TERRE ~穢レタ世界ノ黙示録~   作:河本AKIRA

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「俺は...ついに”自分”を取り戻した
    後悔は、していない...だが...
      決して嬉しいことでもなかったんだ...」


第15話 「覚醒」

―精神世界にて、そこにはティエラとルナが横に並んで立っていた。

 

全ての記憶を”観た”ティエラは、ルナを見つめた。

 

『?ちょ、ちょっと、何?ティエラ。そんなにまじまじ見られたら恥ずかしいんだけど...』

 

「俺...とんでもねぇクソ野郎だったんだな...」

 

『!?そんなことない!!全部観たでしょ?ティエラは、ものすっごく優しくて、良い人だったんだよ?』

 

「どこがだよ...。しかもセイレーンって...。.........ユカのやつにどう顔向けすれば...」

 

『私もセイレーンだよ?』

 

「............何で、そこまでして俺を生かした?」

 

『あなたが好きだから。私を救ってくれた優しいあなたが大好きだから』

 

「......俺なんかのために犠牲になるなんて...」

 

『私は、ティエラのいない世界なんて、いらない。ティエラがいない世界で生きるぐらいなら、私は死を選ぶ。もしその原因がこの世界だっていうなら、私は世界だって滅ぼせる』

 

そう語るルナの目には、一点の曇りもなかった。

 

そんな彼女に対し、ティエラは感じたことのない気持ちに戸惑っていた。

 

「ルナ...。俺...ユピテル、殺しちまった...」

 

『うん。知ってる。全部見てたから』

 

「知らなかった。アイツがあんなに俺に良くしてくれたヤツだったなんて...あんなに優しい奴だったなんて...。俺、なんてことしちまったんだ...。!?」

 

頭を抱えるティエラを、ルナが抱きしめた。

 

『大丈夫...。きっと、ユピテルも分かってくれるよ』

 

「う...うぅ...あああああああああああああ」

 

ティエラは、今までにないほどに、泣いた。

 

今の今まで押し殺してきたものの全てを吐き出すかのように。

 

 

 

 

そして...

 

『...少しは落ち着いた?』

 

「うん。ゴメン...迷惑かけちまった」

 

『ううん、いいんだよ。今まで、辛かったもんね...』

 

「ルナ...」

 

『なあに?』

 

「俺、生きててもいいのかな...」

 

『ティエラが生きててくれたから、今の私がいるんだよ。私は、心の底からティエラに感謝してる』

 

「.........」

 

『ティエラ』

 

「?」

 

『生まれてきてくれて、ありがとう』

 

そう言って、ルナは微笑んだ。

 

その笑顔は、天使そのものだった。

 

「はは...俺も、お前がいねぇとダメみてーだな...」

 

『じゃあ、お互い様だね』

 

二人は笑いあった。

 

『ティエラ』

 

「?」

 

『私から提案があるんだけど...』

 

そう言うと、ルナは真剣な顔つきになった。

 

『ティエラはこれからも戦いを続けるんでしょう?』

 

「ああ、もちろんだ」

 

『今までいろんな敵と戦ってきたと思うけど、これから戦うのはもっともっと強い敵になると思うの...。だから...』

 

「...どうするんだ?」

 

『元の”ティエラ”に身体を返してあげるのは、どう?』

 

「確かに...昔の”俺”はめちゃくちゃ強かった。でも、どうやって?」

 

『それについて案ずる必要はない』

 

「!?お前は...!」

 

2人の背後から話しかけてきたのは、セイレーン時代の”ティエラ”だった。

 

『やれやれ...やっと形は取り戻せたみたいだな。俺の記憶だけを引っ張り出して繋ぎ合わせ、形を作り直した...。こんなことができるのは、ルナ。お前しかいない』

 

『うん...。時間、かかっちゃったね。ゴメン』

 

『いや、謝る必要はない。むしろ感謝している。ありがとう』

 

『えへへ...』

 

ルナは照れくさそうに笑う。

 

「もしかして...」

 

『?何だ、ティエラ』

 

「いっつも俺に『返せ』って言ってたのって、お前か?”ティエラ”」

 

『ああ、そうだ』

 

「もっと他に方法なかったのかよ...。あれ結構ストレスになってたんだぜ?」

 

『...悪いな。俺は、不器用なんだ...』

 

そう言うと、”ティエラ”は恥ずかしそうにそっぽを向いた。

 

「なあ、”ティエラ”...」

 

『何だ?ティエラ』

 

「俺、お前の親友を殺しちまったんだ...。ゴメン...」

 

『...あれは俺にも原因がある。あのときのお前を覚醒させたのは、他の誰でもない、俺だからな。さすがに殺すとは思っていなかったが、まあ...仕方のないことだ。今更後悔したところで、ユピテルは戻ってこない。そうだろう?』

 

「...そうだな。その通りだ...。こんな俺が言うのもなんだけどさ...。”アイツら”のこと、頼む」

 

『分かっている。これからは、俺が2人を護る。心配するな』

 

「サンキューな。...俺ってさ...、お前に肉体返すってことだし、消えちまうんだよな?」

 

『そうだな...。そうしたくないならやめてもいい。強要はしない』

 

「いや、やるさ。元はと言やあ、お前の身体なんだもんな」

 

『.........』

 

「それじゃ、始めようぜ」

 

そう言うと、ティエラの身体がだんだんと光の粉となって消え始めた。

 

「”ティエラ”!」

 

『?』

 

「ルナのこと、泣かしやがったら許さねーからな!!」

 

そう言いながらティエラは、”ティエラ”に向かって人差し指を突き付けた。

 

「ああ。分かっている」

 

二人はお互いに歩み寄り始めた。

 

「あとは任せたぜ。”ティエラ”』

 

『任せておけ。ティエラ」

 

お互いそう話すと、2人はハイタッチを交わしながら交差し、お互いに通り過ぎた。

 

次の瞬間、ティエラは完全に光の粉となって消えた。

 

”ティエラ”は、再びティエラとして、この世に帰還した。

 

「記憶が流れてくる...。アイツの記憶が...」

 

すると、ティエラは少し笑った。

 

『?どうしたの?ティエラ』

 

「アイツも、お前のことが好きになっていたみたいだ。確かに、分からんでもない。あそこまで健気にされたら、好きにならないほうが不思議だ」

 

『そっか...。......って、”も”!?今ティエラ、”も”って言った!?』

 

「...さてと、そろそろ目覚めると―」

 

『ストーーーーーーーーップ!!』

 

「...何だ。まだ何かあるのか?」

 

『ティエラは私のこと、好き?』

 

「......愚問だな。お前はどうなんだ」

 

『そりゃあ............好きだよ?』

 

「俺も好きだ」

 

『...うん』

 

「意外と軽い反応をするのだな」

 

『う~ん......何というか...まだ実感が湧かないっていうか...』

 

「......そろそろ行ってもいいか?何というか...居づらい」

 

『う、うん...。頑張ってね!!”ティエラ”のお友達、助けてあげないと!』

 

「ああ、そうだな。よし、それじゃ―」

 

『あッ...!』

 

「?何だ」

 

『その...あの...ね?私、ずっとここにいるわけなんだけど...、ティエラが寝ているとき、時々会いに行くね!』

 

「精神世界にか?」

 

『うんッ!』

 

「時々、か。どうせ毎日くるのだろう?」

 

『...ダメ?』

 

「別に...勝手にしろ」

 

『フフッ...ありがと!』

 

「もう用はないか?」

 

『うん、もう大丈夫!それじゃ、ティエラ!......行ってらっしゃい』

 

「ああ、行ってくる」

 

『......まるで夫婦、みたいだね...って、もういない!ティエラの...バカー!!』

 

 

 

 

ティエラは現実世界へと引き戻された。

 

その容姿は、青髪に地球のような瞳......かつてのティエラそのものだった。

 

近くにはヘルメスの死体が転がっている。

 

しかし、かつての仲間の死体に対して気にも留めずに、ティエラは歩き出した。

 

「さて...そろそろ行くとしよう...。”世界”を壊しに」

 

 

 

 

一方その頃、日本海、対馬沖...、今まさに、世界連合艦隊と極東海洋防衛軍(旧海上自衛隊)との間で大激戦が起きようとしていた。

 

世界連合艦隊はどんどん近づいてくる。

 

防衛軍の者たちは緊迫した表情で、戦場からその様子を見ていた。

 

「...ついに来ちまったんだな。この時が...」

 

一人の防衛軍がそう呟いた。

 

その一言に反応した数人の防衛軍は絶望の表情へと変わっていった。

 

多勢に無勢。戦力差は、ざっと10倍。

 

そんなときだった。

 

「艦長!旗艦から無線が!」

 

「今すぐつなげろ」

 

「ハッ!!」

 

〔全艦に告ぐ。全艦に告ぐ。これから発する言葉を全軍に聞こえるよう、設定せよ〕

 

その無線の後、全艦が拡声機能を作動させた。

 

再び無線が発せられ始めた。

 

〔本日、天気晴朗ナレドモ、波高シ〕

 

「!!この”言葉”...まさか...!」

 

全艦からざわめきが起こった。

 

〔”公国”ノ興廃、コノ一戦ニアリ〕

 

そのとき、全軍の目にあったものは恐怖ではない。

 

決意と覚悟だ。

 

全艦の軍が”旗”を持ち、甲板へと駆けていく。

 

〔各員、一層奮励......努力セヨ!!!!〕

 

全軍のざわめきは、咆哮に変わった。

 

そして、全艦から”旗”が掲げられた。『Z旗』だ。

 

絶対に、敗けられない戦いが始まった。

 

彼らの様子を見ていた世界連合艦隊の軍たちの感情は、驚きとも、恐怖ともいえるものであった。

 

「な、何てヤツらだ...。この圧倒的戦力差を前にして、ここまでの気迫を発せられるなんて...」

 

「あれが、サムライ...。......イカれてやがる」

 

 

 

 

たった今、歴史が動き始めた。

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