全装置が起動を拒否。

しかもミレニアムでもこんな大電力滅多に使用しないからシステムにも組み込まれることがなかった。」

 

 

だから、ウタハの言った通りタービンを回そうとしても原因不明のエラーが発生した。

 

ということか。

 

そんな話をしているとアリスが走って戻ってきた。

 

 

「ヒビキ!起動してください!」

 

「─────!

うん....わかった!」

 

ヒビキがキーボードを指で押し込む。

 

(ウィィィィィン!)

 

起動画面と共に施設が稼働し始めた。

 

「うぉ....すごい音するな....」

 

「マスター!やりました!アリス!

 

ウタハ先輩の指示で次々と重たいレバーを降ろして安全装置を解除してきました!」

 

なんとも褒めてほしそうにこちらを見てくるので頭に手を置いて撫でてやる。

 

「よし、よくやったな、アリス。」

 

「はい!私達のパーティーはミレニアムを暗黒の闇から解放しました!!」

 

 

 

猫塚も豊見も肩をなでおろしている。

「でもさすがだね「親方」。

良い目の付け所だとおもう。」

 

 

(パァッ!)

施設内に照明が灯り始め、暗闇に慣れてきた目を伏せた。

それこそ閃光手榴弾なのでは無いかと思うほど。

 

「眩しすぎ....」

 

「......ちょっとこれはキツイですね。」

 

猫塚も豊見も

顔を背けている。

 

 

『聞こえるかい?4人とも最上階にきてくれ。』

 

施設の放送から、ウタハの声が聞こえてくる。

 

案内されたそこから見た景色、それは絶景だった。

 

 

「うぉ....」

 

「....マスター、これは....?」

 

 

ミレニアムの都市一帯がイルミネーションのように色とりどりに光っている。

 

「今日から「夜景を楽しもう」というちょっとしたイベントがあってね。

 

どうあっても今日復旧させたかったんだよ。

そうだろ?ヒビキ。」

 

「.....うん。

やっぱり、綺麗....」

 

 

風にあたりながら夜景を眺める猫塚。

その表情は緊張感のあった先程とは違い朗らかだ。

 

 

「....ありがとう、親方。

あなたのお陰だよ。」

 

ウタハに急に褒められる。

俺は何もしていない。

あくまで助言をしたのであって、もともと事態を収束しようと動き始めたのは彼女達だ。

 

 

「俺は何もしてないよ。

ウタハ達が来なかったらあの場で野宿していたと思う。」

 

「ふっ....はははは!

 

あんな所で2人で?

そうか、そうか。

 

親方には今度「どこでもテントセット」を制作してお渡ししよう。」

 

 

そうして彼女は右手を差し出してくる。

 

「改めてありがとう、親方───いや、衛宮先生。

これからも何かあればお互い助け合っていこう。」

 

「.....あぁ、宜しくな。ウタハ。」

 

俺はその右手を握り返す。

そうしてアリスに促され、少しの間5人でその夜景を眺め、写真を撮ったりもして────

 

 

かくして、停電事件は幕を閉じ。

 

 

次の日からエンジニア部は数日間ミレニアム各地に足を運んで───

3日とかからず事態は完全に収束した。

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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