衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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M.S.S Neru's Interlude 「鶴と龍」

 

 

Interlude 退屈

 

「なぁ、先生さんよ。」

 

「ん?どうした?」

 

あたしは美甘ネル。

相性はコールサイン:00(ダブルオー)

 

ミレニアムサイエンススクールのCleaning(C)&(&)Clearing(C)所属の最強で最凶で最恐のエージェントだ。

 

そんなあたしは現在このポンコツ先生の元にいる。

あのリオがシャーレへの出向を命じたからだ。

 

表向きは護衛だなんて嘯いていたが、実際の所は監視と観察だろう。

 

まぁそんなことはどうだっていい。

 

「つまらねぇ。」

 

やる事がねぇ。

面倒な案件も嫌なもんだが正直何もしないで椅子にただ座ってるってのはあたしにとって死んでるようなもんだ。

 

「そりゃ仕方ないだろ、普段の仕事はこうなんだから。」

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!やってらんねぇ!

なんだってこんな仕事があたしに振られるんだよ!

こんなのどう考えたって────」

 

そう、あたしに向いていない。

じっとしているのも性分じゃねぇ。

 

「そりゃ分かるけどさ。

じゃあ何がどうだったら満足なんだよ。」

 

彼はパソコンのコンソールを叩く手を止めて振り返った。

 

「そりゃあんたと全力勝負して勝つことだよ!

この前のチビっ子たちとの時はあたしも状況把握しきれてなかったしな。

 

なぁ、どうしても生徒と戦えねぇのか?

心配しなくてもあたしはお前相手に被弾なんてしねぇし、怪我するなんて更にありえねぇよ。」

 

消化不良、不完全燃焼である。

 

「そんなこと言ったってな....明確な理由もなく戦うなんて......。」

 

「ここにもう一週間は軟禁されてるけどいい加減訛っちまうよ。

たまには体動かさねぇか?」

 

「って言ってもなぁ.....

もう何度も藤河達の後輩が暴れ回っては窓ガラスにヒビ入れたり粉砕したり。

ワカモなんて叩きの一発で俺をここから吹っ飛ばしたんだ。

何があってもシャーレで暴れるのは禁止な?

 

あ、肉体言語とか言って格闘技始めんのもダメだぞ。」

 

「チッ.....つまんねぇな。

なーんか、どっから不良討伐な依頼とか来ねぇかなぁ。」

 

完全に一人で愚痴をつぶやくだけの毎日。

いくら「仕事」と言えど、こればかりはどうしようも──────。

 

 

「なぁ、体を動かせればなんでもいいのか?」

 

こいつも、いい加減あたしにうんざりしていたのかそんな言葉を吐いた。

どうせ買い物あたりのどうだっていい事を押し付けるつもりだろう。

 

「いんや、あたしが引き受けたのはお前の護衛だ。

だからあんたを1人にする訳には行かねぇんだよ。」

 

「そっか。

なら丁度いい。

 

藤河。

お前のつなぎ、美甘に貸してやってくれ。」

 

 

こいつは変なことを言い出した。

つなぎだと?

 

「あぁん?誰がそんなもん着るかよ。」

 

「あぁ、そうか。

そうだよな。」

 

この先生とやらはあたしの言った言葉に納得した。

 

 

「藤河の身長は165cm。

さすがに無理があるもんな。」

 

 

 

 

「は?てめぇ、今なんつったゴラ。」

 

こいつは、言ってはならねぇことを、口にした。

 

「いや、身長差ありすぎて裾が─────」

 

 

「そんなもん捲りゃいいだけの話だろぅが!!」

 

 

あたしは、そのポンコツ先生を、シャーレの執務室から文字通り廊下へと蹴り出した。

 

 

 

 

 

「おいてめぇ、さっさとそれ置いて失せろ。」

 

茶髪の生徒が、こちらへと寄ってくる。

とりあえず睨みつけて威嚇した。

 

確かにこいつは身長も高いしガタイもなかなか。

さらに言えば結構体は傷だらけだ。

 

相当な環境で生きてきたヤツの特徴だ。

それに、あたしの目を真っ直ぐ見てくるし、怯えた様子もない。

 

こいつは、出来るやつだ。

 

「私のつなぎ、後ろのファスナー式なんだけど、ひとりで着られるって言うなら勝手にすればいいと思うけど。

モタモタしてると士郎、入ってきちゃうかもよー。」

 

なんて揶揄う余裕すらありあがる。

 

「あんた怖くねぇのか?

 

自分で言うのもなんだけどよ、「ミレニアムの00(ダブルオー)」ったら結構名が通ってるんだぜ?

聞いたことねぇか?」

 

気になったんで聞いてみる。

あたしの事はあたしが一番よく知っている。

 

どれだけ屈強な奴だろうと、あたしより背高い奴だろうと、この面を一目見ただけで全員ビビって隠れちまう。

そんぐらい、ミレニアムでは恐れられていた。

 

 

「あー....聞いたことあるわ。

確か、スカジャンを羽織ったメイド被りのヤンキー。

その生徒が暴れたところは流血沙汰になったり、更地になったり、爆発したりするって.....。

 

 

でも私はそこまで怖く感じないけど?

私はもう不良じゃないし。

あなたと戦うこともおそらくないでしょ。

 

あ、でも士郎を虐めるっていうなら話は別。

後輩達も一緒に纏めて束になってかかってやるんだから!」

 

まぁ確かにな、敵じゃなきゃビビる必要がねぇのはわかる。

だけどよ─────あいつと敵対したら敵になるって......

 

 

「んだよ、あたしはいじめっ子でてめぇはあいつの保護者かよ。

ったく...これじゃどっちが大人なんだか分かりゃしねぇ。

 

────あぁ...もう、そんな顔すんなっての、言われなくたって傷つけたりなんてしねぇよ。」

 

命令でもなけりゃな。

まぁあったとしても多分あたしは反発するんだろうが。

 

 

なんだかんだ言って、あたしはあいつが気に入り始めてる。

 

何しろ無茶苦茶だ。

アビドスでのカイザー戦でもバン1つで敵前線を突破。

この間のミレニアムタワーでの戦闘は今一つだったが、大蛇の戦闘の時ははっきり言って心が踊った。

 

あいつの立てる作戦ってのはお偉いさんの計算し尽くされたもんじゃねぇ。

最前線の武器も弾薬も限りのある限界のある状態で立てる決死のもんだ。

 

そういう所には共感が持てるどころか好きまである。

 

「そっかあんたは士郎の味方なんだね。」

 

「味方ってわけじゃねぇし。仕事だ」

 

 

 

 

「どうだ!着てやったぞ!

で、これで何すんだよ!」

 

なんつうだせぇもんを着せんだよ......

こんなところアスナ達(アイツら)に見られたら笑いの種になるじゃねぇか!

「よし、じゃあ行くか....。」

 

あいつもつなぎに着替えていたのか。

 

 

「てかどこに行くんだよ。」

 

あたしがそう聞くと。

 

「ちょっとそこまで掃除のお手伝いに、だ。」

といってあいつはあたしの手を引いて部屋を出ていった。

 

Interlude 退屈 END

 

というわけで今俺たちは水族館に来ている。

何をしているかと言うと水槽の掃除だ。

 

 

「だぁあぁぁ!!!なんでこんな事させられてんだよ!」

 

「だから言ったんだよ、体動かせるならなんでもいいのかって。」

 

というのも今行っている水族館の掃除は完全に俺の問題だった。

ホシノに言われた「アクアリウム」に連れていく、という話はおじゃんになった。

 

どうもキヴォトスではそういう場所が珍しくここ半年は予約が埋まっているらしい。

しかも入場料一人1万5千円。

というわけで5人ともなると8万円近く吹き飛ぶわけだ。

 

いくらなんでも生徒へのご褒美が経費で落ちる訳もなく、水族館とのコネクション作りなんてせこせこした事をやっている。

 

 

「なんであたしがホシノ達のために働かなきゃいけないんだよ!」

 

美甘は空になった水槽、俺の隣でデッキブラシを持ちながら憤慨している。

 

「それはそうなんだけど、お前が体動かしたいって言ったんじゃないか。

嫌なら最初に断ればよかったんだ。」

 

「いやそれはてめぇが「やりがいのある仕事」なんて言うから!」

 

確かに、()()()()()のある仕事とは言ったが美甘にとってやりがいのある仕事かどうか言ったかと言われるとそんなことは一言も言ってない。

それは美甘の勘違いだ。

 

「お前リオとかホシノにも言われたろうが!

結論から話せって!」

 

「だから掃除のお手伝いだって言ったじゃないか。」

 

「いや、あたし達でいう()()ってのはこういうのじゃねぇし、くそめんどくせえだけだろうが。」

 

......敵の排除とか不良の文字通り討伐なんてのがお掃除ってのは少し笑えない。

 

「たまには普通の()()()してみたらどうなんだよ。

それに戦闘は出来ても掃除はしないってのはメイドをカモフラージュに利用するエージェントとしてはどうなんだよ。」

 

「あ?んなのてめぇに関係ねぇだろうが!

あー....だりぃ、こんなのすぐ終わらせてやらぁ。」

 

ちょっとした疑問をぶつけると彼女は俺から目を逸らしてガラス張りの水垢やこけをゴシゴシとデッキブラシで掃除し始めた。

 

 

数分後─────

 

「おらこっちは終わったぞ!」

 

と、汗ダラダラ、顔を真っ赤にし肩で息をする茹で上がった美甘ネルが完成した。

 

まるで俺でこれで終わりだ、と言わんばかりに。

 

「お、おい。最初からそんな飛ばして大丈夫か?

まだまだこれからだぞ?」

 

「わ、分かってる!だからさっさと終わらせるぞ!」

 

 

───それから二人で様々な水槽を掃除した───

 

トンネル状の水槽に、流れる筒状の水槽。

そして、水槽以外も。

 

「ここはなんだよ、水槽ってかプールじゃねぇか。」

 

「あ、こりゃペンギンコーナーだろ。」

 

ペンギンが水棲動物というだけで、魚かと言われると微妙なところはあるが、おかしいことでもない。

 

「そりゃわかる、けどよ1匹....いや1羽っていうのかコイツの場合は。

回収し忘れたのか残ってやがるぞ。」

 

その場に残っていたペンギンはクァクァと鳴いていた。

それは寂しさともお腹がすいたとも取れるような鳴き声だ。

 

「.....チッ、先生、ここにいろ。ちょっくら文句言ってくる。」

 

「お、おい!待てよ!美甘!」

 

 

あいつはブラシとバケツをその場に置き、抱き抱えたペンギンを俺に任せ、部屋を出ていった。

 

 

追いかけようとすると怒鳴り声。

その場にいたスタッフに担当員を呼べと怒鳴りつけ説教を始めてしまった。

 

たしかにペンギン1羽と言えど、回収を怠ったとなると管理が雑である。

ペンギンだったから言いものの、これがもし魚の類で回収し損ねた上で水槽の水を抜いてしまえばどうなるか、想像にかたくない。

とはいえ部外者かつ、あの鬼のような形相のネルに叱られてはぐうの音も出ないのだろう。

 

彼女は戻ってきては苛立った様子で「再開するぞ」と一言言ってデッキブラシを両手に持って掃除をし始めた。

 

 

 

そうして全ての掃除が終わった。

 

「色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

こちら些細なものですがこの水族館の招待券10枚となります。」

 

 

「「10枚!?」」

 

俺と美甘は顔を見合せた。

 

「この度は大変ご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ございませんでした。

着きましてはお詫びとして当初の報酬を倍にさせて頂きました。

またのお越しをお待ちしております。」

 

そう言って俺達は追い出されるように水族館を出た。

 

 

「なぁ、美甘。俺が必要なのは5枚なんだが....お前興味あるか?」

 

手渡された封筒の中から5枚だけ抜いて手渡す。

 

「まぁ....貰えるもんは貰っとくがよ.....何で5枚なんだよ。」

 

美甘は俺の言葉に対して不満げに、自分の思いをぶつけてきた。

 

「本当なら6()()必要だろうが。

なんせ、アビドス対策委員会は5人、お前が随伴して6人になるんだからな。

 

ホシノの言葉お前覚えてっか?」

 

そう言われてホシノの言葉を思い出す。

 

『それと今度ご褒美にアクアリウム、()()()()()()()。』

 

 

つまりそれは。

 

「分かったか?ホシノ達はお前さんと行きたがってんだよ。

だからこのまま5枚だけ手渡しして、1人行かねぇなんて言ったらあいつら絶対(ぜってー)怒ると思うぞ。」

 

美甘はため息つきながらチケットを1枚抜き取って差し出しては、俺にそう助言した。

 

「お前.....」

 

「あー!だりぃからそんな涙流しそうに目うるうるさせてこっち来んな!

ばっかじゃねぇの!

 

あー.....なれねぇ事するもんじゃねぇな。

あたし達が行くにしたって4人で充分だから渡してやってるだけだ!

か、勘違いすんなよ!!」

 

なんて最早言い訳にすらなっていない言葉を俺へと投げかける。

美甘は見た目こそ恐れられるヤンキーの様であるが、実際のところ他人思いの優しい人物なのだと、俺の中で得心がいった。

 

「ま、あれの引率となると大変だろうけど、せいぜい頑張れよ。」

 

「あぁ、何から何までありがとな、美甘。」

 

 

 

「ま、お前はまだまだ世話焼かせそうだからな、しっかり頼むぜ「先生」さんよ、」

 

 

 

 

 

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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