──
冒険者である五代雄介は今、忌まわしき土地である所の「九郎ヶ岳遺跡」をおとずれていた。
長野県、中央アルプスの山中に存在するその遺跡は、大量殺人の現場となったことも新しい。
被害者は遺跡調査隊の一団。
彼らを殺害したのは、信じがたいことに、この遺跡から発掘された「古代人の遺体」なのである。
よみがえった遺体は、かつて日本に存在していた「グロンギ」と呼ばれる一族のリーダーだった。
遺体は調査隊のメンバーを殺害したのち、いずこかへと姿を消した。
それだけではない。
遺体は同族である多数のグロンギを、自身同様に土中より復活せしめたのだ。
そして問題は──彼らグロンギ族が、人間を狩猟の対象とした「殺人ゲーム」をおこなう存在であることにあった。
復活したグロンギは東京を中心として活動をおこない、一般市民への
それに対抗しているのが警察各関係者と、彼らに協力する民間人の五代雄介なのである。
「わざわざ呼び出してすまなかったな、五代」
そう声をかけたのは、雄介のパートナーといってもいいほどに行動を共にしてきた刑事、一条薫。
雄介は慣れ親しんだ様子で一条に返答する。
「いえいえ。ところで、遺跡でなにか新しい発見でもあったんですか?」
「ああ、かなり厄介そうなものがな」
「厄介なもの?」
「ついて来てくれ」
一条が先導し、雄介はあとに続いて遺跡のあった洞窟へとはいっていく。
洞窟の最奥には、調査隊を殺害した件の遺体が収められていた棺が置いてあったはずだ。
しかしそこは今、グロンギの調査のため物品は全て警察関係者に運び出され、ものけのからとなっている。
ぽっかりと空いた空間。
しかし、行き止まりとなっているであろう奥の壁は、取りはずされたかのように消失していた。
壁だけではない。足元の地面もまた、綺麗になくなっているではないか。
「これは……地震かなにかで崩れちゃたんですか?」
「おそらくそうだ。問題は、この崩れた地面の底にある」
「地面の底……」
床下を覗きこんだ雄介は、その底の深さに目を見張った。
あまりにも暗くて、果てが見えない。
「ずいぶん深く空いてますねぇ」
「推定直径は四十メートル以上。鑑識の調べでは、この地盤沈下は人工的につくられた可能性が高い」
こんなにも広大な空洞を人為的に生み出すことが出来るのは……
犯人に思いいたった雄介は、驚きとともに一条に問う。
「まさか、この穴はグロンギの奴らがつくったってことですか!?」
「おそらくな。空洞はここだけじゃなく、他にもいくつか見つかっている。目的はわからんが、奴らのゲーム……『ゲゲル』に関するなんらかの
「ゴンドゴシザ*1。地底への穴は、この俺が開けた」
不意に、二人の耳に聞きなれない言語が飛び込んできた。
言葉を発した男は遺跡の入り口に立っており、外からの逆光でシルエットだけが不気味に浮かび上がっている。
「ゲゲルを始めるぞ、クウガ」
「お前は……!」
クウガ、という名称に反応した雄介が警戒をあらわにする。
男は、現代に復活したグロンギの一人であった。
グロンギの男は雄介と一条に、一方的に語りかける。
「さまざまな地を掘り返して、ついに見つけたぞ。俺たちグロンギとは違う、もう一つの『大いなる闇の力』をな」
男は殺人ゲーム──ゲゲルを開始できる喜び、すなわち人を殺せる喜びに胸を震わせながら話しを続ける。
「大いなる闇の力を利用し、俺はゲゲルの一回目で、トーキオに住むリントを皆殺しにする」
「東京中の人間を皆殺しだと!?」
グロンギのかかげるゲームのルールを聞いた一条は、驚愕の声を上げた。
男の言葉には、それを可能にさせるだろう
「そんなことさせない! 変身ッ」
すかさず雄介が、男に向かっていった。
腹部にベルト状の器官が生成され、中央に納められる霊石「アマダム」が、彼を戦うための姿へと変える。
超古代にグロンギから人々を護って戦った戦士、「クウガ」。
現代においては「未確認生命体 第四号」と呼称される、五代雄介の戦闘形態だ。
バランスを備えた赤いプロテクターのマイティフォームが、グロンギの男に飛びかかる。
男もまた、雄介と同じく自らの体を、戦うためのものへと作り替えた。
「来い、クウガ! 俺は、大いなる闇を従えるズ・ラグモ・ダ、だ!!」
怪人ラグモは、モグラを思わせる両腕の巨大な爪状の武器で、飛びかかる四号を逆に襲った。
するどいクローで切りつけるように叩き落とされた四号は、すぐさま立ち上がりラグモと組み合うと、一条から引き離すように二体は遺跡洞窟より外へと移動していく。
一条もすぐにあとを追った。
外ではラグモの振り回す大型の爪で、攻めあぐねる四号の姿が視界に映る。
「援護するぞ、五代!」
すかさず
はげしく動き回る相手に銃を当てるのは至難の業だが、一条薫の狙撃の腕は一級品だ。
みごとにラグモの両目に二発の銃弾を命中させ、敵の行動を妨げることに成功する。
「いまだ、五代!」
「ありがとう一条さん! オリャァーッ!!」
四号はこのスキを逃さず、ラグモへ向けて飛び蹴りを食らわせた。
これはただの蹴りではなく、右脚に溜めたエネルギーを相手の体内に流し込む、必殺の技だ。
マイティキックを受けたラグモは、体内の魔石ゲブロンに負荷がかかり、苦しみの声を上げる。
「グググ……これで勝ったと思うな……我が恨みの力を受けて、ジョリガゲセ*2……『超古代猛獣ギガドラス』よぉおおーッ!!」
絶叫とともに、モグラ種怪人ズ・ラグモ・ダの体は爆発。
炎に混じって、ラグモの体内から溢れ出た邪悪な負のオーラが、遺跡の中の地底の穴に向けて流れていく……。
グロンギの撃破を見た一条は息を吐くが、四号はまだ変身を解かなかった。
「どうした、五代?」
「いや、あいつ最後に、なにか妙なこと叫んでたな……って思って」
「そういえば、古代がどうとか聞こえたな」
その時、突如として大地が揺れた。
かなり大きい。
一条も四号も、立っていられず地面に手をつく。
二人の前で地面は大きく裂け──地の底より、大いなる闇の眷属がついに姿をあらわにした。
『GYAOOOO!!』
雄叫びを上げるのは、ビルほどの大きさを持った恐竜。否……
「こ、こいつは……!」
「バカな……怪獣だと!?」
四号と一条は、目の前の光景が信じられなかった。
亀裂から這い上がってきた二足歩行の超大型爬虫類状生物こそ、封印されていた古代の地層よりラグモがゲゲルのため復活せしめたもの。
いわく、闇の眷属──暗黒の
ギガドラスはゆっくりと歩みを始める。
向かう先には、九郎ヶ岳のふもとにある村落が。
一条は本部へ、すぐさま緊急を伝える無線を送った。
「こちら一条! 大至急、ふもとの村の人たちを避難させてください! 未確認ではありません、向かっているのは……推定四十メートルの巨大怪獣です!!」
四号もまた、怪獣の進行を阻むため追跡を開始しようとするが、それを一条が止めた。
「無茶だ、相手は巨大すぎる。いくらお前でも……」
「でも! だからってなにもしない訳には、いかないでしょ?」
人を守るためなら意思を曲げない五代を理解していた一条は、やむなく彼に拳銃を預けた。
本来は警察官が民間人に武器を預けるなどあってはならないことだが、五代=四号が協力者であることは、警察上層部も承認しているため問題ない行為である。
銃を受け取った四号は駆け出し、すぐさまギガドラスに追いつく。
怪獣の前方に回り込み、意識を集中する。
「超変身!」
赤い生体甲冑が緑色に変化し、四号は基本形態から、各感覚機能が強化されたペガサスフォームへと移行。
同時に一条から渡された拳銃も、モーフィングパワーによって専用武器であるペガサスボウガンへと再構成された。
緑の四号は武器を構え、すかさず敵に向けて撃ち込む。
射出された空気弾はギガドラスの頭部に命中するも、大きさが違いすぎてなんら効果が認められない。
怪獣の生体がグロンギと同質のものであったとしても、おそらく四号の封印パワーは、このサイズ差では通用しなかっただろう。
「そんな……」
『GAAAAA!!』
ギガドラスは足元の四号の姿を認め、まるで小石でも跳ね除けるように蹴りつけた。
「ぐあぁぁぁッ!?」
「五代ーッ!」
四号は列車にはね飛ばされたような衝撃を受け、付近の山肌へ叩きつけられてしまう。
強化された感覚で感じる痛みはすさまじく、ショックで倒れた四号のペガサスフォームは解除され、白い蛹を思わせるグローイングフォームへと弱体化していた。
駆けつけた一条が白い四号を助け起こす。
変身そのものが解除されなかったのが奇跡的なくらいだった。
「しっかりしろ、五代!」
「くっ……どうしようもないのか……!?」
このままでは、ふもとの村民の命が危ない。
被害がそれだけで収まるはずもない。ラグモはギガドラスを利用して、東京中の人間を一日で殺すと宣言していたのだ。
在中の警察どころか、自衛隊を動員してもこの大怪獣を止められるのか……。
しかし成すすべのない雄介と一条は、歯噛みして闇の眷属が人々を襲うさまを、ただ見ているしかできない。
が、それに待ったをかけるように、天より一筋の光が彼らの前に降り立った。
「なんだ、あの光は……?」
「ぁ、光がだんだん、人間の形に変わっていく……?」
一条と四号の視線の先で、降り注いだ光がギガドラスの進行を阻むように、その眼前で人間に酷似した形状をとり始めた。
光は実体化し──赤と紫と銀色の、一体の巨人のスタイルとなる。
「光の、巨人……!?」
『チャッ』
巨人はファイティングポーズをとると、ギガドラスへと向かっていく。
打ちひしがれていた四号らの前で、巨人対巨獣の激震のバトルが繰り広げられはじめた。
「あの巨人、どうやら我々の味方のようだな」
「はい。一体、何者なんでしょうか」
まるで映画のような光景を前に、呆気にとられる一条ら。
そんな彼らに声をかける第三者が姿を見せた。
「あの巨人の名は『ウルトラマンティガ』。君と同じ、超古代から復活した戦士だ」
「「!」」
四号に向けて発せられた声の主は、頭に鮮やかなグリーンのメットを被り、首元に真紅のマフラーをたなびかせている。
四号、クウガと近しい姿をしているその人物を見た一条は、「新たな未確認か!?」と警戒を強めた。
仮面の人物は穏やかな声で、自らの正体を明かす。
「私たちは、人類の自由と平和を守る戦士……『仮面ライダー』!!」
彼の両脇に、同様の姿をした人間たちが、ずらりと勢ぞろいする。その数、実に十四人。
最初に現れた仮面ライダー 一号を中心に、彼の相棒ライダー二号とV3、機械の腕を持つライダーマン。
深海の戦士Xライダーと、密林の覇者アマゾン、超電子の戦士ストロンガー。
大空の戦士スカイライダーと、大宇宙の戦士スーパー1、忍者戦士のZX。BLACKが進化した太陽の王子、RX。
五代雄介が霊石の力を手にするより、はるか以前から人間を護って戦ってきた、仮面のヒーローたちである。
「仮面、ライダー……そんな人たちが……」
「以前FBIの噂で耳にしたことはあったが、実在していたのか……」
まさか自分たち以外にも人外の脅威を相手にしてきた先達がいたとは思わず、雄介と一条は目を見張った。
時を超えた邂逅を果たす仮面の戦士たち。
その裏で、駆けつけたはずのウルトラマンティガは一転、ピンチに襲われていた。
ティガの本来の復活はまだ先のことであり、今は突如として訪れた人類の危機に、彼は不完全な状態で急行してくれたのだ。
『グァァッ……!』
ティガはギガドラスに組み伏せられ、力の源である光のエネルギーを、怪獣に吸収されている。
パワーの減少を知らせる、胸のカラータイマーが点滅を始めた。
このままではティガの命は尽き、そうなればもはや人間に生き延びる術はない。
一号ライダーが、クウガに檄を飛ばす。
「今、ティガを救えるのは君だけだ、クウガ!」
「でも、俺の力じゃアイツには……」
「私はかつて、初代ウルトラマンと共に戦ったことがある。Jもまた、地球のパワーを受けた奇跡によって、巨大化を果たしている。我々の力を、すべて君に預ける」
「皆さんの力を……そうすれば、俺もあの怪獣と戦えるんですか!?」
「無論だ。どうする?」
「お願いします! 皆さん、協力してください!」
四号は頭を下げ、先輩たちに助力を願った。
一号らは五代の覚悟に満足げにうなずくと、彼を中心として円陣を汲む。
「いくぞ! 我ら歴代ライダーの力を、クウガに集めるんだ!!」
『オウッ!』
一号ライダーの号令で、互いに肩を組み合った十四人のライダーたちの力がスパークを起こす。
『レジェンドライダーシンドローム!!』
四号──雄介の腹部に納められた霊石アマダムに、膨大なエネルギーが送り込まれてきた。
体が内側から破裂するんじゃないか、というほどの力の
四号から立ち昇った輝くエネルギーの波は、次第に人型をとり……やがて巨大化した四号へと再形成された。
「五代が……巨人に!?」
「あれはもはや、ただのクウガではない。ウルトラマンと同じ光の力を持った、『超クウガ』だ!」
エネルギーを失い白くなっていたプロテクターとアマダムが、黄金のように発光している。
一号名づけての超クウガは、すぐさまギガドラスを押しのけてティガを救い出す。
並び立った二人の巨大ヒーローは、互いにうなづき合うと、怪獣へ向けて戦闘態勢をとった。
『GAOOOON!!』
ギガドラスは口部から熱戦を放射、巨人たちを焼き殺そうとする。
ティガがウルトラシールドを展開し、炎を阻んだ。
すかさず超クウガが駆け出す。
一歩二歩と大地を踏みしめるたびに、右足のレッグコントロールリングの発光が強まっていく。
怪獣が炎を吐ききり、攻撃の手が止んだ。
クウガはジャンプ。後方でティガが両腕を水平に構え、紫色のエネルギーを収束させていく。
『ウォリャアアアーッ!!』
『テヤーッ!!』
黄金のクウガが必殺の『超マイティキック』を放ち、ティガ渾身のゼペリオン光線も、同じタイミングで敵怪獣にヒット。
二つの光エネルギーを流し込まれたギガドラスの体は、耐えきれずに大爆発を起こした。
怪獣と、そこに注がれた怪人、二体分の闇の力が二大ヒーローの技を受けて、天空へと
超クウガとティガは、勝利を認め互いにうなずき合う。そしてガッチリと握手を交わした。
『シュワッ』
そうしてウルトラマンは再び空へと帰り、クウガの体も等身大へと縮小、変身を解除し五代雄介のものへと還る。
あたりには、すでに一号をはじめとした歴代ライダーの姿はなかった。
きっと役目を果たしたのち、雄介の勝利を信じて各々の戦いの場へと戻ったのだろう。
雄介の隣には一条が歩み寄る。が、その顔は浮かない。
「どうしたんですか、一条さん?」
「……さっき未確認が言っていただろう。『自分たちグロンギ以外の闇の力がある』、と」
「今の怪獣、ギガドラスってやつのことですよね」
「俺には、あの怪獣が一体だけとは思えない。もっと、さらに多くの闇の獣たち……もしかしたらウルトラマンと同じような、『闇の力を持った巨人』もいるのかもしれない」
今はまだ推測でしかないが、もしそれが的中していたら……恐ろしい予感が一条をおそう。
「俺たちにできることは、あまりにも少ない。今回のことで、俺は自分の無力さを痛感したよ」
「一条さん……」
そんな仲間に、雄介は……いつものように、笑顔で声をかける。
「大丈夫ですよ! その時は、またウルトラマンが助けにきてくれます!」
それは決して、自分の責任を放棄しての考えではない。
「できることが少なくても、それでも俺たちは、俺たちにできることをやらないと! そうでしょ?」
「俺たちにできること……未確認生命体、グロンギと戦うこと……」
「俺や一条さんは未確認を、怪獣や巨人の対処はウルトラマンに。適材適所ってやつですよ」
「そうか……そうだな。力を合わせれば、一人では守れない人たちも、きっと」
一条薫は、いつだって五代雄介の明るさに助けられてきた。
雄介もまた、一条に助けられている。
互いに助け合ってこそ、人は人でいられるのだ。
「なら、これからも頼むぞ、四号。いや……『仮面ライダークウガ』!!」
「はいッ!」
交わし合ったサムズアップが、なによりも心強い。それは二人の共通する思いだった。
クウガは当時、本来のシリアスな作風が受けなかった場合、先輩ライダーを共演させるテコ入れ案があったと聞き、この作品で取り上げてみました。