忠誠こそ我が名誉inトリニティ   作:もりもりバナナ

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もしかしたらカノエがほんとに前世で一緒だったんじゃないかって不安なんですけど。

まぁ、お迎えできてないんですけど。



責任を取るとは、基本的人権を持つのと同意義です

 

「………」

 

クソッタレだ

 

どいつもこいつも…頭のイカれたクソしかいない

 

戦闘を無事勝利に終えたばかりだというのに_なんなんだこの気持ちは?

いや、明確な声はすぐ目の前にあるんだが

 

「………」

 

兎……をモチーフにしたヘルメットだかカチューシャだがを身に着けてる馬鹿ども

 

取るに足らないカス共だ___

 

いや、俺別にこの公園に居座られたことに腹が立ってるんじゃぁない

 

てかそもそもこの公園は俺の会社の物でさえない

 

 

ハイドリヒの後ろから部下がそっと声を掛ける

 

「…社長、ラビット小隊の使用した兵器の出元が判明しました」

 

「………」

 

「全ての兵器に『H・G』の刻印が確認されました。全て我が社で製造された物で間違いないと思われます」

 

「…それは……以前の(・・・)で間違いないですか?」

 

「はい、その通りでございます」

 

「……ありがとうございました。下がってよろしい」

 

「はっ!」

 

「………」

 

 

何故、連邦生徒会という後ろ盾が無くなったラビット小隊が、ここまで装備を揃えられたか気にならないだろうか?

 

俺の会社の製品はどれも結構いい値段する

 

だが、彼女らにもう連邦生徒会という財布は無くなった

 

しかしつい先月、いつも通り_いや、いつもよりも多くラビット小隊は様々な軍事物資を買ってくれた

 

___買ってくれた………か?

 

奴ら、料金を踏み倒しやがった

 

 

「__はぁ」

 

俺の後方では、カンナさんが部下を褒めているようだ

 

 

「貴官らの武功はすでに耳に入っている__」

 

「え?休暇20日だって?」

 

「言ってない…てゆうかそれはもっと上の管轄だ。

まぁそれくらいは期待しても良いかもしれないな」

 

「そうですよね!見ましたか?私の警備局のように鮮やかな射撃!」

 

「ご苦労であった、報酬については来月の賞罰の発表を楽しみにしていろ」

 

「えぇ?今すぐ貰えるわけじゃないんだ……くっそ」

 

「も、もしかしたら本当に警備局に……!」

 

「それはホントいらない」

 

さっきの戦闘の喜びを分かち合うかのごとく、まるで年相応の女子高生のように喜び合っている

 

 

「………」

 

続いて俺等の正面を見てみよう

 

__そこには、哀れにも拘束されて跪いている兎どもが見える

 

 

「あ、あんな頭悪そうな奴に…この私達が負けたって言うの…?」

 

「嘆いてる所悪いがモエ、お前がむやみに対空ミサイルを使い切ったのも敗因の一つだぞ」

 

「はぁあ!?サキがもっと守ってくれてたら善戦出来てたのにな〜〜〜!!!」

 

「なんだと!?対空ミサイルを地面に向けて乱射したお前に言われたかないわ!!!」

 

「…私達もう終わりなんだ……____」

 

「………」

 

 

「………ふんっ」

 

こんな時なのに呑気なやつだ

 

 

「先生殿に……敬礼!

 

ビシッ!

 

「うわぁっ」

 

ハイドリヒの号令とともに繰り出される美しい敬礼

 

誰もが一糸乱れぬ風貌で行動するその様は、彼らがよく訓練された兵士だということを物語っている

 

「び、びっくりした……」

 

当の本人が困惑しているのは滑稽だが

 

 

「こんにちは!君たちが例のラビット小隊だね?」

 

 

「言っとくが、お前に話すことなんて一つもないからな」

 

サキが睨みつける

 

「冷やかしに来たわけ?それとも馬鹿にしに来たの?」

 

モエは決して苦痛な表情をしない

 

「…貴方がシャーレの先生ですか?」

 

ミヤコはまだ諦めてないかの如き顔をしていた

 

「うん、そうだよ」

 

「__なるほど、貴方が連邦生徒会に飼いならされた超法的権力を持つ先生ですか……」

 

 

 

「貴方みたいな人が一番大嫌いです」

 

「地獄に落ちろ」

 

「二度と会わないだろうね」

 

 

「う〜〜〜ん、元気だ」

 

先生は余裕そうにそう返答する

 

先生は彼女らの最後の悪あがきさえものともしない。

流石大人と言った物だろうか__現にハイドリヒは我慢が出来ていない

 

 

「…貴方、その帽子素敵じゃないですか」

 

俺は一人の少女を指さし、話を持ちかける

 

「………」

 

「おや、話もしたくないというスタンスですか?人と話ができない人間は嫌われますよ」

 

「………黙れ」

 

「ふふっ___おい」

 

「はっ!」

 

「な、やめろっ……!」

 

ハイドリヒに命じられた部下は、サキのお気に入りのヘルメットを強引に取り上げる

 

多少は抵抗したものの_ただの悪あがきの一部だった

 

「………」

 

「社長、どうぞ」

 

部下は取り上げたヘルメットを丁寧にハイドリヒに渡す

 

「ほう…我が社の製品ではありませんが……丁寧に作られてますねぇ。この耳の付け根辺りは雑さが目立ちますが。

既製品に取り付けたんでしょう」

 

「う、うるさい!慣れてないんだぞ!」

 

ヘルメットをまじまじと見つめるその眼は…いつしか悪ガキのように輝き出す

 

 

ポイッ

 

 

「なっ!」

 

遠くに投げ出されたサキのヘルメットに注目が集まる

 

無造作に、ただ適当にその場に投げ出されたヘルメットは何の抵抗もなく静止する

 

「なにするんだよ!」

 

「取りに行きなさい」

 

「はぁ?イカれてんのかお前……」

 

「くひひっ、この前代金踏み倒された事まだ根に持ってんじゃない?」

 

「……え?踏み倒されたの?」

 

「………」

 

ハイドリヒは特に回答を急がない

 

今、彼は全てにおいて余裕だからだ

 

「取りに行かなんだったら……この公園のゴミとして処分されるだけですよ?」

 

「………くそっ、分かったよ」

 

ザッ

 

サキは渋々と立ち上がり、彼に聞こえない程度の愚痴を零しながら歩きだす

 

歩き出したサキは……その足で一歩一歩確実にヘルメットに向かってゆく

 

 

ザッザッザッ

 

 

乾いた土が踏まれる音が聞こえる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドンッ!!!

 

 

 

「ぐあっ!」

 

「サキ!よくもぉ……っ!」

 

一発の強い強い銃声が鳴り響き、サキはその場に倒れ込む

 

「ちょっハイドリヒ!」

 

 

ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!

 

「やめてぇ!」

 

「……っ」

 

先生がハイドリヒの腕に掴みかかり、銃声は止む

 

「どうされました?先生」

 

「どうしたもこうしたも…こっちのセリフだよっ!?」

 

「ぐぉ………っ」

 

サキは地面に嗚咽とともに突っ伏したまま動かない

 

「これが…貴方の正義ですか!」

 

ミヤコが必死にハイドリヒに言葉を投げかける

 

それは慈悲をとう物ではなく、ただの怒りに満ちた言葉だった

 

 

「そうですけど?」

 

「っ!?」

 

しかし、返ってきた言葉はあまりにも無情だ

 

「__逆に問わせてもらいます。こうして勝手に公園を占拠し、暴力をふるい、他人に迷惑をかけるこの行動は果たして”正義”だと思いますか?」

 

「…私の正義は私が決めます、誰かによって作られた仮初の正義など邪魔でしかありません」

 

「『私が正義』?随分と面白いことを言いますね。

___そもそも、誰が貴方みたいな人間にその権利を与えたのですか?」

 

「それは……連邦生徒会長が………」

 

「なるほど、連邦生徒会長が貴方に『他人を傷つけても自分の思うようにやれ』と教えたのですか」

 

「ち、違います!」

 

「いいえ違いません。いえ、結局のところ貴方は個人です。社会は個人で成り立ってるのではなく集団により回されます。

正義には説明責任があり普遍的でなくてはならないのです_そして土台を示さずに好き勝手正義だの何だのほざく貴方達は”根拠なき権利の宣言”の範疇を出ません」

 

「…だとしても……私達には信じるべき道があるはずです」

 

「その道を進む貴方がたに……果たしてその道が間違っていた場合謝罪する準備(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)はありますか?

____ありませんでしたね。責任も取らず…ただ嫌いだと我儘言うだけのカスです。貴方がたは」

 

「………」

 

「…はぁ………結局のところ_正義は誰の所有物でもなく、誰かの一存で決まるものではありません。

責任も取れない”自称正義人間”は我々と同じように幸福追求権を求めようとしないでください」

 

 

 

とうとう、彼女らの反論の声さえ聞こえない

 

彼に届いてないのではない__言葉にさえ出ていないのだ

 

 

 

 

「まぁ今日のところはこれでいいです。カンナさん、後は頼みましたよ」

 

「………了解です」

 

カンナはそれだけ聞き入れると、他の生徒と共にラビット小隊を護送車に無理やり乗せる

 

するとカンナは先生の方に向き直し…

 

「先生、先生にもヴァルキューレに付いてきてもらいます」

 

「……分かったよ」

 

そう返答すると、先生はカンナの後ろにピッタリと付いていき……

 

車に乗る瞬間、こっちに振り向く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は…生徒を信じるよ」

 

 

 

 

 

「行きますよ先生」

 

「うん」

 

先生を乗せたパトカーはすぐに公道に入り、スピードを上げて過ぎ去ってゆく

 

その場に悲しい空気を残して

 

「………」

 

先生が乗った車を目で追い__ついには曲がり角で見失ってします

 

それを見つめるハイドリヒの目は…何処までも虚無感で覆われていた

 

 

「…その生徒の中に…私は入っていないんですか__?」

 

誰もそれに返答することはない

 

部下たちは全員綺麗に突っ立ったまま社長の命令(主のオーダー)を待っている

 

 

「……帰りますよ」

 

ハイドリヒも、車に乗りその場を離れるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

走る

 

流れ行く景色などは目に入らないが_前方を注意しながら車で走行する

 

「………っ」

 

 

『生徒を信じるから』

 

 

その一言にどれだけの意味が含まれていたのかは測定できない

 

もしかしたら一つもないかもしれないし…数えるのも億劫になるほどあるかもしれなかった

 

ただ、一つだけ言えるのは___

 

「……敵……ですか」

 

 

今まで味方してくれた先生

 

泣きついても_ずっと側で味方してくれた先生

 

腹に銃弾を撃ち込まれても、無理して笑顔を作ってくれた先生

 

そのとびっきり優しい元気さで俺を照らしてくれた先生

 

家族の絆をもう一度繋ぎ止めてくれた先生

 

 

__そんな先生は今………何処にいる?

 

いつものようにシャーレか?

それともこの前みたいに公園で酔いつぶれてる?

又はトリニティのお茶会にでもいるのだろうか?

さてはゲーム開発部の部室で、皆と楽しくゲームをしているのか?

いや…さては違う学園でまた生徒の悩みを解決しているのだろうか?

そうじゃなければ道路?公園?自宅?ブラックマーケット?__さては、補修授業部の面々に顔を合わせているのでは?

 

 

「………」

 

きっと、何処にもいない

 

少なくとも俺の手に届く範疇にいるとは思ってない

 

「……先生…___」

 

 

勇ましい先生

 

優しい先生

 

可哀想な先生

 

頼りになる先生

 

忙しい先生

 

 

「……何処ですか?」

 

いるはず…見つけれるはず…

 

 

いや

 

 

いや…待て

 

 

お、おお俺は……

 

 

…もしかして___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り返しのつかない存在を、失ったのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










ハイドリヒ_彼って意外とメンタル弱いんすよ。
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