衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
ドイツ語のGebet(ゲベート)
意味は祈り。
ヘブライ語のベート。
タロットにおける魔術師の意味でありセフィロトにおけるケテルからビナーへと続くパスの名前。
とか言いつつ意味はあまりありません。
なお先に言っておきます。
何故このタイミング白い大蛇が暴れているかと言いますと
カイザーコーポ(PMC)がアビドスから一時撤退し、行動を抑止していた彼らが居なくなったことによって暴れ始めました。
この戦いは対策委員会編第3章のラストシーンの再現。
実際にカイザー理事とカイザープレジデントを失った後にアビドス自治区にビナーが攻め込んできていますからね。
「ここが鷹の狙撃ポイントなのね。」
アルと共に角楯と合流、廃ビルの上に彼女はいた。
「お前が角楯か。」
褐色の肌に金色の瞳にその姿はメイド服。
「そ、その....凄い銃ね....。」
アルは驚嘆した。
担ぐ銃はもはや個人兵器と呼ぶには大きく、そして重量級。
全長160cmはあろうかと言うその銃は噂に聞く対戦車ライフルの形をしていた。
「貴方がリーダーと渡り合ったという先生か。」
「いや別に.......渡り合ったというか、一方的にやられかけたというか。
あいつの優しさに救われたというか。」
そういうと彼女は「謙虚なんだな」と微笑む。
別に本当の事なのでこっちは笑えない。
判断ミスで自分の生徒を危険な目に合わせた挙句敵だった美甘に助けられたのだ。
「話は全て聞いていた。
ミサイルサイロからミサイルが飛び出した瞬間を狙えばいいんだな?」
「ここからでもやれそうか?」
「 ....問題ない。」
そうして、彼女は伏せて、そのライフルを構えた。
大蛇まで目算で300mの距離。
思っていたよりそれほど離れてはいない。
「私はいつでも。」
世間話は一瞬。
俺はアルへ位置に着くよう指示を出す。
「それで?衛宮先生。
どうやってあの砂嵐を拡散させて、飛んでくる攻撃を防御するつもりなの?」
動けない射手である彼女にとってそれは当たり前の疑問だった。
「砂嵐は一撃で、それでダメならアリスを待つよ。
敵からの攻撃は...盾ならあるから心配するな。」
あいつが攻撃を受けてから反撃するまでには数秒のラグがある。
美甘じゃないが10秒あれば余裕。
5秒ならめっけもんだ。
問題はビル全体を覆うほどの盾は敷けない事だろうか?
「
即席で弓を投影。
「皆、配置に着いたか?」
『おじさんとネルちゃんは何時でも。』
強襲班、ホシノと美甘。
『OKよ。士郎!』
『準備完了、何時でも始められるよッ♪』
誘導班セリカ、ノノミ、一之瀬、ワカモ。
『こちら03、プレゼントの準備は終わりました。』
『い、何時でも起爆させられます....。』
工作班ハルカ、ムツキ、室笠。
『....こっちも観測位置に着いた。』
戦況観測役、カヨコ。
『私たちの方は何時でも構いません。』
『.....』
状況分析班、ヒマリ、そして、リオ。
「アリス、聞こえるか?今何処にいる?」
『はい!シロウ、はじめるのですか!?
えと...えぇっと....。
何処でしょう.....現在地が分かりません!!』
「お...おう。」
少し焦る様アリスの声。
まぁでもアビドスはマップがあろうと迷うしな....。
「イリヤ、アリスの位置を教えてくれ。」
『大丈夫よシロウ。
爆心地からは離れているのだけは確認したから。
でもシロウ。
あれが撃たれたら私だけじゃ防げないから貴方がどうにかしなくちゃいけないのよ?
アロナがいたら別でしょうけど....。』
未だに眠ったままらしいアロナ。
ここ最近あいつの元気な声を聞けていない。
心配ではあるが、今は別にやらなきゃいけない事がある。
あの大規模な砂嵐を霧散させるには、大規模な爆風が必要だ。
ここに居る者でそれが出来るのは俺かアリスしかいない。
「それでもやらなくちゃ。」
俺が
『そう....シロウがそうしたいなら私は構わない。』
何かを諦めた悲しい顔をしているイリヤ。
「大丈夫だよ、イリヤ。」
『何が大丈夫なのかしら....全く。』
単調で口数も少ない最後の会話を皮切りに。
「────"
弓を構えつがえる────
赤黒く、されど青くもある稲妻が、周囲へと迸る。
そんな中、端末は鳴り響く。
『いいわ、シロウ、私が。』
俺はもう手を離せない。
その通話には代わりにイリヤが出てくれた。
『───────』
『へぇ....いいわね。
シロウには私から指示を出すわ。
任せたわよカヨコ。』
どうやらかけてきたのはカヨコらしい。
トラブルか何かだろうか。
しかしイリヤは
『士郎、撃ちなさい。』と指示を出した。
俺は待ったをかける。
現場の状況が一切掴めないのにそんなこと────
「ねぇ、衛宮先生。
私達生徒を、信じてる?」
ふと、隣で狙撃体勢を取っていたアルがそんなことを呟いた。
それは質問などではない。
アル風に言えば「現場にいる生徒達を信じて」という助言だった。
「大丈夫よ、うちの社員は優秀だもの。
対策委員会だって中々の腕揃いだし...
まぁC&Cがどうかは知らないけれど。」
「........」
アルは角楯になにか目配せしたが彼女は無表情のまま。
「えっ!?今のは普通張り合って「舐めるなよ!」とか「私たちのメンバーだって!」って言い返すところじゃない!」
「.....わざわざ反発する程のことでもない。」
『アル、貴女冷ややか目で見られてるわよ...。』
「くっ....遠回しに衛宮先生を励まそうとしたのに....上手くいかなかったわ....。」
なんて彼女は悔しそうに言う。
それが、逆にこの場の緊張を和らげた。
「いや、それでいいんだ。アル。
ありがとな。」
「───え?」
イリヤの指示に黙って首を縦に振って返事をし───────
「──────偽・
その
「あれは.....。」
遠くにある建物が青白く、されど赤く光っている。
私、鬼方カヨコはあの光を既に一度見ている。
だからわかった。
放たれるは彼の一撃。
以前私たちに対し警告と脅しとして放ったそれは、ゴーストタウンを1つ、丸焼きにした。
解放する力がどれ程のものなのか私にはわからない。
しかし、上空にはアビドスの委員長にC&Cのリーダー、そして地上に私たちがいるのは彼もわかっているはず。
通信先のホログラムに映る彼女たちも慌てていた。
『あ、あの....私たちどうしたら。
や、やっちゃいましょうか!?』
『いいんじゃない?やっちゃえば?』
ハルカはちょっと、いやかなり慌てて爆薬の起爆装置を取り出す。
それを何時もの様子で煽るムツキ。
『....確かに作戦通りなら先に私たちが爆破して、目標の行動を制限してから衛宮先生の攻撃、という形でしたね。
では僭越ながら私が────』
C&Cのメガネをかけたエージェント──室笠アカネがハルカの持っている装置を手に取った。
それを────
「....待って。」
『はい?』
それを私は止める。
『カヨコさん、何故止めるのですか。』
怪訝な顔でこちらを睨む彼女。
それはそうだ。
結論からいえば今の私たちは寄せ集めの集団に過ぎない。
しっかりした意思疎通もできなければお互いに対しての信頼も信用もないのだ。
「.....このままだと社長と....士郎、それにそっちの狙撃手も打たれる。
2人はともかく士郎には防御手段がない...ことも無いけど防ぎきれるかどうか.....。
だから、目標が反撃しようとしたタイミングで爆発と建物の倒壊に巻き込んで攻撃を逸らした上で行動不能にする。」
『確かに制圧効果とメリットは大きいですが.....それは───』
「分かってる....」
タイミングを見極めなければいけない。
道路ではまだ戦ってる生徒もいる。
下手をすれば巻き込むだけでは済まない、みんな瓦礫の下敷きだ。
私は士郎の端末へと通話を切りかえた。
彼がもう通話へ出れないことを想定して。
「イリヤさん....予定変更。
爆破のタイミングをそっちに合わせる。
士郎には攻撃の指示をして?」
『どうするつもり?』
「相手のカウンターにトラップで返す。
多分、そっちに攻撃はいかないと思う。」
『へぇ....いいわね。
シロウには私からから指示を出すわ。
任せたわよカヨコ。』
それだけ言って彼女は通話を切った。
あの士郎の姉、妹を自称する少女の目的は1つ。
それは彼を守る事だ。
であるならば私の考えていることは皆まで言わなくても伝わったはず。
「ハルカ、私が弾着観測する。
合図したら起爆して。」
『は、はい!
お任せ下さい。』
そしてその時が来る。
「来た....!」
それは音より早く、目に見えない速度で目標を包んでいる砂嵐に直撃した。
(ドカァァァァァァァンッッ!!)
数秒遅れて襲い来る爆風。
その衝撃が伝わり建物全体が揺れる。
身体中に吹き付ける砂の混じった爆風は士郎の攻撃が成功したことを示している。
『うっ....』
『いやぁ...やっぱすごいね衛宮先生の弓。いやこれは矢なのかな?』
『い、一体何が起きているんですか!?』
アカネという少女の表情が困惑で歪む。
『まさかもう敵の攻撃が....』
「違うよ。これは彼の。」
『まさか!こんな質量攻撃を...たった一人で!?』
煙の中からやつが姿を現す。
口を大きく開け、その視線は士郎達の方へ。
溢れ出んとする太陽と同じ色の力。
撃たせるわけにはいかない。
「ハルカ!」
『は、はい!
行きます....ッ!』
カチッと言う音とともに隣のビルが根元から傾いて倒壊していく。
それは口を大きく開いて砲撃体勢に移っていた目の前の蛇の頭部へと直撃。
雪崩に巻き込まれた人と同じように、やつは気にも止めていなかった周りの建造物の連鎖崩壊により、下敷きになる。
奴は呻き声とともに伏した。
ここまでは想定通り。
『誰かを守るために爆弾を起爆なんて....は、始めてしました...。』
『えー?いつだってハルカちゃんは私たちを助けてくれてるし、そんな事ない ....よ?』
なんて気の抜けた2人の声も通信から聞こえてくる。
だと言うのに────
「士郎、第1フェーズ終了。.....士郎?」
士郎と繋いでいる通信機からはノイズしか聞こえてこない。
「砂嵐のせいで遠距離通信はダメになっちゃったか......」
『どうしましょう、カヨコさん。』
『ここは退避して様子を見るべきかと。』
ハルカが指示を要求、アカネは撤退を打診する。
『え?ここで逃げるなんて選択肢ある?』
1人違ったのはムツキ。
彼女はお気に入りの生徒が負傷させられてからずっと不機嫌だ。
私も、自分達の仕事場のある地区を破壊されて少し腹もたっている。
とはいえそれとは別に追い込みには人でも必要になるだろう。
「....ムツキとハルカは下の誘導班と合流して。
アカネは次の爆破ポイントへ。」
『了解です....。』
『オッケー!さすがカヨコちゃんわかってるよね!
じゃあ、暴れてこようかなッ!!』
2人は当初居たビルから飛び降りた。
「ええっ!?あれが士郎の攻撃なの!?」
「うわぁ、衛宮先生、中々すごいねー!」
現場も大混乱に陥っていた。
爆風から逃れるため崩壊しかけの建物の裏へ逃れていた現場の生徒達は士郎の攻撃をみて驚愕していたのだ。
砂狼シロコを除いて。
「.....流石、シロウだね。」
ここに居る面子の中で士郎の弓による攻撃を過去に見た事があるのはシロコだけなのだ。
「なんですか...今のは...。
まるで空間を捻じ切るように爆発が....」
常に士郎のそばに居たワカモでさえ驚嘆を禁じ得ない。
本来、彼が本気になれば自分達など足元にも及ばないのだと、改めて理解した。
「あれだけの火力ならきっと.....」
あの巨体も倒されたかもしれないと、ノノミが呟いた。
「例えやれてなくっても相当なダメー...ジを...」
ノノミの言葉にセリカがそう、返した時、煙の中から奴は現れた。
無傷かつ、健在だ。
「なんて頑丈なのよ!」
「...そう上手くはいかない。」
シロコはそう言って携帯を取り出し士郎へと通信を試そうとするも繋がらない。
それを見たワカモも携帯の画面を見つめる。
しかし、回線を示す表示は点滅を繰り返す。
「磁気による通信障害ですか....であれば私達は独自に判断して動くしかないようですね。
ですが、作戦は継続しているはず....。
この後の動きは────」
煙が晴れゆく頭上を見上げたワカモにアスナは指し示した。
爆煙を貫き通過する弾丸の煌めきが2つ。
それは吸い込まれるように大蛇の巨体の背部にあるサイロへと着弾。
(ドカァァァン!)
巨体の背部は鬼のように燃え上がった。
それは隆起したサイル内のミサイルが連鎖爆発を起こした為の爆炎だ。
つまり、もうミサイル攻撃は封じられた。
「予定通りみたいだね、あれカリンと社長さんのでしょ?」
ノノミは頷いて、この先の作戦内容を再確認するように説明した。
「おそらく。
後は衛宮先生がメイン砲塔を破壊。
その後誘導班の私たちが誘導方向とは逆側から一斉射撃。
確か最低でも3方向から射撃して欲しいとの指示でしたね。」
「班分け、どうするのよ?
火力があるノノミ先輩とシロコ先輩を別々にして、ノノミ先輩と私、シロコ先輩とC&Cのメイドさんって所までは文句ないけど....
本当にワカモは一人でいいわけ?....」
セリカが言ったこと、作戦開始前に決めた配置分け。
ワカモの仕事配分比は重い。
「このワカモに二言はありません。
自ら決めたことは最後まで通します。」
「そういえばあんた、士郎と同じくらい頑固だったわ。
ならそれで....」
「あ、あれを...」
ノノミが指差ししたのは先程起き上がった大蛇。
光る目はまるで怒っているかのよう。
その口は全開にして、黄色い光が収束している。
「士郎はまだなの!!?」
セリカは愚痴る。
が、彼女にその猶予は与えられていなかった。
「────え.....?
ミサイル......!
みんな避けて!」
飛び跳ねるように後退しながらアスナは叫び、その声はビルの狭間で反響する。
死んだはずのVLSから発射されたミサイルが建物の間を掻い潜り目前から飛んできたのだ。
「な、何!?」
セリカが振り返って目視した時には遅い。
「セリカちゃん!!逃げてください!!」
「ダメ!ノノミ!」
銃を構えるノノミをシロコが押さえ込み突き飛ばした。
ミサイルの撃墜など、彼女達にとって容易い事である。
だが、その爆風による衝撃は緩和できない。
ミサイルはセリカへ一直線。
セリカは動かなかった──動けなかった。
「嘘、なんで────」
(ドカァァァァン!)
ミサイルはセリカへと直撃した。
「セリカは...!」
「セリカちゃん!返事してください!!」
退避していたシロコとノノミは駆け出した。
爆煙の中に影が見える。
「立ってる....。」
シロコには、セリカが仁王立ちしているように見えたのだろう。
「セリカちゃん....よかったで────」
ノノミが駆け寄ってその肩にふれた時、気づいた。
本来彼女はノノミより身長が低いのだ。
それが、その影は、自分と同じくらいの身長。
なんなら、自分よりやや高い。
「まさか....」
その人物を煙の中から抱き寄せて、引っ張り出す。
重い。
2人分の重量差はあろうその正体は、セリカを抱きしめて微動だにしないワカモの姿だった。
そのヘイローは点滅している。
「ちょ、っと離しなさいよ....っ!」
セリカがワカモを突き飛ばし、その腕から脱出する。
反対に両の手で押されたワカモはそのまま背中から倒れ込んだ。
「な、なんで、あんたが」
自分を拘束していた物の正体を改めて認識したセリカは、倒れ込んだワカモに恐る恐る近付いた。
「どうして────」
シロコとセリカの頭の中にあるのは疑問。
どうして、ワカモが自分達を庇ったのかという、ただその一点に尽きる。
「...あの方が、仰いましたから...。
「皆生きて帰ってこい」と....ただそれだけの...こと...」
そうして、ヘイローが消失するとともに目が閉じた。
「嘘....やだ、死んじゃったの?
私を庇って....?」
ぺたんと地面に座り込むセリカ。
対象にノノミはワカモの容態を調べるべく動いた。
「....よかった....気を失っているだけみたいです。
早く安全なところに───」
ノノミはワカモをおぶる。
「ノノミ先輩!またミサイルが!」
そうして離脱しようとした彼女達の元へ、またも飛翔してくるミサイル攻撃。
誰もが避けられないと思ったその時。
「.....やらせない......破壊します....!」
(バァァン!)
(ドカァァアン!!)
ショットガンを持った生徒が突如として現れ、ミサイルをショットガンで攻撃。
しかももう1人は襲い来る爆風に対して爆弾の入ったボストンバッグを投げつけ起爆させることによって衝撃を相殺するという徹底さ。
それは間違いなくいつもの「破壊」に徹した戦闘そのものではなく、「守る」ための戦い方であった。
「あんた達.....起爆役に回っていたはず....」
「いや、私達も個人的に恨みがあってさ!」
「ま、間に合って良かったです.....。」
セリカにとっては驚愕だ。
なんせ自分たちを助けたのはかつての宿敵とも言える生徒達。
そこに居たのは便利屋68、伊草ハルカと浅黄ムツキだった。
「なになに~?ミサイルサイロ破壊しきれてないじゃん。
あ、でももう大丈夫そうだね。」
ムツキの睨む先には倒れ込む大蛇。
ミサイルだろうと銃弾だろうとビクともしなかったあの巨体が、またも倒れ込んでいる。
「い、一体何が....」
「......多分、ホシノ先輩達だと思う。」
「おい、何やってんだあの先生は!
このままだと撃たれちまうぞ!」
「これはちょっと予定変更しなきゃいけないかもねー。」
砂嵐の崩壊。
1度目の砲撃を建物による質量攻撃で封殺。
背部VLSの破壊。
それらの流れを上空のヘリから観察していたホシノとネルは危機感を持っていた。
「背部VLSは一基やり損ねてる。
それに先生の狙撃ポイントからじゃ爆煙が酷すぎて見えないみたいだね。
ちょっと早いけど、私が背部のミサイルユニットを破壊するからネルちゃんは────」
そこまで指示して、ホシノは言葉を止めた。
「おい、途中で止め───あ?どうしたんだよ。」
視線の先にはアビドス校舎。
そして、大蛇の砲口も、そちらへ向いていた。
それだけでネルが察するには十分だった。
「おいおいおい!このままだと───」
「....先いくよ。」
ネルを置いて、ホシノは先に飛び降りた。
「ったく、あいつ!足並みくらい───」
そこまで言って、その言葉を自分が言えるような立場でないことを思い出す。
C&Cは基本的にはチームプレイ。
しかし計画外や予定外の事に関しては各自のアドリブが繋がることによるチームワークで成り立っている。
つまり、その中でも単独行動しがちなネルにとっては痛い言葉でもあった。
「ま、むしろ合わせねぇ方があたしらしいか。」
呟きながらネルも遅れて目標へと
襲い来る風圧。
それらをはねのけて銃を構えた。
大蛇の方にも動きあり。
ホシノとネルのさっきに気づいてそちらへミサイルを差し向ける。
落下するネルと上昇するミサイル。
どちらが有利かは自明である。
「ミサイル来るよ!」
「見ればわかるってんだよ!」
(バァァン!)
(ダダダダダダダッ!!)
それを迎撃するホシノとネル。
迎撃したは良いもののホシノの突入角度はややずれていた。
「私はこのまま背後のミサイルを潰してくる。
ネルちゃんは────」
「砲口と両目潰しゃいいんだろ!!そのくらい───」
『チビメイド先輩!』
覚悟を決めた2人の通信に割って入った者がいた。
「てめぇ、今何処にいる!!」
『目標物の真下にいます!』
アリスは広大なアビドスで迷子になっていた。
自らの「先生」と慕う主人の居場所は分からない。
何せ自身は携帯を持っていなかった。
現在地すら分からない────分からないので明確な地点へと移動することにしたのだ。
その結果、彼女は大蛇の真下に立っていた。
「アリスの位置からではミサイルサイロとメインカメラは狙えません。
この
『は!?もうコイツは射撃態勢に移ってんだぞ!?跡形もなく消えちまうわ!
それにそんな場所からどうやって────』
ネルの返事を聞く前に、アリスは跳躍した。
アリスがあんぐり口を開いた大蛇の顎をそのレールガンで下から強打した。
(ガゴォォォン)
そのまま顎に手をひっかけ口の中に
「悪を切り裂く正義の一撃!!
受けよ!!」
(ドシュゥゥン!!)
蛇の口へと、レールガンを発射した。
それと同時にホシノが背部へ、ネルが頭へ。
それぞれありったけの弾丸を叩き込む。
「.....!」
「おらおらおらぁぁぁ!!!!」
(ドカァァァァァァン!!)
『グガァァァァァァ!!』
流石に堪えたのか蛇は叫び声を上げ暴れ回った。
その瞳に光はなく、背部は炎が燃え上がり、
その叫ぶ口すらもボロボロだ。
「うわっ!」
「や、やべえ落ち───」
体勢を崩し、地上へと真っ逆さまに落ちていくホシノとネル。
当たり前といえば当たり前だ。
なんせ、彼女たちが先程までいたのは暴れ回っていた蛇の体の上。
振り落とされる。
そして、いくら彼女たちも蛇の頭から落とされては一溜りもない。
(ガシッ!!)
「ご無事ですか!チビメイド先生とチビッ子委員長さん!」
だが、悲惨なことにはならなかった。
2人を脇に挟んで、ビルからビルへと移動する。
「アリス!?お前どんな怪力してんだよ...つーか、てめぇまたあたしのこと「チビ」つったな!?」
「うへぇ~、助かったよー。」
「当然のことをしたまでです!!」
シュタッ、とビルの屋上へ華麗に降り立つかと思えば、コンクリにヒビが入るほどの勢いがガゴンッ!と音を鳴らしてアリスは着地した。
「.....まさかこちらのミスを現場の生徒にカバーされるなんてな....。
あとで礼を言わなければ。」
角楯は俯いて呟いた。
「いやよくやってくれたよ。2人とも。」
俺達のいる所からは蛇は傷みにのたうち回るように暴れ回っていた。
それを地上にいる生徒達が奴が来た方向へと追い出している。
もう、大蛇に抵抗するほどの力など残ってはいまい。
『士...聞こえ...』
唐突にカヨコからの連絡が入った。
「あぁ、ノイズまみれだけど、なんとか。」
『端的に言うと、作戦は成功した。』
その言葉を聞いて俺は安堵した。
現場で観測している彼女が言うのだ。
間違いなくあの蛇をアビドスから追い出すことが出来たのだ。
「....途中トラブルはあったが、いい指揮だったと思う。」
「やったわ!先生。」
アルは角楯にハイタッチを求め、彼女もそれに渋々応じた。
(パシン!)
されど、諭すように冷たく、カヨコは告げる。
『けど負傷者1名軽傷。
いまこっちで搬送中。』
「怪我したって....誰が。」
恐る恐るカヨコを問いただす。
彼女は言うかどうか迷ったんだけど、と呟いて。
『狐坂ワカモだよ....。』
一言。そう言った。
色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?
-
要る。
-
後回し、本編に進んで