もし銀英伝オタクがパストーレに転生して、転生後数時間で死亡するRTAを回避する事は可能なのか?   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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もし銀英伝オタクがパストーレに転生して、転生後数時間で死亡するRTAを回避する事は可能なのか?『ガンダルヴァ星系攻防戦、マル・アデッタ会戦篇(Ⅰ)』

帝国軍はフェザーンを占領した。

 

帝国軍はフェザーンに於いての占領統治は清廉潔白なミッターマイヤーらしく、商品の高額販売の禁止や治安維持の確立、フェザーン商人のこれまで通りの商売の保障、更に民間人に暴行を働いた将兵の処断などフェザーンの民衆から好意的に受け入れられた…少なくとも戦略上の為に自国の施設をミサイルで吹き飛ばす同盟よりは好意的に見えた。

 

ラインハルト率いる本隊がフェザーンに到着した時多くの将兵が彼をこう呼んだ、カイザー・ラインハルトと…。

 

もはや既にゴールデンバウム王朝の命運無く、世はローエングラムを望んでいた。

 

ラインハルトはフェザーン宇宙航路局を爆破されたことに関してミッターマイヤーを処罰する事はしなかった。

 

寧ろ四倍以上の敵に対して勇壮に戦った事を讃えたのだ。

 

だが彼の内心は怒りに満ちていた。

 

それは彼の自室に帰った時に発露された。

 

ラインハルト「おのれ同盟軍め‼︎何処までも俺の邪魔をするのか‼︎敵の将は誰か!」

 

ヒルダ「…フェザーン方面軍司令官パストーレ大将です。」

 

ラインハルト「またあの男か…!ヤン・ウェンリーといい、何処まで私の邪魔をする!…だが奴の命運もここまでだ。ガンダルヴァ星系で待ち伏せているであろう奴の息の根を完全に止めてくれる。」

 

ヒルダ「…。」

 

ラインハルト「フロイライン、宇宙航路局の件はもはやどうしようもない。フェザーン商人から同盟の航路図を買い漁ってくれ、如何程の帝国マルクを注ぎ込んでも構わない、同盟領の情報が少しでも欲しい。」

 

ヒルダ「畏まりましたローエングラム侯。」

 

その頃帝国の諸提督達は仮の本営と定められたホテルでワインを酒盃を傾け語らっていた。

 

ミュラー「然し、同盟軍があの様な行動に出るとは思いもよりませんでした…少なくともヤン・ウェンリーはやらないでしょう。」

 

ミッターマイヤー「だがパストーレはやった…民間人を巻き込んだ攻撃など断じて許される事ではない!……だが彼をこの凶行に走らせたのは我々なのも事実だ。俺が奴なら…同じ事をしたかも知れん…。」

 

ビッテンフェルト「あの男…!何度も何度も我が黒色槍騎兵艦隊をコケにしてくれたからな…ヤン・ウェンリーは必ずこの手で討ち取ってやるが、その前に奴の首を上げないと気が済まん。」

 

ファーレンハイト「それは卿だけではなかろう。この場にはいないが後方司令官になったメックリンガーや、ワーレン、卿も奴の首を狙っていたな。」

 

ワーレン「ああ、奴はケンプの仇の一人だからな…。」

 

ケンプの仇…その言葉はミュラーに静かな怒りを沸き起こさせた。

 

ミュラーはあの敗戦以来、ヤンとパストーレに対する復讐に燃えていた。

 

ワーレン「ところでだが、あのパストーレという男。名が聞こえ出したのは近年からではないか?嘗てはそこまで名の知れた提督では無かった筈だ。正規艦隊の司令官になるのだから多少は優秀なのだろうが。」

 

ミッターマイヤー「少し調べたが、奴が頭角を現したのは、間違い無く、アスターテでのローエングラム公との戦いからだ。其れ迄はゴールデンバウム王朝の貴族達と戦って…まぁ、可もなく不可もなく、場数は踏んで百戦錬磨の言葉は伊達ではないがその程度だった。だが奴はアスターテで一気に勇躍した。」

 

ビッテンフェルト「爪を隠してたと?」

 

ミッターマイヤー「そうかも知れん。だが貴族ども相手に茶を濁す必要はなんだったのか…奴の戦いを見てみれば、そんな事をせず最初から全力で戦っていれば今頃同盟軍の重席に座る事も容易だった筈だ。」

 

ミュラー「あの時、奴の艦隊は一万二千、対するローエングラム公は二万の艦隊だったと、圧倒的な危機的状況に立たされ、覚醒したのでは?」

 

ミッターマイヤー「夢みたいな話だが、あながち間違いじゃないかも知れん。アスターテの戦いのシミュレーションを見てみろ。」

 

ミッターマイヤーはテーブルに置いたホロスクリーンを操作するとアスターテの戦いを再現したシミュレーションが映し出された。

 

ミッターマイヤー「会戦当初、ローエングラム公は電波妨害を仕掛け、敵のデータリンクを切り、一気に奇襲するつもりだった。…だが敵は最初からデータリンクを切って個別操艦で対応、ローエングラム侯の奇襲を防いだ。」

 

提督達は更に顔を近づけシミュレーションを見る。

 

ミッターマイヤー「その後は麾下の艦隊を率いて防御に徹し、ローエングラム公と微妙な距離を取りながら後退し、味方の第六艦隊と合流している。その間ローエングラム公は奴の艦隊を攻撃し続けたが、只管守り続けたパストーレは艦隊の被害を一万隻弱に留めている。…これで同盟軍は僅かながら有利になったが、敵第六艦隊の猪突で戦況が変わった。ローエングラム公は第六艦隊に甚大な損害を与え、一気に半数も撃ち減らしておられる。」

 

ワーレン「流石だな。」

 

ミッターマイヤー「これにはパストーレも焦燥を隠せなくなかったらしい、麾下の戦力の半数を犠牲に我が軍左翼に突進を仕掛け、第六艦隊を救っている。この時左翼に居たのはあの理屈倒れのシュターデンらだったのが幸いして、この試みは成功している。」

 

ビッテンフェルト「運が良かっただけでは無いのか?」

 

ミッターマイヤー「問題はここからだ。二万三千隻弱も居た同盟軍は一気に一万三千隻にまで数を減らし、対するローエングラム公は未だ損害は一割以下、数の上で再び劣勢になった。しかも第六艦隊の司令官は戦死している状況だ、まともに戦えるはずが無い…だが奴は即座に第六艦隊の戦力を指揮下に置いて再度防衛戦を展開した。そしてローエングラム公に対して挑発した。その辺りはあの場に居たファーレンハイト、卿の方が詳しかろう。」

 

ファーレンハイト「ああ、ローエングラム公は不遜な挑戦と受け取り、俺と同じく轡を並べていたメルカッツ提督に全力攻撃を指示した。だが…。」

 

ミッターマイヤー「奴は耐え抜いた、敵第二艦隊、そして当時は次席幕僚だったヤン・ウェンリーが現れた。後は知る通りだが…結果一時的にパストーレはローエングラム公と拮抗してみせたのだ。今までの戦績から鑑みても到底同一人物とは思えない戦いだ。」

 

ミュラー「まるで異世界転生だな…」

 

ミッターマイヤー「ミュラー、今なんて言ったんだ?」

 

ミュラー「昔の同僚が余暇に読んでいた小説を思い出していました。粗筋が過去や未来、或いは違う次元の世界から来た主人公が同じく過去や未来、或いは別世界に再び生を受けて、過去や未来で培った知恵や知識を使って、今その場で起こっている事柄やこれから起こりうる未来の結末を変えてしまうというものなのですが。」

 

ビッテンフェルト「ミュラー、流石にそれは飛躍し過ぎだし、そんなおとぎ話みたいな事が起こる訳ないだろう。」

 

ミッターマイヤー「そうだなビッテンフェルト。現に今回奴らがフェザーンに現れたのは秘密裏に偵察艦を送り込んでこちらの動きを警戒していたからだという事も分かった。我々としては不運だが、奴の独断専行が同盟の首を皮一枚で繋ぎ止めたに過ぎない。もし仮にそうだったら、我々は奴を撃つことは不可能に近いということになるし、我々は物語の引き立て役になる為に同盟領に赴くのではない。ローエングラム公と…マイン・カイザーと共に宇宙を手に入れる為に行くのだ!」

 

諸将は口々に鬨の声を上げてその言葉に続いた。

 

知る由もないが、ミッターマイヤーとミュラーはこの時に真理に近づいていた。

 

もしこの会話をパストーレが聞いていたら彼の冷や汗は止まらなかったであろう。

 

そのパストーレは、今ガンダルヴァや各星系に存在する居住惑星の住人を避難させ、ライガール・トリプラ星域に向かう大船団を率いていた。

 

旗艦アルケイデスの私室で、私は妻と通話していた。

 

エマリー「良くないのですか?」

 

パストーレ「いや、これからだから何とも言えない。少なくともガンダルヴァで食い止めるのは不可能だ。だからこそ君や他の市民にはここまで避難してもらった。」

 

エマリー「同盟はどうなるのかしら?」

 

パストーレ「滅ぼしはしないさ、だがその為の代償は計り知れないだろうな。そしてそれは敵も同じだ。」

 

エマリー「貴方、無事に帰ってきてくださいね。ジェニー、お父さんの事よろしく頼むわね。」

 

ジェニー「母さんも気をつけて。」

 

親子水入らずの時間は終わった。

 

パストーレ「…避難船団はここまで来れば大丈夫だ、全艦反転、途中マル・アデッタを通り、ガンダルヴァに戻る。」

 

ジェニー「ハッ!」

 

フェザーン方面軍全艦が転進し、マル・アデッタに向かった。

 

既にマル・アデッタには帝国軍の侵攻路がフェザーンであると知った宇宙艦隊司令長官ビュコック麾下第五艦隊を始め、統帥本部長ボロディン麾下第十二艦隊、第二艦隊、第三艦隊、第九艦隊、そして編成を終えた第十四艦隊が布陣していた。

 

一時的にこの星系に十数万隻の同盟軍艦艇が集結していた。

 

この同盟軍が即座に迎撃体制を取れたのはパストーレが事前に敵襲来を報告していたのもあるが、勤労努力に目覚めた国防委員長アイランズの尽力もあった。

 

旗艦アルケイデスと旗艦リオ・グランデは接舷していた。

 

ビュコックに会う為だ。

 

ビュコック「何とも愚かな事をしてくれたものじゃな。」

 

パストーレ「返す言葉はありません。されど必要な事だった、これは決して揺るぎません。重ねて申し上げますがどうか他の提督や将兵を罪に問われませんことを。」

 

ビュコック「分かっておる。それはボロディンとも話し合った。…ワシは本来なら貴官に礼を言わねばならぬのかも知れぬな。敵は我が同盟の星図を得られなかった以上地の利は未だ我らにあるのは貴官の決断があったからだ。」

 

パストーレ「…。」

 

ビュコック「だが、ワシは敢えて貴官に礼を言わんぞ。貴官のやった事を許されざる事だ。」

 

パストーレ「それで結構。」

 

まるで時を見計らっていたのか、折よくボロディンから通信が入った。

 

辺境艦隊を集めて急造した第十五艦隊の準備が整い、これから合流するというのだ。

 

パストーレ「第十五艦隊…指揮官はどなたが?」

 

ボロディンからその名を聞いた時私は驚いたが、だが現状考えられる選択肢としては最良であることは間違いないのだ。

 

パストーレ「トリグラフ級三番艦ディオメデスを与えて急増とはいえ、新規艦隊を与える…もうあの肩書きは使えないのでは?」

 

ビュコック「ワシらからの勝手な願いを聞いてくれたのだ、彼も自らの立場と矜持で戦うと決めてくれた。」

 

パストーレ「それならば私からは何も言いません。…ところでイゼルローンは?」

 

ビュコック「今も攻勢を受けておる。イゼルローン方面軍の損害は新規兵力確保のために補充が後回しだったのが裏目に出て、艦隊の数は優勢だが、艦の数は敵と同等と言ったところだ。」

 

パストーレ「敵は双璧の一翼金銀妖眼のロイエンタール。一筋縄では行きますまい。」

 

ビュコック「うむ、だからヤンにはワシの責任で命令書を送った…。」

 

ビュコックはその写しをパストーレに見せた。

 

パストーレ「…成る程もしもの時は…。」

 

ビュコック「ワシらが全力を上げるのは同盟領に侵攻するローエングラム公を討つこと。その為にはヤンの力が必要なのでな。」

 

パストーレ「では少しでも敵の数を減らして参ります。」

 

ビュコック「行くのか?」

 

パストーレ「はい、招かれざる客とはいえ出迎えねば、主戦場はガンダルヴァではなく、ここマル・アデッタと心得ておりますので、敵には最も効率の良い方法で損害を与え、我らは可能な限り少ない犠牲に留め、来たる決戦に備えたく存じます。」

 

ビュコック「死ぬなよ…。」

 

パストーレ「娘の花嫁衣装が見たいので死ねませんな。」

 

別れの挨拶にしては、感慨深いものなど一切無いものになった。

 

フェザーン方面軍全戦力合計九万五千はガンダルヴァに布陣した。

 

だが同盟軍の作戦は常軌を逸したものになった。

 

普通なら回廊出口を固め、縦深陣を敷いて防御の構えを取るはずだった…。

 

が、パストーレの提示した作戦は提督達を驚かせた。

 

アップルトン「敵をガンダルヴァに入れるのですか!?」

 

パストーレ「その通り、だが全てじゃ無い。」

 

パストーレは作戦を説明した。

 

敵の前衛の何割かが回廊出口を出たのを見計らい全艦で回廊出口を包囲し、敵艦隊を包囲殲滅を図ると言うのだ。

 

縦深陣防御を取らないのは帝国軍の先頭は精鋭である事が間違いなく恐らく敵の前衛はミッターマイヤーである事。

 

双璧を相手に全戦力を持って守るのは決して難しく無いが敵は決死の覚悟で突破を図るだろう。

 

つまり勝てても犠牲が大きくなる可能性が高く、一個艦隊相手にこちらの戦力を無闇に消耗したく無い。

 

ならばある程度敵をガンダルヴァに引き入れ、回廊と出口に敵で溢れ返ったところに栓をして進むも退くも出来なくしてしまうと言うのだ。

 

完全に密集した帝国軍前衛を包囲し、同時に回廊内に所狭しと並んだ敵も巻き添えにすると言うのだ。

 

パストーレ「タイミングが大事だ。敵前衛が全て出切ったり、中衛後衛が回廊出口に差し掛かっていたら終わりだ。敵前衛が完全に出来っていないタイミングで包囲する。」

 

ホーウッド「成功すれば確かに敵は成す術も有りませんが、敵が損害を顧みず突撃してくれば如何なさいます?」

 

パストーレ「その時はいつも通り後退する。諸君、覚えておいて欲しいのはこのガンダルヴァは前哨戦に過ぎない。我々はここで敵を食い止める気は毛頭ないのだと思ってくれたまえ。あくまで敵の戦力を削ぎ、我々は最小限の損害で退却する事を至上目的とする。」

 

カールセン「我らの主戦場はマル・アデッタという事ですな。」

 

パストーレ「その通り、あそこで戦える方が何倍も有利だ。…宇宙艦隊ドックに例の物を準備するのは済んでいる。国家予算を大いに無駄遣いする所業だが、国家存亡の危機もはや致し方ない。国防委員長にも承認を得た。…我が軍は全力を以て敵艦隊進軍を妨害せんとする。」

 

パストーレは席から立ち上がり、置いてあった赤ワインの入ったグラスを持った。

 

パストーレ「いざっ‼︎」

 

アップルトン「いざっ‼︎」

 

ホーウッド「いざっ‼︎」

 

カールセン「いざっ‼︎」

 

辺境艦隊諸提督「いざっ‼︎」

 

一同はワインの飲み干すとグラスを床に叩きつけた。

 

そしてしばらく経ち、遂に帝国軍前衛がフェザーン回廊を抜け、ガンダルヴァ星系に入ってきた。

 

前衛はやはりミッターマイヤーであった。

 

そのすぐ後ろをミュラー、ワーレン、そして新たにローエングラム元帥府に組み入れられたシュタインメッツが続いている。

 

帝国軍兵「ガンダルヴァ星系に到達…敵艦隊の姿が有りません。」

 

ミッターマイヤー「アムリッツァの復讐戦をするつもりか…だが叛徒共が民主政治を掲げている以上、焦土作戦は取れないと思うが…。……やはり何か引っ掛かる、我が艦隊の残りと、ミュラー、ワーレン、シュタインメッツの艦隊を大至急回廊の外に出すぞ。前衛部隊だけは回廊から出しておかなければ…さもなくば…」

 

帝国軍兵「閣下‼︎敵艦隊現れました数九万五千‼︎我が全軍を包囲せんと急速接近してきます!」

 

ミッターマイヤー「やはり来たか!敵の狙いは我が軍の足止めだ…いや正確には我が前衛部隊の完全集結を食い止め、我が全軍を回廊に閉じ込めるのが目的だ!全艦応戦準備‼︎何としてもローエングラム公の道を阻ませるな‼︎」

 

ミッターマイヤーからの敵襲来の報を受けて、ミュラー、ワーレン、シュタインメッツは狭い回廊を何とか抜け合流したが、帝国軍の戦力は完全に揃い切っておらず、敵前衛部隊が全て揃っていれば九万隻の大軍であったが、艦隊の完全集結が敵わない現在はその戦力は六万ほどに減っていた。

 

対する同盟軍は治安維持の辺境艦隊まで総動員した事により九万五千の大軍を用意したのだ。同盟軍は帝国軍に対して珍しく数の有利を活かした戦いをする事になった。

 

パストーレ「何とか間に合ったな…だが敵は急いで回廊を抜ける為にこの包囲陣を少しでも広げようとするだろう。だが多少は粘らねばな…敵は全て揃いきってはいない!この機を逃すな全艦一斉射撃!(撃)テェイ‼︎‼︎」

 

ホーウッド「撃って、撃って撃ちまくれ‼︎」

 

アップルトン「敵にここに来た事を後悔させてやれ‼︎」

 

カールセン「決して容赦するな!敵を倒す事だけを考えるのじゃ‼︎」

 

同盟艦から放たれる無数の青色のレーザーが帝国軍に襲い掛かった。

 

帝国軍は爆発の閃光に包まれるが、敵はローエングラム元帥府の名将達だ、決してこの程度では怯まない。

 

ミッターマイヤー「怯むな‼︎ここを抜ければ宇宙は我らの物だ‼︎ファイエル‼︎」

 

ミュラー「ファイエル‼︎」

 

ワーレン「ファイエル‼︎」

 

シュタインメッツ「ファイエル‼︎」

 

帝国軍艦隊も負けじと赤褐色のレーザーを放ち同盟軍艦隊を焼かんとする。

 

同盟軍からも爆発の閃光が無数に煌めいた。

 

パストーレ「流石はミッターマイヤー…だが我々をあまり舐めない方が良いぞ。第四艦隊と第八艦隊を敵前面に押し出させろ、第一、第七艦隊は援護射撃、包囲を狭める。」

 

同盟軍は敵の損害を増やすべく守りを固めながら包囲を狭めたが、彼らにとって想定外だったのは敵が異様に守りが固かったのだ。

 

理由は単純であった。ミュラーがミッターマイヤーの代わりに前に出て、防戦の構えを取ったのだ。

 

 

ミュラー「我が艦隊の守りを貫けると思ったら大間違いだ!味方の包囲突破を援護するぞ‼︎」

 

ミッターマイヤー「ミュラーが耐えている間に敵包囲網を抜ける!我が艦隊が右翼方面から、ワーレン艦隊は左翼から突破を試みる。」

 

ジェニー「敵艦隊両側面からの突破を図ろうとしています!」

 

パストーレ「中央を、各辺境艦隊で固めろ、この場を維持すれば良い、二百隻程アルケイデスに付いて来させろ、左翼方面の守りを固める、アップルトンに右翼方面を固めさせろ!」

 

ミッターマイヤー「あれは戦艦アルケイデス、パストーレか!我々を突破させないつもりか!」

 

ドロイゼン「敵左翼艦隊が士気が上がったようです、反撃が凄まじく進むのが困難です!」

 

ミッターマイヤー「ワーレンは!?」

 

ドロイゼン「ワーレン提督の艦隊も敵第八艦隊主力部隊に阻まれ進めません!中央も敵第一、第七艦隊が穴を埋めて突破口を作らせまいとしています!」

 

帝国軍は劣勢に追い込まれつつあった…だが同盟軍もまたその代償の支払いが重くのしかかりつつあった。

 

ジェニー「帝国軍の猛反撃により我が全軍の被害が拡大しています。艦載機隊の消耗も激しくこのままの距離で戦闘を続ければ我が軍の損害も無視出来ない物になります。更に中央ですが、辺境艦隊主体の戦線ではミュラー、シュタインメッツ艦隊の足止めは難しく、ミュラー艦隊が防御を固めつつ、前進しつつあるようです、中央突破を許す可能性もあるかと。」

 

パストーレ「退き時には早いが……よし全艦隊、包囲陣形を敷きつつ後退、同時に全艦を戦線少し薄く伸ばすように展開させろ!第一艦隊は後退しつつ集結、我が右翼より敵艦隊側面に突撃を仕掛けさせろ。我々は援護射撃だ。」

 

カールセン「応‼︎心得た!全艦集結急げぇい‼︎」

 

ミッターマイヤー「敵が後退しつつある…この機を逃すな!全艦前進!回廊から出れない戦力を出させろ!さすれば今以上に戦える!」

 

ミュラー「敵が我が左翼に突撃を仕掛ける為に包囲を薄くするなら先に食い破るまでだ!全艦攻撃に集中!犠牲を覚悟の上で突撃せよ‼︎」

 

アップルトン「第一艦隊の穴を埋めるぞ、ランサースパルタニアン隊発艦せよ!」

 

ホーウッド「こちらもランサースパルタニアンを出すぞ!火力を上げ敵の突破を阻止する!」

 

第七、第八艦隊から発艦したランサースパルタニアンは戦線の細かい穴に小隊クラスで展開するとそこからレールガンで砲撃を仕掛けた。

 

強力な実弾砲撃も加わった事で守りを一時捨てていたミュラーは凄まじい損害を被った。

 

そして同時に集結が済んだ第一艦隊が敵右翼艦隊ワーレン艦隊目掛けて突撃を敢行した。

 

カールセン「一挙に貫け‼︎」

 

ワーレン「やらせん‼︎」

 

カールセンはワーレンの艦隊を蹴散らしながら旗艦サラマンドルに向かうと思いきや、急に進路を変え、ミュラーの右側背に襲い掛かった。

 

ミュラー「まさか!?離脱しながら我が艦隊を削り取るつもりか‼︎そんな事をすれば奴らとてタダでは済まんぞ!」

 

パストーレ「百も承知だ‼︎敵艦隊に砲火集中‼︎内と外で突破口を作る‼︎」

 

カールセンの艦隊はワーレン、ミュラーの艦隊を貫き脱出したが、それを帝国全軍がその背を撃った。

 

ジェニー「第一艦隊の損害が三割を超えつつあります‼︎」

 

パストーレ「一時的に全軍を前に出せ‼︎カールセンが後退が完了次第、退くぞ‼︎」

 

そしてこの状況の中、帝国軍前衛艦隊はその全ての戦力が回廊の外に出てきた。

 

パストーレ「流石にこれ以上は戦えないな、敵の中衛…恐らく黒色槍騎兵艦隊とファーレンハイト艦隊だ、今あれらとやり合う力はない。全軍に後退指示を出せ、惑星ウルヴァシー重力圏より後方、ガンダルヴァ星系の太陽まで後退する。」

 

同盟軍は遂に包囲を諦め、全軍撤収した。帝国軍前衛艦隊は凄まじい損害を被ったが、同盟軍もまた最小限とは到底言えない損害を払い、両軍三万隻近い艦艇を損傷、ないしは失う事になった。

 

だが同盟軍は未だ帝国軍を傷つける為の算段をしていたのだ。

 

帝国軍は実弾による遠距離砲撃を喰らう事になった。

 

これは同盟軍のランサースパルタニアンをフェザーン方面軍が更に独自改良を施した長距離狙撃用艦載機アーチャースパルタニアン(ランサースパルタニアンに更に砲身を延長した大口径レールガンと遠距離用測距機と機体上部に大型レドームを取り付けた重量機。元の機体より機動性が更に悪くなっているので完全に待ち伏せ用)の砲撃を喰らい続ける事になる。

 

だがこれ自体は帝国軍に甚大な損害を与えるには至らず、どちらかと言えば帝国軍将兵の士気を削ぐことが目的だった。

 

帝国軍前衛艦隊がウルヴァシーを完全に抑えたのを確認した同盟軍は狙撃部隊を回収し、ガンダルヴァ星系外縁部、マル・アデッタ方面まで後退した。

 

パストーレ「完全に戦闘に耐えれる艦艇の数は?」

 

ジェニー「五万隻程、一万隻弱が小破、中破艦です。」

 

パストーレ「アップルトンを呼び出してくれ。」

 

アップルトンは直ぐにアルケイデスの通信スクリーンに現れた。

 

両者は敬礼するとパストーレはこれら損傷艦を率いてハイネセンに後退して欲しいと頼んだ。

 

アップルトンは各艦隊から損傷した艦艇を引き抜き、一足先にガンダルヴァを去った。

 

その頃帝国軍はフェザーン方面軍本拠地惑星ウルヴァシー衛星軌道上に居た。

 

帝国軍はウルヴァシーに残されていた同盟軍の宇宙戦艦ドックを接収していた。

 

ミッターマイヤー「損傷艦をドックに入れろ、残りの艦艇は敵の襲来に備える。」

 

ドロイゼン「損傷艦はこの宇宙戦艦ドックで全て賄えそうです。」

 

一万五千程収容可能な宇宙船ドックに帝国軍の損傷艦を吾先にと入っていった。

 

そして主人の変わったドックに整備ドロイド達が帝国軍の艦艇を修理し始めた…だがその時だった。全てのドロイドが謎の異音と警告音を発しながら何かを散布し始めたのだ。

 

そして一体のドロイドが自爆した次の瞬間‼︎

 

宇宙戦艦ドックは跡形もなく吹き飛んだ!

 

シュタインメッツ「何事だ!?」

 

帝国軍兵「宇宙戦艦ドックが突如爆発‼︎敵の破壊工作の模様‼︎」

 

シュタインメッツ「無事な艦は‼︎」

 

帝国軍兵「全艦応答なし…。」

 

シュタインメッツ「馬鹿な!衛星軌道でこれだけ爆発が起きればデブリが惑星に落ちて、地表にだって影響を及ぼすのだぞ‼︎」

 

帝国軍兵「提督、惑星ウルヴァシーに住人がいません!惑星ウルヴァシーに人間の生命反応無し‼︎」

 

シュタインメッツ「この為に住人を避難させていたのか!惑星に市民さえ居なければこれだけの破壊工作も厭わないと。」

 

帝国軍兵「宇宙戦艦ドック跡地より微量のゼッフル粒子を検知しました。」

 

シュタインメッツ「ドックを調べた時は異常は無かったのでは無かったのか‼︎」

 

帝国軍兵「はい、間違いなく…いやお待ち下さい!微量のゼッフル粒子を散布する物体を確認、モニターに出します!」

 

シュタインメッツ「ッ!?同盟軍の整備ドロイドか…奴らドロイドにゼッフル粒子を充填して爆弾代わりにしたのか‼︎」

 

パストーレ「これで前衛部隊の手負いも始末出来た。そして帝国軍はガンダルヴァでは損傷した戦力を修復出来ない、少なくとも大規模にはな。」

 

ジェニー「閣下。」

 

パストーレ「ああ、全軍退却、マル・アデッタの本軍と合流する。」

 

宇宙歴800年、帝国歴491年、帝国と同盟軍の最終戦争(ラグナロック作戦)は凄まじい流血の惨事から幕を開けたのであった…。

 

fin

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