-キッチンいちのせ-
りんね「こちら日替わり定食です。」
キッチンいちのせにて、りんねは店の手伝いをしており、宝太郎の母親の一ノ瀬 珠美がいつもと同じ笑顔をりんねに向けた。
珠美「ごめんなさいね九堂さん…せっかく来てもらったのに手伝いまで…」
りんね「いえ…ここの料理大好きですから…」
珠美「そう?ならよかったぁ…じゃあ、今いらっしゃるお客様がお帰りになったらお店を閉める準備をするから後片付けをお願いしてもいいかしら?」
りんね「はい」
珠美「宝太郎もきっと向こうで頑張っていると思うわ。今度こそ九堂さんに最高の創作料理を食べてもらうんだーって!!」
りんね「楽しみにしています」
りんねと珠美のやりとりを近くの席で見ていた蓮華と錆丸はその様子をじっと眺めていた。
蓮華「お宝ちゃんは確か…とある中華料理店で料理の修行中やったっけ?」
アイザック「料理を道は奥が深い!!今度こそ俺の最高の創作料理をみんなに食べてもらうって言ってたからな…」
蓮華「お宝ちゃんらしいな」
蓮華が笑みを浮かべたがその時、店の外に何かが動いているのに気づいた錆丸は窓の方へと駆け寄った。
蓮華「何、慌ててるんや?サビー?」
アイザック「おい!!店の外で例のオーロラカーテンが出現してるぞ!!」
りんね「オーロラカーテン!?沢芽市で度々発生してたあの…?」
蓮華「確か…オーロラカーテンを通じて異世界の怪人達が召喚されるってあの…?」
りんね達は思わず身構えるが、キッチンいちのせの扉が開いて、黒い着流しを着た男性がゆっくりと店内へとやって来た。
蓮華「珍しい服装やな?」
生簀一郎「ほぅ…定食屋か。ここの料理の味を確かめに来た。」
りんね「貴方は一体…」
珠美「あら?いらっしゃい。」
生簀一郎「お前が店主か?ここの店の料理の味に興味がある…」
珠美「もしかして…美食屋さんだっりします?あ、ご注文は何に致しましょうか?」
生簀一郎「店主のお任せをひとつ…」
謎の男性は席に着席すると料理が出来るまで目を瞑り、その様子に蓮華達が複雑そうな表情を浮かべた。
蓮華「普通の人間やん?」
アイザック「こいつ…只者では…」
珠美「出来たわ。美食屋さんが来るなんて驚きね!!あ、宝太郎に電話しなくちゃ!!九堂さん…料理を運んできてくれる?」
りんね「わかりました…」
りんねは珠美に料理を受け取ると珠美が宝太郎に電話をするために店の奥へ引っ込んでしまった。
りんね「どうぞ…こちら本日の日替わりのカレーセットです」
完成したカレーをりんねが男性の前に置くと、男性は目を開けて自前のスプーンを取り出してカレーを口にした。
生簀一郎「なんだこれは…?こんなものがカレーだと!?」
蓮華「こんなものってなんや?その言い方!?」
生簀一郎「これはカレーなどでは無い!!この料理は豚の餌だ!!」
アイザック「なんだと!?珠美さんが作った料理に向かって!!」
蓮華「そうや!!あんた珠美さんに失礼やろ!!ただのクレーマーか?」
生簀一郎「このカレーを作る時、煮込みを早くするために水を多く入れたな?そのせいでカレー独特の濃さやスパイスを自ら薄めてしまっているのだ!!」
アイザック「なんだと!?」
生簀一郎「これを作った者はカレーを作っていると言う気分を味わうために煮込み作業を行った!!その証拠に…見ろ!!カレー独特のトロトロ感が足りない!!」
カレーをスプーンで掬ってお皿に垂らすとカレーのルーがぺチャリと落ちて、男性はスプーンをティッシュで拭き取ると自身の服の中に仕舞い込んだ。
生簀一郎「この料理を作った奴は素人だ!!」
蓮華「あんた…絶対に許さんわ!!」
生簀一郎「カレーというのはなぁ!!」
りんね「あ、ちょっと!?」
男性は厨房へと勝手に入り込むと、自らカレーを作り始めて全員がその様子に呆気に取られてしまった。
蓮華「まさか…カレーを作っとるん?」
アイザック「こいつ…本当に美食屋か!?」
蓮華達が突然の行動に驚く中で1時間くらいが経過して、厨房からカレーを手にした男性が姿を現した。
生簀一郎「俺のカレーを食ってみろ。この店のよりうまいはずだ!!」
アイザック「だったら俺が試食してやる!!」
蓮華「サビー?こんな男のカレーを口にするんか?」
アイザック「任せろ…口にしたらすぐに不味いって酷評してやるぜ!!」
りんね「錆丸先輩…それはそれで酷いような…」
生簀一郎「さぁ…俺のカレーを…」
男性は静かに目を瞑ると、アイザックをデーブルに置いた錆丸が男性のカレーを口に含み、一瞬だけ目を見開くとすぐに俯いてしまった。
りんね「どうですか?」
錆丸「……」
アイザック「……」
蓮華「悲しいほど不味い…そうやな?」
錆丸「うまあああいい!!」
蓮華「サビーっ!?」
りんね「アイザックを通してじゃなくて本人の口からこんな大声を出させるなんて…」
アイザック「これは…なんだ!?究極の美味さだ!!」
生簀一郎「当然だ。俺は料理で人の感情を操る事ができる。喜怒哀楽の全てをな…」
蓮華「そんな…嘘やろ?」
生簀一郎「俺のカレーの勝ちだ。いや、最初から勝負にもなっていないが…」
男性は満足したのか店を出て行ってしまい、りんね達は慌ててその後を追いかけた。
生簀一郎「ではこの店の料理に勝利した戦利品として…この暖簾を貰っていくぞ!!」
蓮華「何しとるんや!?」
男性はキッチンいちのせのドアの前に設置している暖簾を取り外して小脇に抱えてしまった。
生簀一郎「さらばだ…」
りんね「そんな勝手は許さない!!」
りんねが男性の肩を掴むと、男性は振り返ってりんねを突き飛ばした。りんねは思わず態勢を崩して尻餅をついた。
生簀一郎「俺の邪魔を…するな!!」
蓮華「な、なんや!?」
りんね「怪人!?」
男性はキュレックスワームへと姿が変わり、それを見たりんねはすぐに指輪をはめた。
りんね「一ノ瀬のお店は私が守る!!」
(アルケミスリンク!)
蓮華「相手が怪人なら容赦はいらへん!!行けーっ!!」
(UNICON!)
(THE SUN!)
りんね「変身!!」
(ガガガガッチャーンコ!)
(プロミネンスホーン!)
(サン・ユニコーン!)
りんねは仮面ライダーマジェードへと変身すると、ワームの腹部目掛けて手刀を叩き込もうと駆け出した。
りんね「ハアーッ!!」
生簀一郎「ぐっ…」
りんねの手刀を受けて思わず後ろに後退するが、続けて繰り出された蹴りに圧倒されてワームは地面に転がった。
アイザック「良しっ!!完全に圧倒してるぞ!!」
蓮華「アホっ!!あんたが不味いって言わへんからこうなったんやろ!!」
錆丸「…ごめん…」
りんね「その暖簾は返してもらう!!」
りんねが再び拳を振り上げるが、突如ワームはクロックアップしてりんねを跳ね飛ばしてしまった。
りんね「ぐはっ…」
蓮華「なんや?今、何が起こったん?」
アイザック「高速で動いてやがる!!」
りんね「ぐっ…ぐはぁ…」
りんねは何度も空中で跳ね飛ばされると全身から火花を散らしながら地面に倒れてしまった。
りんね「くっ…速すぎて…動きが捕らえられない…」
ワームは地面に倒れたりんねに歩み寄るとマスクのユニコンの角を掴んで持ち上げた。
りんね「うっ…」
生簀一郎「貴様はこの店の従業員か?」
りんね「違う…けど、このお店の料理の味の良さは良く知ってる!!」
生簀一郎「ならば…貴様は普段、料理をするのか?」
りんね「それは…」
生簀一郎「どうやら料理をしないようだな。ならば消えるがいい…料理人ではない奴に料理の良し悪しを言われる筋合いは無い!!」
蓮華「いや…別に良し悪しぐらい言うてもええやろ…」
りんね「なっ…あ…うぅ…」
蓮華「りんね!?」
りんねはワームの言葉を受けてショックを受けたのか、がっくりと肩を落として膝を突いてしまい、同時にマジェードの変身も解除されてしまった。
生簀一郎「ではこの暖簾は貰っていくぞ!!」
りんね「くっ…待てっ…うっ…」
りんねは地面に倒れ込むと必死に手を伸ばして去りゆく男性の後ろ姿を見つめた。
蓮華「大丈夫?どこか痛むんか?」
りんね「いえ…心の痛みがちょっと…」
りんねはゆっくりと立ち上がるとスマホを取り出してどこかに電話を掛け始めた。
蓮華「誰に掛けてるん?」
りんね「一ノ瀬に知らせないと…くっ…出ない!!」
-中華料理店(早苗月)-
早苗月と呼ばれる中華料理店にて数人の従業員が調理に追われており、入り口には1人の青年が何かの作業を行っていた。
宝太郎「おっしゃぁぁ出来たぁぁっ!!」
ホッパー1「ホッパァァァ!!」
宝太郎が作成していたのはお店の広告用の幟旗であり、幟には大きな稲穂とホッパー1が描かれており、「ガッチャーハン!!」と書かれていた。
宝太郎「いいね、ガッチャなチャーハン。略して「ガッチャーハン!!」稲穂とホッパー1のイラストで美味しいお米だってアピール出来るんじゃないかな!!」
ホッパー1「ホッパホッパ!!」
宝太郎「これで店主さんも喜んでくれるよねきっと!!」
完成した幟旗を店先に設置すると幟旗は静かに揺らめき始めて、宝太郎は満足そうな笑みを浮かべた。
宝太郎「ホッパー1も虜になるお米を使用したチャーハン!!あぁ…早くみんなに食べて貰いたい!!」
その時、新たなるお客が大勢集まり、宝太郎はお客を店内へと案内していった。
宝太郎「いらっしゃいませ!!中へどうぞ!!」
お昼の時間帯なのもあり、大人数のお客が行列を作っていた。中で調理を行う宝太郎は大忙しに働いていた。
宝太郎「あの人がいない間は俺が臨時店長として頑張らなきゃ!!」
一方で蓮華達はすぐに先程のワームの情報をネットで調べていた。
アイザック「ネットでも話題になってるぞ…有名な料理屋などを狙う、いわゆる道場破り、いや…料亭破りを行い、戦利品としてお店の品を奪っている…」
蓮華「オーロラカーテンで素早く移動してたくさんの料理屋を潰しているん?」
りんね「もしかしたら一ノ瀬が修行してる店にも現れるかも!?」
りんねは立ち上がると何処かへ走り出して蓮華と錆丸は慌ててその後を追いかけた。
蓮華「どこへ?」
りんね「一ノ瀬の修行先の中華料理店です!!」
-翌日-
翌日になり、宝太郎が早苗月に出勤すると、お店の中に仕舞い込んでいたお手製の幟旗をいそいそと設置を始めた。
宝太郎「頼むぞ…お客さんを呼び込んでくれよ?あぁ、早く店長さんに見てもらいたいなぁ!!」
ホッパー1「ホッパー!!」
宝太郎が準備のためにお店に戻った直後に、猛烈な強風が吹き荒れ始めた。宝太郎自慢のホッパー1の幟旗が強風により激しくはためき始めて舞い上がり、突如として現れた1人の男性が店先ではためく幟旗をじっと見つめた。
生簀一郎「ネットで噂の中華料理店はここだな?」
宝太郎「あ、お客さんですか?今、開店準備中で…」
生簀一郎「噂には聞いている…お前がこの店の店主か?」
宝太郎「あ、俺…この店のお店の臨時店長なんです!!」
生簀一郎「そうか…ならお前の腕を見せてもらおう!!」
宝太郎「えっ…あの…何の話ですか?」
生簀一郎「俺と料理対決をしろ…」
宝太郎「料理対決!?」
生簀一郎「いざ…勝負!!」