「どうやら王は
探し求めていた
聖壇へと繋がる階段に向けて伸びる石畳の周辺には、
「〝答え〟を持ってきた」
ただ、ひとこと。背後から奇襲を掛けた
「くははッ!
階段を降りながら話す剥生の足音に合わせて、聖壇に突き刺さった柱に吊るされた鐘が音色を発する。言葉は音色と混ざり合い、その真意を確かめる間もなく虚圏の砂の中へと身を隠す。
「
『その刃に聞くまでよ』明確な敵意を放つと同時に斬魄刀に灯った炎が剥生の瞳の中に映り込む。名前を呼ばずしての解放は卍解を習得したことを意味しており、多少なりとも戦うに値する力をこの手に掴んだという山本から剥生へ宛てた言葉の無い手紙であった。
「ならば……思う存分死合おうぞ」
不適な笑みを浮かべて刀を抜いた剥生の姿が〈傴僂在実〉と共に刹那に消え、空かさず振るった〈流刃若火〉に振動が走った。瞬歩では到底有り得ない速度で目の前に現れた剥生の僅かに崩れた体勢を山本が見逃すはずもなく、霊圧を込めた左脚で蹴り飛ばして再度距離を取る。剥生は痛みによって意識が遠退きつつも、山本の位置を見据えながら作り出した霊子の足場を右足で踏み込んで再度攻撃を仕掛ける。しかし、先の一撃で折れた右の第十肋骨の痛みのせいで踏み込みは浅くなり、それが原因で思い描いた太刀筋と差異が生じ、〈傴僂在実〉の能力は強制的に解除された。追撃を放とうとした山本だったが、剥生が間髪入れずに左脚で霊子の足場を踏み込み、能力を発動させたことで受けの
「山本重國よ。剣を何と心得る?」
剣を重ねながら剥生は山本に問う。それが問いの形をした主張であると察した山本は、口を真一文字に結んだまま警戒を解くことなくその続きを待った。
「一杯の茶碗に盛られた僅かな米を分け合うための〝慈愛〟か?反りが合わぬ者と心を通わすための〝声〟か?……違うな。剣とは、
「随分と大仰な物言いだな。刀を振るう内に襟を開く
互いに大きく弾かれたことで
「忘れたのではない。其のような浅ましい
『
「『慈愛で喉笛を吹いてみせれば三界は安寧で満たされる』などと考えているのだとすれば、其れは浅薄の極みという他無い。刃は
『敗者は勝者の一部に過ぎない』と暗に言い切る剥生の言葉は切ないほどに鋭く、互いの生死以外にこの問答の雌雄を決する方法は無いのだと告げていた。
「問答は終いだ」
山本が諦めると同時に呟かれた剥生の言葉によって、四年二ヶ月と五日の時を経て、命を懸けた戦いの火蓋は再び切って落とされた。
一進一退の駆け引きが続いていた。剥生が〈傴僂在実〉の能力の終着点を〈流刃若火〉の間合いの
一時は〈傴僂在実〉の目に見えぬ斬撃を完全に見切った山本であったが、剣戟の振動を伝えることで時間観念を狂わせる特性によって、掴みかけた核心は容易く崩され、再びその刃に曝されることとなった。
両者共に卍解を使用しなかったのは其々が互いに戦いを楽しんでいたからであり、それは始解で考えられる全ての
繰り返されていた戯れも程なくして終わりを迎え、聖壇の上にある真の〈死合い〉の開始を伝える鐘の音が