廻る巡る呪いの果て。
 人外魔境決戦、新宿。
 両面宿儺は敗れ、呪いとして死んだ。
 循環する魂の通り道。ツギハギの呪霊( 真人 )に彼は言う。

「次があれば、生き方を変えてみるのも良いかもしれない」

 呪いの王の従者、裏梅を傍らに。
 両面宿儺は"次へ"と向かった。

 二人が目覚めたのは、極東。その列島。
 魔術王ソロモンの死後、星のルールが『神霊の権能』から『人類の物理法則』へと急速に変わり、大陸から神代が終わりを告げる中。
 かのブリテン島と同じく、色濃き神秘の数々が魑魅魍魎として島国に跋扈し、妖物魔物を剛力無双の武者が狩る人類史屈指の魔圏。

 是即ち——呪術全盛。平安の世である。

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 私は書くより読みたい派ですが、私の望む世界が今目の前になかったので書きました。
 誰か続きをお願いします。
 設定の開示……!! 本気だね。


第1話

 

 

 ——ねえ宿儺?

 ——あなたを殺すのは私でありたい。私を殺すのはあなたであって欲しい。

 ——それでも私が勝ってあなたが生きていたら、私に何をくれる?

 

 全て。

 あり得ん話だが、負けたのならば死体同然。

 死体をどうしようと、貴様の自由。

 

 ——宿儺。オマエは俺だ。

 

 しかし忌々しき小僧——虎杖悠仁は両面宿儺を呪わなかった。

 今際の際。伏黒恵から引き剥がされ消滅を待つがままの両面宿儺に、虎杖悠仁は言う。

 

 ——知らず知らずに呪いを背負って生まれて、どんな化け物になるかは運次第だった。

 ——誰にも受け入れられなくとも、俺だけはオマエと生きていける。

 

 ふざけた愚行。それをここまで演じ切った事だけは褒めるに値する。

 だが両面宿儺は虎杖悠仁の提案を断り、呪いとして死んだ。

 

 死にたくなかった。

 生命の原初の欲求。

 呪物となってまで時を渡った両面宿儺も、最初に抱いた飢えである。

 飢える愚母の胎の中で、自分まで飢えないために片割れを喰らい尽くした。

 故に忌み子として産まれ、故に蔑み虐げられた。

 

 四つの目。四つの腕。二つの口。

 醜く、悍ましく、いと恐ろしき異形。

 呪術全盛。世に呪霊が溢れ、呪いと人が最も近かった時代、平安。

 両面宿儺が排斥の対象になったのは必然なのだろう。

 

 死にたくなかったから、胎の中で片割れを殺した(喰らった)

 一度人を殺したのだから、殺すという選択肢は日常に入り込む。

 

 呪われたのなら、呪い返す。

 殺されそうになったら、殺し返す。

 

 愛など下らん。

 生まれながらに恵まれた強者が憂う孤独も、愛の飢えも、それらは全て贅沢者共が理解出来ていないだけ。

 他者に満たして貰おうなどと思った事はない。

 喰らいたい時に喰らい、目障りなら殺し、面白ければ遊ぶ。

 俺は、俺の身の丈で生きているに過ぎない。

 

 ——聞きたかったんだ宿儺。嘘付いてたろ。自分にも他人にも。ただ身の丈で生きているだけなんてさ。

 

 ただそれだけだった。

 それ以外の生き方を知らなかった。

 それが俺の身の丈だった。

 

 いや……違う。

 生き方を選ぶ事も出来た。

 きっかけは二度あった。

 

 だが恐れた。

 自らの呪いに焼き殺される事を。

 臓腑に蠢く呪詛を吐き出さずにはいられなかった。

 だから。

 

「次があれば、生き方を変えてみるのも良いかもしれない」

 

 循環する魂の通り道。

 魂に干渉する術式を持つツギハギの呪霊、その残滓に向けて己を改めた両面宿儺は、背を向けその場を去っていく。

 

「つまんねー!! 丸くなりやがって!!」

「当然だろう。負けたんだからな」

 

 負ければ死体同然。

 死体をどうしようと、勝者の勝手に過ぎない。

 だがそれでも、両面宿儺は虎杖悠二の提案を蹴った。

 虎杖悠仁が蛇蝎の如く忌々しかったからでも、両面宿儺の矜持に触れたからでもない。

 あくまでもそれは、虎杖悠二が最後まで愚行を演じ切ったが故。

 思い出す。今際の際の、腰抜けに等しい戯言を。

 

 ——俺には爺ちゃんが居た。

 ——宿儺……もう一度やってみよう。誰かを呪うんじゃなくて、誰かと生きるために。

 

 宿儺は前を向いたまま、四つ目の一つを右に向ける。

 隣には呪いの王の従者、裏梅。

 俺の側に居ても冷たくならなかった唯一の存在。

 最初の、きっかけ。

 

 両面宿儺は、裏梅と繋いだ手を離さぬように、共に歩く。

 黒い世界。闇の広がる、魂の通り道を。

 いつしか二人の意識は消えていく。

 闇の中へ溶けていくように、静かに。

 

 

×        ×         ×        ×

 

 

「(なん、だ……?)」

 

 不意に、宿儺は自らの身体に重さを覚えた。

 纏まらぬ思考。重たい瞼。それは目覚めにも似た感覚で——実際にこれは意識が目覚めたのだと理解するまで、宿儺は混乱の渦中にあった。

 

 目を開き身体を起こせば、自分はどうやら倒れていたらしい事に気付く。

 丑三つ時。草木が生い茂る深い森林。並ぶ木々。木の葉の隙間から覗く月明かりによって両面宿儺は薄く照らされていた。

 しかし、斯様な場所で己が倒れていたという事実よりも、宿儺を喫驚させるものがある。

 

 身体があった。

 それも誰かの身体に受肉した訳ではない。四本の腕があるからだ。

 自分の身体を見下ろし、実際に副腕の感覚があり、何より動かせる。

 それが、より宿儺を困惑させる。

 困惑の度合いは虎杖悠二の領域展開に巻き込まれたあの時に匹敵……或いは上回るかもしれない。

 何せ両面宿儺は、確かに死んだのだ。

 

「(最後の指に魂が繋がった……? いやあり得ない。共振は俺にとっても不利益に働く。仮に最後の一本で消滅に耐えたとして——)」

 

 ——俺に、これだけの呪力が宿る訳がない。

 両面宿儺は気付く。今の自分に宿る呪力量・呪力出力は共に、平安時代の全盛期に等しい。

 即ちこれは指20本分に相当するものだと。

 

「(俺の身体には、自分以外の魂も感じられない。やはり最後の一本が誰かに受肉したという線はないな)」

 

 一時期、虎杖悠仁の肉体に魂を同居させていた経験を持つ両面宿儺は、魂の輪郭とその境界線を知覚出来る。

 誰かに受肉した訳でも、知らぬ内に受肉の変身を遂げた訳ではない。

 これは正真正銘自分の身体だ。当然、魔虚羅(まこら)を破壊された事により機能を失った十種影法術(とくさのかげほうじゅつ)の残滓も感じられない。

 つまり。

 

「生まれ変わった、のか」

 

 だとするなら、何故赤子ではなく異形の肉体のままなのかという疑問は尽きないが、それを理解する為には時間も情報も足りていない。

 ひとまず"次が"あった。理屈は分からないが、それさえ分かっていれば良い。

 

「裏梅」

 

 そして宿儺は確信していた。

 自分が生まれ変わったのなら、必ず裏梅がいる筈だと。

 何せ循環する魂の通り道の中で、決して離さぬようにと最後まで手を繋いでいた。

 

 周囲を見渡せば、宿儺と同じように横たわる裏梅がいる。

 現代の女に受肉した姿ではなく、平安時代の姿の裏梅だった。

 呼吸によって上下する胸。感じ取れる鼓動の気配から、やはり裏梅は俺と同じように生まれ変わったのだと両面宿儺は確信する。

 

「裏梅、起きろ」

「……ぅ」

 

 反応して呻めき声を上げた裏梅は、ゆっくりと重たい瞼を開く。

 

「宿儺……様……?」

 

 目覚めた裏梅の視界に飛び込んで来た、己が忠義を捧ぐ我が主。

 その御身の覗き込むような姿勢に、現状の疑問を覚えるよりも早く顔面を蒼白させたのは、(ひとえ)に裏梅の忠義の現れだろう。

 裏梅は反射的に跪き、宿儺に頭を垂れる。

 

「——! 申し訳ありません! 宿儺様の前で眠り惚けているなど……ッ! この処断は今すぐにで、も………」

「お前も気付いたか」

 

 四つ目に四本の腕。

 白袴を纏い、副口と副腕を備える故上には何も纏わない事が多い両面宿儺。

 その姿に目覚めたばかりの裏梅の意識は、刹那1000年前を彷徨った。

 

 しかし、裏梅も気付く。

 高専呪術師との戦いの果てにある筈の、自分と我が主に起きている変化を。

 

「宿儺様……これは……」

「どうやら次があったらしい。俺が知るものとは些か趣きが異なるが、これも輪廻が巡ったが為なのだろう」

 

 仏道に則るなら極道浄土には行けず、また生まれ変わる事もなく地獄の業火にて焼かれる筈だが、両面宿儺は虎杖悠仁の出生の秘密から、己が胎の中で喰らった片割れの魂が廻り巡って生まれ変わった事を主観的に把握している。

 

 呪いは廻るものだ。

 何より呪力や呪霊の発生は、ほぼ日本特有のモノ。

 魂に干渉する呪霊すら存在した以上、魂が日本の中を巡り、再び生まれ変わるというのは不思議な話ではない。

 

 では何故両面宿儺がそのままの身姿で生まれ変わったといえば……魂の強度によるものか。

 両面宿儺は、虎杖悠仁の中からツギハギの呪霊( 真人 )無為転変(むいてんぺん)を退け、逆にツギハギの呪霊( 真人 )の身体を引き裂いた経験がある。

 そもそも宿儺は呪物となって時を渡り、更にそれを20に分けていながら現代でも呪いを引き付けていた。

 

 そんな呪いの王が、循環する魂の通り道で「次があれば」と発言した。

 呪言使いという訳ではないが、言霊という概念もある。

 その意味は存外に大きかったらしい。

 

 尤もこれは術式による幻覚でなければの話だが、宿儺自身はこの現状を幻覚の類いによるものだとは全く思っていない。

 これが幻覚や錯覚によるものとすれば、術者のレベルが無駄に高次元すぎる。

 仮にこれが領域によるものだとしても、尚更意味が分からない。

 何より、一度確かに死んだ筈の自分がこうして実在している説明が付かない。

 

「クハッ、ハハハッ……! まさかこの俺が地獄に向かわず、本当に次があったとはな!」

 

 確信。ここは地獄や異界などではない。

 地獄などであれば、夜空にあって然るべきものはないからだ。

 

 見ろ裏梅、と宿儺が天を仰げば、また裏梅も空を見る。

 月明かりの夜でも煌々と輝く星々。宿儺も裏梅も知っている、平安から現代に至るまで変わらなかった星々の並び。その配置に差異がなかった。

 この時点で、間違いなく同じ星の下に生まれ変わった事が確定している。

 

「(とはいえ、時代と場所は分からんな)」

 

 千年単位で星座の位置が変わらないのだから、時代は言わずもがな。

 場所に付いては、星座の角度や見え方から現在の位置を把握出来るらしいが、宿儺の知識は平安時代のものと、現代にて受肉した器から記憶を読み取ったものに依存する。

 つまり両面宿儺は、虎杖悠仁と伏黒恵の知る限りに於いてのみの現代知識しか持ち得ない。

 虎杖悠仁は単純に間抜けで学がなく、伏黒恵も座学は10だが星座の知識は南十字星に少しばかり詳しいだけで、他は一般知識。

 流石の両面宿儺も、星座の位置や見え方から現在の場所を把握するほどの専門的知識はなかった。

 

「(まぁ恐らく日本の何処かだろう)」

 

 周囲を見渡して映る木々は、(スギ)(ヒノキ)

 平安時代の頃から見慣れた日本の代表的な樹木だ。海外にもこれらの木々がない訳ではないが、呪力はほぼ日本特有のモノ。己の片割れが同じ日本に生まれ変わったのだから、自分もそうだろうと宿儺は辺りを付ける。

 

 となると寒冷地帯に多い(マツ)が見当たらない為、恐らく近畿地方の周辺だろうか。

 もしかしたら、かつて平安京があった京都市も近いかもしれない。

 この時代に京都市というものが存在するのかは知らんが——それは実際に確かめて見れば良い。

 

「折角だ。今が如何なる時代になったかを見物してやろう。付いて来い裏梅」

「——御意に」

 

 宿儺と裏梅。

 二人とも現代に受肉した際、器の記憶から現代の時代の変化を知った。

 だが此度は違う。同じ地球。確信には至らないが間違いなく日本。しかし未知の時代。

 これはこれで、中々楽しめそうだ。

 "次の"生を得た両面宿儺は純粋な好奇心を胸に、新たな現世を歩む事を決めた。

 

 ——二人は、まだ何も知らない。

 

 この世界に、呪霊という概念は存在しない。

 正確には呪霊という存在もまた一つの神秘の形であり、呪力もまた一つの可能性である。

 呪力。魔力。妖力。法力。

 呪術。魔術。妖術。法術。

 この世界に於いてあらゆる力に大層な差はなく、または呼び名が違うだけであり、全ての源は神代の残り香である神秘だ。

 そしてこの島国は今、第五真説要素(真エーテル)第五架空要素(エーテル)の境目の時代に存在する魔境。

 神代の残り香を強く残し、星の内海へと消える筈の幻想種が魔に連なる怪異として蔓延る、人類史屈指の魔圏。

 

 是即ち——平安の世である。

 

 

×        ×         ×        ×

 

 

 時は寛和(かんわ)。世は平安。

 第65代花山天皇、摂政であった外祖父・藤原伊尹の早逝により有力な外戚を持たないまま17歳で即位。関白には藤原頼忠。しかし実権を握ったのは花山天皇の外叔父と乳母子。藤原義懐藤原惟成。政治体系の確執を招く。

 更には皇太子・懐仁親王の外祖父である右大臣・藤原兼家は花山天皇の早期退位を願う対立の姿勢を見せ、平安の宮中は義懐派・頼忠・兼家による三つ巴の対立となる様相を呈していた。

 かの大陰陽師、安倍晴明は天変を以ってして予言を残す。

 もうすぐ帝が退位なさる、と。

 

 政治は血肉に淀み、停滞した。

 陰謀蠢く、謀殺呪殺の権謀術数。

 血肉を争う無残凄惨なる宮中の風、平安京をも覆うは必定の流れ。

 吹き荒れる血風、乱世の臭い混じるその風は、大江山に潜む大怪にも届いたか。

 

 丹波国と丹後国の境、大江の御山に住む魔の頭領。盗賊の頭目。悪鬼羅刹の御殿に君臨す稀代の外道丸。怪の名は——酒呑童子

 大嶽丸、九尾孤と並ぶ三大妖怪。その一角を成す、鬼である。

 

 魔が蠢く京の有様に、酒呑童子は嗤った。

 

 夜半といえど、京の真っ只中。しかし当然の如く(もの)()が湧いて出た。

 安倍晴明が都一帯に結界を広げれば(もの)()共が怪異跋扈する事はなくなったが、怪力乱神はそれを意に介さない。

 平安京のど真ん中で、堂々と人攫いが罷り通る。

 北は陸奥国、南は薩摩国。数多くの諸国から来たる京の姫君は鬼に奪われ、立ち向かった若者は神隠しに合った。逢魔時、闇が蔓延る丑三つ時には、京の外れに土蜘蛛すら出る。

  

 都の守護たる頼光四天王。即ち源氏は藤原の摂関家に仕える身分。

 今、権謀術数なる動乱に巻き込まれ、沙汰を待つばかりが関の山。

 それでも尚己が従えた四天王に代わり——或いは常ならぬモノから戴く血と父・源満仲との確執に関わる故か、時に朝廷の任すら捨て置いて斬鉄の刃を振るう頼光(らいこう)の尽力により、平安京はかろうじて治安を保っていた。

 

 (みかど)が在わす、日の本の中心ですらこの有様である。

 

 陰陽師、妖術師。或いは呪術師。

 諸国には大抵仕えの術者はいるが、安倍晴明なき諸国に於いて、天に暗雲立ち込めば化生の類いが魔窟の如く湧き出るは必定。

 当然、酒呑童子並びに茨木童子。また大江の首魁が従える大江山四天王に遥かに劣り、京の宮に立ち入るも化ける事も出来ない、鬼すらも。

 

「おっ(かぁ)! おっ(かぁ)……っ!! おっ(かぁ)は何処だ!」

 

 嗚呼。だがそこは、何よりも場所が悪かった。

 或いは、今まで滅んでいなかった事こそを幸運だったと思うべきか。

 丹波国。かの鬼の頭領、酒呑童子が潜む大江山を含む諸国である。

 

 その諸国の名も無き村で今、人攫いが起きた。

 主犯は当然、鬼である。

 

「女房が……女房がいないんだ……っ。誰か、誰か行方を知らぬか!!」

「おい……嫁さんは兎も角、お前のお袋さんは——」

「——そんな、そんな訳がない!」

 

 一人、錯乱している若者がいる。

 当然といえば当然だろう。

 攫われたのは、男の女房である。 

 

「あんな、あんな——」

 

 だが攫われたのは一人。

 即ち。

 

「——血肉が」

 

 男を産んだ母は、鬼に喰われた。

 攫われた男の女房を取り返す為、食ってかかったが故の末路である。

 それも若い者以外大して旨くもないと言い放つ悪鬼羅刹の所業であり、惨たらしくも貪った血肉の大半をその場に撒き散らし、鬼は行方を喰らわせた。

 しかし鬼の感性からすれば、大半美味であろう若い女は喰っていない。

 

 鬼はこう言い残している。

 

 ——見目麗しきこの女は頂いた! 日が沈む方角、山林を抜け小丘を越えた先の山にて益荒雄を待つ! 二つ朝が来るまでに取り返しに来ないのなら、この女を喰らってやろう! あぁ、ついでに酒も貰っていく!

 

 その鬼は外道なる悪鬼であり、同時に何処までも純粋な鬼であった。

 天を貫くが如き一本角。一つ目に剛力なる巨体。丸太をそのまま持ち出したような棍棒を軽々と片手で振るう、酒池肉林の乱暴者。

 そして人界の勇気ある猛者を好む、正に鬼。

 

 だがこの村に、鬼退治を成し遂げる勇者はいなかった。

 心を奮い立たせ、決死の戦いに乗り出す益荒雄もいない。

 仮にいたとて、果たしてその者が鬼に勝てるかどうか。

 

「そんな、そんな………!」

 

 錯乱している若者を前に、村の者達は沈痛な表情を浮かべて黙り込む。

 元から小さな村だった。だというのに、大江の御山に鬼の首魁達が潜むようになっても村を離れず続けて来た末路がこれなのだろう。

 平安京は疾うに助力を求められる状況にあらず、丹波の諸豪族達に術者や武者を願ったところで間に合いはしない。

 そもそも諸豪族達の侍様が鬼に勝てる道理はあるか? 仮に勝てても、これはいつまで続く。

 

 もう、潮時だろう。

 

 こうしてまた、村が一つ消える。

 騒乱と戦乱の坩堝にある平安に於いて、これは珍しくもない一幕だった。

 

「ぇ……あ」

 

 ふとその時、村の一人がそれを見る。

 薄暗い月明かりの中にまろび出る、奇怪な影。

 水月を写し込むその巨体に、魔の者が持つげに恐ろしき気配を感じたのは、果たして誰だったか。

 

 腕が四本。口が二つ。

 爛れた肉の板が張り付いたか如き面に、立てに並ぶ二つの目。

 もう片方の面にも目が二つ縦に並び、四つの目を以って此方を睥睨するは、異形の怪物。

 

「そ、そんな——なんで」

 

 嗚呼。まただ。

 

「——鬼が出たぞーっっ!!」

 

 鬼だ。鬼がいる。

 

 

×        ×         ×        ×

 

 

 最初から、疑惑の念はあった。

 積み重なってすらいた。

 

 ——星が見え過ぎている。

 

 平安ならいざ知らず、両面宿儺が受肉した2018年現代では文明の光によって夜も明るく照らされていて、星々の光はほとんど見えない。

 新宿や渋谷。文明の真っ只中である都会なら一つも見えない場所がほとんどである。

 だが目覚めた宿儺が天を見上げた時、まるで平安時代の頃のように空が見えていた。

 文明から離れた山の中とはいえ、この月明かりの夜に於いてすら星座が見えているのはおかしい。

 

 両面宿儺はまずこの時点で、受肉した2018年から時代は跨ぎつつも、人類が霊長として進化するほどの時は流れていない事にのみ確信を抱いていた。

 

 千年単位で星座の配置は変わらない。

 だが万年単位ともなれば、流石にその見え方を変化させる。

 自分が知る星座の位置に差異はない。万年は経っていない。

 だが、自身が喰らった片割れが平安時代から1000年先の現代に生まれ変わったのだから、恐らく己もそれくらいの時を経たのだろう、という前提はおかしく思えた。

 1000年ほどで文明が発達するならいざ知らず、逆に月明かりの下で星が輝くほど文明の光は後退するのか。

 

 更に違和感はあった。

 

 山々の周囲から、あまりにも濃い呪いの気配がする。

 宿儺の呪力感知力は、特徴的とはいえ4km離れたビルの上に降り立った五条悟の呪力を認識し、呪い蠢く新宿にて四方一町を挟んだ先の伏黒恵の危機を察知出来るほどである。

 山林にて蠢く魔の気配を感じ取ることなど、宿儺には容易い。

 故に分かる、呪いの数の質。蠢く魔の気配。

 

 呪霊は人間から流れ出た負の感情により発生する。

 辛酸・後悔・恥辱・恨み・辛み。何でも良い。人間が記憶を反芻するたびに発生する感情の受け皿には、呪いが吹き溜まるのだ。

 故に現代に於いては、病院や学校のような場所に呪いは集まり。

 

 ——自然への畏れが強い平安、かつて宿儺が生きていた時代では特に山に呪いが集まった。

 

 山。人の支配が及ばぬ異界。

 山に潜む獣、自然の理不尽に人は恐れ慄き、震えて怯えていた。

 呪術全盛、呪いが公然ものとして周知されていた平安の世で、それは当然の事だった。

 似ている。現代とは比べ物にならないほどレベルが高かった呪いの気配すら。

 

 残された死滅回遊(しめつかいゆう)や、堕ちた天元(てんげん)。五条悟の死亡。諸外国からの軍隊の介入や、呪いが蔓延る異界となってしまった首都東京。結局あの後は高専術師達の活躍も虚しく日本は崩壊し、呪いの世になってしまったらしい、と当初は裏梅と共に笑い飛ばしていた宿儺だったが、こうまで来ると疑惑が勝つ。

 

 そして、その疑惑と違和感を確信に変えた出来事は、ある者の声だった。

 

「おっ(かぁ)! おっ(かぁ)……っ!! おっ(かぁ)は何処だ!」

 

 山林にまで響き渡る、悲痛な声。

 しかし、その若者が何故叫んでいるかなど、呪いの王には心底どうでも良く。

 ただ、これは。

 

「(………中古日本語!?)」

 

 そう。呪いの王を驚かせたのは、言語の特徴である。

 日本語とは、2000年近くずっと同じ書き言葉や、話し言葉だった訳ではない。

 現代では、地方の田舎などに方言や訛りとして残っているように、日本語は長い時を経て変化し続けて来た。

 中古日本語。

 上代日本語と中世日本語の間に位置する、日本語の発展における一段階。主に平安時代で用いられた、日本語の文語体基礎。

 平安の世を生きた宿儺と裏梅も、当然平安時代は中古日本語という、2018年の現代ではまず以って通じない言語で会話していた。

 読みも書きも発音も異なり、動詞の形態論も似ているだけで異なる日本語なのである。

 

 宿儺と裏梅は、現代に受肉するにあたって器の記憶から知識を得た事により現代でも問題なく行動出来た。時代を跨ぎ、根本的な言語が異なる1000年後でも。

 彼らは現代で、あくまでも時代に即した言葉で伝わるように会話していただけ。

 故にこそ分かる、言語の差。

 平安時代で使われていた——昔の言葉。

 

「宿儺様……もしや今のは」

「あぁ。今のは確かに、俺の時代のものだった」

 

 言葉少なく、だが互いに理解する。

 喉から出かかっている答えを前に、宿儺と裏梅は声のする人里へ向かった。

 

 田舎の古びた農村。

 

 現代人ならそう思うかもしれない。

 だが——平安の世を生きた宿儺と裏梅はそう思わなかった。

 長屋の住居に、藁葺(わらぶき)の屋根。これは平安時代、民草の基本の一つであった家屋だ。

 またそこらに集まっている人間は、筒袖(つつそで)に胸ひもで括った直垂(ひたたれ)。下には裾を絞った小袴(こばかま)と、今の宿儺と裏梅の服装のような、正に平安時代の着衣装をしている。

 

 悲痛な声を張り上げていた若者のすぐ近くの長屋。

 塀は巨怪が踏み潰したような有様で、藁葺(わらぶき)の屋根はもはや存在しておらず、床座は捲れ上がっている。

 まぁ呪霊によるものだろう。別に興味を唆られるようなモノでもない。

 

「(やはり、平安だったのか)」

 

 既にこの村落と男の背景から興味を失った宿儺は、腕組みをし思案に入った。

 虎杖悠仁が言うのなら「なんだ? 宿儺が……ぼーっとしてる……!?」と言ったところである。

 

「(俺は生まれ変わったのではなく、過去に戻った……? 或いは現代に受肉し得た経験は全て泡沫の夢……?)」

 

 いや……いや問題はそこではないだろう。

 言うなればどうでも良い。今こうして、俺と裏梅が平安の世にいる事実が重要だ。

 場合によっては、"この時代"の両面宿儺と裏梅がいる可能性もあるが、過去は過去。俺は俺だ。どうともならんし、どうもしない。

 

 ——次があれば、生き方を変えてみるのも良いかもしれない。

 

 そう。過去は過去。

 この時代で両面宿儺は、所謂未来の知識を活かし、今再び呪物として時を渡って高専術師達に復讐を果たす、という意識など毛頭なかった。

 無論、この時代の御三家等共々を根絶やしにし、或いは天元を墜とし未来の呪術界を歴史から抹消する、という気も。

 

 下らない。

 両面宿儺は呪いとして死に、だから一度身を振り返って見た。ただそれだけだ。

 生き方を選ぶ事も出来た。だが呪詛を吐き出さずにはいられず、自らの呪いに焼き殺される事を恐れた。

 故に、次は生き方を変えてみるのも良いかもしれない、と。

 

 両面宿儺は決して、過去を否定したい訳ではない。

 はっきり言うのなら、呪いとして生きた事に思う事はあったな程度で悔やんでいるという訳でもない。

 だというのに、何故自分の過去を上塗りする形で自分を貶めなくてはならないのか。

 

 ——復讐だろ。アンタの人生は。異形の忌み子として生まれた自分を蔑み虐げて来た者達への。

 

「……思いの(ほか)食指は働かなかったか」

「宿儺様?」

「気にするな。やはり俺は俺の身の丈で生きているに過ぎないと分かっただけだ」

 

 尤もこの考えは、何の因果か次の機会で与えられたのが再び平安の世であり、文字通りやり直しの機会を得てしまった事に関係するだろう。

 たが両面宿儺にとっての呪いは、時と世を跨いでまで廻るものではなかったのだ。

 

 しかし、やはり平安。

 術者のレベルは現代より高いとはいえ、見飽きた時代でもある。

 平安と言っても400年ほどの開きはあるが、受肉した経験によってある種未来を知る両面宿儺の食指を動かす物事は特にない。当然、再び呪いの王として君臨する気もない。

 こういう時でも、あの羂索(けんじゃく)なら酷く楽しそうに二度目を謳歌するのだろうが……。

 

「——鬼が出たぞーっっ!!」

 

 その時、再びの喧騒が宿儺の耳に飛び込んで来た。

 佇む異形の忌み子。即ち宿儺の姿の見た村民による叫び声である。

 幾人は逃げ出し、しかし夜。山々に獣や怪異が蔓延るこの時にもう逃げ場はない事に絶望し、更に或いはそれに気付いた為か凶器足る農具を持ち出し構える者もいる。

 

 それら全ては、両面宿儺の気にするところではない。

 いや或いは、かつての平安時代の頃ならば戯れに殺し、また喰らったのかもしれないが。

 

 再び。

 呪いの王はただ一言の言葉を兆しに、喫驚を露わにする。

 

「——鬼、だと?」

 

 決してそれは怒りではない。驚愕だった。

 宿儺が知る平安時代に——という概念がなかったからだ。

 正確には、この時代に於ける鬼とは、(おに)という言葉ではなかった。

 

 (おに)

 西。大陸の中国より、日本では奈良時代から平安時代にかけて伝わった概念。

 しかし日本では、元から怪異や怪物の類を(おに)と呼んだ訳ではない。

 

 (オン)

 日本に伝わった当初。元は目に見えない存在を指す言葉であり、それは変幻自在の霊的存在として恐れられ、災害や疫病とも結び付けられた。

 それが段々と(オヌ)と訛り、そして凡そ室町時代にまで時を経てから現代にて通じる(おに)という概念と語源になったのである。

 

 奈良から平安にかけて広がった、(おに)改めて(オン)

 宿儺が生きた平安時代が、呪術全盛の時代となったのは当然だろう。

 人は目に見えないものを畏れるようになり、それを災害や疫病と結び付けた。そこに呪いは吹き溜まり、呪霊が公然と発生するようになる。

 

 後世。現代の創作に於ける角を持った怪異、即ち鬼なるものは全て出鱈目。

 宿儺は実体験でそれを知っている。

 高専の登録に当て嵌めるなら特級。特級呪霊『酒呑童子』並びに『茨木童子』。

 しかし所詮は呪霊だ。酒飲みと暴れ者への怨み辛みが呪いとして形になっただけ。

 会話出来るほどの知能はあったが、それ以上の範疇から逸脱する事のない、人を害するのみが関の山の呪い。

 宿儺にとっては、特に面白味のない虫でしかなかった。

 

 だが——今この人間は何と言った?

 

 まだこの時代では(おに)という言葉はなく、(オヌ)という姿なきものを畏れる筈の言葉でしかない筈なのに。

 今確かに、目の前の男は(おに)と口にした。 

 この身を見て呪霊ではなく、(おに)と。

 

 それはまるで。

 この世界には、実態を伴う魔の者として。

 本当に鬼がいるかのような——

 

「如何しますか、宿儺様」

 

 尋ねる裏梅。

 これは、刃を向けるこの者らを捌き食しますか? という事である。

 たが宿儺は「まぁ待て」と裏梅を制し、此方に農具の刃を向ける若者に中古日本語で話しかける

 

「おい若造」

「な、なんだオマエは! オマエがあの鬼の仲間ってんなら、俺は——」

「アレは鬼がやったのか」

 

 この若造の住居であったのだろう、見るも無残な長屋。

 そして誰かの血肉。

 錯乱から解かれ、極度の激昂にある男は叫ぶ。

 

「ッ何を当たり前の事を! アレは全部オマエらがやった事だろうが!!」

「ほう。呪霊ならまだしも鬼がか。何故鬼は人を襲う?」

「はぁ——!? オマエ、オマエは——ッ!!」

 

 男は揶揄われているのだと思った

 目の前の化け物は鬼。母を無残に殺し、家内を奪った怪異と同じ。

 

「オマエは、オマエは………!」

 

 それが、ふと瓦解する。

 何か、何かがおかしい。

 鬼が人を揶揄うにしても内容が虚ろであり、鬼が常に纏う刹那的な享楽がない。

 そもそも何故この異形は、女とも男とも分からない人間を連れており、しかもその人間は平然としているのか。

 怯え、恐怖し、何かを絶望している者の表情ではない。

 何なら男に、更にはこの村民そのものにほんのりと苛立ちを向けているかのような、冷ややかな気配すら感じる。

 それに。

 

「……角が、ない」

 

 ボソリと呟かれた言葉。角。後世の出鱈目。

 呪霊という言葉に反応せず、またまるで角があるのが当然かの如き反応だ。

 明確に質問に答えず、激昂を向けて騒ぐ虫の戯言に、宿儺は刃では返さなかった。返す気すら起きなかった。

 知らず知らずの内に頬が吊り上がる。

 むしろ今は、そのような騒めきすら何処か心地良い。

 

「……ケヒッ」

 

 それは。

 既知なる筈の世界で味わえるとは思ってもいなかった、未知との遭遇。

 両面宿儺が知らぬ、珍味の類。

 

「ヒヒッ……ヒヒヒフフフフフハハハハハハっっ!!!!」

 

 ゲラゲラ、ゲラゲラと。

 弾けるかの如き哄笑を浮かべる両面宿儺だった。

 しかし宿儺は何かを嗤ってはいない。

 それはただひたすらに、心底愉快だとでも言うように。

 

「まさか。まさかだ! 同じ平安の世に戻ったかと思えば、与えられた次は正真正銘に魔の者が湧く平安の世だった訳か!! これが俺に相応しい時代だと!! クハハハハッ! これはこれは奇怪な時代もあったものだなぁ!!」

 

 ひとしきりに笑い、更には何となく連れの人間からも苛立ちが消えて嬉しそうな気配がする中で、村民達は混乱していた。

 平安武者とは異なり力無き民達だが、仮にも神代の残り香が残る時代に住み、生きて来た人間。人類最古の王、英雄王の裁定を潜り抜ける時代の民。

 彼らは害意に敏感であり、目の前の異形からは害意や殺意を感じ取る事はなかった。

 前にいるのは鬼ではない。

 明確な意思疎通が可能であり、だが異形。成りし異質。

 歪み呪いに果てた、御仏の如き姿の、ナニカ。

 

「あー。おい若造。どうせオマエの言う鬼は何か言い残して消えただろう。何を言った?」

「それは……」

 

 女房を攫い、二つ朝が来るまでに取り返しに来ないのなら、喰らってやると。

 

「クハッ! なるほどそうか。これは鬼退治……という奴な訳だ」

 

 顎に手を当て興味深そうにする宿儺は、極めて楽しそうに宣言する。

 

「味見だな。その鬼退治、俺がやるとしよう」

 

 ——世は平安。

 魔に連なる者が本当に実在し、人との境と溶け合うほど魔との距離が近かった時代。

 妖物魔物。魑魅魍魎が怪異として世に蔓延り、それを狩る剛力無双の武者達、神話の大英雄に届かんとす。

 人と魔。京の威光の中、互いに譲らずまた揺らがず。

 その戦乱、血華咲き誇る屍山血河の大勝負。

 この時代、血風吹き荒ぶ阿修羅道が如く也

 

 ——ならばやはり、それでもまだ、呪いは廻るか如何ざるか。

 

 新しい自分になりたいなら北へ。昔の自分に戻りたいなら南へ。

 最後の指を祀る御殿。即ち百葉箱は常に北を向く。

 だが。だが肝心要の指は——果たして何方を指差していた?

 

 六道輪廻。往生要集厭離穢土。

 どうせこの世は地獄なれば、五常に反す彼らに悟り無き。六道からの解脱など有り得ざる。

 是即ち、異説なるとは云え彼ら再び平安の世に舞い戻ったるは——運命か。

 

 呪いの王、両面宿儺。その従者、裏梅。 

 此度の平安では。

 果たして。

 




 
 続きません。


 だから後生です。
 一生のお願いです。
 誰か続きを書いてください。
 話の展開。キャラクターの相互関係。型月と呪術の世界観。その可能性。
 こんなものではない筈です。
 それを自ら生み出そうとしました。
 だがそれではダメなんだ。
 私から生まれるものは、私の可能性の域を出ない。
 答えはいつだって混沌の中で輝いているものだ。
 分かるかい? 私が創るべきは、私の手から離れた混沌だったんだ。
 既に。
 術式の抽出は済ませてある。

 !

 真人とかいう呪霊がいるだろう!! 魂に干渉出来る術式を持った奴!!
 ……さっきアイツが取り込んだけど。
 マジんがぁ〜〜!!? 


無為転変(むいてんぺん)


 この文章を読んでいる読者の脳に、遠隔で無為転変(むいてんぺん)を施した。
 君たちにはこれから、この小説の続きを書く為の作者になって貰う。


⚪︎鬼の頭領、酒呑童子
 型月世界に於いて、大江山の主は茨木童子であって酒呑童子はあくまで食客。
 ただ茨木が酒呑の在り方に惚れ込み、彼女に傅く形を敢えて取って自分たちの長として扱っていた、らしい。
 2部5.5章『地獄界曼荼羅平安京』では「ならばお前が酒呑に並ぶ鬼将になるのは今ではない。暫し先だ」と渡辺綱が茨木童子に向けて言い放ちつつも、頼光(らいこう)さんは「大江の首魁は茨木だと聞く」と言っている。平安組の認識でも、大江の首魁は茨木だけど鬼の頭領は酒呑だろうという認識なのかもしれない。

 どうでも良いかもしれませんが、酒呑童子に「ケヒッ」って言わせてみたくありませんか?
 

⚪︎時は寛和(かんわ)
 ちなみに元年。西暦に直すと985年。
 余談だが『大江山絵巻』によると、995年或いは990年に源頼光率いる頼光四天王と酒呑童子の争いが起こり、酒呑の首を切り落としたらしい(型月時空に於いて、酒呑童子の首を落としたのは坂田金時であり、源頼光(らいこう)が童子切安綱で首を落としたという逸話は後世で作られたもの)。
 時系列的には995年或いは990年以前から酒呑童子との確執はあったと考えるべきか。
 ただ2部5.5章『地獄界曼荼羅平安京』に於いて、英霊(カルデア)の坂田金時が、寛弘5年( 1 0 0 8 年 )の時点で大江の鬼退治はまだ起きていないと言っている。

 まぁこれを言い出すと、そもそも史実の記録と型月世界に於ける汎人類史の記録は違い、また英霊が話す過去と2部5.5章『地獄界曼荼羅平安京』での4つの出来事はそれぞれ微妙に異なっており、また判明していない事実も多い。
 型月世界では編纂事象による差異や、後世による習合をもいっぺんに記録する境界記録帯(ゴーストライナー)、そもそも英霊は『巻物・書物のようなもの』とする世界観なので当然だが、メタ的には個々人の解釈に敢えて幅を持たせているといった感じだろう。

 もっと自由に!! 広げろ!! 術式の解釈を!!

 ただ実際に生前の話を書くとなると英霊と生前の差異によるキャラクターの解釈違い&歴史考察もあって真面目に書くのはめちゃくちゃ難しい。
 正直こんな事言い出すと本当に収集が付かないのだが、型月平安時代は清和源氏大征器『大具足』という名の超巨大ロボット(ギリシャの神々を由来とする漂着物)と、それら三機と相打った(!?)正体不明の『鬼の外装』なる存在(八岐大蛇の亡骸?)があまりにもノイズとなる。しかもこれが汎人類史に起きた実際の記録。更にゴールデン・ヒュージ・ベアー号こと『摂津式大具足・熊野型』で北山蓮台野の大土蜘蛛を打ち取っている。どうしろと。
 作者が分かる範囲でも、この小説内には既に3つほど話の流れと整合性を優先したため型月時空で語られている範囲内に於いての描写的には相応しくないものがある。

 でもそれって一貫してないといけない事? 俺と夏油の術式では世界が違うんじゃない?
 術式は世界か……フフ……。いいね。素敵だ。
 

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