日本書紀演義・斑鳩炎上(いかるがえんじょう)   作:TKF

5 / 35
592 崇峻暗殺 その⑤ 武器庫

==========================

日本書紀にいう。

 崇峻五年(592)十月、猪をたてまつる者があった。天皇は猪を指さしておっしゃった。

「いつの日かこの猪の頸を斬るように、自分が憎いと思うところの人を斬りたいものだ」、と。

このころ朝廷で武器を集めるのが、いつもとどうも違っていることがあった。

==========================

 

<猪の首を斬るように・・・>

 秋になり、まもなく1年がたとうとしていた。

 新羅からはまだ何も譲歩が得られなかった。また蘇我馬子大臣も、未だに出仕してこようとはしなかった。

 

 ちょうどこのころ、大王に猪をたてまつった者があった。猪の図太い首や胴体、ふてぶてしい顔つきをみて、崇峻はまたあの男のことを思い出していた。

 

「この猪の首を斬るように、あの憎たらしい男の首を斬ってやるときが待ち遠しいものだ。」

 

 そういいつつ、崇峻は猪の首のところに刀をあてて、ニヤッと笑いながら周囲を見渡した。群臣たちはうろたえつつ、黙って目を伏した。崇峻は満足であった。

==========================

日本書紀にいう。(再掲)

 崇峻五年(592)十月、猪をたてまつる者があった。天皇は猪を指さしておっしゃった。

「いつの日かこの猪の頸を斬るように、自分が憎いと思うところの人を斬りたいものだ」、と。

==========================

 

 

崇峻のこの言葉はすぐに朝廷の内外に広まった。噂を聞いた厩戸皇子は嘆いた。

 

「何と軽はずみな事をおっしゃるものだ。大王は、国とは何か、ということをまるでわかっておられぬ。」

 

天を仰ぐと、冬の夜空に惑星が怪しく瞬いていた。

 

「禍、これより始まるべし…」

 

思わずそうつぶやいていた。

=======================

聖徳太子伝暦にいう

(崇峻の言葉を聞いて)太子は非常に驚き、「禍はこれより始まります」と奏上した。云々。

=======================

 

 

このころ、朝廷内の武器庫にちょっとした異変があったが、気づいたものは少なかった。

=====================

日本書紀に言う、(再掲)

 このころ朝廷で武器を集めるのが、いつもとどうも違っていることがあった。

=====================

 

 

<鈴鹿関>

畿内と東国とを隔てる鈴鹿山脈の山中に、鈴鹿関という関所が設けられている。宮殿で崇峻が猪をののしってから数日の後、その鈴鹿関に荷駄隊が近づいてきていた。

 

「東国が朝貢だと?」

 

関守が驚く。東国の国王たちが蘇我大臣と組んで、大王と反目していることは関守たちも知っていた。

 

(どうしてこんなときに…)

 

そう思うのが当然であった。

 

「とにかく調べさせてもらおう…例年よりだいぶ多いのではないのか。」

 

「前のことがあったから、大王の許しを請うために多めにしてあるのだ。」

 

と、荷駄隊の若い隊長が答えた。

 

”入り鉄砲に出女”という関の役割は古代でも変わらない。関守は慎重に荷駄を検査し、武器らしきものがないことを確認してから通行を許可した。

 

荷駄隊は鈴鹿峠を越えてなおも進んでいった。

 

{IMG212118}

 

 

 

(その⑥「東国からの調」につづく)

 

 

 




補足・解説
鈴鹿関(すずかのせき)ヤマト国と東国との国境地点にある関所。律令制の下で本格的に整備されるのはもう少し後だが、この当時にも当然、国境監視施設みたいなものが存在したであろうと推測した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。