九校戦に向けて選ばれた選手たちは練習に励んでいる。
そんな練習風景を校舎から眺めながら、僕は時間を潰している。このまま帰路に付けばいいのだけど、姉さんからお昼休みに連絡が来て「授業が終わっても教室で待ってて。お姉ちゃんが迎えに行くから」と。姉さんだって生徒会長であり、九校戦に選ばれた代表選手の一人だ。そんな人が帰ってもいいのかなと頭をよぎるけど、姉さんから誘って来たわけだし、大丈夫なのかな。
僕が姉さんと一定距離以上、離れられないと言っても家まではそこまで遠くない。ギリギリ一定距離の範囲内だ。それに姉さんが忙しかったり、妹たちが忙しかったりするとどうしても僕と一緒に登下校するのは難しくなる。僕は姉さんにも妹たちにもそれぞれの学生生活を一番に考えて欲しいと思っている。僕の所為で彼女たちの貴重な学生のひと時が奪われてしまうのはなるべく避けたい。
そんなことを考えていると、真由美姉さんが教室の中へと入って来た。放課後ということもあって、今の教室には僕と真由美姉さんの二人しかいない。
「ごめ~ん。待たせちゃって」
「全然いいですよ。姉さんが色々と忙しいのは知っていますし」
「やっぱりうちの弟くんは理解があって、優しくて、お姉ちゃんの自慢だよ!」
うちの姉さんは身内に甘い。身内と言っても僕や妹たちで父さんは含まない。前に姉さんと父さんの話をした時の感じがあんまり良くなかったので、少なくとも姉さんは良い感情を抱いていないのかもしれない。
「僕の方こそ、姉さんが自慢ですよ。これだけ素晴らしい人を姉に持てて、僕は幸せ者です」
「…ほ、ほんとに伊織くんって…女の敵だよね」
「…女の敵ですか?」
「うん、だって欲しい言葉をくれるんだもん。こんなの女の子、惚れちゃうよ」
「いや、僕ってモテませんよ」
「それは伊織くんが分かっていないだけだと思うよ」
「そうですかね」
そして僕と真由美姉さんは学校を出て、校門までの道を歩いていると校門の辺りが騒がしいことに気付いた。
「人だかりができてますね」
「そうね、何かしら?」
少しずつ近づいていくと、その人だかりの意味がやっと理解できた。校門の近くに居たのは、うちの妹たちだった。どうやら学校を終えて、第一高校まで来たみたいだ。
二人は僕たちに気付くと歩みを寄って来た。
「あ、兄さんにお姉ちゃん!」
「兄様、姉様、お疲れ様です」
この二人が校門にいたから人だかりが出来ていたのか。二人とも美人だし、知っている人は七草家の双子だと分かった人たちもいただろうしね。
真由美姉さんも二人が来ることは知らなかった様子だ。
「来るなら連絡してくれればよかったのに」
「兄さんと姉ちゃんが驚く顔が見たくてさ!」
「私はちゃんと連絡した方がいいと言ったんですけど、どうしても香澄ちゃんが驚かせたいって言うので仕方なくです」
泉美の言葉に香澄は少し納得がいっていないようで不満そうな顔を浮かべている。
「ボクだけじゃないよ!泉美だって「面白そうですね」って言ってたもん」
「そんなこと私は言っていません。兄様と姉様を脅かそうなんて……」
この感じから見るに香澄が本当のことを言っていそうだ。たぶん、持ち掛けたのは香澄で泉美もその案にのったって感じだと予想している。
それからはさすがに留まると人だかりがもっと出来てしまうので、移動することにした。というか帰路に付くことにしたのだ。
「兄さんは九校戦に出場するんだよね!?」
「いや、しないよ」
なぜか、僕の言葉に香澄だけではなく、泉美までも驚いていた。
「え、兄様は出場されないんですか!?」
「う、うん。普通にしないよ。だって僕の魔法師としての力は二人も知っているよね。こんな力で九校戦の代表として出るわけにはいかないよ。それに代表に選ばれたら絶対に姉さんの忖度が入っているだろうし、そんなことしたら姉さんの名前に傷がつく」
姉さんはそんなこと全く気にしないと思う。
本当に家族のことを大切に想っているからこそ。だけど、弟としてはやっぱり姉さんの名前に傷が付くようなことを率先したいとは思わないし、させたくもない。
「まぁ…元々、魔法師としての才能は皆無。本当に七草という苗字を背負っているのに申し訳ないよ」
いつまで経ってもこの気持ちだけは変わらない。
『七草』というものにこんな実力しかない人間がいるというのはそれだけも……七草に傷がつく。特に名家と呼ばれるような家で姉さんや妹は優秀なのに、自分だけが実力も才能もないというのは本当にきつかった。
そんなことを考えていると珍しく泉美が大きな声を張り上げる。
「兄様はご自身が思っているような存在ではありません。誰がなんと言おうと私にとって兄様は素晴らしくて、尊敬できる存在です。なのでもっと自信を持ってください」
それに続くように香澄も語り始める。
「ボクもそう思う。いくら兄さんが卑下してもそれを上回るくらい、ボクたちが兄さんのことを褒めるよ。兄さんはとってもカッコよくて、憧れの人なんだから」
本当にこの妹たちは僕に対する評価がどうなっているんだろう。ここまで僕のことを買ってくれるのは妹や姉さんたちだけだ。
「…ちょっと過大評価だと思うけど、ありがとう。そんな風に思ってくれて」
すると今度は姉さんが話し始めた。
「お姉ちゃんも伊織くんはとっても良い子だし、もっと自分に自信を持ってもいいと思う。お姉ちゃんはお姉ちゃんだからこう言っているわけじゃなく、一人の人間として伊織くんを見ても同じことを言うよ」
こんなに自分のことを良く言ってくれる人に囲まれているだけでも本当に恵まれているんだと思う。それに世間から見れば姉も妹たちもかなりの美形だし、羨ましいと言われたこともある。
姉さんも学校でモテてるし、妹たちも告白されたなんて話は別に聞かないわけじゃない。
そんな姉さんや妹たちが近くで支えてくれているということも考えると、自分は本当に良いところに生を受けた。
帰路まで姉さんや妹たちから色々と褒められた。
誰を一番登場させて欲しいですか?
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七草真由美
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七草香澄
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七草泉美
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渡辺摩利
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中条あずさ
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服部刑部少丞範蔵
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十文字克人
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司波達也
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司波深雪
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千葉エリカ
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北山雫