衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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殺伐としておる。

主にホシノが。

よく良く考えれば、それが素のホシノなんだよな。



ゲベート(理解と祈り) 中編

俺と美甘、一之瀬、そしてセリカとワカモは巨大な蛇の進行方向を目指してただひたすら走っていた。

室笠と角楯は別ルートからの侵入となる。

 

何しろ2人の得意分野は表立ってする「お掃除」ではない。

 

 

 

俺はといえば、このキヴォトスに来てから随分と体力が鍛えられたのか、彼女たちにどうにかついていけている。

 

敵が不明であるなら、己の体も未知数だった。

 

「へぇ、あんなの引き付けてながら戦ってんのか。

根性のあるやつがアビドスにもいるもんだな、小鳥遊ホシノつったっけ?そいつ。」

 

美甘は常時緊張感など無く、むしろ好敵手を得た、くらいに思っているのか、かなり楽しそうに語る。

 

そんな彼女を後ろを着いてくるセリカは不快を表す目で見ていた。

当たり前だ。

 

彼女達はいつだって全力で生きている。

それを値踏みするように語られたら苛立つだろう。

 

「美甘、悪いけど強さなら対策委員会はC&Cにも引けを取らないぞ。」

「へっ、そうかよ。

てめぇがそこまで褒めるなんて珍ら─────」

 

そこまで言って、一之瀬が上空を指さして回避を提案してきた。

 

「うわぁ!盛大な歓迎だね!」

 

「は!?ミサイル来てんじゃねぇか!どっから撃たれたんだよ!」

 

上空からは破壊をもたらす箒星雨。

5、いや10発はあるだろうか

 

それは乱れるように、目的を探すような軌道を描いてこちらへと飛んでくる。

ボケっとしてる暇はない。

 

「皆、迎撃頼む───!」

 

生徒達に指示を出す。

 

(パパパパパパパッッ!)

 

(ダダダダダダダダダダッ!!!)

 

ミサイルを全て迎撃し、安堵する。

「ご無事ですか!?あなた様!」

 

過保護にも俺のボディチェックをするワカモに対して美甘が睨みつけ言った。

 

「この程度の攻撃くらいで逐一ビビってんじゃねぇぞ。」

 

ムッとするワカモだったがセリカに背中を叩かれた。

 

「そんなチビッ子の言葉に立ち止まってないで急ぐわよ!」

 

「────あ?」

 

それを、言ってしまうのかと。

 

「おい、てめぇ!だれがチビだってゴラァ!」

 

先に駆け出していたセリカをドタドタと追いかけていく美甘。

 

「彼女いい根性してるね!」

 

なんて一之瀬は褒めるが、あれは単に美甘のことを知らないからだ。

 

 

 

到達した地点はめちゃくちゃだった。

崩れた建物がさらに建物をドミノ倒ししている。

 

やはりデカイ、ただの大蛇で済ませられるものではない。

奴の体は全長およそ1kmを超えるのではないかと言うほど。

果たして皆は無事なのか。

 

その心配は無用なものだと、俺は直ぐさま思い知ることになる。

 

 

 

ズズズ、ズズズと音を立てて移動する件の白大蛇。

 

大蛇の隣に位置する建物の屋上に彼女達は立っていた。

 

「シロウ、やっと来た。」

 

シロコ、ノノミそして、ホシノの姿。

 

「無事だったか3人とも。」

 

「このくらいへっちゃらです☆」

なんてノノミは返すものの所々煤けている。

 

 

 

「遅かったね、衛宮先生。」

 

ホシノは、大蛇から一瞬たりとも目を離さない。

その眼光は強く睨みつけまるで宿敵を見つけたと言わんばかりに、銃を構えていた。

 

その様子はいつもの能天気さ100%を真剣そのものに置き換えたようだ。

とは言っても、俺はあんまりホシノが能天気な所を見たことがないからこちらが本来のホシノなのだろうか?

 

 

「状況は?」

 

聞くと、彼女はその雰囲気を一転させる。

 

「どうもこうもないかなぁ。

朝起きたらアレが自治区を襲ってたんだー....。

私も運良く目覚めなかったら下敷きになってたかもねぇ~。

 

あー、一応言っておくけど、所属も目的も誰が操作してるのかも分からないよ。」

 

衛宮先生が知ってたなら話は違うけど、と付け足して。

 

つまり現地のホシノにとっても初めて戦う相手という事か。

 

「あー....でも白い巨大蛇かぁ.....

改めて考えると何処かでそんな文章みた気がするんだけど....。

ごめん、思い出せないや。

 

それよりさセリカちゃん、アヤネちゃんは?」

 

「.....命に別状はないけど....当分目を覚まさないだろうって...」

「...そっか。」

ホシノの表情が一瞬だけ緩み笑顔を見せた。

彼女が気にしていたのは最初からその1点だったのだろう。

仲間を傷つけ、未だそこにいる大蛇、その存在自体が許せないのか。

 

 

『もしもし、聞こえますか?衛宮先生。』

 

携帯にかかってきたのはヒマリからの通信だ。

目の前のアレはあれだけ暴れてるのによく中継基地が残っているものである。

 

「ヒマリか?」

『感度良好、問題ないようですね。

 

先にご報告を、あなた方が出ていった直後、入れ違うように奥空アヤネさんの意識が戻りました。』

 

 

「「アヤネちゃんが!?」」

 

「...ん、よかった。

これで、専念できる。」

 

皆が安堵する。

しかしヒマリからの報告はそれだけではなかった。

 

『敵の行動目的は不明ですが攻撃手段の幾つかが判明しました。

 

口部と思われる箇所からのレーザー攻撃。胴体側面からのVertical (V)Launching(L)System(S)

要はミサイル攻撃、これが主な攻撃方法のようです。』

 

ヒマリからの報告に珍しくホシノが嫌味ありったけで返した。

 

「もう知ってるってば~。

現場で数時間は戦ってるんだよ?

 

レーザーが着弾したのはアヤネちゃんの雷雲(らいうん)号だけ。

でも容易く装甲が溶かされたところを見るにあれの直撃は避けた方がいいかもね。

 

それより現地はいつもより風に砂が混じっていて弾が上手く飛ばないから気をつけてね。」

 

ホシノの言葉に対策委員会の生徒が同意した。

彼女達の顔は苦虫を噛み潰したように歪んでいる。

 

「飛ばない?」

 

「弾丸が.....届かないんです。

まるで砂嵐その物がアレを守っているみたいに銃弾の威力と速度を落としてしまって....」

 

聞くとノノミが悔しながらに語る。

 

『.....目標物が磁気を操作して防衛手段として使っている可能性もあるわね。

先のヘリコプターのミサイルで破壊できなかったのもそれが理由かしら。』

 

遠く見えるアビドス校舎ではリオとヒマリが状況分析してくれている....が如何せん情報が足りない。

砂嵐を操作....それはもう天候を操るのと同じ。

正真正銘の怪物だ。

怪物とは曰く、「意思疎通が出来ず、いかなる時代においても理解されず、不死身の肉体を持つ」ものの事を言う。

 

結論として恐怖、畏怖するべき対象は人の頭を()ってして「理解が出来ない」から怖いのだ。

 

ホシノ達の今迄の話を総合すると倒せるかどうかすら怪しい。

今ある情報は敵の姿と攻撃手段のみ。

 

「撃破は諦めよう。」

 

倒さない、俺はそう口にした。

 

「「え.....」」

対策委員会の皆の顔が、絶望に染まった。

 

「じゃ、じゃあ何よ!

このままアビドスがアイツに壊される所を黙って見てろって言うの!?」

 

「いや、そんなことは一言も──────」

セリカが飛びかかって来る。

 

それを引き止めてくれたのは先程までセリカの悪口....というか呼称に腹を立てていた美甘だった。

彼女はセリカが俺へと伸ばした腕を掴みあげる。

 

 

「おいおい、落ち着けよ....。」

 

「アンタは部外者でしょ!黙ってなさいよ!

さっきから聞いてれば他人事だからって好き勝手言ってくれちゃって────」

 

「ちょっと待っててセリカちゃん。

先生、それはどういう意味?」

 

ホシノが尋ねてくる。

 

「撃破はしない。

()退()する。」

 

「あぁ....うん...なるほどね。

うん、先生の考えてること何となくわかったよ。

 

でもたまには結論から言ってくれてもいいんじゃない?

その方が無駄な諍い起こさなくて済むよ?」

 

ホシノがからかってくる、がその表情緊張から落ち着いたものへと変わった。

すかざずリオも愚痴ってくる。

 

『それは前から私も思っていたわ、衛宮先生。』

 

ぐぬぬ、と心の中で唸る。

なんせ合理の化身である彼女の説明は良くも悪くも分かりやすく誤解する点が一切ない。

 

彼女はこうだ、と決めた時には必ず結論から話すのだから。

 

 

さて、むず痒い気持ちは置いておこう。

 

倒せないなら放置するまでだが、ここでは被害が大きすぎる。

つまり何処か別の場所に誘導出来るならそれがベスト。

 

「アヤネはどうして攻撃されたんだ?」

 

今度はホシノに尋ねる。

 

「多分先生の想像通り。

アレに攻撃して、逆にやり返されちゃったみたい。」

 

少し考える。

俺達の乗ったヘリも先程攻撃した直後に反撃を受けた。

それに関しては間違いない。

 

その後奴は一定時間動くことはなかった。

 

ひとつ言えるのは、あそこに現存している蛇にとって俺達は(アリ)も同然だ。

だと言うのに反撃してきたのは何故か?

 

なぜ砂嵐でその巨体を守る必要があるのか?

 

奴の表皮は装甲のようなもので覆われている。

 

故に、

「和泉元、さっきヘリのミサイルでアイツのどこを狙ったんだ?」

『...頭だけど?』

 

となれば、そこが弱点だろう。

遥かな昔から巨大な怪物の弱点が何処かなど決まっている。

外皮が硬いなら尚更だ。

 

「まず、仮定の話なんだが、アイツにも弾丸が通ると思う。

なんせアヤネと和泉元のミサイル攻撃を嫌がってレーザーなんて吐いたんだ。

防衛ならともかく反撃手段を使ったってことはやって欲しくないってことだろ。」

 

通信先から『仮定を前提にしてから話に入らないで』とリオの声が聞こえたがそれはヒマリの『続けて下さい』という言葉と共に掻き消えた。

 

「で、どうすんだよ?」

 

美甘に続きを促された。

 

「まず、アイツの動きを封じて迎撃手段と目を潰す。

 

適度な高さのあるビルを根元から爆破して移動方向を制限する。

なにを目標にして何処へ行こうってんだか知らないけど視界が無ければ迎撃も出来ない。

 

目が見えなくなったあいつが停止すればそれでよし。

無闇矢鱈に暴れるようなら誘導方向とは逆側から攻撃を仕掛ける。

 

全部が全部、こっちの攻撃が通ること前提の作戦だ。」

 

説明を終えればあちらこちらから質問が。

 

『衛宮先生?そもそもアレは自らの体を弾丸を弾くような砂嵐で守っているのですが?』

 

まずはヒマリ。

 

「それに関しては俺がどうにかする。

いや100%の保証は無いけど。」

 

『では失敗した時の保険も掛けておかなければなりませんね。

 

アリスをそちらへ向かわせます。』

 

『ヒマリ!』

 

ガタッと椅子が揺れる音と責め立てるリオの声。

 

『こちらの事は気にせず続けて下さい。衛宮先生、私からの質問は以上ですので。』

 

そうして、向こうで言い争う2人。

つまり保険はアリスの光の剣(スーパー ノヴァ)って訳か。

 

確かにあの威力なら申し分ない、がアリスはここにはいない。

来るにしても時間がかかる訳で目の前のアレはいま比較的大人しく街を這いずっているがいつ暴れ出すか分からない。

要するに待っている時間はないのだ。

 

「んで、役割分担どうすんだよ。

リオに命令されてるからな、あたしたちは一応従ってやるよ。」

 

 

()()

美甘はむちゃくちゃ不満そうだ。

 

「....少し待っててくれ。段取りを説明する。

ワカモ、ノノミ、セリカ、一之瀬はあいつの気を引いてくれ。

ビルの爆破は室笠()に頼みたい。

 

 

で配置に着いた俺が砂嵐の壁をこじ開けて、角楯に胴体側面のミサイル発射口を破壊してもらう。

 

とはいっても発射口が開いた直前にそのミサイル自体を狙撃する形になるから難易度はかなり高いし、数も多い。」

 

 

「うわぁ....相変わらず無茶苦茶だねぇ。」

 

ホシノは顔を顰めた。

一方美甘は終始睨み顔。

 

「いや....カリンならやれると思うけどよ、流石にパッと見6つはあるぞ、あれ。」

 

それに対しては自信満々で答えられる。

 

「勿論全部を同時に破壊しろ、なんて無茶は言わない。

正直誘爆を狙いたい。

 

でも確かに人手が足りないのは確かだ。」

 

この作戦に狙撃手は1人しか参加していない。

だが、それは先程までの話だ。

 

「狙撃手ならもう1人いる。」

 

そうしてタイミングよく彼女達は現れた。

 

「お呼びかしら?「先生」?」

 

その声に全員が振り向いた。

屋上から地上へと続く階段、そこから上がってきたのは赤いジャケットを羽織ったアウトロー。

 

かたや冷静に白い大蛇を見つめる白黒の少女、かたや面白そうにみあげる白い少女。

 

そしてちょっと退き気味の少女の4人組。

 

「あ、あんた達は!!」

セリカが驚いている。

 

無理もない、アビドス攻防戦以来、姿を消した便利屋68、そのメンバーであった。

 

「やっほー....あ、やっぱりメガネっ()ちゃんはやられちゃったか....。」

 

「あー、アルちゃんと便利屋さんじゃん。おひさー。」

「お久しぶりです社長さん☆」

 

その姿を見たホシノとノノミは気楽に声をかける。

 

「お邪魔してるわよ、対策委員会。

それで、あれが私たち「便利屋68」を雇った理由かしら?」

 

陸八魔アルは正直逃げ出したかった。

先程、オフィスからレーザーの一撃によってヘリコプターが落ちるのを目撃してしまっていたからだ。

 

されどここまで来て自分だけしっぽ巻いて退散するという選択肢も彼女にはなかったのも事実である。

 

「よし、来たなアル。話は聞いてたか?」

 

「えぇ、私たちの役割もやんわりとだけど理解したわよ。

けれど正気?

 

あれとまともに戦おうだなんて。」

 

「さっきもみんなに言ったけど倒すつもりは無い。

ただアビドスから追い出すだけだ。

 

ハルカとムツキは室笠と同行して爆破に協力してやってくれ。

カヨコ、お前は現地の情報をリアルタイムでこっちによこす連絡役、必要に応じてハルカ達を回収してやってくれ。」

 

便利屋68にも指示を出す。

 

「お、お任せ下さい....死んでも、死んだ後もアイツを拘束します....。」

 

いや、死んだ後どうやって、と思ったが地縛霊というかもう自爆霊になってもおかしくないな。

 

「ダメだ、皆ちゃんと生きて帰ってこい。」

「え....?」

 

気づいていないのか。

いや、もうここまで来るとハルカのそれは無意識の口癖なのか。

「いいか、ハルカ。

簡単に「死ぬ」とか「死にたい」とか言うなって。

 

無理に矯正しろ、だなんて言わないけど。」

 

「わ、分かりました。」

 

「大丈夫だって、「センセ」!

いざとなったらあんなのムツキちゃんがブッ殺してあげるから!」

 

腕を引っ張るのはムツキ。

その表情は笑っているようで、冷たい目をしている。

何か怒っているようだった、が今それを聞いている時間もない。

「カヨコ────」

 

「時間ないでしょ。

やることはわかったからそれで良い。

話を続けて。」

 

なんと簡素な返事。

されど、相当な信頼感を感じる。

 

なんせ彼女はこちらを向いて微笑んでくれた。

 

「了解、じゃあ話の続きだ。

恐らくミサイルを潰されたら奴はレーザー砲塔をカリンとアルに向けると思う。その瞬間に俺が砲塔も潰すから─────」

 

「おいちょっと待てテメェ、また何でもかんでも1人でやろうとしてんじゃねぇだろうな?」

 

美甘が睨んでくる。

「てめぇ、まだ分かってねぇのか?」と。

だが違う。

 

「待て、確かに危険な役回りかもしれないけど。

これは俺にしかできない役回りだからやるんだ。

 

それに、最も危険で難しいのは、ホシノ、美甘。

悪いけどお前たち2人なんだぞ。」

 

「あ?」

「ん?私?」

 

「お前たちふたりには、最後の締め。

あいつの目を、ヘリから奴の頭に飛び乗って潰してもらう。」

 

それを聞いたホシノ、美甘は気合いの入った表情。

 

「えぇ....おじさんスーパーマンじゃないんだけどー。

ま、やるしかないか。」

 

「へっ、なんだよ良いとこくれるじゃんか。いいぜ、それノったわ。」

 

なんというか、ホシノはともかく美甘は無茶振りに対して喜んでいる。

笑っている。

 

俺はヘリコプターから命綱なし、パラシュートなしで蠢くあいつの頭に着地しろと言っているんだぞ?

 

それで、いいのかお前。

 

「俺が言うのもなんだけどかなり無茶苦茶だぞ?

大丈夫か?」

 

彼女は蒸し返すなと、またも睨みつける。

 

「は?

それはあたしと戦ったあんたがいちばんよく分かってんじゃねぇのか?ポンコツ先生さんよ。」

 

胸を手の甲で叩かれる。

 

「それによ。

あたしはまだあんたの信用も信頼も得てねぇだろうけどよ。

あたしもあんたを信用したつもりはねぇ。

 

なんせここぞと言う時に判断間違えやがったからな。

 

でも今回は違う。

あんたの意見を聞いて、あたしがあたしの頭で考えて出来るって思ったからやるだけだ。」

 

「そっか、ならそれでいい。

ただ1つ。

俺はお前を信用してるし、信頼してるぞ美甘。」

 

彼女は少し顔を赤らめてボソッと「そうかよ」と呟いた。

 

彼女が信じたのは俺じゃない。

己の力。

ただそれひとつ。

 

だからこそ、俺はそれを信用できる信頼もできる。

 

「えぇ....そっちの子は心配して私の心配はしてくれないの?先生。」

 

「あっ。」

 

そういった時にはもう遅い。

 

「へぇ、先生にはやっぱり私は生徒として見えてなくて年寄りのよろよろなおじさんだからいつ死んでもいいってことかなぁ。」

なんてむくれたホシノの出来上がりだ。

 

「違う違う、悪かったって思ってるよ。

 

アビドス生徒会の顧問だってのに色んなところぶらついて、大事な時にはいつだってお前の隣にいてられなかった。

その上ずっと危険な道ばっか歩ませてる。

俺はやっぱり「先生」失格だよ。」

 

「いや、ホシノ先輩はそこまで言ってない....。」

俺の肩に手を置いたのは、ずっと黙っていたシロコ。

 

「だって、こうしてシロウはここに来てくれた。

私はその気持ちが、その思いだけで嬉しい。

皆も多分、きっとそう。」

 

でしょ、とシロコはホシノに語りかける。

ホシノも頷いた。

 

「...確かにこんな時にどうしていないんだって、最初思ったよ。

 

でもさ、昔ならそんなことすら考えやしなかった。

 

だってそれまで私達にとって()()()()()()()()()()だったからね~。

 

でも、きっと来てくれるって、先生は私達にそう思わせてくれた。

 

それが多分「答え」だよ。」

 

私は先生の事信用してるよ。だから信頼させてね。

 

ホシノの欲しがった答え。

それを俺は用意できなかった。

されど、それを彼女は自身で見つけ出した。

 

生徒に信頼されている。

信用してくれている。

 

それで十分だ。

 

 

「ありがとう、ホシノ。」

「いいっていいって、そっちこそ頼んだよ。

それと今度ご褒美にアクアリウム、連れてってねー。」

 

「あぁ、今度な。」

 

なんて会話、それが最後。

皆口にしないまま、自らの配置へと移動する。

 

ビル上にはホシノと美甘を残したまま。

 

interlude (ハヤブサ)と龍

 

「お前、あいつとは付き合い長いのか?」

 

ビル上に私と残った彼女が聞いてくる。

私は「まぁね」と口にする。

 

「お前も大変だな、あんな中途半端な奴が先生だなんて。」

 

その少女の口調は、彼を馬鹿にしたような、そんなもの。

だけれど、その目は地上を走る彼を心配しているかのような眼差しだった。

 

それを私はいつも通り、適当にあしらう。

 

「何言ってるのさ~おじさんだけじゃないよ。

スカジャンちゃんもそうじゃないの?」

 

「あ?だれがスカジャンちゃんだよ!」

 

いやそんな怒られても知ったこっちゃない。

私は突っかかってきている少女の名前を知らない。

 

「ま、いっか、あたしは美甘ネル。

訳あって今はあいつの下にいるけど元々敵だったっつーか。

......なんて言やいいんだ?」

 

「ネルちゃんでいいよね。

で、敵同士だったってなんで?」

 

「あー...そりゃ────」

そうしてバツが悪そうに彼女は話し出す。

ミレニアムでの演習の話。

 

されど使っていたのは当然実弾で、聞けば彼の体に20mmの弾丸が直撃しかけたとも言った。

 

無茶だ。

 

無茶を通り越して死んでもおかしくない。

 

「しかも聞けよ、挙句の果てにあいつ生徒と戦えないんだってよ。

バッカみてぇ。」

 

「───────」

 

呆れたような口調。

どうしてだろう。

 

彼の苦しみを知らないものに、そんな簡単に話されると頭にくる。

 

「ネルちゃんさ──────」

「あ?」

 

 

「────刃物に串刺しにされた経験って、ある?」

 

それを彼女は笑って否定した。

 

「ハッ、あるわけねぇだろ。

いくらなんでも死ぬわそんなもん。」

 

だよね、と私もそう言った。

 

「彼の体は、とても、とても硬い剣で出来ている。」

 

「は?」

 

知らず、呟いた。

 

 

「いつかわかるよ。この意味が。」

 

 

「....変な奴だな。」

 

 

これ以降、私たちの間での会話は無かった。

 

interlude (ハヤブサ)と龍 END

 

 

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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