ユーディス  ~回転国家の吉凶サイクル~   作:智二香苓

23 / 44
第23話『光帝ユーディスと12の誓い』【前編】

 これは遥か昔、時の時代の終焉とともに公転の任かを追放されて、合わせて200億の朝と夜を代償に、刻限の返還を免れた静止遊星の話。

 その惑星にはプリセプトという約束を重んじる種族が住んでいました。プリセプトは契りを交わす糸を作り上げることを生業としていました。ある日、空の果ての世界から王族たちがやって来ました。王族たちは自分たちを照らしてくれる光と、それ以外を葬る闇を欲しがりました。

 

 王国が衰退してしまった王族たちは、果ての世界を追放されてしまい、この星でまた一からやり直したいというのです。話を聞いたプリセプトたちは王族たちに同情しました。そこで自分たちに手伝えることはないかと聞いたのです。すると王族たちは提案をしました。自分たちと手を組んで、あの空の彼方に浮かぶ炎の塊を盗んでほしいと。王族たちは自分たちのシンボルが欲しかったのです。そこで考えた作戦はこうでした。

 

 まず王族たちが空の彼方に浮かぶ炎の塊の座標を測り、プリセプトたちが紡ぐ約束の糸で炎の塊を引きずり下ろすというものです。でも作戦は途中で失敗してしまいました。プリセプトたちの紡いだ糸は途中で燃え尽きてしまい、炎の塊を落とせなかったのです。

 プリセプトたちが炎の塊を盗もうとした話は刻限の管理者にまで伝わりました。それを聞いて怒った刻限の管理者は炎の塊を隠し、月経秤で裁判を開きました。そしてプリセプトたちと王族たちに問い詰めたのです。

 

「我々の炎の塊を盗もうと画策したのは誰だ」

 

 王族たちは言いました。

 

「刻限の管理者よ、我々はプリセプトたちに騙されたのだ。炎の塊を盗もうとしたのはプリセプトたちである」

 

 なんと王族たちはプリセプトたちを裏切ったのです。これにはプリセプトたちも驚きました。刻限の管理者は問います。

 

「プリセプトたちよ、今の話は本当か?」

 

 もちろんプリセプトたちは否定しようとしました。しかしできませんでした。炎の塊を盗む際、プリセプトたちは王族たちと、どんなことがあってもお互いに裏切らないという契りを交わしてしまったのです。そのため約束を重んじるプリセプトたちは本当のことを言えませんでした。すっかり黙り込んでしまったプリセプトたちを前に、刻限の管理者は判決を下しました。

 

「プリセプトたちよ。お前たちを我らの炎の塊を盗もうとした罪で罰する」

 

 刻限の管理者は罰としてプリセプトたちの故郷であるユーディスを惑星の中に閉じ込めてしまいました。そしてプリセプトたち自身にも獣化の呪いをかけたのです。その呪いは長い時間をかけて子孫にも影響していくというものでした。プリセプトたちは刻限の管理者に許しを請いました。

 

「お願いです刻限の管理者。我々からユーディスを取り上げないでください」

 

 すると刻限の管理者は言いました。

 

「ならばお前たちの罪の重さに匹敵する数の自分たちの分身を作れ。その分身の重さが罪の重さと均等になれば、そのときユーディスは返却しよう。その任は王族たちに委ねる」

 

 プリセプトたちは刻限の管理者と約束を交わしました。それからプリセプトたちは自分たちの分身として自分たちの罪の姿を生き写した人形を作りました。そして同じ過ちを繰り返さぬよう新たに12の約束を定めたのです。

 

・姿の真実を晒してはならない

・月の裏側を暴いてはならない

・陽光の深淵を覗いてはならない

・光冠の呈色を閉ざしてはならない

・天球の環状を乱してはならない

・数機の定めを拒んではならない

・天秤の傾きに関与してはならない

・原色の導きを歩まねばならない

・忌子の末裔は育まねばならない

・物語の終止符を打ってはならない

・戒律をときに破らねばならない

・ユーディスを解放せねばならない

 

 回転しない星には栄盛と衰枯の因果が混ざり合い、炎の塊がなくなった国は紫色の空に覆い尽くされました。こうして回転国家が生まれたのです。

 そしてプリセプトたちは今でも人形を作り続けているのです。




感想・評価お願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。