もし銀英伝オタクがパストーレに転生して、転生後数時間で死亡するRTAを回避する事は可能なのか? 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
内乱が終わって暫く経った。
帝国ではブラウンシュヴァイク、リッテンハイム、リヒテンラーデら門閥貴族が一掃され、ミュッケンベルガー以下帝国三長官もフリードリヒ四世崩御時に引退している…名実ともに対抗しえる者が居なくなったラインハルト・フォン・ローエングラムはリヒテンラーデに変わり帝国宰相になった。
新体制による政治改革は凄まじい速度で進んでおり、帝国の民衆はローエングラム体制に少しずつ迎合して行っている様だ。
だが先の焦土作戦やヴェスターラント核攻撃が響いているのかローエングラム体制に対して反発する帝国民も多いらしい…。
だがこう言った者らも、寄るべきものが無いので遅かれ早かれ以前より明らかな良政を敷くローエングラム体制に飲み込まれていくだろう。
一方の我が同盟は政治関連に関しては混沌を極めていた。
主戦派、和平派の争いは激しくなる一方であり、先の内乱で和平派が勢いを増すかと思えば、トリューニヒトのパフォーマンスで哀れなヤンは英雄に祭り上げられた事で民衆支持は主戦派に傾きつつあり、文民の諍いは処構わず根深くなって行った。
一方の軍部も決して無傷とは言えなかった。
統合作戦本部長クブルスリー大将は先の暗殺未遂の怪我が重く軍務に耐えれなくなり、引退することになってしまった。
本部長の後任は正式にボロディンが務めるとは言え、空席の第一艦隊司令官と第十一艦隊司令官の後任も決めねばならなかった。
各提督の協議により、第一艦隊司令官にはビュコックと同じく士官学校は出ていないものの実績と経験が確かなラルフ・カールセン中将が当てられ、第十一艦隊にはヤン艦隊よりフィッシャーが少将から中将に昇進され、これに任ぜられた。
これに従って第十一艦隊もイゼルローン方面軍所属になり、ヤンは自身とウランフ、ラップ、そしてフィッシャーの四個艦隊を率いる身となった。
フィッシャーの後任はヒューベリオン艦長だったマリノ准将が少将に昇進し、迎えられた。
そして第一艦隊はパストーレの強い希望でフェザーン方面軍所属になりハイネセンから、ガンダルヴァに移ってきた。
これによりハイネセン方面に第二、第三、第五、第九、第十二艦隊が、イゼルローン方面に第六、第十、第十一、第十三艦隊が、そしてフェザーン方面には第一、第四、第七、第八艦隊が展開し、同盟領各地に駐屯していた。
そして、一つ大きな事件があった…。
それは帝国の名将、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将が亡命してきたのだ。
同盟軍部はこれには大喜びで迎え入れ、ヤン艦隊の客員提督として中将待遇で迎え入れられた。
そしてガンダルヴァ星系では、ラルフ・カールセン中将がパストーレ大将に挨拶をしようと司令部を訪れていた。
カールセン「ラルフ・カールセン中将であります。」
パストーレ「パストーレ大将だ。よく来てくれたカールセン提督。貴方の様な猛将に来て頂けるとは光栄だ。」
カールセン「ワシは士官学校を出ておりませんのでエリートさん方から疎まれやしないかと思っておりますよ。こんな老骨で宜しければ幾らでもお役に立ちましょう。」
パストーレ「今にそのエリートさん方が何も言えなくなる。早速だが、我が方面軍は大規模練兵計画を立案していて、実行は間近。第一艦隊にも参加してもらう。第一、第四対第七、第八艦隊の大規模模擬戦だ。双方の艦隊に各フェザーン方面星系辺境艦隊が付くので双方推定四万五千、総勢九万の大規模演習になる。」
カールセン「これはまた豪勢ですな。」
パストーレ「猛将の腕前、見せて頂こう。」
結論から言うとこの演習は大成功だった。
私が兼ねてから考えていた矛と盾の戦術は完成し、敵役になったホーウッド、アップルトンもかくやと言わんばかりだった。
実戦になれば盾の第四艦隊、矛の第一艦隊、両脇を支え、攻守双方に対応する第七、第八艦隊の連携は、良く効くだろう。
だがこの演習を快く思わない人間が居たらしい…。
帰還した私達四人の提督はレオニダスの食堂で一杯やっていた、そこにハイネセンから通信が入った。
ホーウッド「ハイネセンから?」
パストーレ「大方ビュコック長官かボロディン本部長が演習の首尾を聞きに送ったんだろう。パストーレ軍曹、相手は誰だね?」
ジェニー「はい、えっと…え?最高評議会議長付警護室からです。」
パストーレ「トリューニヒトの取り巻き?何の用だ…?」
アップルトン「最高議長が我々に対して何かしらの労いでもしてくれるのか?」
カールセン「どうだかのぉ…。」
パストーレ「はい。こちら第四艦隊。」
ベイ「最高評議会議長付警護室長ベイ准将です。」
パストーレ「議長のお守りが何の用だ准将。我がフェザーン方面軍は半ば実戦に近い大規模な演習を終えたばかりで疲れているんだ。手短に頼むぞ。」
ベイ「では手短に、パストーレ大将。貴方には国家反逆の嫌疑が掛けられました至急ハイネセンにお越し頂きたい。」
パストーレ「叛逆?何のことだ?」
ベイ「貴方のいうその大規模演習は政府の認可を受けておりません。」
パストーレ「何故認可が降りておらん?これは宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部部長両人の承認を得た正式な物だぞ⁉︎ビュコック長官かボロディン本部長を出せ、聞けば分かる。」
ベイ「弁解は査問会でして頂きます。では。」
パストーレ「おい、待て‼︎」
一方的に通信は切られた。
そして時置かずして査問会という同盟憲章の何処にも存在しない権限による召喚状が送られてきたのだ。
ホーウッド「査問会だと⁉︎そんな物何処にある‼︎」
アップルトン「これは明らかに異常だ…!」
カールセン「かなりきな臭くなってきおったな。」
ジェニー「閣下…。」
パストーレ「仕方がない行ってくる。丁度レオニダスも機関不調があって修理が必要だ。どうせ修理するならガンダルヴァで整備中の宇宙港よりハイネセンの宇宙港の方が本格的に修理出来るだろうさ。それとこの召喚状には他言無用と書いてある。他の提督や兵士には伝えるなということの様だ…。全く小賢しい。」
アップルトン「閣下…。」
パストーレ「アップルトン中将、フェザーン方面軍臨時司令官を貴官にお願いしたい。留守を守ってくれ、その他二名は補佐。」
三提督「ハッ!」
パストーレ「パストーレ軍曹も一緒に来い、今副官は病気療養中(演習前に腸捻転を起こした)で代わりに色々やって貰わねばならんからな、やれる範囲でだが。」
ジェニー「ハッ!」
こうしてパストーレは旗艦レオニダスと護衛の為に随伴する駆逐艦、巡洋艦併せて二十隻の小部隊でハイネセンに向かった。
表向きは機関不調のレオニダスを治す為と演習の成果報告の為という事になっているが、フェザーン方面軍の将兵達は違和感を感じずには居られなかったという。
旗艦レオニダスを見送る為に留守を預かる三提督がそれぞれの旗艦で見送りに出るなど明らかに過剰な行為が将兵達に一つの確信を植えつけた。
自分達の大将は何か別の理由で呼ばれたんだと。
さてレオニダス艦内のパストーレは正に不快感を隠そうと必死になっていた。
パストーレ(何で私が査問会に呼ばれるんだよ!ひょっとして査問会の矛先がヤンから私になったのか?いやそれならそれで良いのだが…いくら何でもこじつけにも程があるだろ!)
かくしてパストーレ一行はハイネセンに到着し、レオニダスはドック入りした。
宇宙港に着いた私達を待っていたのは黒塗りの公用車の乗ったイタチ(ベイ)野郎だ。
ベイ「パストーレ大将はこちらの車に乗っていただきます。」
パストーレ「行き先は統合作戦本部では…無さそうだな。行くぞ軍曹。」
ジェニーは車に乗ろうとすると止められた。
パストーレ「ッ⁉︎何をする、彼女は私の娘で副官代行だ。彼女には同伴する義務と権利がある。」
ベイ「パストーレ閣下お一人を連れてくる様に命令を受けておりますので、例外は許されません。」
パストーレ「私の娘はまだ未成年だぞ、一人で宇宙港に残すなど出来るか!」
ジェニー「閣下、私は大丈夫ですので。今はベイ閣下に従ってください。」
私は娘にこれ以上迷惑を掛けられないと悟り、一旦車を降り娘を抱き寄せた。
パストーレ「すまんな。」
ジェニー「行ってらっしゃい。」
パストーレ「お前の預金口座に一月はそこそこのホテルに滞在できるぐらい訳ない程度に金を入れておいた。当面の生活費にしてくれ。私が戻るまで友達と過ごしたりなんだりしていてくれ。母さんには父さんは急な仕事でハイネセンに居て自分は留守番をしていると言っておいてくれ」
ジェニー「うん、分かった。」
宇宙港の喧騒の隙を狙い、私は今後の事を娘に耳元で囁き伝えた。
パストーレ(それと、もう一つ。ガンダルヴァにいる母さんには小遣いを頼る以外何も伝えるな。下手をすれば危害が及ぶかも知れない。そして隙を見て大人に頼るんだ。活路を見出してくれ。)
ジェニー(どうやって…?)
パストーレ(何とか統合作戦本部ビルへ。尾行されると思うが何とか向かってくれ。そこでビュコック閣下かボロディン閣下に会ってこの事を伝えるんだ。)
ベイ「もう宜しいか?」
パストーレ「ああ、行こう。」
一行はジェニー一人残し去っていった。
その後、ジェニーは宇宙港のカフェに居た。
手元の端末で調べていたのは同盟憲章だ。
ジェニー「やっぱり…査問会なんて無いじゃん。パパはありもしない査問会に呼ばれたって事はもう拉致じゃん。…統合作戦本部ビルへ行こう。直接向かうんじゃダメだ、学生時代の寄り道したマーケット街とかを挟んで向かおう。尾行されてるならマジだるいし…。」
ジェニーは学生時代の遊び場を幾つか経由してそれなりの遠回りをしながら統合作戦本部ビルに着いた。
尾行されているのか、されていないのか、正直分からなかったが、それでも念には念を入れた。
ジェニー「ここまで来たけど…どうやって会えば…。」
?「ジェニー?」
名を呼ばれ振り返った先には、フレデリカ・グリーンヒル大尉と黒い肌の若い大男がいた。
フレデリカ「どうしたの?こんな所で。」
ジェニー「グリーンヒル大尉…。」
ジェニーは咄嗟にフレデリカに抱きついた。
信頼出来そうな大人に会えた事でジェニーは安堵の涙を浮かべた。
ジェニーはフレデリカに自身の父に起きた事を話した。
そしてフレデリカと大男、ルイ・マシュンゴ准尉からも何故自分達がここに居るのかを聞いた。
ジェニー「じゃあヤン提督も査問会に⁉︎」
フレデリカ「ええ、ベイ准将に面会を要請したんだけど、門前払いを受けたの。だからこれからビュコック閣下を頼ろうと思ってきたの。ジェニー、貴女も一緒に行きましょう。お父様を救えるのはビュコック閣下とボロディン閣下だけよ。」
ジェニー「はい!」
三人は地下駐車場でビュコックないしはボロディンを待ったが、そこに思わぬ襲撃者が現れた。
憂国騎士団だった。
マシュンゴは二人を後ろに下がらせ、大立ち回りを演じるが他勢に無勢、組み伏せられてしまう。
フレデリカはジェニーを庇う様に立ち塞がった所でエレベーターが開き、中からビュコックとその幕僚達が現れた。
ビュコック「何をしている‼︎」
憂国騎士団は退散した。
負傷したマシュンゴはファイフェル少佐らに助け起こされ、二人は保護された。
そして憂国騎士団の残したマスクには一つの文言が残されていた。
「地球こそ我らが母、地球を再び我が手に…」
……
フレデリカとジェニーの話を聞いたビュコックは驚愕の二文字だったが、現在の軍部の実情をビュコックが話すと今度は二人が驚愕した。
昨年のクーデターにより軍部、とりわけ実戦部隊の信用は失墜し、政治家達が自分の都合の良いように動く人間を軍中枢に送り込んできたのだという。
そのせいで軍のトップであるビュコック、ボロディンの二人もまるで立つ瀬がないのだという。
正規艦隊が三分の一が封印され、宇宙艦隊司令長官、統合作戦本部長二人とも虜囚、他の艦隊も他星系の鎮圧のため碌にハイネセンに近づけなかったのだから…確かにしょうがないのかも知れないが…。
フレデリカ「なんと申し上げたらよいか……。そこまでお困りとは存じ上げておりませんでした。」
ビュコック「何、別に困ってはおらんよ。忌々しいだけじゃ、ごそごぞとうるさくてな。実はこの部屋にも九割以上の確率で盗聴器が仕掛けられてある。それを承知でこんな話をしたのはな、今更旗色をごまかすこともできんし、盗聴の記録自体は証拠能力はないからだ。逆にこちらが人権侵害で訴える材料にもなる。政府に同盟憲章を遵守するつもりがあればの話じゃがな。」
フレデリカ「政府は民主主義の建前を公然と踏みにじることはできませんわ。いざというときに武器に使えると思います。」
ビュコック「聡明をもって鳴る大尉にそう言ってもらえると心強い。
ところで肝心のヤンとパストーレの件じゃが、事情がわかった以上、わしもできるだけ協力をさせてもらう。」
フレデリカ「でも、ご迷惑ではないでしょうか……。」
ビュコック「訪ねてきておいて今更そんなことを気にせんでも良い。それにわしもあの若いの…一人はもう若くも無いがな、ともかくあの二人が好きだしな。おお!このことを本人達に言ってはいかんぞ?後者は兎も角、若い者はすぐいい気になるからな。」
フレデリカ「本当に感謝します。お人柄に甘えて申し上げますと私もビュコック閣下が好きですわ。」
ビュコック「ほぉ、是非家内に聞かせてやりたいな。そうじゃ、ことが片付くまで家に泊まるといい。今日のようなことがあるといかん。」
フレデリカ「はい、ありがとうございます。でも、どうしてここに来るとわかったのか……。」
ビュコック「尾行はされておらんだろうな?」
マシュンゴ「確証はありませんが、怪しげな地上車を1台ならず見ました。尾行だとしたら途中で交代したのだと思われます。」
ジェニー「私は…分かりません。でも父が尾行の可能性があると私には忠告を残していきましたので注意はしたつもりですが…。」
ビュコック「やはりな、ベイのゴキブリ野郎のやりそうなことだ!大尉、これが民主主義の総本山の現状じゃ。まだ雨が降り出しておらんが、雲の厚さたるや大変なものだし、加速度的に悪くなっておるようじゃ。この天気、回復させるのは容易なことではないぞ?」
フレデリカ「はい、覚悟はできております。」
ビュコック「よろしい!わしらは仲間というわけじゃ。世代は違ってもな。」
その頃、パストーレの査問会が始まっていた。
ネグロポンティ「それでは査問会を始める。私は。」
パストーレ「ネグロポンティ国防委員長殿、存じておりますとも。何の御用です?初めに申し上げておきますが私には後ろめたいことなど有りませんぞ。軍部の正式な認可を取った演習であった事は重ねて申し上げます。」
ネグロポンティ「分かっておる。今その仔細も確認しておる。」
パストーレ(仔細も確認せず呼んだのか?酷い話だな。)
ネグロポンティ「だが、君には疑わしい事がいくつかあるのも事実なのだ。」
パストーレ「聞かせてもらいましょう。」
ネグロポンティ「聞かせてもらいましょう?聞くのはこちらだ!」
パストーレ「私には身に覚えが無いのです。何故呼ばれたか教えて頂かない事には返す言葉がありませんが?」
ネグロポンティ「では先ず何故今回の大規模演習を実施したのか聞かせて貰おう。」
パストーレ「帝国軍の大規模逆襲に備えた演習です。内乱が治まった今、いつ攻めて来るか分かりませんので。」
ネグロポンティ「だからと言って九万隻も動員する必要があったのかね?その半分でも良かったと思うが。」
パストーレ「予算的なお話をなさりたいなら確かに高くついたのは間違いありません。ですが我が軍の主敵である帝国軍が大兵を持って攻め込んでくるのは必定、よって大規模戦闘を念頭に入れた演習行う必要があった事や、新兵訓練の為に実戦的な演習を行う、つまりスパルタ訓練を実施する事で早期的に戦力育成を目的にしておりますので、全艦隊で行う必要があったのです。」
ネグロポンティ「そもそも貴官らフェザーン方面軍は何のために居るのかね?設立時フェザーン方面からの敵の侵攻に対抗する為とあるが帝国軍がフェザーン回廊を通る事などあり得ないだろう。私は反対したが軍部は強行した、強行の裏には武勲を建てた貴官が圧力を掛けたという話もある。」
パストーレ「先ず前者に関しては、何故敵がわざわざ凄まじい流血をする羽目になるイゼルローン回廊を必ず通る必要があるとお考えなのか理解に苦しみますな。敵はイゼルローン等無視してフェザーンを占領、支配すれば、国力、経済、そして戦略的にも優位に立てる。ローエングラム侯がそれを理解出来ない人物ではありません。必ずフェザーンからやってきます。その為の備えです。後者に至っては根も葉もない与太話ですな。寧ろ私はこの役職に就いて迷惑しているのです。碌な才覚のない私が大将になって一軍を率いるなど大それた事。」
?「だが貴官はその職責を果たしている。それも全将兵の心を掴むほどにな。」
私は口を挟んだ男を見る。
オリベイラ「失礼、私はハイネセン自由国立中央大学学長のオリベイラだ。」
パストーレ「学者先生がこの様な場にいるとは驚きましたな。」
オリベイラ「君は将兵達の心を掴む程総司令官としての責務と職責に熱い男と私は思っているがね?」
パストーレ「お褒め頂き光栄だ。」
オリベイラ「だが故にフェザーン方面軍を君の私兵の如く扱っている状況は看過できぬのだよ。」
パストーレ「いつから彼らが私の私兵になったと?」
オリベイラ「昨年の反乱の際、君は離反した一万五千隻の将兵達を何の罪にも問わず独断で原隊復帰させたな。本来ならば政府なり軍本部に伺いを立てるべきだろう?そもそも彼らは国家に背いた裏切り者だ、本来なら生きていることすら烏滸がましい連中をどうして君は赦せるのかね。」
パストーレ「なるほど、では学長先生には決して理解できぬ理念を交えて説明させていただくなら、先ず第一に伺いを立てるべき政府は機能せず軍本部も同様となればフェザーン方面軍の全権は私にあります、私は船乗りです。同じ船、同じ釜の飯を食う戦友を見捨てる事など出来ません。よって被害を最小に抑え、彼らの反抗能力を、完膚なきまでまでに崩したのです。ましてや彼らが何を想って起ったのかを思えば彼らを撃つことは出来ませんでした。」
ネグロポンティ「何を想って起ったというのだね。」
パストーレの、私の堪忍袋はここで切れた。
パストーレ「彼らは純粋に国の為を想って起った以外ありましょうか‼︎手段を間違え、その実はローエングラム侯の策だったとしても、今の同盟が酷い有様である事は末端の兵でも理解出来た事だからです。選挙に勝つ為に我々を敵地に送り込み、略奪行為を働かせんとし、挙句捨て石の如く消耗させられた将兵達が貴方方に対して怒りの一つや二つを覚えぬとどうして言えるのか!被害を最小限に我が軍は後退に成功しましたが、この何の利益もない出兵を繰り返せばどうなるか、兵達は理解出来ぬ訳がない、彼らは無能な政府の元で戦い続ける危険に気がついた事に他ならない。」
ネグロポンティ「貴様は同盟政府を愚弄するのか!!」
パストーレ「私は政治的信条は置いておいても国家と民主主義には忠誠を誓っております、が現政権、少なくとも与党を支持した覚えはありません。これは私の政治的主張であり、貴方方が犯し得ない権利と心得ておりますが?」
査問会メンバー、やっぱり居たホアン・ルイ以外は顔に血が上り(ホアン・ルイは腹抱えて笑い転げるのを必死に堪えて変な汗をかいている。)、対する私はヘラヘラ笑っているが眉間に青筋が立っているのは自分でも分かった。
もし査問者と非査問者の間を段差で区切ってなければ一対多数で殴り合いをしかねない状況だったろう。
一旦この場はお開きとなったが、パストーレが連れてこられたのは何ともまぁ殺風景な部屋だ。まだ一つにベットと壁に備え付けのテーブル一つ。
テレビなりホログラムもない。
まさに劇中でヤンが放り込まれた部屋のまんまだった。
今頃ヤンも同じ目に遭っているのか、遭っていないのか…もし後者ならこの後起こる…であろう戦いは何の心配も要らないのだが…もし劇中通りなら…きっと今頃イゼルローンは…。
今ここで気にしても仕方がない。
少なくともヤンが出て行く事が出来れば同盟は安全なのだから、自分は政治家どもと口喧嘩していれば良いだけだ。
只管論いあの連中の血管に負荷を掛け続けてやろう。
と意地の悪いことを考えたものだ。暫くして複数人が歩く足音が聞こえたので、そっと扉に耳を寄せるとどうやら自分の部屋に向かっている足音ではないようだ。
パストーレ(これは…やはりヤンも査問会に…)
こうなると余計イゼルローンが心配だ。
同盟にも変化があったように帝国にも何かしらの変化があってもおかしくないのだ。これだけ同盟の戦力が残っているのだ、それこそイゼルローンに禿鷲と大艦隊が迫って来ていてもおかしくない。
対する同盟もイゼルローンに大艦隊を駐屯させているとはいえ、とんでもない消耗戦になったら…その時は地獄である。
さて暫くの間、査問会連中のパストーレいびりは続いた。
極端に言えばネチネチと細かい事を詰められ、それをパストーレが皮肉混じりに正論で回答するという実に醜い応酬だった。
後世の歴史家はパストーレもパストーレであると彼を非難しており、自分の置かれた現状を理解していなかったのだろうか、ネグロポンティ以下ホアン・ルイを除く全ての査問会メンバーを侮辱、論った所為で置かれた状況は同じ時と場所で査問を受けていたヤンより酷いものになっていたと満場一致の回答が返って来たほどであったという…。
査問会の酷い有様の一方、ヤンとパストーレを救い出そうとしていたフレデリカ一行は更にレベロ議員の協力を仰ぎに会いに行っていたが、そこで聞いたのは更に酷い同盟の政治事情だった。
レベロは査問会の事をマスコミに流しても決して取り扱わないと説明したのだ。
理由はこうだ。
妊娠が発覚し、一時的に政治の現場から離れたジェシカ・エドワーズ・ラップ不在の和平派はトリューニヒトに対する決定打を欠き、政治世論は少しずつトリューニヒトに傾いていた。
業を煮やした民衆は同盟国内の政治家や高官の子弟が前線に送り出されていない事への抗議をマスコミに流したが何処も相手をせず、更には抗議デモを起こしたが、突如現れた憂国騎士団に徹底的に暴行を振るわれ、挙句警察もこれらに対して何もせず逆にデモ隊を騒乱罪で逮捕してしまったのだという。
そして後日のマスコミの報道はデモ隊同士の内輪揉めと発表したのだ。
フレデリカは自身の甘さを自覚し、ジェニーは祖国に起きているこの状況に恐怖した。
レベロ「兎も角このままにしておく訳には行かない。その為にはヤン提督とパストーレ提督を解放せんとな。私も心当たりを当たろう。」
その頃…遠く離れてフェザーンでは…。
ケッセルリンク「同盟ではヤン提督とパストーレ提督の両名が査問会に掛けられたそうです。」
ルビンスキー「そうか、帝国は?」
ケッセルリンク「予想通りに、大兵力でイゼルローンへ、もう直開戦するかと。」
ルビンスキー「宜しい、同盟には少しでも傷を負ってもらわんとな。」
ケッセルリンク「然し、ランデスヘル(自治領主)閣下、今回の件はヤン提督のみでも良かったのでは?何故パストーレ提督を査問に掛ける様に同盟に働きかけたのですか?」
ルビンスキー「ああ、あれはな、謂わば…備え、いやオマケだよ。」
ケッセルリンク「オマケ?」
ルビンスキー「パストーレという男は艦隊司令官になるくらいだ、有能なのは確かだろう。だがそれ以降は鳴かず飛ばずの男、その程度の男でしかないと誰もが思っただろう。だが奴はアスターテで急に勇躍した。挙句アムリッツァでは同盟全軍を救った。当初は帝国をあまり勝たせ過ぎず、同盟を負けさせ過ぎない、良い道具になるかと思ったが、あの男の存在はヤンと同等に危険なものになった。奴は帝国に対しての天敵になる素質すら孕み出した。最悪、ヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムが一対一で戦う環境が出来た時、帝国の諸将はパストーレに阻まれ、ヤンがラインハルトを討つやもしれぬ状況を作り出すほどにな。そして意義はあった。」
ルビンスキーはスクリーンを映し出すと主席補佐官ケッセルリンクに見せた。
ケッセルリンク「ッ⁉︎これは…!」
ルビンスキー「パストーレの旗艦がハイネセンでオーバーホールを受けている。そのオーバーホール中に我がフェザーンが送り込んだ工作員が盗み出した情報だ…同盟軍によるフェザーン攻略作戦。その全容が書かれている。」
ケッセルリンク「フェザーン方面軍を中心となった十万隻前後の艦隊でフェザーン回廊を完全に同盟の制御化に起き、帝国を圧迫する…?これを持って帝国との和平を交渉するものとする…。バカな!我がフェザーンは同盟に多大な投資を行っています!同盟政府が飲む筈が有りません!」
ルビンスキー「確かにそうだ、現政権ならな。だが今は勢いを失っているが、和平派は粘り強く耐えている。実のところトリューニヒトの独裁は砂上の楼閣なのだ。もし同盟政府の政権が和平派になれば事は不可能では無くなる。同盟は帝国への入り口を二つも確保することになり、我がフェザーンの国力と経済力を手中に収めれば帝国に対して圧倒的に優位に立つことも出来る。そうなれば帝国も徹底抗戦を諦める可能性は大いにある。和平派は帝国の存在そのものはどうでも良いからな。戦争の早期終結、その為なら事実上中立国の我々を滅ぼす事も厭わんだろう。それ程奴らは必死だ。」
ケッセルリンク「なら、何かしら手を打たれた方が。」
ルビンスキー「手は打ったさ、この計画書は査問会にも流す様手筈を整えてある。」
さて査問会の方に話を戻そう。
パストーレは査問会のメンバーが苛立ちを隠せずにいる事に気がついた。
パストーレ(大方ヤンに正論で返され心中穏やかじゃないんだな、その上私がこんな態度だから奴さん本心キレ散らかしたいってところか?)
パストーレは面白くなって来たのか、実に不遜な態度を精一杯作って席に座ったものだ。
ネグロポンティ「パストーレ大将、君の艦を調べさせてもらったぞ!」
パストーレ「我がレオニダスが何か?まぁそろそろ老朽艦の類に入りますので色々古臭いのは認めますが良い船ですよ?」
ネグロポンティ「そういう話をしているのではない。問題は君の執務室の中にあったデータだ!」
これには私も閉口した。
思い当たる節があるからだ。
だが妄想の産物の域を出ないし、まだ誰にも見せていない。
ネグロポンティ「フェザーン侵攻作戦計画とは一体どういうことか説明してもらおう!」
パストーレ「お言葉ですが国防委員長殿。これはあくまで私の脳内の妄想の産物が具現化しただけの存在で、正規の作戦立案書では有りませんし、何ならこれは私物に当たりますので、あなた方は私のプライバシーを侵害したと見て宜しいのかな?」
ネグロポンティ「中立国の攻撃計画を立てておいてプライバシーもクソもあるか!!」
パストーレ「棚に上げないでいただきたい!」
ネグロポンティ「我が同盟にも多大な投資をしている商業パートナーに対してなんたる不遜な考えか、恥を知れ!」
パストーレ「逆に目を覚まされては如何か?フェザーンは同盟に投資している様に帝国にも多大な投資を行っています。謂わば両国の経済を握っているのです。その気になれば銀河系のパワーバランスを意のままに操れる程度に。果たしてそれが中立国でしょうか?商業的パートナーと言えるでしょうか?むしろ危険な存在としか私には思えません。それに年々同盟はフェザーンへの経済依存が強く、彼の国の我が国に対する影響力も大きくなっています。自主、独立の理念に則ればこれは決して良い状況とは言えません。産業、そして政財界に影響を及ぼす危険分子と私は判断する他ありません。」
ネグロポンティ「それこそ貴様の妄言に過ぎん!」
パストーレ「計画書は妄想の産物ですが、この事態は妄想ではなく現実のものです。それとも…あなた方は彼らが居ないと困る事でもあるのですか?フェザーンが居なくなれば同盟の借金も消えて、経済的利益を独占できますのに。ひょっとしてあなた方はフェザーンから賄賂でも…」
ネグロポンティ「被査問者を摘み出せ!!」
パストーレ「いっそここから摘み出して頂きたい。」
ネグロポンティ「部屋に厳重に閉じ込めておけ!査問会は延長されるものと覚悟しておくのだな。」
パストーレは査問室から摘み出された。
委員会メンバーが口々にパストーレを罵倒していたが、ホアン・ルイだけはその事実を深刻に考えていた。
ホアン(その通り、フェザーンの同盟に対する影響力は日に日に大きくなっている。もし仮に帝国との戦いが今終わったとしても残るのはフェザーンに対する多額の負債だ。軍縮や人材の民間への転換を進めてもすぐには返せる額じゃない。経済面で間違いなく支配されるだろう。(それは帝国も同様だがな)それにこの査問会もフェザーンが同盟大使館に提案してきたという…明らかに内政干渉だが同盟は受け入れた。その裏にもし、利を得る者が居るとすればそれは帝国だ。イゼルローン、フェザーン双方面軍司令官不在は戦術的にも戦略的にも大きい…。ひょっとするとフェザーンは今帝国に肩入れしているのかも知れん…。)
ホアン・ルイがフェザーンの真理に近付いている頃、パストーレも部屋の中でぐるぐる歩き回りながら状況を整理していた。
パストーレ(なんでレオニダスのブラックボックスに入れて置いたデータに辿り着いたんだ?その道のプロの何重のプロテクトを掛けてもらってたパンドラの箱だぞ?まさか私が査問会に呼ばれたのはこの為か?だが誰があの計画書を見た?誰もいない訳だからやはり違う。)
パストーレはそもそも劇中、つまり本来の歴史で何故査問会が起きたのかを思い出した。
パストーレ「そうか、フェザーンがヤンと私を危険視した事とガイエスブルク襲来に合わせて、我々を前線から引き離す為だ!イゼルローン方面軍から援軍要請が飛んで来れば、ハイネセンの艦隊よりガンダルヴァに駐留する我がフェザーン方面軍が駆けつけた方が早いし、もし全軍で駆けつけたら劇中以上に帝国軍が戦力を動員していたとしても数的不利を被るのは必定。どうしようもない消耗戦になるのはラインハルトが最も嫌う展開だ。そうならずにフェザーンが帝国に勝たせるために…!」
すると部屋に足跡が近づく音が聞こえたのでパストーレは口をつぐみ、ベットに腰掛けた。
ノックが3回ほどされるとベイが現れた。
ベイ「パストーレ閣下至急査問室へお越し下さい。」
パストーレ「随分早い呼び出しじゃないか、えぇ?」
ベイ「至急ですのでお早く。」
パストーレ「はいはい…。(やはり来たか、これで少なくともヤンは解放されてイゼルローンに向かうだろうな。私は…大方対象が一つになったから最後までイビリ倒すつもりかな。)」
パストーレが査問室に来ると国防委員長が切り出した。
ネグロポンティ「大変な事態だパストーレ提督。イゼルローン回廊に敵襲だ、しかも敵は超巨大移動要塞と十万隻の艦隊を擁している大軍だ。」
パストーレ「十万ッ!?」
流石にこれには私も鸚鵡返しにならざるを得なかった。
パストーレ(ケンプとミュラーだけで率いれる兵力じゃない…他の提督達もいると考えて良い、ひょっとすればケンプが司令官ではなくミッターマイヤーかロイエンタールが指揮官…いやひょっとすればラインハルト自ら親征してきたのかも…いやもしラインハルトならもう今頃イゼルローンはこの宇宙から無くなってるだろう…となるとやはり双璧か大将達の連合艦隊だろう…。)
ネグロポンティ「至急イゼルローンには援軍が必要だ。」
パストーレ「そうですな、少なくとも二個艦隊は援軍に回しませんと、然し我がフェザーン方面軍は司令官不在ですので動きませんな、ハイネセンから艦隊を動かされるのかな?」
ネグロポンティ「取引だパストーレ提督。」
パストーレ「取引?」
ネグロポンティ「我が査問会は君の身柄を解放し、今後の活動においての自由を保障する。その代わりフェザーン侵攻作戦計画を破棄してもらいたい。」
パストーレ「この期に及んで何をおっしゃる!貴方方は私にお願いしてイゼルローンを助けに行ってくださいという立場でしょうが!それをこの期に及んで取引など…これなら命令されたほうがマシでしたな。お断り…と言いたいところですが、私もここから出たい。ちゃんと言ったことを履行してくださるなら私も筋を通しましょう、先も言った通り、アレは私の頭の中の創造物に過ぎないのですから。」
私はベイが持ってきた端末を操作し、フェザーン侵攻作戦計画を破棄した。
パストーレ「これで宜しいか?」
ネグロポンティ「ああ。これで君は自由だ。」
パストーレ「それでは、おさらば。」
パストーレが、査問会の行われていた建物を出ると、待っていたのはやはり同じように査問を受けていたヤンと、ヤンを救わんと奔走していたフレデリカ、ビュコック、マシュンゴ、レベロ、そしてジェニーだった。
パストーレ「おや、皆さんお揃いで。」
ジェニー「パパ!!」
パストーレ「ジェニー!大丈夫か?何もされてないな?」
ジェニー「うん。」
パストーレ「…フフ。やっと少しは素直になったな。」
ジェニー「えっ、あっ、違う、これは…。」
パストーレ「まぁ、良いさ。…ビュコック長官、レベロ議員、おそらく御両人の助力あって出られたとお見受けする。この度は娘共々大変お世話になりました。」
ビュコック「なんの、トリューニヒトらの鼻の穴を開かせる好機と思えば安いもんじゃよ。アムリッツァの時のタコスの礼と思ってくれ。」
レベロ「一先ず、ここを離れよう。折角だし皆で食事でもどうかな?」
レベロに連れられ、一行はレストランに入った。
腹拵えが終わった後、レベロは一抹の不安を口にした。
民衆の政治への信頼を失いつつある中人望と実力を兼ね備えるヤンが第二のルドルフになるのではないかというのだ。
ヤンは当然否定した。
レベロもそうはならないだろうと同意したが人は変わってしまうものだとも言った。そしてパストーレにも同じ心配をしたのだ。
パストーレ「レベロ議員、私はヤン提督より十歳以上も歳上なのですよ?そんな労力も気概がどこにあるというのです。」
レベロ「歳や気概の問題ではないよパストーレ提督、有史老境に差し掛かってその野心と実力を発揮した人物は多い、そうだろう?」
それはその通りだ、戦国武将毛利元就が西国の覇者を目指し、その機会を得たのも彼の老境に差し掛かった頃であったし、徳川家康が豊臣政権を滅ぼし、天下を総べたのも彼の晩年であった。
だが私は民主主義の軍人であって一国一城の主ではない。
何より独裁者にでもなったらそれこそ私は永遠に終わらない仕事に追われる日々を過ごす事になる…そんなのはごめん被る、それなら戦って死んだ方がマシだ。
レベロ「こうは言ったが、私自身にもわからん。ただ、祈るだけだ。君達が身にかかる火の粉を払っているだけのつもりで、いつの間にかルドルフと同じ道を歩んでいる、そんな日が来ないことを。つまらんことを言ってしまった。さて、私は先に失礼させてもらおう。お互いにそれこそ痛くもない腹を探られたくはないからな。」
さてその後の顛末は知っての通りだ。
トリューニヒトにも首を切られたネグロポンティがヤンに泣きつき土下座をする始末だ。
実に滑稽だが、私は父親として彼に聞こえるように娘に言った
ああいう大人になってはいけないと。
イゼルローンに援軍を送る事になったが、取り急ぎ出撃可能であった周辺星系の辺境艦隊と第二艦隊がヤンの一時的な指揮下に入り、イゼルローンに向かう事になった。
フェザーン方面軍からも一個艦隊の増援が向かう事になった。
ビュコック「ワシからアップルトンに伝えるとしよう。誰を向かわせるかね?」
パストーレ「では、カールセン提督の第一艦隊を。」
ビュコック「ん、承知した。ところで君にも援軍に行ってもらいたんだが、肝心の艦隊が無いだろう?」
パストーレ「そうですな、第四艦隊の到着をハイネセンで待つにしろ、エル・ファシルで合流するにしろ時間が掛かりますし。」
ビュコック「そこでな、従来艦のオートメーション化を進めた2.5世代艦のみで構成された新規艦隊…とは言ってもまだ定数割れしていて、一万程度しかおらんのだが…第十四艦隊というのが居てな、まだ指揮官も旗艦も存在してない艦隊でな。」
パストーレ「ほう、後々我が同盟の艦艇全艦がこの2.5世代艦になるとは聞いていましたが、それのみの艦隊ですか。…まさか私に第十四艦隊を率いろと?」
ビュコック「臨時司令官としてどうじゃろうか?」
パストーレ「…まぁ確かに終わってからでは遅い。分かりました、第十四艦隊の将兵と艦艇をお借りします。無傷で返せるとは思えませんが…可能な限り努力します。」
こうしてヤンとパストーレはハイネセンから発進した。新規編成の第十四艦隊一万、途中で合流する第二艦隊と近隣辺境艦隊五千を合わせた三万の援軍がハイネセン方面から、ラルフ・カールセン提督率いる第一艦隊一万五千がガンダルヴァ方面から出発した…。
帝国と同盟のアムリッツァ以来の大規模衝突が起きようとしていた…。
fin…