TERRE ~穢レタ世界ノ黙示録~   作:河本AKIRA

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「もう一人の仲間は、老人だった
  もう70いくぐらいの立派な老人だ。だけど……
   『武』を求める心は、誰よりも熱いヤツだった」


第4話 「余生」

「なあユカ。俺たち山ん中まで来ちまったけど、案内できっか?」

 

「できないな。遭難しちまったみたいだ」

 

「はあッ!?カンベンしてくれよ~!!」

 

「アタシに言うなよ!山が悪いんだろ!?」

 

「いーや、元はと言やぁ、お前が『こんな山余裕で行けるぜ!!』なんて言ったからだ!」

 

「ウッ...。ダ―――――ッ!!考えたって何も変わんない!前進あるのみ~!!」

 

「お、おい!待てよ!」

 

会話の通り、二人は山で遭難してしまった。二人はそれから、あてもなくさまよい続けた。

 

すると、

 

「おいティエラ!山小屋だ!あそこに山小屋があるぞ!!」

 

「本当だ!よし、ひとまずじゃあそこで休もう!」

 

二人は山小屋の扉まで来たティエラは扉を開けようとする。

 

が、

 

「開かない...。鍵がかかってんのかな?」

 

「いや、さすがにこんなところで住んでるヤツなんて...」

 

「誰か、そこにおるんか?」

 

「「!?」」

 

山小屋の中から老人の声が聞こえた。老人といっても60代後半ぐらいだろうか。

 

「おるんやったら返事せ」

 

「いるぜ!アタシ入れて二人!!」

 

「お、おい!」

 

「?なんだよ」

 

「中のヤツが特籍軍だったらどーすんだよ!」

 

そのとき、老人が扉を開けて出てきた。

 

ジャージにさみしげな頭頂部と白髪が特徴のごく普通の老人に見える。

 

「何そこでずっとしゃべりよるんか?はよ入りぃ」

 

二人は老人に頼ってみることにした。

 

「じーさん、名前は?」

 

「H・タイゾウ」

 

「!特殊能力者なのか?」(特殊能力者のほとんどの世界国家市民はアルファベット+名の名前である)

 

「おう。そーゆーお前もそうやないんか?」

 

「まあな」

 

「アタシもだ!」

 

「お前はちょっと黙ってろ」

 

「チェ~ッ!!」

 

「まあいいやないか。しゃべらしちゃりぃ」

 

「だってよ。タイゾウに感謝しろよ」

 

「おう!サンキュー、タイゾウ!」

 

「お前ら、名前は?」

 

「ティエラ。そんでコイツが...」

 

「T・ユカだ!!」

 

「そーゆー訳だ」

 

「なんでこんな山ん中来たんか?」

 

「この山を抜けて樺太に渡るためにな」

 

「樺太に?目指すは大陸っちゅうことか」

 

「ああ」

 

「そんで世界国家にケンカ売ってやんだ!!」

 

「まあ、ほとんどはソイツの言う通りだ」

 

「世界国家に?ワーッハハハ!!やっぱ若いもんはいいなぁ!夢が輝いちょる!」

 

「そうだな。立派な夢だ」

 

「「「!?」」」」

 

いきなり見知らぬ男が割って入ってきた。

 

「フッ...、フフフッ...、ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャア!!立派...立派、立派、立派、立派、立派ァ!!」

 

「なっ、なんだよコイツ!?」

 

「俺はK・ナガミツゥ!!テメーを殺すゥ!!」

 

狂っている。

 

次の瞬間、強風が吹き始め、二人はK・ナガミツにひきつけられ始めた。

 

「コイツ...まさか...。おいティエラ!!」

 

「ああ!間違いない!!ヤツの能力は『旋風』だ!!」

 

そう、K・ナガミツの特殊能力は、『旋風』。自身を中心とした旋風を起こすことで、その近くのものを引き寄せる。

 

「ユカ!こうなりゃ、お前の風穴形成で...」

 

「でも、アイツ包丁持ってるぞ!多分アタシらをひきつけた後めった刺しにする気だ!!」

 

何とか抗おうとする二人。しかし、そんな努力もむなしく、どんどん二人はK・ナガミツのほうに引き寄せられている。

 

その時だった。

 

H・タイゾウが旋風の範囲内に立った。H・タイゾウはそのまま二人と同じようにK・ナガミツへと引き寄せられ始めた。

 

「お、おい!!何やってんだよ!!死にてぇのか!?」

 

「お前らの夢...若門の夢はいつだって輝いちょる。なら老いぼれの俺のやるべきことは、その夢を手伝うこと!!やけどなぁ...ティエラ、俺もこんなヤツに殺されて死ぬのはゴメンばい...」

 

「だったらなんで...!」

 

「勝てるけに決まっとろうが!!一発、ぶちかます!!『空槍拳(くうそうけん)』!!」

 

H・タイゾウは突然拳を勢いよく前に突き出した。

 

数秒後、K・ナガミツが突然吹っ飛んだ。

 

「ウグォォ...。な、何だァ?今のはァ...。ウザァ~~~イ!!死ね!!」

 

「もう一丁!!」

 

H・タイゾウはまた拳を、今度は2回突き出した。すると、K・ナガミツは顔面に二発攻撃を受けたような動きをした。

 

H・タイゾウの能力。それは「真空波」である。

 

彼は独自にこの能力を活用し、「空槍拳」という拳法を編み出した。

 

正拳突きの真空波を放ち、遠距離から攻撃を仕掛ける。その威力は、K・ナガミツの旋風をも、ものともしない。

 

「まだまだぁ!!」

 

H・タイゾウはどんどん真空波を飛ばし、攻撃を続ける。

 

そして、気づいたころには、K・ナガミツは気絶してしまっていた。

 

「す、すげぇ...」

 

「まだまだ衰えちょらんな!ちょっと安心したばい!」

 

その後、二人はH・タイゾウの案内で無事山を抜けることができた。

 

そして、岸まで来たその時だった。

 

「どうする?船」

 

「素材なら任せな!!」

 

「よし、じゃあ俺が造る!」

 

「なあ、お前ら」

 

「?どうしたんだよ、タイゾウ」

 

「俺も連れてってくれんか?山籠りも、もう飽きたばい...」

 

「いいのか?超危険だぜ?」

 

「たまにはスリルもいいやろ!それに、俺の真空波なら超スピードで樺太まで行けるばい!あとな...ここまで年を取ると、こう、デッカイことをするチャンスも減ってくるとよ...。人間死ぬまでに一回はデッカイこともしたいもんやからな!!」

 

「アタシは大歓迎だぜ!ティエラ!!」

 

「...分かった!!それじゃ、これからよろしくな!タイゾウ!!」

 

こうして、H・タイゾウが新たに仲間に加わったのだった。

 

 

 

 

一方その頃...、世界国家東部地方では臨時の地方議会が行われていた。

 

議題はもちろん、ティエラだ。議会は混乱状態にあった。

 

「ついにヤツは樺太まで来たぞ!それも二人も特殊能力者を率いている!」

 

「このままでは大陸に来る日もそう遠くはない!」

 

「全く...!ヤツは一体何を考えているのだ!?」

 

「記憶喪失と言われているようだが...」

 

その時だった。

 

一人の男が席を立った。

 

議員一同はその男に注目し、「首相!!」と言った。

 

この男の名は、ソン・リマイ。東部地方の首相である。

 

各地方は、議院内閣制をとっているため、地方の代表は首相ということになるので、ソンは東部地方の代表ということになる。

 

「首相!!ご決断を!!」

 

「皆、落ち着きたまえ。対策は既に済んでいるのだろう?」

 

「しかし...!」

 

「確かに、ヤツなら突破しかねない...。しかし、このまま我々が議論を重ねたところで、我々は直接戦闘には参加しないのだから、この議論は何の意味も為さない。だとすれば、我々にできることは『彼』に”託す”ことだけだ。そうは思わんかね?」

 

こうして、議会は終結した。

 

再び場面は移り変わる。

 

樺太、最北端の岸...、「彼」はそこで独り、立っていた。

 

世界の命運を託されたその背中を、地平線に向けて....。

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