ケイト・リードが変わるまでの話

1 / 1
ケイト・リードという女

 紅い獣、厄災、十万殺し……

 アタシの呼び名は色々ある。

 けれど、アタシの素顔を知る人間はごく僅かだ。

 だって大半は殺しちゃうし? 

 アタシなりの流儀だ、殺し屋は顔が割れてはいけない。

 有名になればなるほど逆に殺されるリスクが上がるからだ。

 だから徹底的に痕跡は消す。

 顔を見たやつは殺す。

 ドローン撮影で撮られたら、撮った奴を殺して映像をインターネット上のあらゆる場所から削除する。

 何? そんなことしたら依頼が来ないだろだって? 

 そこは問題ない。

()()()()()()()がいるからだ。

 まぁ、大半は国のトップなんだけどさ。

 アタシの主な仕事は戦地を()()()()

 敵も味方も関係なしに残忍に殺す。

 そうすると互いの国は憎み合い戦争は激化する。

 それで金を稼いでる国がいる。

 アタシからしたら金さえ払って貰えれば戦争とかどうでもいい。

 アタシは金払いが良いやつにつく。

 そうして行ったらどう言うわけか有名企業の令嬢のお守りをすることになっていた。

 最初こそ不満だったけど、ほぼ何もしなくても毎月1億入るんだ、すぐ順応した。

 それに仕事の掛け持ちオッケーとか優良物件すぎる。

 だからこそわからない、仕事を受けた時の依頼者からの()()()の意味が。

 

「あの娘と友達になって欲しい」

 

 意味がわからなかった。

 普通殺し屋に友達になって欲しいとか頼むか? 

 まぁ、そこはあくまで()()()、やりきる義理はない。

 そうしてアタシは蒼葉邸の一員になった。

 最初こそみんなビビってた……と言うかめっちゃ警戒していた、一人を除いて。

 その令嬢(バカ)はアタシがどう言う人間かを知らされているのにも関わらず事あるごとにアタシに関わってきた。

 正直うざかった。

 けど、ここで殺したら契約破棄だし、館の面々は少なくともアタシ一人で対処するにしても骨が折れる程ヤバいやつだらけだった。

 だから仕方なくあしらってきた。

 けど、ある日令嬢(バカ)の秘め事を知った。

 たった一人で大勢の……圧倒的な武力差の敵を相手取っている。

 しかも宇宙生物とか吐かすんだぜ? 

 最初こそ馬鹿にしてたけどアタシもそれに襲われた。

 忘れもしない、四つ腕の巨人。

 縦に割れた口から粘液を垂らすクソキモい野郎。

 人生で初めて負けを知った。

 死を伴う負けを。

 だけど、奴が来た。

 あの令嬢(バカ)は拳一つ……って言っていいのかな、アレ、まぁ、拳一つと引き換えに四つ腕の巨人をぶっ殺した。

 腕はグチャグチャになっているのに、痛いだろうに、令嬢(バカ)はアタシのことを心配してた。

 普通逆だろ。

 確かにアタシも死に体だったけどテメェの方が重症だっつうの。

 それがなんかおかしくって、つい笑っちまった。

 そこからアイツに背中を預ける様になった。

 人生初めての友達ができた。

 殺すことしか知らなかったアタシにアイツは色々な景色を見せてくれた。

 まぁ、こき使われたりもしたが……

 次第にアタシは令嬢(バカ)の役に立ってやりたいと思い始めた。

 屋敷の連中とつるむ様になったのはその頃からだ。

 技術に長けた奴がちょうどいたから銃を改造してもらった。

 剣術と武術に長けた奴がいたから模擬戦の練習相手になってもらった。

 そこからまた友達が増えた。

 次第に屋敷に慣れてきた頃、令嬢(バカ)が変わっちまった。

 昔は笑顔だったのに笑わなくなっちまった。

 一人で物事を抱える様になった。

 傷つくことが増えた。

 まるで昔の自分を見ている様だった。

 痛ましかった。

 だから協力しようとした。

 けど、アイツはアタシのことを拒絶した。

 悲しかった。

 初めて悲しいと思った。

 拒絶されたことじゃない友達の一人救えない自分が嫌になった。

 だから、アタシなりのやり方で介入する事にした。

 化け物には化け物をぶつければ良い。

 こちとら十万殺しの厄災の獣だぞ、四つ腕の巨人がなんだ、死体の化け物がなんだ、全員ぶっ殺してやる。

 そう言って実行した。

 怪我こそしたけどどれも成功した。

 だけどその度に令嬢(バカ)は泣いていた。

 

「どうして私なんかのためにそんなことをするの?!」

 

 そう言って泣いていた。

 アタシは気恥ずかしくて、上手く言えなくてはぐらかしていたけど、友達だからだ。

 初めてできた大切な友達、だからこそ手助けをしてやりたかった。

 たった一人で大敵に向かうのは無謀だ、だからアタシ達に頼って欲しかった。

 確かに死ぬかもしれない相手だ、だけどアタシは……アタシはコイツのためなら死んで良いと思っちまった。

 生き残るために殺し屋やってたアタシが、だ。

 その後、何回も喧嘩をした。

 お互いの信念のぶつけ合いをした。

 そうしていつしか互いを理解した。

 そうしてアイツは背中をアタシ達に預けた。

 アタシがアイツに背中を預けた様に。

 そこからは無敵だったどんな難題もアタシ達なら突破できた。

 そうしてアイツはまた笑う様になった。

 それがたまらなく嬉しかった。

 そうして今日もアイツのそばでアタシは戦う。

 アイツの願いが叶うその日まで……


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。