もし銀英伝オタクがパストーレに転生して、転生後数時間で死亡するRTAを回避する事は可能なのか?   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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もし銀英伝オタクがパストーレに転生して、転生後数時間で死亡するRTAを回避する事は可能なのか?『イゼルローン要塞篇』

アスターテの戦いから少し時が経った。

パストーレに転生した第二の仕事は第四艦隊の再編だった。新規建造、ないしは周辺の警備艦隊からの引き抜きで得られる艦艇と新兵を如何に養成するか…全く思案どころである。

 

アスターテの戦いで分かったことは第四艦隊の将兵は提督がそう評されるように百戦錬磨揃いという強みがあった。

その強みを浪費してしまったツケは大きい…だが新兵達を鍛え上げてくれる古参兵には事欠かない。

必ず精算してくれるだろうし、なんならお釣りも来るかも知れない…と楽観視していた所に訪問者が現れた。

 

副官「提督、キャゼルヌ少将とヤン少将がお見えになりました。」

 

パストーレ「うん…?何の用だろうね…通してくれ。」

 

通された二人は私の前で敬礼し、私もデスクから立ち上がり敬礼する。

ファンからすれば大興奮展開だが、今の私はパストーレなのだ、変な喋り方して彼らを不安にさせては行けない。

 

ヤン「今日はパストーレ提督にお願いをしに参ったのですが…どうなされたんですか?そのお顔は?」

 

キャゼルヌ「戦傷を負われたとは聞いていませんが…?」

 

私はギクッとした。

そう、実はアスターテの戦いの後、私にはある変化が起きていたのだが流石に超常現象過ぎて周りを驚かせてはならないとして、私は頭全体を包帯で覆っている。

 

パストーレ「うん、あ、ああ。実は家に帰った途端気が緩んでその日の夜階段から転んで顔中アザと切り傷塗れになってしまってな。」

 

アハハ…と苦し紛れな笑いをかましたが二人は苦笑していた。

 

キャゼルヌ「まさか慰霊祭に出たく無いが為にわざと転んだじゃ無いかと噂する兵士も居るという話ですが?」

 

パストーレ「ここだけの話出たくは無かったのは事実なんだが…まぁ流石に重症と判断され免除された時は儲けたと思ったよ。」

 

これは本当の話だ、なんでトリューニヒトのパフォーマンスに出なきゃならんのだ。

 

ヤン「奥様もびっくりなされたでしょうね、あんなに綺麗な美人の奥様を心配させるのは罪ですよ提督。」

 

パストーレ「20歳差の結婚だからな…娘はもう高校生になるしそろそろ思春期が怖い…。」

 

この発言にヤンとキャゼルヌが不思議な顔をした。

 

キャゼルヌ「あの失礼ですがパストーレ提督は今年40歳、奥様は今年36歳になるので、4歳差では…?」

 

パストーレ「ム?いかん、あの時頭を打ってから妙に記憶や認識が混濁していかんな…。」

 

これはまずい発言だったと同時に私の身に起きている超常現象の確信を得た。 

 

パストーレ「と、兎に角本題に入ろう。私に何の用かね?」

 

私は慌てて話を本題に戻した。

 

ヤン「実は先日私はイゼルローン要塞の攻略をシトレ元帥より仰せつかりまして、パストーレ中将が推薦為されたと聞いてその理由を教えて頂きたく参りました。」

 

パストーレ「ああ、成程。理由は単純だ。まずイゼルローンは外からは攻め落とせない、艦砲はまるで意味が無い。ミサイルの飽和攻撃は効果こそあったが敵の抵抗が凄まじく犠牲が大きくなる。シトレ閣下が以前実行された並行追撃は最悪主砲のトゥールハンマーで焼かれかねない。然も今の要塞司令官と艦隊司令官は実に仲が悪いと聞く。それこそなんの躊躇いも無く撃って来そうだ。となれば内側から落とすしか無いが言うは易し、私にはどうやって内側から落とせば良いのか分からん。だが君はあの戦争の天才と互角以上にやりあえた。そんな男が要塞を落とせない道理は無いと思ったわけだ。」

 

ヤン「買い被りすぎかと思いますが…?」

 

ヤンは頭を掻いて困り顔だ。

 

パストーレ「買い被りなものか、君のお陰で私達は生きているし、第二艦隊は僅かな損害を被っただけと聞く。病院でパエッタが君に感謝していたよ。」

 

私含め三人は軽く笑いながら話を終えた。

 

パストーレ「まぁこれが理由な訳だが、納得してもらったかな?」

 

ヤン「その件はそうですね、もう一つお願いがあるのですが宜しいですか?」

 

パストーレ「言ってみたまえ。」

 

ヤン「パストーレ提督の第四艦隊にもイゼルローン要塞攻略に参加して頂きたいのですが。」

 

突然のIF展開に私は飲んでいた紅茶を咳き込んだ。

イゼルローン要塞に第四艦隊が関わる?どうしてこうなった…!?ヤン艦隊だけの仕事になんでパストーレが関わるんだ…。

いやと言うより何をやらされるのだ、あの作戦は劇中でも大博打の互いだ、私には身が保たん。

 

キャゼルヌ「大丈夫ですか提督?」

 

パストーレ「あ、ああ。だが我が艦隊はやっと戦力の六割…一万五千に戦力を増やしてもらう予定だから9000隻集まった所でしかない。役に立つとは思えないがな?」

 

ヤン「難しいでしょうか?」

 

…即答は控えておこう。歴史をある程度修正した気持ちになっていたが明らかに変わっている。パストーレがどんどん表舞台に引き摺り出されてる気がしてならない。

 

パストーレ「少し考えさせてくれ…。」

 

私はヤンとキャゼルヌに帰ってもらう事にした。流石に驚きを隠せそうにない事や少し整理する時間が欲しかった。

 

キャゼルヌ「どうも乗り気じゃ無さそうだぞ?」

 

ヤン「困りましたね、あの人の才覚を見込んでお願いしたい所なんですが。」

 

キャゼルヌ「どうする他の提督にお願いするか?ビュコック提督とか?」

 

ヤン「同盟軍宿将中の宿将にこんなお願い出来ませんよ。…実は何としても参加してもらう秘策は考えているんですが…。」

 

キャゼルヌ「ほう、聞かせてもらおうか?」

 

ヤン「実は最近、パストーレ提督は…」

 

後にこの二人が退室直後そんな話をしてると聞いて驚いたが、この時の私はそんな事知りもせず、丁重にお断りする方法をひたすら考えていた。

 

だが…理性と本能は完全乖離していた。

 

行きたい!イゼルローンに‼︎‼︎と本能は叫び…。

 

ダメだ‼︎これ以上作品の歴史を狂わせてはいけない‼︎と理性は叫ぶ…。

 

私は包帯を取り、傍に控える副官に聞いた。

 

パストーレ「私の顔はおかしくないか?」

 

副官「いいえ、全く。傷もアザも無いのですからそろそろ包帯を取って偽装負傷はお辞めになっては?」

 

期待した答えは帰ってこなかった。

 

パストーレ「少し席を外すぞ、君もゆっくりしていてくれたまえ。」

 

副官「ハッ。」

 

私はトイレの鏡の前に立っていた。

 

そう私の身に起きた超常現象とは…見た目が若返っている事だった。

 

正式な年齢は記載されていないが見た目的に恐らく五十代と思っていたが、四十代だった上に顔のコケ具合が薄くなり、若々しくなっていた…端的に言うならモブ顔からサブキャラ顔に変わっていたのだ…そして誰もその事実に気がつかず…いやそもそも最初からその顔だったと言わんばかりの態度なのだ。

 

私は期せずして同盟軍イケオジ提督の仲間入りをしてしまったのだ…大方温泉カレンダーに私も入れられるのだろうな…。

 

まぁ前世より明らかにマシな顔になったのでそこは素直に神に感謝する事にしよう。

 

「パストーレをイケオジにしてどの層が喜ぶんだよ…」

 

夜になり、私は家に帰ると妻が待っていた。

 

まさか妻子持ちとは思わなかった…前世では結婚どころか恋愛すら夢のまた夢状態だったと言うのに…。

 

パストーレ夫人「お帰りなさい貴方。」

 

パストーレ「ただいま、娘は?」

 

パストーレ夫人「ジェニー!お父さんが帰って来たわよ。」

 

娘の名前はジェニファーというらしい…妻の名前をまだ聞き出せていない…夫婦仲が悪化する前にちゃんと把握しないとな…というよりまず自分のファーストネームが無いのが辛い所だ‼︎

 

娘、ジェニーはソファーに寄り掛かって、耳にイヤホンを挿し、端末をいじっている。

 

もう完璧な今時のJKである。

 

私は娘の前に立つと

 

パストーレ「ただいま。」

 

と挨拶するとジェニーも半ばうんざりした顔で「そ、おかえり。」

と素っ気なく返された。

 

これは完全に反抗期である。

 

娘どころか子供すら持ったことがないのにいきなり反抗期の子供の相手をさせられるとは一体どういう仕打ちだ…やっぱり神に感謝するのはやめよう。

 

夕食を食べていると、妻が話を切り出して来た。

 

パストーレ夫人「貴方、今回はハイネセンに長く止まれるのですか?」

 

パストーレ「…多分な。どうかしたのか?」

 

パストーレ夫人「折角だからテルヌーゼンにでも家族みんなで旅行なんてどうかしらと思って戦勝記念に。」

 

パストーレ「あれは戦勝とは言えないよ…だがそうだな。良いなテルヌーゼンなら近いしゆっくり出来る。後はジェニーが行けるかだな。」

 

ジェニー「別に…何もないけど。」

 

パストーレ「よし!決まりだ、土産は好きな物を買って良いぞジェニー。」

 

だがジェニーは相変わらず素っ気なく皿を台所で水に漬けるとサッサと部屋に帰ってしまった…

 

 

私は苦笑いをするしか無かった。

年頃の娘は難しいなぁ…。

 

それからもう少し時が経ち、第十三艦隊出動3日前に私は返答を出す事にした。

 

パストーレ「すまんが、やはり足手纏いにしかならない気がしてならない。すまないが断らせてくれ。」

 

ヤン「いえ、お忙しいのは承知でお願いしに参ったのはこちらです。寧ろちゃんとこちらに出向いて返答してくれるとは恐縮です。」

 

?「どうぞ。」

 

テーブルを挟んで話す私とヤンに紅茶を差し伸べるのは金髪の美女、フレデリカ・グリーンヒルだ。

 

本当に美人だ、こんな美人をギリギリまで手をつけなかったとはヤンは何と罪深い男か…だがこの世界線ではヤンが素直になるのが早まることを祈る…というより早まる可能性が高い、何せラップが生存している事があり、ヤンにとって自身が結婚して幸せになっていいのかという自責の念が少しは和らぐはずなのだ。

無事にラップとジェシカ・エドワーズの結婚式は行われた…何故か私も呼ばれたが。

 

流れていたテレビから聞き馴染みのある声が聞こえてきた。

 

?「今必要なのは平和なのです。戦争で多くの若い命が消え年寄りばかりが国に残っている!これが異常と言わず何だというのです‼︎」

 

パストーレ「まさかラップ夫人が議員に立候補するとはなぁ。」

 

ヤン「私もびっくりしました。ラップが半ば満身創痍で帰ってきたのが起爆剤になったみたいです。」

 

パストーレ「愛の力だな、このままこの国のトップにでもなってくれれば本当に和平がなり得るかも知れないな。」

 

ヤン「ええ、今の同盟政府の政治家たちより彼女の方が何倍もマシですよ。」

 

パストーレ「さて、私はお暇するよ。君らは忙しいし、私はこれから行くところがあってね。」

 

ヤン「鹵獲した敵艦を見て研究されてると聞きました。敵の戦術や艦の性能を隅々まで調べてるって結構噂になってますよ。」

 

パストーレ「参ったな…私はただ敵を知り、己を知れば百戦危うからずという諺を実行しているに過ぎないのだがな。」

 

私はそう言いながら会釈して部屋を出て行った。

 

フレデリカ「本当に良いんですか?」

 

ヤン「シトレ本部長からは許しを得ている、この作戦にはあの人が不可欠なんだ、出来ればこの方法は使いたく無かったが…。」

 

その頃私は鹵獲した帝国軍の巡洋艦を眺めていた。

 

メカオタクの前世も相まって私は童心に帰っていた。

 

パストーレ「いやー、こうしてみるとやっぱり帝国艦もカッケェなー!…おおっといかん。戦術研究に来たんだろう私は。さてブリッジに行ってデータベースを見てみるか。」

 

だがこれが私が銀河の歴史に巻き込まれる大一歩とは知らず、私は帝国艦の中に入って行った。

 

この時の私は正に「何も知らないパストーレ」だったのだ。

 

数時間程帝国軍の軍艦のブリッジでデータベースを漁ったり、操艦席や砲手席に座ったりして時間潰していると、私は急に眠気に襲われた。

 

パストーレ「ム…流石にここ数日の疲れが出たか…どうせ誰も来ないからこの司令席で少し一眠りするか…。」

 

何であの時急に眠気が来たのか疑問に思うべきだったと今にして思う。

 

今正に帝国軍の軍服を着た同盟最強部隊に囲まれている今この時に。 

 

?「予行演習とは行かないまでもちょっとしたシミュレーションにご協力頂きありがとうございますパストーレ中将。」

 

パストーレ「これはどういう事か説明してもらおうかワルター・フォン・シェーンコップ大佐!」

 

シェーンコップ「小官をご存知でしたか。」

 

パストーレ「同盟最強の陸戦部隊、薔薇の騎士ローゼンリッター連隊を知らない上級将校はおらんよ。…どうせこの茶番の裏を引いているのはヤン少将だろう。彼を出してくれ。」

 

スクリーンに直ぐにヤンの申し訳なさそうな顔が映し出された。

 

パストーレ「拉致とは感心しないなヤン少将!私が行っても邪魔なだけだろう!」

 

ヤン「大変申し訳ない、ですが貴方はそう思うかも知れませんが、私には貴方の力が必要なのです。」

 

パストーレ「第一これが軍本部に知れたら…」

 

ヤン「そこはご心配なく、すでにシトレ元帥から許可を得ております。そして第四艦隊も動員も済みです。」

 

「は?」

 

私は拍子抜けしたが、シェーンコップが右を見ろと合図をするので見てみると何と巡洋艦の隣を航行しているのは…見間違えようがない…レオニダスだった…。

 

どうやらシトレ本部長は「言い出したのは貴官なのだから当然責任を取るのだろうな?」という態度を見せられているようだ…。

 

私は最初から逃げられなかったようだ。

 

パストーレ「成る程軍そのものがグルならもう仕方がない。手伝おう…だが一つ、家族に連絡させてくれ。…明後日旅行の約束をしてしまったのだ…。突然第四艦隊が発進したと聞いて驚いているだろうからな。」

 

ヤン「これは…本当に申し訳ありません。」

 

パストーレ「無事に済んだら高級ウィスキー一本、ラムのボトル2本…奢って貰おう。」

 

私はレオニダスに戻ると待っていたのはグエン・バン・ヒューだった。

彼が私の代わりに臨時指揮官として第四艦隊を率いてくれていたそうだ。そしてこの作戦の間は分艦隊司令官として第四艦隊に居てくれる事になった。

グエン程の猛将に行軍中艦隊を鍛え上げて貰えば第四艦隊の練度は格段に上がるだろう。

突然連れ出した事へのシトレ本部長からの気遣いだろうか…兎も角私はグエンに挨拶し、グエンが自身の旗艦マウリヤに戻るのを見送ると家族に連絡を取った。

 

パストーレ「という訳なんだ。すまない折角の旅行を皆で行けると思ったんだが…二人で行ってきてくれ。」

 

パストーレ夫人「貴方お気をつけて…私達は大丈夫ですから。ジェニー、貴方もお父さんに挨拶をなさい。」

 

ジェニー「いい!」

 

パストーレ夫人「ジェニー…。」

 

ジェニー「めんどくさい!放っておいて‼︎」

 

パストーレ夫人「ごめんなさい、あの子ああ見えて旅行楽しみにしてたみたいなの…久しぶりにパパと過ごせるって。」

 

パストーレ「すまないがジェニーにも聞こえるように音量を上げてくれ。」

 

パストーレ「ジェニー、ごめんな。父さん必ず帰ってくるから。そしたら旅行へ行こう。約束だ。」

 

ジェニーは何も言わずにまた部屋へ帰ってしまった。

 

前世の父親の真似をしてみたがそもそも私が父親とこのような出来事を交わした事無いどころか反抗期も碌に起こした事がないので接し方がまるで分からなかった。

 

パストーレ「…では行ってくるよ。」

 

パストーレ夫人「行ってらっしゃいませ…。」

 

通信を切ると私は肩を落とした。

 

娘を持つとはこんなに大変なのかと転生前より十数年分強制的に歳を取らされ、その分の経験をさせられていると考えると地獄でしかない…。

 

副官「あの提督…こんな事言えた義理では有りませんが…お気を確かに。」

 

パストーレ「仕方ないよな…年頃だからな…。行軍中の練兵計画を立ててくれ。この時間を無駄にするなよ。…さてミラクルヤンは私に何をさせる気だ…?」

 

私の役目はイゼルローン回廊入り口付近、エル・ファシル星系に着いたところで明かされた。

 

パストーレ「我が第四艦隊が敵駐留艦隊を引き付ければ良いのだな。」

 

ヤン「そうです、通信妨害を掛けて要塞と通信艦隊の連絡を遮断します。ローゼンリッターの偽の救援要請で出動してくる敵駐留艦隊を引きつけてほしいのです。要塞奪取後は要塞と第四艦隊で駐留艦隊を挟み撃ちにするという寸法です。」

 

パストーレ「君らの艦隊はローゼンリッターがしくじった時に救援に迎えるように別宙域で待機すると…そちらの戦力の半分を加えてもらえるとあれば十分戦える。問題は要塞だな、ローゼンリッターの重責やいなや…成功してくれると良いが…君は成功すると信じているのだろう?」

 

ヤン「はい、この作戦は双方の信頼あってこその作戦ですので。」

 

パストーレ「なら私も信じよう、敵艦隊は任せておけ、精々引っ張り回してやるからな。」

 

艦隊はイゼルローン回廊に入り、要塞に進撃する。

ローゼンリッターを追う偽の攻撃艦隊とローゼンリッターを乗せた巡洋艦が進発するのと同時に我が第四艦隊も出撃した。

 

要塞からは既に敵駐留艦隊が出撃している。精々引っ張り回してやると言ったからにはやらねばならない。

 

兵士「敵艦隊、作戦位置αを通過しました。」

 

パストーレ「よし、敵に姿を見せてやれ。全艦が敵艦隊の前に出てきたら主砲斉射だ。」

 

副官「有効射程外ですが、よろしいのですか?」

 

パストーレ「良いさ、ご挨拶だ。要塞防衛艦隊司令官ゼークト大将へのな。精々派手に名乗りあげよう。ファイヤー‼︎」

 

第四艦隊の一斉射はゼークト艦隊に迫るがほぼ全ての攻撃が防がれた。

だが挨拶としては十分だ。

ゼークト艦隊は速力を上げて迫る。

ゼークト艦隊がお返しに砲撃を開始した。

有効射程からの砲撃だ、防がなければ痛い目を見る。

 

だが第四艦隊はアスターテ以降守勢に強い艦隊に生まれ変わった、今回は対等の戦いだしっかり防いでいく。

 

そして今回は何より…

 

パストーレ「グエン艦隊に圧縮通信。」

 

副官「用意出来ました。」

 

パストーレ「守りは私に任せて貰おう、反撃は貴官の部隊に任せる。敵をこの場から進むも引くも出来なくしてやれ。以上、送れ。」

 

グエン艦隊は第四艦隊の防壁越しに砲火を集中し、ゼークト艦隊を攻撃する。

 

鉾となるグエン艦隊と盾となる第四艦隊の連携作戦だ。

 

ゼークトは猛射を受けながらも突進してくる。

 

だが第四艦隊は碌に損害を受けていないばかりか、敵が進むに合わせて後退していくので、ゼークトは有効打をパストーレに与えられずにいた。

 

パストーレ「ここで艦隊を壊滅させる必要はない、全艦無理はするなよ。」

 

数時間程この泥試合を興じている間私は持参した日本酒(まさかあるとは思わなかった)と漬物を齧りながら指揮を取っていた。

単調な仕事だが、こちらは被害が出ないように防御に集中している。

ゼークトは自身の艦隊の損害が少しずつ増えているのに対して第四艦隊が全く損害が増えない事に苛立ちを募らせている頃だろう。

 

パストーレ「そろそろかな…。」

 

兵士「提督‼︎通信が回復しました!イゼルローン要塞より通信!同盟軍はイゼルローンを奪取せり‼︎」

 

艦橋は歓呼の叫びで包まれた。

 

兵士「敵艦隊転進!要塞方面に向かっています‼︎」

 

パストーレ「よし、諸君。逃げ首は恥だがやられたらやり返さねばな、追撃開始!だが勢いよく追うなよ今の所無傷なんだ、無血勝利を台無しにしたくない節操を持てよ!」

 

第四艦隊は慎ましく、されどありったけの火力をゼークト艦隊に浴びせた。

 

特に第四艦隊の面々はアスターテからの鬱憤が溜まってたのか一部戦隊はグエン艦隊より苛烈に砲撃をしていた始末だ。

だが艦隊各艦はパストーレの命令を守り、突出するような真似はせず足並みを揃えていた。

 

「史実より明らかにゼークト艦隊の被害が凄まじい事になってるな…オーベルシュタインが今頃要塞を捨てて後退すべきと進言してるだろうが、ゼークトは取り合わんよ。」

 

と心中こう語ったところで要塞の射程に近づいた。

 

パストーレ「全艦停止、その上で散開しろ。要塞主砲に巻き込まれたくなかったらな。」

 

兵士「イゼルローンのヤン少将が敵艦隊に降伏か逃げる様通達した様です。」

 

パストーレ「多分敵は逃げないだろうな…。」

 

兵士「敵艦隊要塞に突進開始。」

 

パストーレ「言わんこっちゃない。」

 

副官「要塞主砲発射準備に掛かったようです。」

 

パストーレ「このまま射程圏外で待機、花火を見せてもらうとしよう。」

 

要塞主砲トゥール・ハンマーは敵の左翼を掠めた、これだけでも百から千隻近く沈んでいる。

 

そして再度放たれた要塞主砲は敵艦隊旗艦とその周辺にいた哀れな艦艇達を飲み込んだ。

 

兵士「敵艦隊退却していきます。」

 

パストーレ「終わったな。我々もイゼルローンに入城させて貰おう。宇宙一高くついた御婦人のドレスの中身を覗きにいくとしようか。」

 

fin




ご好評頂き、続編を作らせていただきました!
ノイサガでの何気ないやり取りから生まれたこの作品が愛される事は作者としても史上の喜びです。
ところでノイサガオリジナル艦艇とか出したら怒られますかね…特に砲艦と重装甲艦出したいんですけど…ダメですかね…?
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