日本書紀演義・斑鳩炎上(いかるがえんじょう)   作:TKF

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592 崇峻暗殺 その⑧ 事態収拾

<事態収拾>

“殺害成功”

蘇我馬子がその知らせを受け取ったのは、救援のために宮殿へ急行する途中だった。その知らせの内容よりも、使いが駒の配下であることに馬子は驚いた。

「粟原ほどの者の手にも負えなかったのか・・・噂以上の腕前であったのだな・・・その点では惜しい男であったか・・」

馬子はそう思った。

 

「駒めに功をとられたか」、

「せっかく久しぶりに腕が振るえると思ってたのに。」

「駒なんかでは河上娘さまがおかわいそうだ」

と悔しがる声がいくつか馬子の脇からあがったが、馬子は目で黙らせた。

 

馬子は宮門をくぐりながら、宮殿の混乱を収めることを考えていた。しかし、宮殿の中は意外にも静かであった。

 

広間に入ると、鮮血が戦闘の激しさを語っていたが、すでに死傷者の姿はなく、床の清掃が始まっていた。厩戸皇子が馬子を迎えて言った。

「大臣に来ていただけてようやく安心できます。賊は金目のものを奪って、いずかたもなく逃げ去りました。残ったわずかな衛兵と私の部下を使って混乱をおさえています。」

「そうでしたか。殿下にもお手数をおかけしました。」

「あと、遠征中の軍が混乱しないように、何か手を打っておくのがよいと思われます。」

「わかっております。あとは臣にお任せください。」

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日本書紀にいう。

 朝廷で武器を集めるのが、いつもとどうも違っていることがあった。

十月十日、蘇我馬子は、崇峻天皇が仰せられたという言葉を聞いて、自分を嫌っておられることを警戒した。一族の者を召集して、大王を殺することを謀った。

 十一月三日、馬子は群臣をだまして言うのに、「今日、東国から調をたてまつってくる」と。

そうして東漢直駒を使って、天皇を殺したてまつった。

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二日後、筑紫の将軍達に向かって早馬がとんだ。

書を受け取った将軍達は兵たちの混乱を押さえ、これまでどおりに中央の指示にしたがって行動することを馬子に誓った。

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日本書紀にいう。

 五日、早馬を筑紫の将軍達のところに遣わして、「国内の乱れによって外事を怠ってはならぬ。」と伝えた。

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数日後、馬子は群臣を朝廷に招集して言った。

「崇峻大王陛下は、先日、宮廷に乱入した賊により殺害された。大変残念なことであるが、戦時中の今、悲しんでいる場合ではない。後継についてはこれから話し合うが、とりあえずは推古女王陛下のもとで一致団結しようではないか。」

「なお、先日の混乱の中で行方不明になっていた河上妃であるが、東漢駒によってさらわれていたことがわかった。崇峻大王に抜擢されておきながら、大王の護衛の任を忘れ、混乱に乗じて後宮に乱入した不届き者である。よって既に処刑を終えた。」

 

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日本書紀にいう。

 この月、東漢駒は、蘇我河上娘を奪って自分の妻とした。馬子は河上娘が駒に盗まれたことを知らないで、死んだものかと思っていた。駒は河上娘を汚したことが露見し、大臣のために殺された。

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なお、晒された駒の首が違うのではないか、という衛兵もいたが、大きな騒ぎにはならなかった。

 

宮殿の外には、警備と治安維持のために東国から急遽呼び寄せた東海兵数百が控えていた。衛兵の大半が逃走し、また他の国の兵士は筑紫に集められていたため、やむをえない処置であった。

衛兵の中には、東海兵の隊長の一人が先日の賊に似ているのではないか、と言う者もいたが、馬子も群臣も他人の空似であろうよ、と笑って取り合わなかった。

 

その後、東海兵は付近の山中などを懸命に捜索したが、どうしても先日の賊を見つけることはできなかった。

やがて都は落ち着きをとりもどし、東海兵も東国に引き返していった。

 

(592崇峻暗殺ーー完)

 





補足・解説
崇峻暗殺の首謀者について 日本書紀では蘇我馬子一人の所業とされているが、その後の混乱がないことや、馬子を非難するような話もないことから、推古天皇や大方の群臣も合意の上であったのであろう。

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