衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】 作:神宮寺志狼
ブルアカ4.5thおめでとうございます。
水着ハスミ、セイア、ナギサ、ミカ全員入手できました。
.....まぁその前の水着キキョウとユカリで6万吹き飛んだんでイーブンですが ....。
さて、本題、というか注意。
この作品では衛宮士郎という不審さのある先生の登場によりナギサの猜疑心、人間不信に拍車がかかっております。
もともとVol3、1章2章の本編においてかなりあくどいことをやっているナギサの行動にも拍車がかかることになります。
アビドス編でのアコのくだり、みなさん覚えていらっしゃいますでしょうか。
かなり描写的にやり過ぎたわ、と反省した場面でしたが。
今回Vol3を書くにあたって、同じく「やり過ぎ」な部分があります。
やはり全てはトリカスが悪い、という事で。
ちなみにナギサの復刻が未だ来ませんのでナギサに関しては未入手かつ、エミュレートしきれておりません。
以上。
俺はハスミに事情を説明した。
ティーパーティの2人から補習授業部を任されたこと。
そしてここに内の居る4名は補習授業部の名簿に名が載っている事。
「なるほど.....お話は理解しました。
衛宮先生が補習授業部の担任になられる...と。
......残念です。
出来ることならそこにいる化け狐の代わりにお手伝いをしたかったのですが。」
「あら、その点はご心配なく。
正義実現委員会の副委員長様にお手間をかけるつもりは御座いません。
それに、貴女のようなのっぽが居ては却って目立ってしまいますし。」
ワカモはハスミの嫌味に対して嫌味で返した。
なんならかなりの悪意が含まれているとみた、数倍返しだ。
こちらも売り言葉に買い言葉である。
どうにも犬猿の仲の二人。
「誰が.....のっぽですって...?」
しかも、不味いことに1番ハスミが気にしていることに触れてしまった。
ハスミはどうにも背丈のことを指摘されるのがダメらしい。
なんなら美甘とは真反対である。
「ストップだ!2人とも、場所を考えろ。
....ったく、なんでお前たちはそんなに仲が悪いんだよ...。
ワカモが言いすぎなのは今に始まったことじゃないけど。
今のは2人とも一言余計だぞ。」
「....申し訳ありません ...失言でした。 」
「....大変見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありません....。」
2人は揃ってぺこりと頭を下げた。
「....で、ハスミ、ここに居る3人、引き取っていって構わないよな?」
俺がハスミにそう聞くと下江が間に割って入って来た。
「はぁ!?ダメに決まってるでしょ!?
絶対ダメ、2人とも凶悪犯なのよ?
....っていうかあともう1人って誰よ。
─────まさかハスミ先輩?そんなはずないわ!」
この様子にやれやれ、と頭を抱えるハスミ。
「コハル、先生はティーパーティーからの依頼を受けてこちらにいらっしゃったのです。
規定上は何も問題ないはずですよ。
補習授業部の顧問、担任の先生になるのですから。
それに、残りの1人は─────」
ハスミが真実を告げようとすると、コハルはそれを遮った。
「ふ、ふん!
まぁでも良いザマよ!
こっちはこんな凶悪犯達と一緒に居なくて済むし、そもそも「補習授業部」だなんて!
あははっ!恥ずかしい!
あ、でもいいんじゃない?
悪党と変態の組み合わせ。
さらにチンチクリンの「先生」に化け物と弱虫。
そこに「バカ」の称号だなんて。
私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」
下江は笑っている。
まさか自分で言ったその「バカ」の称号を人知れず得ているとも知らずに。
「コハル、言いにくいのですが───」
「いや、いいよハスミ。俺から言う。」
ハスミが告げようとしたのを制止する。
身内に言われるよりか初対面の人間に言われた方がショックは少ないだろう。
して、俺は下江と向かい合った。
「あのなぁ...散々馬鹿にしてるけど、最後の一人はお前なんだって気づいてないのか?」
「.....................
────えっ!?私なの!?」
なんにも知らないみたいにコハルの瞳は驚いた猫の目みたいになった。
「コハルは...その、前に受けた試験。
3回とも赤点を取っています....。
補習授業部のテストに合格するまで、正義実現委員会の権限を剥奪。
復帰できないものとせよ....との指示が。」
ハスミは申し訳なさそうに事実を口にする。
明らかに顔を爆発寸前まで赤く染めた下江に、ワカモがトドメを出した。
「では小さなもおマヌケさんもそこに追加ですわね。」
「う、うぅ......。」
本当に、先が思いやられる。
そうしてハスミに別れの挨拶を告げ、ヒフミとワカモと共に下江、浦和、そして白州の3人を補習授業部の部室まで連れて行った。
「では、ここに揃っているのが補習授業部の「部員」ということですか?」
着いたそうそう扉を閉め、浦和がワカモに視線を向けながら俺に聞いた。
おそらくワカモのことが気になっているのだろう。
「あぁ、で、俺が担任で、ワカ────狐坂は副担任兼護衛役だ。
部長は阿慈谷ヒフミ。
みんな、仲良くしろよ。」
教壇に立った。
まさかここに来て普通の「先生」としての仕事が回ってくるとは思いもしなかった。
まぁ普通と言っても「補習授業クラス」っていうおまけ付きだが。
「........ほんとに私こんな奴らと....?」
(シュコー.....シューッ....)
見渡してみるとほんとに個性豊かな面子だ。
何も起きないといいのだが.....。
「それで、衛宮先生、阿慈谷部長?
私たちは何をすれば良いのでしょうか?
放課後に人気のない教室で、素行の悪い女子高生
ふふっ♪︎始まってしまいそうですね。」
浦和がわざとらしく呟いた。
その言葉に白州がのっかっていく。
「始まる....?
まぁ、何だって構わない。
ちなみに私が本気を出せば、こんな教室でも一ヶ月は立てこもれる。」
「いや、何って補習授業だけど.....」
本当に何を言っているのやら。
下江に目を向ければ何やらブツブツと独り言を呟いている。
「あ、あはは.....。
衛宮先生....その、よろしくお願いします。」
ヒフミは困った表情で俺に話しかけてきた。
差し出してきたのは右手。
「あぁ、お前も大変だろうし、俺にも至らない点もあるだろうけど、よろしくな。」
それを俺は、しっかりと握り返した。
全員が席につき─────教室は静まり返った。
さっきまであれだけ騒がしかったと言うのに。
ヒフミと下江は緊張から。
ワカモは言葉を発する必要性がないだろうし、白州は無口な印象、そして浦和はと言うと皆の挙動や視線を、追っている。
「.....とりあえず、自己紹介するよ。
まずは俺から。
連邦捜査部「シャーレ」の顧問、衛宮士郎だ。
今回、多忙なティーパーティーからの依頼で補習授業部の担任を任された。
よろしくな。
で、そこにいるのは同じく「シャーレ」所属の狐坂ワカモ。
さっきも言ったけどこの部活においては副担任兼護衛役だ。」
「よろしくお願い致します。
士郎さんのお手を煩わせる有象無象の方────痛っ.....。」
また変なことを言い出す前に、ワカモの頭を名簿で軽く叩いた。
もちろん面でだ、端や角ではない。
「あのなぁ、あくまでも俺たちは「仕事」でトリニティに「
シャーレでのいつもの調子はナシだ。
ったく....ただでさえマコの後輩達にも態度がキツイんだから。
いいか?ワカモ。
これはお前のコミュニケーション問題の解消でもあるんだ。
ともかくな、俺の指示がある迄、銃は使用禁止!
悪口を一言言ったら減点だ!
普通に会話すること、いいな?」
「は、はぁ.....。
ではあなた様....減点されたら何が起こるのですか...?」
そこまで言って、当人に問われる。
はて、あんまりペナルティに関して考えていなかった。
どうしたものか。
「うーん......即刻シャーレから叩きだ───」
今即行で考えた案。
実際に行う気はさらさらない。
そもそも更生する為にと、不知火カヤに無理言ってお願いしたのだ。
今追い出すことはその責任を放棄することに等しい。
しかも、それは生徒の可能性を見捨てる事になる。
が、だ。
たまには可愛い子には旅をさせろ、獅子は我が子を谷底に突き落とすの精神で行こう。
で、これにはいくら何でもワカモも危機を察知したようで俺の言葉をさえぎって返答が帰ってきた。
「分かりました士郎さんがそこまで仰るなら、私、精一杯努力致します!」
「よし、言ったな?
じゃあ今日からは甘やかさず厳しく行くからな。」
とりあえずワカモに釘を刺すことに成功はした。
「なぁ、私達は一体何を見せられているんだ?」
俺たちのやり取りを見て、白州が下江に声をかけた。
「そ、そんなこと知らないわよ!
でも、まさか生徒と先生が同居してる....なんて......//
ま、まさか─────。
あ、あんた見損なったわ!
先生なのに生徒とそんな...タダならぬ関係を持つなんて....!」
下江は下江で何か勘違いをしてる。
「あのなぁ、ワ────狐坂は百鬼夜行連合学院で停学処分をもらって行き場がないんだ。
それに────────」
その先を、白州が語り始める。
「─────────七囚人、災厄の狐。
面を被っていると聞いていたが、素顔は私たちと同じ生徒だったのか.....。
話に聞いている限りでは数年前に世間を揺るがすほどの大太刀回りをし、あの連邦生徒会長旗下のS.R.T、FOX小隊ですら四人がかりでどうにか運良く抑え込めたらしいな。
噂ではそれすら実は矯正局に潜り込むためのカムフラージュで目的や動機は別にあったとすら聞く。
そんな彼女が付き従っている、というのだから貴方も相当な実力を持っているんだろうな。
エミヤ・シロウ先生。」
「─────────。」
ワカモの警戒水位が上がる。
白州はまるで辞書でも開いたかのようにワカモの略歴を読み上げた。
おかしい。
ワカモは「災厄の狐」と呼ばれていた頃は人前で仮面を取ったことはないらしい。
ので、一般的に素顔はあまり知られていない。
知っているのも連邦生徒会の役員と裏情報に精通した極わずかの生徒のみ。
白州アズサから漏れ出る雰囲気は、もう、この時点で「一般生徒」の域を超えてしまった。
そして、そう結論づけてしまったのが、凍ったように動かない表情と、突き刺すような眼差し。
それはアルと初対面で感じたものと同じもので、まるで、これまで何人も───────。
「だが、それにしては甘いと思う。
私の元いた学び舎では、言う事、指示したことが出来ない
その甘さは、いつか必ず貴方を苦しめるよ。先生。」
この言葉には、ワカモだけでなく、俺も目を細める他なかった。
「元いた..学び舎?」
俺が疑問に思い呟くと、ヒフミが答えてくれた。
「白州アズサさんはつい最近トリニティに転校して来たばかりなんです。」
これに対しては浦和が疑問を抱いたらしい。
独りでに呟いた。
「トリニティに転校だなんて、珍しいですね....?」
「あ、書類上にはそう書いてあって.....も、もしかして私、余計なことを....?」
「いや、別に隠すようなことじゃないから気にしないでいい。
れっきとした事実だ。」
........なんか殺伐としすぎている。
まぁそれは白州に限った話ではない。
「.....」
下江はわざわざ1人前の席を陣取って4人から距離を置こうとしていた。
なんならその4人を睨みつけている。
「.....」
「....下江、どうしたんだ?」
俺がそう聞くと
「言っておくけど、私は認めないから......!」
なんて言い始めた。
これはもしかして、セリカのように俺の存在を認めない、ということだろうか?
「えっと.....?」
「あら、なんの事です?」
その呟きに対して、ヒフミと浦和も疑問に思ったそうで聞き返した。
「わ、私は正義実現委員会のエリートだし!
私の方が年下だからって、あんた達を「先輩」だなんて呼ぶつもりは無いから
それにそもそもこんな部活
と、訳分からないことを言い始めた。
それに対してヒフミは補足説明を入れた。
「えっと、何か勘違いしているようなので....少し。
私達、補習授業部の目標は「行われる特別学力試験で
ですから1人頑張っても、その他の方がダメだと.....」
ん?それは初耳だぞ。
「なぁヒフミ。
どうして全員同時の合格が条件なんだ?
普通こういうのはノルマ達成したら抜けてくもんだぞ?」
「さ、さぁ...あくまでも「部活」だからかもしれません。
全試験は3回と聞いています。
その内の1度でいいから合格することなんですが...」
.....?
ヒフミも詳しい話を聞いているわけじゃないのか?
なんか無茶苦茶困った様子だ。
とりあえず合格条件は分かった。
疑問に思うこともあるが今は一旦置いておこう。
「......なるほど...♪︎」
浦和の呟きが耳に入ってきて視線を戻す。
「確かに補習授業部の中でまで、「先輩」「後輩」なんて扱いにする必要性はないと思います。
ので、私たちは皆対等な立場、ということですね。
では、私はここに居る皆さんの事は名前呼びさせていただきますね。
よろしいですか?
ヒフミちゃん、アズサちゃん、コハルちゃん、それに、ワカモさん。」
浦和の言葉に皆頷いた。
何か閃いた下江が俺に言葉を投げかける。
「 ....じゃあ、あんたの事も呼び捨てでいいのよね。
全然先生らしくないし…」
「ぐっ........」
下江の言葉がクリティカルヒットした。
胡散臭いとか言われるより全然マシとはいえ認めて貰えないのはちとキツイ部分がある。
だけど────
「そ、そんなことありません!
コハルちゃんが知らないだけで、衛宮先生はすごく真っ当で、頼りになる先生です!
アビドス高校の皆さんのときだって─────」
ヒフミは俺のことを庇ってくれた。
「頼りになる」と。
それだけで、俺にとっては十分なのだ。
「ありがとう、ヒフミ。
でもいいんだ。
俺がどんな奴か、なんてそれぞれが自分の目で見て判断してくれればそれでいい。
下江にとって俺がそう見えるならそれでいいよ。
みんなも呼びやすいように呼んでくれ。」
俺が了承すると下江は「....変な奴」と一言だけ呟いた。
一方ワカモは目を瞑ってにこやかに笑っている。
抑えてくれているだけ有難いのだが、殺気がダダ漏れだ。
言葉遣いさえ改めてくれれば別に喧嘩しても────と思ったがさっきのハスミとのやり取りでは切れ味バツグンの毒舌っぷりだったのでそれもダメか。
「私はそういう文化や習慣には疎い。
なので、シロウ、と呼ばせてもらう。」
白州はその低い声で、俺の名前を呼んだ。
「───あぁ、いいよ。
そう呼ばれるのに、俺もやっと慣れて来た所だ。」
その後、各生徒に簡単な自己紹介をしてもらった。
........浦和の自己紹介だけは、おそらく生涯、忘れることは無いだろう。
「えっと、そういう事ですので、短い間ですが、よろしくお願いします。」
「.....」
「.......」
みんな押し黙った。
あまり会話が弾まない。
「え、えっと、何かわからない点とか気になる点がありましたら....。」
どうにか関係を築こうとしているヒフミ。
こいつの頑張りは、どうにも見てて応援したくなる。
「大丈夫。
これからは普通の授業に加えて、毎日放課後に
白州は補習授業のことを訓練といった、先程もあまりこういう文化には慣れていないとも。
まるで、戦うことしか知らないかのように .....。
「理解している。
3回のミッションのうち、1度でも良いから全員で合格を収める。
そのためにここに毎日集まって訓練を重ねる、それほど難しい任務じゃない。
この集まりはつまり、各自のリタイアを防ぐ為の措置といった所だろう?
私としては特にサボタージュする理由もない。
全力で取り組ませてもらう。」
ぎごちなく会話するヒフミと白州。
それは浦和と下江もそうだった。
「....?
あら?そんな憎悪に満ちた目で、どうしたんですか?
コハルちゃん?」
「私をあんたたちみたいな落ちこぼれと同じにしないで!
そもそも私が試験に落ちたのはあくまで飛び級のために、ひとつ上の2年生用のテストをうけたせいなんだから!
つまり、私は今まで本当の力を出し切れていなかったってこと!!
今度のはちゃんと、ええそうよ!
1年生用のテストを受けるんだから!
そうすればちゃんと優秀な成績を収めて「はい終わり」ってわけ。
解る?」
自信満々に「自分は受かる!」と宣言した下江。
「.....なるほど。
実力を隠していたわけか。
ちなみに私も前のところとの学習進度の違いが大きくて、1年生の試験を受けている。」
白州の言葉に「あっそう。まぁ私には関係ないけど」と冷たく言い放ち、席から立ち上がる。
「じゃあね、私は帰るから。
精々頑張りなさい!」
「お、おい待てよ!」
俺の静止は間に合わず彼女は笑って教室から出ていった。
「よ、良かったんでしょうか......」
不安げなヒフミ。
そこに正論を投げつけるワカモ。
「良いのではありませんか?
本人が「私には補習授業など必要ありません。実力で突破します」と言うのであれば。
出来なければ強制参加させるための理屈がひとつ増えますし。
3回、受けられるのでしょう?
で、あるなら一回目は意識改革のために使うのもよろしいかと。」
なんと、ワカモにしては理屈が通っている。
これが、余裕のある、出来る者としての考え方か......。
俺が来た当初、シャーレに対して生徒達を束ねて襲撃していただけあって、人心掌握と言うか、人の使い方を心得ている。
「......本当にあの災厄の狐なんだな...。」
白州がワカモに賞賛とも得心とも取れない言葉を投げかける。
「──────とは言ってもな、せっかくの同年代なんだから、仲良くしないと。
無理強いするつもりはさらさらないけどさ、コミュニケーション自体を拒否するのはなぁ.....。」
あれじゃ皆もどう接していいのか分からないだろう。
一期一会なんて言葉もあるんだから、もう少し他人と関わってもいいんじゃないのか?
「....では、衛宮先生。」
俺の言葉に、浦和が反論してきた。
「仮に、自分に対して悪意を持っている方がいるとして、その人と積極的に関わろうと思いますか?
それも、「困らせてやろう」だったり、「貶めよう」とか、そういった事を裏で考えてるような方と。」
言われて考える。
俺にだって嫌悪感を初対面で感じた奴は五万といる。
例えば、そう、今同じ敷地内にいるであろうアイツとか。
「.......極力避けると思う。
関わるとしても必要最低限にするし.....。」
「そういう事です。
それでなくても人の心なんて分からないものですから。
私が言うのもなんですが、特にここには
距離をとられて然るべきかと。」
ようはとどのつまり、警戒されている。
俺が、ではなく俺達が。
それに、下江は「バカとは一緒に居たくない」と最初に断言していた。
「そもそも、仲良くするために集まっている会じゃない。
あくまでお互いの利益の為にここに居るんだから、親しいふりをする必要も無いはず。
違う?」
白州からも意見がでてきた。
でも、それは俺にとってあまり認めたくない理論だった。
「それはちょっと違うと思うぞ。白州。」
「.....?何がどう違うんだ?シロウ。」
「だって、人生は何処までいっても独りじゃないんだ。
友人とのコミュニケーションから学べることなんていくらでもある。
だって言うのにそれを放棄するなんて馬鹿げてるって俺は思う。」
生涯を一貫して孤独に過ごす者なんていやしない。
もしそんな人生があったとしてもそれは虚無だ。
何も無く、何も得られず、何も見つけられず。
自分と他人の境界線さえ、存在しないのではないだろうか?
「....それは一理ある。
確かに、誰でも最初は誰かから教えて貰って、何かが出来るようになる....。
シロウの言う通りだ。」
「あぁ、そうだ。
俺にだってできないことが沢山あった。
自力で解決したこともあれば、誰かから助けてもらったことだって沢山ある。
でも誰かを頼るって言うのは、そもそも、その繋がりがないと出来ないことだろ?
だから、相手を理解するための努力は怠っちゃダメだ。」
「......分かった、肝に銘じておく。」
白州が納得し、場の空気が和んだ所で浦和が茶々を入れ始める。
「相手との
衛宮先生、具体的に何処と何処をどう繋げるんですか?」
「何処って.....そりゃあ友人達との横の繋がりというか....上と下の繋がりも大事........。
.............。
おい、浦和、お前何考え─────」
「いいえ?単に衛宮先生はどのように他人との繋がりを作るのかと興味が湧きまして。
もしかして.....衛宮先生の
語るに落とされた。
(バンッ!)
浦和の言葉を遮るために教卓を名簿で叩く。
もう、女子の発していい言葉、なんてラインはオーバーしている。
「し、下江も居なくなっちまったから今日は顔合わせで終わりだ!
解散、解散!
ワカモ、行くぞ。」
「は、はい.....。」
ワカモはワカモで浦和の言葉を聞き取ってしまったのか、それとも現状顔を真っ赤に染め変な顔をしている俺に対してなのか。
彼女の顔も引き攣っていた。
こうして次の日から毎日、放課後に教室に集まっては補習授業を始めた。
「な、何すんのよ!!ここから出しなさいっ!!」
私、藤河マコは現在軟禁されていた。
ここが何処か、なんて聞かれても私には分からない。
最後に記憶に残っているのは、あのティーパーティーのホスト、
桐藤ナギサとの会話だ。
回想
『で、私にやって欲しい仕事って何?
覗いたら二度と返して貰えない仕事とかはごめんよ?』
今思えばもう少し用心しておけばよかったと後悔している。
『ええ、ある意味では貴女と.....そう、衛宮先生は当分の間、シャーレのオフィスには帰れなくなるでしょう。』
アイツは私に座るように促し、目の前で私の分の紅茶を淹れ始めた。
私自身は紅茶には全く詳しくない。
それでも、鼻腔をくすぐる香りでそれが
『......ふーん....いい香りじゃん。
ま、士郎が入れたのには劣るかもしれないけど。』
もちろん嘘だ。
士郎が負けてるとは思わないけれど漂う香りと雰囲気は一流。
悔し紛れの一言だ。
私達低民層から見たらトリニティのトップなんて裕福なセレブ層そのもので、「一般生徒を食いつぶしている」なんて先入観が消えないくらい悪感情がある。
私がつぶやくと、彼女の眉間がピクリと動いた。
どうも紅茶にはかなり煩い方のようだ。
たまに士郎が料理とか掃除とかそのあたりの家事全般で、私が言うのも烏滸がましいがプロならではの語りを始める時がある。
今目の前にいる桐藤ナギサも、そちら側の人間だったらしい。
『.....衛宮先生は紅茶を嗜むのですか?』
彼女は私に問いながら、ティーカップを手に取るよう促した。
そのまま取ってをつかみ、口に含む。
..........参った。
これは世辞抜きでかなり─────
『─────かなり飲む方。
コーヒーも飲むけど。
やり方を教わったけど私じゃてんでダメだった。』
『.....そうですか。
分からない方と言い合いをしても無駄ですし、本題に入りましょう。
貴方にして貰いたいのは────────。』
『──────────────。』
彼女から言われたのは、まさに、その士郎に対する裏切りに近いものだった。
『.....どうして私がそんな事をしなきゃいけないの?
士郎に対してスパイみたいな、騙しみたいな事をして、あなたに情報を流せって?
士郎にその話はしていないの?』
『はい。貴女のご推察通り。
どうもこうも、私はまだ、衛宮先生の事は信用できていません。
ので、ここは取引、という形で
率直にいいますと私は補習授業部に対して様々な妨害工作が出来ます。
このまま行けば彼は、ティーパーティー、並びにトリニティにおける全ての信用を失うでしょう。』
『......補習授業部のテストを邪魔して落第、そして全員退学させて士郎にダメ教師としてのレッテルを貼ろうって魂胆?
─────あんまり、あの人を甘く見ない方がいいよ。
例えあなたがトリニティのトップでティーパーティーのホストであっても。
あの人は困っている生徒を
それは、今目の前にいる、この生徒であっても。
私は───────まだ、冷静だ。
『貴女は.....彼を信じているのですね。
話は聞いています。
元々貴女は不良生徒、アビドス自治区にたむろしていた『カタカタヘルメット団』のリーダー。
それをD.U襲撃を皮切りに彼に手を引かれ、二度目の表の世界での人生を得た。
ですが、考えたことがありますか?
彼の心の内を。
一見すると優しく純粋そうに見える彼にもまた、裏の顔があるのではないか?と。
貴女のその信頼は、盲目的なものではありませんか?』
『────────────────。』
まだ、冷静だ。
『貴女にとっても「衛宮士郎」という1人の男性を見つめ直すいいきっかけに────────』
『勝手に────ウチの士郎を疑うのはいい。
だって私にもわかるくらい、理解できるくらいあなたは追い詰められている。
だからってそれを他人に押し付けないでよ。
あたしはあたしの目で見て、あの人の優しさと厳しさと、不器用さに触れてあの人のことを見てる。
伊達に同じ建物で暮らしてるわけじゃない。
........確かにあの人はずっと不安定だし、あたしたちのことを見ているようで見てない。
あたし達生徒を通してずっと遠く、何かを見てる。
だけれど、誰かを助けたいっていうあの人の行動と感情だけは本物だよ。
だから子供みたいにホイホイ連れ去られるし、しょっちゅう
あの人は単純にお馬鹿さんなんだよ。』
『.........。』
もうこの時点で私の頭は思考が停止した。
瞳が閉じかける。
『あなたが言うべきなのはそれじゃない......
ただ、ただ一言「助けて」って....言うべき.....だっ.....。 』
(ガタッ.....)
私の意識はここで途絶えた。
こうして拘束されているのは、私が拒否したことに対しての彼女の返答だろう。
「余計な事を言うくらいなら閉じ込める」と。
実際、私はティーパーティーの仕事に携わって居て会えない、という筋書きもある。
それどころか、
「これじゃ体のいい人質.....」
彼の、足だけは引っ張りたくない。
強いて言うなら士郎を人質にスパイ活動を強制されないだけ、マシだったろうか。
ふと、耳を澄ますとシャッターの向こうから声が聞こえてきた。
『そろそろお腹減ったんじゃない?魔術師のワンコさん。』
『お願いします、って一言いってくれれば暖かい料理を持って来てあげても良くてよ?
あの、ナギサ様から直々のご依頼を蹴ったんですもの、このくらいしてもらわないとあの人のメンツも丸潰れ。』
桐藤ナギサの声ではない。
監視役のティーパーティーの生徒だろうか?
......窓は1箇所、鉄格子付きだが空が見える限りだと地下牢ではないようだ。
「..........」
私の次の目標はどうにかしてここから脱出する事に移った。
色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?
-
要る。
-
後回し、本編に進んで