衛宮士郎 "先生概念"【GRADATION ARCHIVE】   作:神宮寺志狼

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"水着じゃなくて下着だと思えば、それは下着だから"


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Vol3.第3章 私たちの物語
「五つ目の古則への答え」から先生の言葉。


#6 衛宮士郎の長い一日/家政夫は先生(正義の味方)(Ⅱ)

「────何しに来たんだ、オマエ。」

 

横で袖をまくって何処ぞの神父もそれを手伝い始めたんだからビックリ仰天。

これには質問をせざるを得なかった。

 

「何、とは。

見ての通り、お前達を手助けしてやろう、と来た迄だ。」

 

「とぼけんな。

お前がそんなたまかっての。

何か裏で考えてるに決まってる。」

 

まんま、浦和の言った通りになった。

こいつの言うことはまるで信用出来ない。

 

「まぁ待て。

お前達の行動を害するつもりは無い。

むしろ助言してやろう、と言っている。

 

つかぬ事を聞くがな、衛宮。

お前は今のトリニティに、思う所が無いのか?」

 

思う、所?

まぁ、色々ある。

補習授業部の生徒達の将来、桐藤やミカの心労、エデン条約っていう正体不明のナニカ、入院中のもう一人の生徒会長、姿を見ないというマコの居所、そして目の前にいるこいつ。

 

確かにあるが、急いだって何も解決しない。

果報は寝て待て、ともいう。

 

「その顔、「あるが、それほど大した事ではない」と言わんばかりだな。

.....呑気なものだ。

 

今のトリニティは柱の崩れかけた、ひび割れた橋だと言うのに。」

 

「なんだって?」

 

「....その様子では本当に何も聞いていないようだな。

まぁ、いい。

おいおい話すとしよう。」

 

おいおいなのかよ。

 

「今は間が悪い。

それに敬虔なる信徒として、与えられた試練を奪う訳にはいかん。

 

話を戻すか。

ミレニアムサイエンススクールに行ったそうだな。」

 

「で?

それがなんか悪いのかよ。

別にお前に俺の行動をあれこれ言われる覚えなんてないぞ。」

 

やっぱりこいつと話していると調子が狂う。

 

それもだが、さっきの視線を再び感じている。

誰かに見られているような、鋭い視線を。

 

 

「....お前も気がついていたか。」

 

「勝手にほざいてろ。

俺は何も知らない。」

 

本当だ。

この視線が誰からのどんなものなのか分からない。

 

間違いなく生徒であることは間違いないんだが。

 

「まぁいい、どうせ誰かに聞かれて困る話でもあるまい。

 

時に、お前はミレニアムの郊外にある連邦生徒会長が管理していた建物は知っているか?」

 

 

ん?

なんでコイツからそんな言葉がでてくるんだ?

 

「知ってるし、行ったことあるぞ。あの廃墟は。」

 

 

「─────────────。」

 

言峰が、珍しく顔を丸くした。

 

 

「なんだよ気持ち悪い。」

 

「フッ....そうか。

で、貴様、何を持ち帰ってきた?」

 

「何って......記憶喪失のロボットじみた少女1人と、なんかよく分からないシステムを.....ってかなにか持ち帰ってきたことは知ってんのかよ。」

 

 

で、俺の話を聞いた言峰は────

 

「何かよく分からないものを2つも拾って持ち帰ったのか。

フッ...ハハハハハ!!

そうかそうか、それは面白い。

 

助言をしてやろうと思ったのだがな、もう遅かったらしい。

私は成り行きをみまもるとしよう。」

 

急に笑い始めた。

 

「.....?

なんなんだお前、意味わからないぞ。」

 

「何、以前のお前ならそんな無責任な事をしたか、と思ってな。

 

()()()()()()()()()()のか?。

あれは連邦生徒会長の個人的な管理物、それが居なくなったのであればお前に譲渡されたも同然。

 

お前がどう扱おうが勝手だが────テセウスの船か。」

 

??

こいつは何を言いたいんだ?

とにかく直球で投げてこない時は腹が立つ。

 

「────嫌がらせしに来たんならとっとと帰れ、クソ神父。

俺たちはお前と話しているほど暇じゃないんだ。」

 

「ふむ、そうか。

では、一つだけ忠告をしておこう。

ティーパーティーには気をつけろ。

 

最近ティーパーティーの横暴と独断専行が増えている。

エデン条約施行前というのもあって繊細になっている、というのがここ最近の通説だ。

 

が、これは誤りでな。

実は─────────。」

 

「───────────。」

 

 

 

 

 

 

 

「よし、布団も干したし。

こんなところか。」

 

各生徒、自分の持ち場の整理整頓と掃除を終わらせて玄関前に集合した。

 

「良いんじゃない?

随分キレイになった気がする。

 

気持ち良いわね!お掃除すると!」

 

「うん、悪くないな。」

 

「そうですね」

 

 

下江、白州、ヒフミ

3人とも満足そうにしている。

そうワカモと浦和を除いてだ。

 

「ワカモもお疲れさん。」

 

話しかけるとため息をつきながら、彼女は方の力を抜いた。

 

「....ヒフミさんが話が通じる方で助かりました....。」

 

いやいや、どっちかって言うとお前とヒフミと白州がきちんと話が出来たか心配なんだけど。

 

俺はヒフミに視線を送る。

 

「わ、私も「災厄の狐」だなんて言うのでどんな方かと.....」

 

ヒフミも肩をなでおろしている。

この様子では特別問題は怒らなかったようだ。

 

「ですが、まだ一箇所だけ終わっていない場所がありますよ。」

 

浦和は浦和でこれまた変なことを言い始めた。

 

「そうか?日常的に使いそうな場所はもう大半終わったと思うんだけど......」

 

「いいえ?まだ終わってません。

屋外プールが♡」

 

浦和に連れられてやってきたのは白州の見つけたプールだった。

 

「これは....。」

「先程見て回った時は遠目だったから分からなかったがだいぶ大きいな。

.....シロウ、これはどこからどう取り掛かればいいんだ?

いや、そもそも私たちの補習授業の科目に水泳はあっただろうか?」

 

白州に聞かれて俺は首を横に振った。

彼女たちに課せられたのは筆記試験のみ、実技はなかったはずだ。

 

「試験に関係ないなら、別にこのままでもいいんじゃないの。

掃除する必要あるの?

ただでさえ掃除に根をつめててかなり時間使ったのにこれを掃除してたら.....」

 

「む....確かに。

もういい時間だしな....」

 

時刻は三時。

おやつ時である。

 

とはいえ、この汚れや落ち葉の沈殿したプールをそのままにしておくのはなんとも言えない罪悪感────

 

「よし、じゃあ俺が掃除しておくからお前たちは戻って────」

「それでは、ダメです!」

 

掃除に名乗りをあげるが浦和に肩を掴まれる。

 

「なんでさ、お前たちは勉強に集中できるし下江の言っている通りプールの清掃までお前たちがやることは無いんだぞ?

これは単に俺が────」

 

説明する俺に、浦和は迫真の表情で、猛抗議してきた。

 

「違います!衛宮先生、よくよく考えてみてください!

 

例え使わないとしても.....キラキラと太陽の光が反射しきらめく水で満たされたプール、楽しい合宿、()()ではしゃぎ回る生徒達。

 

これぞ()()で楽しい合宿の形ではないでしょうか?」

 

 

「????」

 

それが正しい合宿の形なのか?

俺にはなんとも言えないが......。

 

「....いや、そうだったな。

何事もお前たちが楽しめないといい合宿とは言えないな。

 

他の皆はどうしたい?」

 

俺一人で請け負うその態度自体間違えていた。

これは俺にとっての合宿じゃない、皆の合宿なんだ。

掃除だってその一環、みんなが気持ち良く勉学に励むためにやっていること。

 

 

「....うぅ....確かに他のところをキレイにしたのに、プールだけお掃除しないのは...」

 

「やっぱりそうだよな?」

 

下江は中途半端が嫌らしい。

その言葉を聞いてヒフミと白州も同じように答えた。

 

「確かにこうして放置され、使われなくなったプールを見ていると、何だか寂しい気持ちになりますね ....。」

 

「このサイズだ。

きっと昔は使われていた時期もあったんだろう。

 

元々は生徒達で賑わう空間であったことは違いない。

それでも、いつかはそんな場所もこんな風に誰に知られることなく、こんな風になってしまう。

 

「vanitas vanitatum」.....それがこの世界の真実だ。」

 

ん?なんだって?ヴァニ....。

白州の呟いた単語が聞き取れずヒフミを見るが彼女もさっぱりといった表情。

しかし、間違いなく悲しい言葉に違いないことは、白州の顔を見れば明らかだ。

 

そんな俺達の様子を察してか、浦和が翻訳してくれた。

 

「「vanitas vanitatum (全ては 虚しいものである)

古代の言葉ですね。

 

.......確かにそう考えると今ここを掃除しても、なんらそれは意味の無いことなのかもしれません。

なにせ、今後も使われるとは限らない施設ですし....。」

 

浦和の言葉に首を縦に振る白州。

その姿は、見ていてどうにも悲しく思えた。

 

「施設も道具も武器も、皆同じだ。

いずれは朽ち果て、何だったのか、何のためにあったのか、意図も存在理由も無くなるんだろう。」

 

 

 

 

「......」

 

俺はその呟きに、何も返せない。

 

当然、武器に願いが込められている事なんて知っている。

それか形を保つまで、いや崩れたあとも残り続けることも。

 

だがそんなことを話して、何になるのか。

 

「それでも ....例え虚しいことだったとしても、それが最善を尽くさない理由にはならない。

 

シロウ。

私はこのプールを─────。」

 

白州は決意の籠ったその瞳で訴えかけてくる。

 

参った。

この真っ直ぐな目。

いつか俺もそんな目をしていたんだよな.....。

 

「あぁ、降参降参。

やるか、皆でプール掃除。

 

終わったら休憩にしようその間は休むもよし、泳ぐもよしだ。

全部終わったら俺は買い出しに行ってくるから。」

 

 

俺の言葉を、白州と浦和は笑って、ヒフミとワカモと下江は困惑した様子で受け入れた。

 

 

 

そこからと言うと俺とワカモはプールサイドの掃除担当。

 

なんせ俺たちは汚れてもいい服はあるが、濡れてもいい格好なんて持ってない。

 

そんな訳で残り4人────────

 

 

「見てください、ヒフミちゃん、虹ですよ!虹!」

 

「ひゃっ!?ちょっ、ハナコちゃん冷たいですよぉ!」

 

「ふふっ、トリニティの湖から引っ張ってきてる水みたいですので、そのまま口を開けて飲んでも大丈夫ですよ?」

 

勢いよくホースの根元にある蛇口を捻り水を撒く浦和と、跳ねた水に驚くヒフミ。

 

 

「コハル。

こちらに洗剤を。」

 

「え!あ...うん!これね!」

 

ブラシを両手で持ち駆け抜ける白州とそれについてまわる下江。

 

そんな感じに、まさに「女子校の青春」みたいなものが繰り広げられている。

 

 

かと、思えば。

 

「あっ!衛宮先生!」

「すみません!先端がそちらに───」

 

「何かあ───ブボォ!」

 

振り向けば勢いよく顔に水がかかり、体勢を崩して転んでしまった。

Yシャツはもちろんのことスーツのズボンすらビショビショである。

 

「........なんでさ。」

 

理由を聞くと、どうも浦和がホースから出る水量の調節に失敗したらしく反動でこちらに投げ出されるようにホースの先端が飛んできたりした。

 

 

まぁ何はともあれ、プールの掃除は無事終了。

 

水を貯めている時間、小休憩を挟むあいだ、俺は私服に着替えて買い出しに出かけ、戻ってきた頃には日は落ちていた。

 

「うぅ ....疲れた。」

 

プールサイドの下江を見ればクタクタで座りながら目を閉じている。

 

「こらこら、まだ夕飯済ませてないだろ。」

そういうと下江の腹は「くぅ~」と音を鳴らした。

 

「~!????

......聞いた?」

 

真っ赤な顔、目尻に涙を貯めながら聞かれて、そのまま「聞いた」などと馬鹿正直に答える程、俺もマヌケではない。

 

「何も聞いてないぞ?」

 

と、答えるも、嘘つき呼ばわりされて駆け出して校舎の方へと走り去る下江。

 

「あらあらコハルちゃんはお腹ぺこぺこの上にお眠ですか。」

 

その様子を見て「買い出しお疲れ様です。」と浦和が寄ってくる。

 

「まぁプール掃除、意外と疲れるだろうしな。

俺も学生の頃やった事がある。」

 

「あら?衛宮先生は水泳部だったのですか?」

 

純粋な疑問だろうその目に真顔のまま答える。

 

「いや?俺は部活は入ってなかった、強いて言うなら「帰宅部」ってやつ。

 

だけど俺から願出て色々なところのお掃除とか手伝いをさせてもらってた。」

 

 

「......それに対しての報酬は?」

 

その話に食いついてきたのはワカモ。

俺はヒフミと白州にも声をかけながら帰ろうと促す。

 

「いや?

なんていうか「仕事をさせてもらうこと自体が報酬」みたいなもんだった─────って、ワカモ、なんだよその顔は。」

 

「いえ.....ですがそれは。」

 

「節操がないって?

あぁ、悪友によく言われたよ。

太鼓判、とか点数稼ぎとか。

 

でもその行動が俺にとって────いや何でもない。」

 

 

俺の言葉に、浦和は

 

「それでは体のいい道具として扱われる事もあったのではないのですか?」

 

と、気になる発言をした。

 

「いや、それは言い方が悪いだけで別に問題ないだろ?

だって、人助けなんだし、俺が望んでやってた事なんだから。

自分が道具にされてるなんて思った事なはいけど....」

 

浦和を見れば瞳孔が開いている。

 

まるで、人ではない幽霊でも見たかのように驚いている様だ。

 

「だって、誰かの手のひらの上で動かされてるとしても、間違いなくそこには自身の意思が存在してるだろ?

 

だったらなんの迷いも要らないじゃないか。」

 

「────────────。」

 

浦和は表情はそのままに胸に手を当てた。

 

「そう、なのでしょうか。」

 

「そうだ、俺は出来ないことは引き受けない主義だった、それは昔も今でも変わらない。

 

出来ない事や、嫌なことは断った時だってある。」

 

 

「....それが士郎さんの考えなのですか。

なるほど...」

 

ワカモも顎に手を当てて何やら考え事の最中らしい。

 

「......。」

 

浦和は、黙り込んでしまった。

何か気に触ることを言ってしまっただろうか。

 

「まぁ考え方は人それぞれって奴だろ。」

 

俺はそう言い捨てた。

 

 

 

 

 

調理台に荷物を置いて、振り返る。

大変な一日だった。

かといって満足していない訳でもない。

 

困惑するワカモを除けば、みんな笑っていたのだ。

 

 

かつて、アビドスで清掃活動をしていたがその時はみんな楽しくと言うより「仕事」という感じで黙々と作業していた。

それに対して今日はどうだろう。

 

皆の仲が、距離が少しだけ近くなった気がする。

素の、笑顔が見れた気がする。

 

 

「....悪くない1日だったな...。」

 

そう、呟いた。

 

まだ、大変な一日が1日が終わってない事を認識するのはもう少し先のことだった。

 

 

 

 

飯時。

 

「こんな美味しい料理を食べたの初めてだ....。

シロウ、後でこのレシピを教えてくれないだろうか?」

 

と満面の笑みの白州と

 

「うぐ.....これは確かに....納得かも....」

 

なんて俺の方を睨みながら美味しいと呟いて食べている下江。

 

「おかわりは沢山あるからな!いつでも言ってくれ」

 

そちらはいい。

 

 

ちょっと驚いた風のヒフミと、無言で料理を口にするワカモと浦和。

 

なんていうのか.....。

 

なんだろう。

こう....気まずい。

 

 

「へっくし!」

 

そんな状況で、体が震えた。

 

思い出した。

水をかけられてテキトーに体を拭いた状態で買い出しにでかけたのだ。

理由はいくらでも思いつく。

いくら厨房にたっていたとはいえ、体は冷えきっていた。

 

「.....衛宮先生、どうでしょう食後、お風呂に入っては?

そのまま体を冷やした状態では....」

 

私達は全員先にお湯を頂きましたと、ヒフミは言う。

どうも俺が買い出ししている最中に、プールの水が溜まりきらないかと悟って入ったらしい。

うっかりしていた、体も汚れているしこれはヒフミの言葉通りに甘えるとしよう。

 

 

「あらあら、私たちが入ったあとの残り湯♡どうするんで─────。」

 

「なんでそんな発想になるんだよ!」

 

浦和の言葉に、張り合うように大声を上げた。

その一言に影響されてか、頬を緩めながら食べていた下江の表情が苦虫を噛み潰したようなものへ変化。

 

「─────やっぱ止める!」

 

食べ終わった食器を洗面台に戻そうとした時だ。

つい感情的になってしまった。

 

「────貴女。」

 

とうとう、ワカモがキレてしまったのだ。

 

席から立ち上がれば、ジャキンと弾丸をそのスナイパーライフルに装填し、浦和に銃口を向ける。

 

「いい加減にしてくださいな、いくら士郎さんの言葉とはいえ私の我慢にも限度というものがあります!

 

「.....」

 

失敗した。

下江の態度やバカにする言動には耐えられていたものの、浦和の揶揄う発言にどうにも反応してしまった。

それがダメだった。

 

「.....そうですね、ごめんなさい。」

 

「.....。」

 

浦和が素直に謝った。

それに唖然とするワカモは銃口を、下げた。

 

「まてまてむしろ俺が悪かった、浦和。

でも、俺は大人で先生だ、間違ってもお前たちにとって不快になるようなことはしないから、そういうタチの悪い冗談はやめてくれ。

 

それ以外でか揶揄うならいいから。

頼むよ。」

 

「......わかりました、ですが。

お優しいのですね先生。」

 

いや、なんか笑顔で返された.......。

 

Interlude 6-1 衛宮士郎という男

 

 

こうなることはわかっていた。

 

いえ、こうなることを見越して、授業態度、成績、内申点、全て下げた。

 

補習授業部の存在を知っていた。

それだけでは無い、自らに近寄ろうと人たちを全て遠ざける。

いや、遠ざかっていったとも言える。

 

 

全てが嫌だった。

 

そんな時に現れたのが彼。

噂に聞く、「魔術師」で「先生」であった。

 

彼の事はいくらなんでも知っている。

 

ネットで噂になっていたのだ。

戦闘する様子の動画も出回っていた。

一番驚いたのは、彼自身はヘイローを持たず、外の世界の出である事だった。

それが意味するところはつまり、私たちよりその命が尽きやすい、ということである。

 

私はこの大人も、いつかこの世界の空気に流されてしまうのだろうとそう思った。

 

しかしその死を、剣で弾き飛ばし、それは違うと。

彼は否定した。

 

生徒達を背後にし、敵軍に迫っていく彼を、私はどう思ったのか。

説明するまでもない。

 

その後ろにいる生徒達を、事情は分からないながらも羨ましいと思った。

 

 

 

「こんばんわ、衛宮先生。」

 

私は、その本人の入浴中にお邪魔した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

バカっ!!何してんだ!!!」

 

 

私の姿は下着姿に上だけセーラー服を着たような姿だ。

でもそんなものいくらでも誤魔化しようがある。

 

「ご心配なさらず、下に身につけているのは、下着ではなく水着です。」

 

私は今嘘をついて彼を騙そうとしている。

騒ぎを聞きつけ階段をおりてくる足音が幾つか。

 

 

「ごめんなさい衛宮先生、暫く湯船の中で隠れていて頂けますか?

こうなったのは私のせいですが、先生も私とそのような方面での誤解をされたくはないでしょう?」

 

半ば脅すように、隠れるよう要求をした。

 

彼は状況を察したのか、湯船につかり、天窓を閉めた。

 

 

「衛宮先生!?どうしたんですか!?」

 

 

ノックもなしにヒフミちゃんとワカモちゃんが扉を開けた。

そして仰天している。

 

まぁ当たり前だろう、男性の叫び声を聞いて、やって来たらそこにはなんと同級生。

しかもスカートを履いていない。

 

「あら?どうしました?ヒフミちゃん。」

 

 

ヒフミちゃんに聞いたはずの質問は狐の生徒から返された。

 

「今、士郎さんの叫び声がここから聞こえた気がしたんですが .....」

 

狐坂ワカモ。

この生徒の事は予想外にも分かりやすかった。

彼女は衛宮先生に、好意を抱いている。

それも男女間のだ。

 

故に、私自身から気を逸らすことが出来ればなんとでもなる。

 

「衛宮先生なら先程出られて散歩に出ると言っていましたが .....

先程の叫び声なら、ここら辺は虫もいましたから例の黒いのを見つけてしまった叫び声かもしれませんね。

宜しければおふたりにそちらをお任せしても構いませんか?」

 

2人とも納得してくれたようだった。

 

「は、はぁ。」

 

「い、いえ!

す、すみません。

 

ですが、ハナコちゃんも先ほどお風呂入りましたよね?

ここで ...何を?」

 

不思議そうにただ疑問に思ったのであろうその言葉に答える。

 

「いえ、お掃除していただけですよ?

お風呂の湿気と言うのは物凄いんですよ?」

 

シャワーで壁を流し始める私、もう手にはスポンジを持っていた。

 

それに納得したのか、ペコリと頭を下げて謝るヒフミちゃん。

 

「あ、ありがとうございます。

すみません、そこまで気は回らなくて....お手伝いしましょうか?」

 

「いえ、そんなに時間のかかる事でもありませんし大丈夫ですよ?

ヒフミちゃんもお疲れでしょうし、ゆっくり休んでください。」

 

彼女は2度目の「ありがとうございます。」という感謝の言葉を述べて、扉を閉めた。

 

 

 

「行ったか?」

 

「はい、後で誤魔化しておいてくださいね?」

と、私は笑みを零した。

 

 

彼は溜息を着くと呆れたように私に向かって言った。

 

「お前ちょっとくらい羞恥心とかないのか?

俺はあるぞ、なんせ今何も着てないからな!」

 

「....つまり....私にも脱いで欲しい、と?」

 

「なんでさ!」

 

私はクスクスと笑って冗談だ、と口にする。

なんだろう、やはり彼と話している時は、特に何も考えずに会話ができる。

 

それは彼がやはり裏表のない純粋な青年だから、だと思う。

 

「すみません、ですが今言ったように下に来ているのはお小遣いでかった水着ですから、安心してください。

 

それより、お背中流しても?」

 

その提案は、彼に水をかけて転ばせてしまった時点でずっと思っていたことだった。

 

「へ?なんで、別にそんな事お前にしてもらう理由もないし、第一こう ....」

 

「こう....?なんですか?」

 

「は、恥ずかしいっての。」

 

彼はこちらに視線を向けずに肩まで湯に使っている。

これは、そういう手段では出てきてくれないのでちょっと言い方を変えよう。

 

「少し心配でして、衛宮先生、私のせいで背中から転んだでしょう?

様子を見せてくれるだけでいいんです。」

 

 

そういうと彼は「せめて腰にタオルを巻くから後ろ向いててくれ」といった。

 

その後、私は彼の元々傷だらけの体を見て少し引いたり、こんなもん特に大したもんじゃない、という彼。

 

別段男女の距離として()()()()()()()()()混浴(?)の時間は終わった。

 

 

 

 

「すみませんでした、無理を言って。

もう、一緒に入浴()しません♡」

 

「入浴は!ってなんだよ!それ

ちょっと世間話しただけだっただろう!?

意味深に言うなこんちくしょう!」

 

私はドア越しに

 

「.....ありがとうございました。」

 

とボソリと呟いた。

私自身、何に対してなのか、分からない。

 

ただ、ただ居心地が良かったから例を言いたかったのだろう。

 

 

「.......お風呂の後片付け頼むな。

それと、ヒフミ達だけじゃなくてお前も疲れてんだろ。

早く寝ろよ。」

 

言葉が届いたのか届いてないのか、そう返してくれた。

 

 

それを聞いて私は、壁に飛散した泡などを、もう一度洗い流し始めた。

 

 

 

Interlude 6-1 衛宮士郎という男 End

 

 

色んな方の先生作品で「桜花絢爛お祭り騒ぎ」を見かけます。いかがでしょう。読みたいですか?

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