衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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即落ち2コマ回

さらに言うとハナコの思考エミュレート、難度が高すぎる。
本編よりちょろく見えるかもしれません。

して、ワカモは始めて戦略において敗北を知る回でございます。


#4 合宿、確定───/第一次学力試験

「ハナコ、この問題はどう解けば良い?」

 

「どれですか?

....あぁ、なるほど。

こういう時はですね、倍数判明法を用いてこのように.....」

 

「なるほど....うん。

理解した。」

 

白州の質問に、浦和が答えている。

 

 

放課後の自習時間。

最初の方は一切来る気配がなかった下江。

 

『あいつ本当にサボりやがった.....。』

 

なんて口にしたのも数日のみ。

流石にハスミに怒られたようで途中から来るようにはなった。

 

しかし────

 

「コハルちゃん。

そこは今回の試験範囲から大きく外れていますよ? 」

 

「えっ....!?

そ、そんなこと知ってるわよ!

 

今回の範囲はもう余裕なの!

だから先のところを予習してるだけ!」

 

ヒフミにツッコまれドギマギしている。

 

余程自信があると見える。

さて、これで受からなかったらどうしてやろうか、なんてちょっとあくどいことを考える。

 

「......心配ですか?あなた様。」

 

ワカモは俺の表情から心配の種を見抜いたようだ。

 

「ん?

あぁ.....ちょっとな。

 

飛び級の為に2年生用のテストを受けたって言ってたけど、いくら何でも2回とも赤点とって落ちるのはおかしいだろ。

1度目落ちた時点で滑り止め────ってか一旦1年生のテストを受けるよな、普通?

点数次第では実力が足りてない、って見極められると思うんだが....。

 

そうじゃないっていうなら多分アイツが落ちてるのは慢心と油断のせいだと思う。

今回はそうならなきゃいいんだけど。」

 

「....いえ、士郎さん。

多分あの娘は単純に地頭は悪いのにプライドが邪魔をしているだけだと思いますけれど。」

 

なんてワカモは予想している。

 

「地頭が悪い」っていう今の言葉は減点するべきだろうか?

でも彼女が今話した説は説得力が無い訳じゃない。

 

「失敗したことを認めたくなくてか?

.......それは確かにあるかもしれないけど.....」

 

 

下江の言葉はこの補習部では不安要素でしかない。

 

が、むしろ安心している部分も存在する。

 

 

「ハナコ、この文章は何?」

 

「....古い叙事詩の冒頭部分ですね。

「怒りを歌え、神性よ─────」という。」

 

今のはイーリヤス叙事詩。

確かギリシャ神話の二大叙事詩の1つで、主人公が神の子アキレウスの物語だ。

 

 

 

「あぁ .....あれか。

理解した。」

 

白州は飲み込みが非常に早い。

して、ヒフミは元々容量の良さと頭がいい。

 

さらに、浦和が3人にとっての講師になっている。

これじゃ俺の立場がない。

 

どうしてこうなったかと言うと、白州の質問に対して参考書を開いた挙句に悩み始めた俺に浦和が助け船を出したことが発端だった。

 

 

「.....ま、生徒同士、教えあってる方がいいか。」

 

故に、俺の役目は皆の授業態度を見ることくらい。

そんな時折、ヒフミの視線はその2人に向いている。

 

「.......」

 

 

「ハナコ、これは......。」

 

「これは古代語を重訳したものですね。

原文を理解するには辞書がないと.....。

ちょっと待っていてくださいね。─────」

 

「あぁ、なるほど。

ならこれはおそらく「Gaudium et step(喜びと希望)」か。」

 

 

辞書を引き終わった浦和より先に、白州が翻訳した。

 

「えっと....はい。そうみたいですね。

これは第二公会議における.....いえ、それよりもアズサちゃんは古代語が読めるんですね?」

 

「あぁ、昔習った。」

 

 

 

兎にも角にも、この場にいる3人は優秀だった。

 

「......そんな心配することないみたいだな。

この様子ならみんな大丈夫だろ。」

 

 

「....はい!

ハナコちゃんが何だかとってもすごくって.....!

アズサちゃんは学習意欲たっぷりで、コハルちゃんは実力を隠していたみたいですし。

 

 

よかった....もし1度目の試験が不合格だった場合、合宿を行ってほしいと指示が来ていたんですが。

これなら一発合格も余裕かもしれません!」

 

ヒフミの表情は明るい。

 

「.....合宿?」

 

またも、初耳だ。

というかまともな指示が来たことが1度もない。

.....あのさ、桐藤。

別に俺を担任に拵えるのは別にいいんだが、基本方針とか今後の予定とか事前に教えてくれないと。

 

なんと言うか俺、これじゃ置物確定じゃないか。

 

「それに.....三次試験まで、全て落ちてしまったら....。」

 

そこだ。

俺が気になっているのは。

まさか留年確定とか言わないよな?

 

「なんか、やっぱマズイのか?」

 

「な、なんでもありません!

心配は杞憂で終わりそうですし、暗い話はこの辺りで─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言っていたのが数日前の話。

 

「 ......なぁ、ヒフミ。

お前は頑張ったよ。

うん。」

 

「はい?なんでしょう衛宮先生。」

 

彼女に答案用紙を渡した。

 

ヒフミ。

72点。

彼女は合格点へと到達していた。

 

「.....びっくりしました....衛宮先生がまるで絶望したような表情をされていらしたので...もしかして落ちたのかと....

ですが70点台なら調度良いくらいの点数ですね...!」

 

 

しかし。

 

白州、49点。

 

「ちっ.....紙一重だったか.....。」

 

「確かに11点なので.....紙一重といえばそうとも言え.....言えなくないですか!?」

 

 

「あはははっ!やっぱり不合格者が居たのね。

全く私の足を引っ張らないでくれない?

 

ま、でも1発合格するなんて?最初から思ってなかったし?

ここは────」

 

「──────下江、お前人の事馬鹿にしてられる状況じゃないからな?」

 

そんなことを言っている下江に解答用紙を渡した。

 

11点である。

最早一桁に対しての紙一重だ。

 

「!?」

 

 

「コハルちゃんんんんんんん!?

 

ち、力を隠してたんじゃないんですか!?

今回はちゃんと1年生用の試験を受けたんですよね!?

 

ま、まさかまた2年生用の.....いえ、その悲惨な点数はまさか3年生用の......」

 

「やっ ...その!か、かなり難しかったし.....。」

 

顔面真っ赤っかになった下江。

それに対して酷なことにヒフミがさらに言葉で切りつけた。

 

「え....すっごく簡単でしたよ!?

小テストみたいなレベルでしたよ...!?」

 

俺も少々呆れている。

サボタージュして、これとは─────。

 

一切躊躇いなく真実を口にする。

 

「いいや、今回下江が受けたのは本当に1年生用のテストだ。」

 

「.......まぁ、なんと偶然でしょう。

お二人の点数、足して丁度合格点ではありませんか....。」

 

これにはワカモもどうツッコミを入れていいのか、分からないようだった。

とはいえ2人の点数を足してやる訳にも行かない。

 

 

「....合格したのは私とハナコちゃんだけ....ということでしようか.....」

 

「いや.... 悪いんだがな、ヒフミ。」

 

 

浦和に解答用紙を渡した。

ヒフミはそれを覗き見る。

 

そこに赤く書かれていたのは.....0点の表記。

 

「ゼ、0点!!?!?!?!?!?」

 

ヒフミの目は焦点があっていない。

 

「ひゃ、100点の間違いとかではなく!?

ハナコちゃん!ものすごく勉強ができる感じでしたよね?」

 

「確かに私、そういう雰囲気あるみたいですね。

まぁ成績は別なのですが。」

 

「ま、待ってくれ!ヒフミ、浦和は─────」

 

弁解しようとすると浦和は右手で笑う際の口元を隠す動作で、左手の仕草を俺にだけ見えるように──────

ヒフミには見えないようにそっと唇に人差し指を当てたのだ。

 

何を隠そう、彼女の解答用紙は全問正解。

ある意味100点満点だったというのに。

 

0点の理由は─────名前が、無かったからだった。

まるで、わざと空白にしたかのように。

 

彼女はヒフミに見せることなく解答用紙をカバンにしまい込んだ。

 

 

「雰囲気!?雰囲気だけだったんですか!?

あんなにアズサちゃんに上手に教えていたのに!!?

 

勉強を教えるって、分かってないと出来ないことですよね?!

それを雰囲気で誤魔化していたんですか!?

 

そんな...────────。」

 

 

言うだけ浦和に言葉を浴びせたヒフミは、人形劇において操る糸がプツリと切れた人形のように地面に倒れ込んだ。

 

「お、おい!?ヒフミ!」

 

 

 

第一次学力試験:結果

 

ヒフミ:合格

アズサ:不合格

コハル:不合格

ハナコ:不合格

 

 

補習授業部の合宿が、ここに決定した。

 

 

 

 

 

「中は思ったより綺麗だな。」

 

なんて、ゲーム開発部の部室でやったホラーゲームの登場人物の言ったセリフを口にしてみた。

 

が、悲しいかな。

ここにはそっち方面に関して精通している者はいないようで、突っ込まれなかった。

 

「ようやく着きましたね....ここが私達の───」

 

「はい、宿舎です。こんなに離れているなんて......。」

 

ここは校舎本館に対しての別館にあたる。

 

「しばらく使われてない建物と聞いていたので、冷たい床で裸になって寝ないといけないのかと思っていましたが.....。

 

思っていたよりも広いですし、きちんとしてますし、可愛いベッドもあって何よりです。

これなら皆で寝られそうですね。裸で♡

 

また、浦和が危ない発言をしている。

正直この手の発言に対しては突っ込まない方が身のためだ。

 

だってのに────

 

「ねえ!さっきから何でちょいちょい「裸」を強調するの!?

それにベッドの数もちゃんと人数分あるんだから!

皆で寝る必要はないでしょ!?」

 

下江は、過剰なまでに反応している。

 

「せっかくの合宿ですし、そういうお勉強も必要ではないでしょうか♡」

 

「ダメ!エッチなのは禁止!死刑!!」

 

下江は顔を真っ赤にして浦和に抗議する。

そんな興奮気味な彼女の言葉をのらりくらりと避ける浦和。

 

「まぁ、そうですね。

今はまだ明るいですし、そういうことは夜に取っておきましょうね.....♡」

 

「えっ!?は?ど、どういう意味!?!!?!」

 

 

「.......浦和、下江で遊ぶのも程々にしろよ?」

 

俺の中ではこの2人の関係は既にそういうものだと、確定してしまった。

 

「.....あれ?アズサちゃんは.....?」

 

一方のヒフミは白州を探していた。

確かに見当たらない。

 

「あら、先程までは一緒にいましたよね?」

 

ヒフミの言葉で、残りの3人もそれに気づいた様子で、周囲を見渡す。

 

すると、玄関の方から白州がやってきた。

 

「偵察完了だ。」

 

「.....偵察....ですか?」

 

ヒフミが疑問を投げると白州は周囲一帯の状況を報告し始める。

 

 

「トリニティの本校舎からはかなり離れている。

この距離では流石に狙撃の心配は要らない。

 

建物への入口が2箇所のみ、というのも気に入った。

 

加えて、侵入する側にとっては建物の遮蔽や死角が多く遭遇戦ではこちらが有利を取れるだろう。

 

いざと言う時は、片方の入口を塞いで、襲撃者達を1階の体育館に誘導した上での殲滅戦が有効になるかな。

 

.....とはいえセキュリティに関しては脆弱な面も多く確認できた。

だけどそこは工夫すれば問題ない範囲だ。」

 

 

この情報観測の仕方。

計画性の良さ。

 

そうか、コイツはシロコに似ているんだ。

 

「それからここが兵舎内部....いや、居住区内か。

.......綺麗だな。

 

こんな施設を使わずに放置していたなんて贅沢にも程がある。」

 

 

「あの、アズサちゃん?

私たちはここへ戦いに来たのではなく、勉強をしに来たんですよ....?」

 

「うん、もちろん理解してる。

飲まず食わず、寝ずの1週間集中訓練だろう?

 

外出禁止、自由時間皆無、24時間一挙手一投足まで油断することは許されないハードな───────」

 

 

「ちょっと待て!

誰もそこまで言ってないだろ?

って...桐藤はそう言ったのかもしれないけどさ、俺は断然そんなの却下だ。

 

心身共に休める必要だってあるし食材調達だってある。

 

ここがトリニティだろうが関係ない。

ちゃんと事前報告さえしてくれればある程度は俺が許可するよ。」

 

俺の全力抗議に「ナギサ様もそこまでは言ってませんでしたけど....」とヒフミは呟いた。

 

白州は俺たちの言葉を聞いているのか聞いていないのか、続ける。

 

「きちんと準備もしてきた。」

 

「....まさか爆発物とか危険物を持ってきたんじゃないだろうな?」

 

して、俺の質問に首を傾げる白州。

 

「当然だ。

他にも体操着や十分量の着替えと下着セット、衛生面の歯ブラシや歯磨き粉、タオルバスタオル、石鹸、非常食、毛布に水筒。

建物が爆発した時の簡易キャンプセットと折りたたみテント3つ。」

 

並んだ言葉に、引き気味の一同。

 

「....流石はアズサちゃん、用意周到ですね。」

 

浦和が褒めると、真顔で「何を言っているんだ?」と見つめ返した。

「このくらい当然だろう?

徹底した準備こそ成功への糸口。」

 

 

いや....うん。

日常品はともかく、野宿する為のセットまで一式揃ってるとは、恐れ入った。

 

「でも、これから皆で一緒に食欲を満たし、睡眠欲を満たし、もしかしたら■欲........そして皆が欲する目標へと脇目も振らず、手を動かすと思うと.....良いかもしれませんね。合宿。」

 

......危うい言葉が聞こえた気がしたが、浦和も随分と乗り気のようだ。

 

そんな言葉に、白州が初めて───────

 

 

「......うん、そうだね。

少し楽しみなんだと思う。」

 

言葉の使い方はややおかしかったが、それが白州が初めて俺たちの目の前で笑った瞬間だった。

 

「───でも、任務は確実に遂行する。

きちんと勉強をして、第二次学力試験にはどうにか合格したい。

その目標の為にここに来たんだ。

 

......浮かれて皆に迷惑はかけたくない。」

 

と、緩んだ表情をから一転、いつもの鋭い表情へと戻す。

なんと勿体ない。

 

「アズサちゃん......。」

 

ヒフミも何か、白州が自分達とは何か違う、と勘づいているかのように、俺に視線を送ってきた。

そんなヒフミの表情に、白州はフォローを入れる。

 

「大丈夫、万が一の敵襲に備えて対人地雷とクレイモアも用意してきた。

ほかにも先程シロウが言った通り即席爆発装置(IED)の材料になりそうなもの一式と対戦者地雷を少々。

 

さらに戦車が乗り込んできてもいいように対戦車ミサイル(ATGM)とロケットランチャーを─────」

 

なんだろう。

違う、そうじゃない。

 

これは、没収するべきだろうか。

いや、するべきなんだろうな?普通。

 

「......」

「......」

 

だけど、白州は装備品をまとめたリュックに、いたくご執心、というか真剣な眼差しを向けている。

まるで、今から生死を決める決戦に行くが如く。

 

そんな彼女の表情を見て、そんな気はどこかに失せてしまった。

 

「 .....皆に怪我させるんじゃないぞ。」

 

「.....安心してシロウ。

そもそもこれは身を守るための装備、誰かを傷つける目的で使うつもりは無い。」

 

 

 

 

 

そうして俺たちの合宿は開始された。

 

 

「えっと、これから第二次試験までの一週間はこの別館で皆さんと過ごすことになります。

 

洗濯機に乾燥機、バスルームなども充実していますし、日常生活においては支障はないかと。」

 

ヒフミは部長らしく、説明を始めた。

 

「うん、体を動かしたければ体育館もあるし、外にはプールもあった。

しばらく使われていない様だったけれど。」

 

 

「あの短時間でそこまで見れたのか?.....凄いな。」

 

白州は本当によく周囲を観察している。

俺はプールはおろか体育館があったことすら知らなかった。

 

「あ、そうだったんですね。

とは言っても私たちがプールを使うことなんてそうそう...

 

.....そういえばここは地下に食道設備のようなものがありました。

でも食材がないようです。

後で皆さんで調達して、当番制にでも────」

 

 

「せっかくの良案なんだが、それは却下だヒフミ。

お前達には勉学に集中してもらいたい。

 

だからこの一週間は俺が調理担当を引き受ける。」

 

俺がそう言うと待ってましたと言わんばかりのワカモが笑顔で駆け寄ってくる。

 

「では、私はお手伝いを!」

 

 

対して──────

 

「え...あんたの手料理食べるの?

嫌なんだけど.......

 

変な薬とか混ぜないでよね.....?!」

 

なんて下江は言い始める。

 

「するか!

そんなの料理や食材を冒涜するようなもんだろ!

調味料じゃないんだぞ。」

 

俺は全力で抗議する。

 

「......士郎さんの手料理を食べたくないと言うならどうぞお好きに。

精々美味しそうに食べる私達を指をくわえて見ているといいでしょう。」

 

ワカモは冷たく下江に言った。

浦和も続けて話す。

 

「そう言えば....聞いたことがあります。

シャーレでご飯を食べた人は、絶頂するほどの快楽を得て、もう普通の料理では満足できなくなるのだとか......」

 

「は!?浦和どこの情報だよそれ!」

 

「ふふっ...♪冗談です。

 

とは言え殆どが真実ですが。

 

何せあの羽川ハスミさんですら体重を気にせずモリモリ食欲をそそられて召し上がる、と聞いたものですから。」

 

浦和の言葉に、下江が疑いの目を向けてくる。

 

「えっ!?ハスミ先輩、コイツの飯食べてるの!?

 

そういえば、聞いたわ!

ハスミ先輩、あんたのせいで......その... 」

 

.....ここに本人がいなくて本当に良かったと思う。

 

「カロリー管理はしっかりしてる、大丈夫だ。」

 

「うぅ.....本当に大丈夫かな...」

 

 

 

「ま、飯以前にまず掃除からだな。」

 

ヒフミは俺の言葉に首を傾げる。

 

「え?お勉強、しないんですか?」

 

「いや、やらないとは言ってないぞ。

けど、なぁ?」

 

浦和とワカモが、俺の言葉に続いた。

 

「先生のおっしゃる通りかと。

かなり綺麗な状態で管理されていた建物とはいえ、 長い間使われていなかったこともあって、埃なども多いように見受けられます。

 

この状態のまま過ごすというのも健康に良くなさそうですし。

今日はまずお掃除をして、気持ち良く過ごせる環境にしてから勉強を始めるというのは如何でしょう?」

 

「良いご判断かと。

叩くほどの石橋ではないとは思いますが、いかんせん建物ですから。

設備も劣化していることを含めて足元をすくわれる前に、掃除と点検をしてから生活されるのがよろしいかと。」

 

2人の意見に、ヒフミと白州も同意する。

 

「....確かにそうですね。

身の回りの整理整頓から始めるのは定石ですし、途中で気になってしまっては勉学に集中出来ないかもしれません。」

 

「.....衛生面と装備の点検は大切。

実際戦場で最も重要な要素だ。」

 

して、下江も「()()()()()()なら私でも.....。」と言って頷く。

 

.......()()()()()()()()が定着している時点で、何かおかしいと思うんだが?

 

 

「とりあえず、皆、汚れてもいい服に着替えて10分後に玄関前で集合。

始めるぞ。」

 

「了解した。状況を開始する。」

 

俺の指示に、早速部屋に入って着替えを始める白州。

うん、素直で良い奴だ。

 

「分かりました。

 

()()()()()()()()に着替えてきますね♡」

 

「お、おう....?」

 

浦和の言葉は何か、いちいち含みがある。

 

 

 

「.....汚れてもいい服って....体操着でいいのよね?」

 

恐る恐る、下江が聞きに来た。

 

「....私服はダメだぞ、洗剤とか溶剤で染みになったらもったいないしな。

それが無難だろ。」

 

「...うん。分かった...。」

 

なんだろう。

話してみると案外素直な部分もあるんだが....。

どうしていつもあんなに反発的なのか....わからない。

 

それで、残ったワカモはと言うと....。

 

「私はどうしましょう?

体操着など持って来ておりません。」

 

「かと言ってその制服綺麗だし、ワカモにとんでもなく似合ってるから汚すわけにもいかないよな。」

 

 

と、そんな話をしていた時だ。

 

「話は聞かせていただきました♡

では、こちらを──── 」

 

浦和が綺麗に畳んだ自らの体操服とジャージを渡してきたのだ。

 

「お、浦和は二着持ってきてたのか。

なんだかんだ言って用意周到だな。」

 

と、彼女の方を見る。

 

 

「......あら?どうかしましたか?衛宮先生。」

 

「....。」

「........士郎さん。私、これを着るのは些か了承しかねるのですが....。」

 

ワカモは嫌悪感を示した。

 

「あら?()()()()()()普通ですよ?

昨日洗濯してきたばかりで、体操着自体、あまり私は使いませんから。」

 

 

なんだよ、その「その体操着は」って.....。

他の服には何か細工してあるのか?

 

「....背丈としては確かに浦和のが合いそうだ。

有難く借りてくよ。」

 

俺の言葉に苦い顔をして抗議するワカモは一旦置いといて。

 

「で、お前は()()()()で掃除するつもりか?」

 

「.....いけませんか?

この前は「個性だ」と認めてくださったのに?」

 

俺たちが先程黙り込んだのには理由があった。

浦和が体操着を貸し出した事に対してでは、なく、その格好について、

まぁ、もう浦和にとっての制服こと、学校指定水着を来ていたわけで。

 

「.......確かに汚れてもいい服でこいって言ったけどさ.....。」

 

視線の向け所に困る。

コイツに恥ずかしいとかそういう気持ちはないのだろうか?

 

前にも言ったが、俺だって男で、女性の素肌そのものに対しては見慣れているわけではなく、色んな感情を抱きもするわけだし。

 

それに────────。

 

「.....?

あぁ.....やっぱり先生も男の人ですし、()()気になってしまいますよね....♪」

 

俺は持ってきたスポーツバッグの中から白黒のジャージを取り出し、浦和へ渡す。

 

「バカ言ってろ。

第一今からやるのは片付けとか掃除なわけで、怪我をする可能性も充分有り得る。

 

それに季節もまだ夏とは言えない。

だって言うのにそんなに薄着なんじゃ、お前の言う通り、色んな部分が心配だ。

 

お前の体も、俺の精神衛生も、よくない。

 

俺が学生時代に好んで使ってたので良ければだけど。」

 

「───────────。」

 

俺をからかっていた浦和が鳩が豆鉄砲食らったような表情になる。

 

 

して、差し出したそれに飛び付くワカモ。

 

「あなた様。

私そちらの方が良いのですが───」

 

「何言ってんだ。

お前には浦和の貸してくれた体操着があるだろ?」

 

「で、ですが────」

「じゃあ浦和に水着貸してもらうか?

言っとくけど制服の上から切るとか、中に何も着ないなんてのは却下だぞ?

 

制服の上からジャージなんて着たら制服に皺ができるし。

下着姿で着られると.....こう、なんだ。

 

とにかくダメだ。」

 

駄々をこねるワカモに究極の二択を迫った。

うん、泣き出しそうな顔をしたってダメだ。

 

浦和は、話し合う俺たちを見ながら、結論を出したようだった。

 

 

「──────では、衛宮先生。

お言葉に甘えまして、これはお借りします♪」

 

という訳で2対1。

ワカモは浦和の体操着を来て、浦和は指定水着の上から俺のジャージを羽織ることになったのだが──────

 

「....あはは...やっぱり男の人の服となると、少々胸周りがキツくて─────」

 

浦和が来た俺のジャージは、胸下でジッパーが、止まっていた。

 

それをキリキリ歯を鳴らして見ている体操着姿のワカモ。

 

 

「.....やっちまったかもしれん....。」

 

提案しない方が良かったか?なんて一瞬思ってしまった。

 

だけど、あの格好で目の前をうろつかれるのは精神的に、本当に良くないのだ。

 

「さて♪そろそろ行きましょうか。

もう10分は軽く過ぎていますし、ヒフミちゃん達も待っているでしょう。」

 

 

「.....このワカモ、このような、屈辱を受けたのは始めてです.....」

 

浦和の後ろに項垂れて歩くワカモ。

 

「何言ってんだよ、浦和はお前の為を思って貸してくれたんだぞ?」

 

「いえ...あれはただ水着を着る為の口実が欲しかっただけでしょう......はぁ....あのような女にあなた様の.....あなた様の....」

 

 

「.....?」

 

よく分からないが無茶苦茶不貞腐れている。

まぁ、ちょっと変わり者の浦和の服自体に抵抗感が出来るのは分からなくもないが....。

 

「晩御飯、作るの手伝ってくれるんだろ?

そんな調子じゃ夜まで持たないぞ?」

 

「.....そうですね....。」

 

玄関ホールで手を振るヒフミ達。

俺達は少し駆け足で3人が待つそこへと向かった。

 

 

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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