日本書紀演義・斑鳩炎上(いかるがえんじょう)   作:TKF

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592 崇峻暗殺 その⑥ 東国からの調

<東国からの調>

「東国から使者が参ったか。」

 

「はい、しかも例年に倍する調物をたずさえて。」

 

「そうか…来たか…」

 

崇峻は思わず立ち上がっていた。駒がさらに言葉をつづける。

 

「使者は正門のところに待たせてあります。どうなされますか。」

 

「会おう。篤く言葉をかけてやらねばなるまい。」

 

「わかりました。さっそく連れて参ります。」

 

崇峻は使者がやって来るのを待ちきれずに、広間をぐるぐる歩き回っていた。

 

「ついに東国の豪族達もわびを入れてきたか。」

 

勝った、と思った。これで馬子は完全に孤立した。馬子の苦悩する姿が目に浮かぶ。

 

そのころ、門のところではちょっとしたトラブルが起こっていた。調物が多すぎたのであった。それを衛兵がとがめだてしていた。

 

「こんなに大勢の外部の人間を一度に宮中に入れるわけにはいかない、荷物を運ぶのは我々に任せて、中に入るのは数人にしてくれ。」

 

そう衛兵が命じていたところに、駒が強引に入れようとして押し問答になっていた。

 

それを遠巻きに見ていた若者がいた。厩戸皇子であった。しばらく門の混乱を眺めていたが、やがて歩み寄っていった。

 

「ここは宮門であるぞ。何を騒いでいるのか。」

 

「あっ、厩戸皇子…」

 

衛兵はあわててかしこまり状況を説明した。聞き終えた厩戸は命じた。

 

「大王は調物を運んできた人間を自らねぎらおうとお考えだ。せめて半分くらいは特別に入れてやれ。」

 

その言葉に、衛兵はやむなく、入念にボディーチェックをしたうえで、人夫らも通した。

 

広間にずらりと並んだ調物の数々に、崇峻をはじめ群臣は目をまるくした。集団を率いてきた使者が言上を述べる。

 

「我々の主人は、ここ数ヶ月の間、病気にて出仕できなかったことを心苦しく思い、ここに国々の産物を集め献上するとともに…」

 

そう話している間にも、数人がかりで運ぶ箱がいくつか運び込まれてきていた。騒ぎを聞きつけて、女官達も数多く集まってきた。

 

「こんどの箱の中身はなんですか。」

 

「こちらですか、少々お待ちください。」

 

人夫たちは箱を開け、中の物を取り出そうと手をさしこんだ。

 

それを見ていた衛兵の一人がおやっ、と思った。荷物は先ほどすべてチェックして問題がないことを確認していたが、それらの箱はさっきあっただろうか?他の箱と装飾も少し違うように思えた。その衛兵は、中を確認しようと近づいていった。

 

次の瞬間、その衛兵は血しぶきをあげて倒れていた。剣を手にした人夫たちが殺到してきた。

 

 

 

(その⑦「そして後宮へ」につづく)

 

 

 

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