衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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M.S.S Rio's Interlude 1「理想と合理」

 

「おい!リオ!」

 

校内で彼女を見かけて声をかける。

 

「まだ居たのね、衛宮先生。

その後のタブレットの調子はどうかしら?」

 

邪険にするのか心配するのか、どっちかにして欲しい。

基本的に無表情の彼女の考えていることは察しにくいのだ。

 

「問題は無いぞ?

なんでさ。」

 

「そう ....何かあればそれも「処分」しないとならないでしょうから。

その場合では()()()()判断しかねるでしょうし、私に連絡して頂戴。」

 

心配ではない。

どちらかと言うと、危険視の類だった。

なんなら「お前は信用出来ない」なんて真正面から言ってきている様に聞こえる。

 

まぁ、現代進歩にまだまだ追いつけていないし、話を聞くに面倒見のいい方である各務が俺に対しては呆れているらしいので当然と言えば当然の結論だ。

 

「.....わかった。

それはそれとしてありがとな。

わざわざアビドスまでついてきてくれて。」

 

 

 

「別に礼を言われる筋合いではないわ。

あの状況においてそれが最適だと思ったからついて行った迄。

 

それに人から聞いた情報だけではデータとして成りたたない。」

 

違う。

リオは俺を、と言うより皆を信頼していないのではないのか?

込み上げてきたのは怒りではない、困惑だ。

 

「なんでそんな......それじゃ早瀬やノアの事は───」

 

セミナーの皆すら信用していないのか?

確かにゲヘナなんて二大巨頭であるマコトとヒナは対立している。

その構図はミレニアムも同じだ。

セミナー会長のリオと反セミナーグループ「ヴェリタス」のヒマリ。

 

されどゲヘナと違うのは。

リオが一人、浮いているのではないかということ──────

 

「彼女達の力量は把握しているわ。

だからこそ、最適な人材を最適な配置に置いているだけ。」

 

「.....そっか。

なんだ、俺の思い過ごしか。

逆に言うと出来ない仕事は無理な注文を与えない。ってことだろ?

それに「科学は人の進歩そのもの。意志と努力で人は繁栄を築いてきた。」

 

そう言ったお前が他人に成長の機会を与えないとも思えない。」

 

 

彼女は一瞬目を背けた。

 

「.....買い被りよ。それは。

誰だって、自ら立ち上がる意思がなければ前に進むことすら出来ないわ。

 

ゲーム開発部の子達もそうだったでしょう....?」

 

 

いや、それを言うのであれば、リオとヒマリは充分な程、彼女達に成長の機会を与えている。

なのに、どうして、そんなに悲しい目をする?

 

「どうしたんだよ。心配事でもあるのか....?」

 

 

 

俺がそう呼びかけると彼女は決意したように言った。

 

「ここでする話ではないわね。

着いてきて。」

 

 

 

 

 

「なんだ......これは....」

 

案内されたその場所はモニターが数台。

 

見渡す限りゴミ袋、ゴミ袋、ゴミ袋。

散らかったサプリの空ボトルとエナジードリンクの空き缶。

 

酷い状態だった。

 

()()散らかっているけれど気にしないで。」

 

「これが......?」

 

少し...?

 

 

「.........なぁ、リオ。

ビニール袋は何処だ!」

 

リオの両肩を掴んだ。

 

「えっ.....?」

「いくらなんでもこれが『少し』はおかしい!!」

 

この環境は彼女自身にとって良くない。

 

「ゴミ袋は....もうないわ。

ここの片付けだって私ではなく────せ、先生?」

 

「買ってくる。」

 

俺は背を向け、リオのセーフハウスから急いで飛び出した。

 

 

 

Interlude 忠告

 

「何故..... 。」

 

自分の問題ではないのだから放っておけば良いのに。

これでは話を切り出せない。

 

今日衛宮先生をここに呼んだのは()()()について話をする為だった。

 

彼がミレニアムの生徒会長が管理し、私が監視していた区域から連れ去ったであろう「あの少女」について。

 

だけれど......

 

 

「ねぇ、先生。

先程も話したけれどもうこのセーフハウスを使うことは無いと────」

 

「じゃあ尚更だろ。

 

立つ鳥跡を濁さず。

お前は遊んだ玩具を片付けないガキんちょじゃないだろ。」

 

 

自らの醜態の尻拭いをしている彼に、どの口で忠告などできるのだろうか。

 

「.....でも、手入れがされてる部分もあるな。

もしかして掃除してたのはお前じゃなくて────」

 

ため息を着く。

変な所で察しの良い人。

 

「えぇ.....私の付き人で、「特異現象捜査部」の最後の一人。

けれど.....」

 

彼には、まだ話せない。

今もこの部屋の何処で彼自身を監視するように命じている彼女。

私にとっての本当の()()()()()

 

私は彼が信頼に値するか、信用で測ろうとした。

結果としては想像以上の人物だった。

 

生徒の為に自らの身体すら戦場に晒す、優しさと危うさを兼ね備えた甘さを残す「先生」。

 

しかも彼は「生徒に対して存分に力を振るうことが出来ない」などという何かしらによって抑制、強制されている。

 

だと言うのにも関わらず、私とヒマリの提案に、のってくれた。

 

逆に言えば、私自身彼に対して隠し事が多い。

こちらが信頼するどころか、本来なら打ち明けて信頼関係を築くべきなのだろうが私には向いていないことはこの数年で実感し、諦めている。

 

あの提案だって彼女と彼が揃ってキヴォトスの危険要素となった時、どの程度の力が必要なのか試すためだった。

 

いや本当ならあれでは足らない可能性だってあった。

彼は「シャーレ」の主なのだから。

 

 

 

生徒の安全と心の支えになると、彼女達ゲーム開発部に誓ったその男は。

 

やはり、私の敵になるのだろう。

その確認の為に、この手の話はやはり必要だ。

 

 

「衛宮先生.....あなたは天童アリスをどう捉えているのかしら?」

 

「....?

アリスか?

なんて言うか良い奴だろ?

 

最近はモモイとかに影響されてちょっと変な道進んでるし....変わってる奴だけど───────」

 

彼はじーっと、私を見つめる。

 

「な、何よ。」

 

彼は片付けていた手を止めて顎に手をやると何かを決意したのか頷いて言った。

 

「いや、うん。

お前ほどひねくれた奴じゃない。」

 

それはどう考えても悪口としか聞き取れなかった。

 

「.....随分直球に言うのね。

私は至って普通だと思うけ──────」

「この惨状を見て、本当に自分が普通だって?」

 

その弁明は、積み上げられたゴミの山の前に、効果を失った。

 

「........それは卑怯ね。

誰にだって苦手なものはあるわ。

 

私にとって片付けが苦手だったと言うだけの話。

貴方にだって、苦手な事はあるでしょう?」

 

私もすこし皮肉を交えて返す。

 

「そうだな....トリニティに居る神父は苦手だな....。

あと梅昆布茶。

あのドロっとした感覚がどうもダメなんだ。」

 

違う私の言っているのは行動や作業の話だ。

そして脱線した話を戻さなければ。

 

「.....直球に言うわ。

 

私はミレニアムサイエンススクールの全ての生徒の名前と顔、そして得意不得意と行動パターンを頭に叩き込んでいるの。

 

だから、ミレニアムサイエンススクールに「天童アリス」なんて生徒が最初から居ないことは知っていたの。

連邦生徒会のような雑な管理はともかく私の目はごまかせない。

 

私は()()()()()()()()

 

例外なく。」

 

「─────────」

 

彼の表情はようやく凍りついた。

 

「.....そっか。

で、どうするんだ?

その様子だと誰がどこから連れ込んだのかも分かってるんだろ?

 

ゲーム開発部全員退学処分か?」

 

彼は立ち上がり真っ向から私と対立した。

 

「私がそうしたら、貴方はどうするの?」

 

「....俺がアイツらの身元引受人になって引き受けてくれそうな学校を探す。

なんならアビドス高校に推薦してもいいかもしれないって一瞬思った。

ホシノ達はいつだって人材募集中だしな。」

 

やはりそうするだろう。

彼は捨て猫を片っ端から拾うが如く、優しいのだ。

 

 

「そうしたら、私は彼女を監視できなくなる.....。

それは危険だわ。

 

貴方はアリスの正体が分かっているの?」

 

 

「.....?いや?

なんかとんでもなく変わった子だって事くらいか?」

 

彼は、自分のしていることに気づいていないのか?

 

「正体不明の()()()()()それを貴方は何も考えずに私やセミナーの許可もなく違法に入学させたのよ?」

 

 

「え?.....あぁ、そういえば!いやな?責任を放棄するつもりは無いんだけど言い訳をさせてくれ!

 

モモイがアリスの学籍の件を相談したのがあいつの言う「情報部」だったんだ。

偽装とか偽造とか言ってたけど当時はミレニアムなりのブラックジョークかなにかだと思っていたんだ。

よく考えたらモモイの言っていた「情報部」は非公認組織の「ヴェリタス」だから不法入学になる訳か.....」

 

言葉が出ない。

今の時代そんなブラックジョークを使う生徒がどこにいるの

 

「ま、まさか。

あの子の言うことを信じていたの......?」

 

彼は謝る。

それどころか正座して開き直って「お願い」をしてきた。

 

「頼む、いっその事リオの方で正式な書類を作って認可してくれないか!?」

 

今度はこちらが閉口する。

 

「貴方、正気?

学園の、ましてや生徒会長に不正に加われと言っているのよ?

 

「正義の味方」が聞いて呆れるわね。」

 

 

 

「....やっぱダメだよな。

悪い。

無茶言った。」

 

 

───────勝手に決め付けないで欲しい。

 

「別に一言もダメ、とは言っていないのだけれど?」

 

どちらかと言うと、ヴェリタスの不正を行った際の不始末を発見し他の人間に発見される前に処理したのは私だ。

それは「天童アリス」という不確定の危険要素を監視するためでもある。

 

でもどうしてそこまで肩入れするのか、そう彼に聞いた。

ほんと興味本位だった。

 

 

「....あいつに成長の機会を与えてやりたいんだ。」

 

彼はそう言った。

 

 

 

 

 

「最後に一つだけ、聞いてもいいかしら?」

 

 

掃除が終わった彼を送り出す際、一瞬だけ引き止めた。

 

「あ?どうしたんだ?」

 

 

「.......貴方はモモイに「どれだけ迷惑をかけようと見捨てない」と言ったそうね。

 

ならどれだけ自分勝手で傲慢な生徒がいたとしても、貴方はそれを笑って許すことが出来るのかしら?

被害を受けた人に対して、どう責任を取るのかしら?」

 

最後に聞いたのは、私自身のことだった。

何故かは自分でも分からない。

 

 

彼は、固まった。

考えないようにしていたのだろう。

 

「先生、恐らく「天童アリス」の正体は────」

 

「リオ。」

 

彼は、私の言葉をさえぎった。

本題を逸らすように、甘い。

考えることを放棄しているように、私には思えた。

 

 

「アリスはアリスだ。

他のなんでもない。

 

お前だってヒマリだって、早瀬だってモモイだって皆そうだ。

 

 

一言で言うならそれぞれの()があるんだ。

 

俺にとって皆の色は綺麗に見えるし、みんな好きだ。」

 

そんなまるで水に流すように彼は言った。

 

「俺も前からずっと気になってたんだけどさ。

どうしてアリスをそんな敵視するんだ?

あいつは立派な「人」になる為に日々頑張ってるぞ。

他人を助けたり、学んだり。

 

 

なぁ、リオ、もうひとつ頼みたいことがある。」

 

自らは話を流したというのに、なんと図太いのか。

 

「何かしら。」

 

それは、彼と私の関係性をハッキリさせるものだった。

 

 

「お前がアリスを傷つけるようなことが無いことを、願ってる。」

 

「えぇ......そうなったらいいわね。」

 

私も、そんな日が来なければいい、と思ってしまった。

確約をしなかった。

その意味が彼にも伝わったのか。

 

私達の立場は決定的なものになった。

 

「またな。」

 

そう言い残して彼はセーフハウスから出ていった。

 

 

「どうしますか?追って今のうちから「処理」しますか?」

 

()()がロッカーから出てきた。

その隠れ方はゲーム開発部のあの子を真似たらしい。

 

「.....いいわ。

間違っても勝手に動かないで頂戴。

 

........私も出来ることなら見ていたいの。」

 

彼と彼女(アリス)の進む存在しないであろう幻想という名の明るい未来を

 

Interlude 忠告 END

 

 

 

 

 

その日以来調月リオをミレニアム内で見かけることはなくなった。

 

 

心配事の大元であるアリスは至って平穏だ。

 

「会長ですか?この前アリスの学生証を更新するといって新しいものをくれました!

それに、見てください!マスターとお揃いの端末をくれました。

 

彼女は優しいです!」

 

なんてこともあったらしい。

結局アビドスではアリスは迷いかけていたのでアリス専用の端末が手に入ったのは感謝する他ない。

 

「なんだよ、思ったより世話焼きか?アイツ。」

 

と思ったが、あのゴミだめを見てそれは無いなと、思い直した。

こんなことを考えている今も、リオは俺とアリスを何処かのセーフハウスから見ているのだろう。

 

2、3度、あの時のセーフハウスに通ってみたものの設備も何もかも引き払われていて跡形も残っていなかった。

本当に使うつもりがないのだろう。

 

彼女は用心深い。

1度他人に知られたセーフハウスを使うつもりがない、というのも徹底していた。

 

「俺はアリスより、お前の方が心配なんだけどな。」

 

と、こちらに視線を送った、監視カメラにボソッと語りかけた。

 

 

 

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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