短くてすんません___。
『へ?硬め濃いめ多め?』
『違います__それラーメンでしょ』
場所はヴァルキューレ警察学校のオフィス、特になんの変哲もない場所だがここに彼女らの全てが詰まっている
『あぁごめん、最近食べたラーメンが忘れられなくてさ』
『はぁ…私は「片腕」って言ったんですよ。勝手に脳内変換しないでください』
きっと先生は最後に食べたラーメンが一ヶ月ほど前だからそう変換してしまったのだろう
あ、ちなみにそれから先生はもやし水かいわれ大根生活である
『えぇと…それで片腕がどうしたの?カンナはあるよね。ま、安いもんだよね』
『安くありませんが?先生__いい加減話を真面目に聞いて下さい』
ごめんごめんと、いつものように先生は軽くあしらう
_内容は決して軽くはないという事を先生はまだ知らないのだから
『片腕の男の子、彼はそう言われてました__私がまだ公安局に入りたてだった一年生の頃、このヴァルキューレ内では結構有名だったんです』
『カンナが一年…じゃ、二年前だ』
『その通りです。当時私はペーペーだったもんですからとてつもなく記憶に焼き付いてますね__もっとも、先輩方も焼き付いていたでしょうが』
『__なんで片腕なの?あの子は両腕あるじゃん』
『そうですね、うーん…少し矛盾しますが、彼は両腕があるのですが、片腕なんです』
先生の頭は更にこんがらがる
小さい脳みそを更にフル回転させ、なんとかカンナが言っていることを理解しようと努力していた
『……………ごめん、分かんないや』
『まぁそのはずです。ちょっと話が長くなるかもしれませんが、構いませんか?』
『私が頼んだことだからね、お願いするよ』
了解しましたと、カンナは頷く
それは私が初めて担当した事件でした
担当_と言っても、先輩の後ろを追ってサポートする方ですが
あの日はとても涼しく、雪は降らずとも厚手の物を羽織らねばならないほど寒かったです
『先輩、なんもありませんね』
『ばっきゃろう!こーゆー時に限ってキヴォトスでは大惨事が起きるんだよ!』
『今日はそうならない事を願います』
『尾形、あれか?始末書とか面倒くさいからだろ』
『それは先輩だけですよ__ただ、私は争いが好ましくないだけです』
私の言葉を聞いた先輩は、どこか憐れむような視線を外しそっぽむきましたね
___すると
『こちらヴァルキューレ本部!聞こえますか!?トリニティに近い警官は全てこのエリアに大至急向かってください!』
無線から荒々しい音量で響いてくる
『このエリア…あたし等が一番近ぇな__よし!行くぞ尾形ぁ!!!』
『り、了解しました!』
車がサイレンを上げ速度を上げ現場に急行しました
夜の街に、サイレンが響く
遠くの空を焦がす炎の色が、まるで夕焼けのように建物を染めていたのを覚えています
煙が風に流れ、焦げた木材とプラスチックの匂いが、私の鼻を突き、とっさに咳払いをしました
『……クソッ、遅かったか!』
そう嘆く先輩の目線の先には、燃え盛っている建物がありました
パトカーを停めて、私と先輩は逃げ出すように車から降り駆け出す
火の粉が枚、ガラスが弾け、遠くでは叫び声のような怒号のような音が響き渡っていました
『おいあんた!ヴァルキューレか!?』
すると、建物から一人のオートマタが壊れた右腕をさすりながら近づいてきました
『は、はい!貴方は!?』
『私は警護隊の者だ!まだ交戦状態に陥ってる、はやく加勢してくれ!このままじゃお坊ちゃまもあの方の身も危ない!』
『了解した!行くぞ尾形ぁ!!!』
『はい!』
__その時だった
『ねぇ』
照らすまでもなく明るいその建物の側で
そこに、ひとりの子供がいた
煤だらけの顔、涙の跡__それら全てが悲惨な現状だと示していた
………ですが、私達が注目したのは、その子の安否でも涙の跡でもありません
持ってたのです
その両手にはしっかりと、人間の腕が
『それ……どこで………』
私の足も、その場の時間も止まったような気がします
『君、怪我はないかい?』
最初に動いたのは先輩でした
この子を支えるように隣に移動し、肩を掴んで
その子はコクリと、その場で頷いてみせた
『……お坊ちゃま』
護衛隊の人が呟く
ポタッ
その手から、血がぽたりと落ちる
私の心臓が、音を立てて跳ねた
焦げる音と叫ぶ声、そして空を裂く炎
誰かを救うには、あまりにも遅かった夜でした
『__てなわけです_はぁ、今でもたまに夢に出ますからね?』
『…その話ってさ、ほんと?』
『勿論です』
『その手は誰のだったの?その子じゃなかったんでしょ?』
『詳しい話は聞かせてもらえませんでした__これからは、あくまで噂の話ですよ』
『ふぅん?』
先生は興味ありげに見つめる
『あの事件の犯人は_カイザーという説もありますし、もしくは妬んだ組織の犯行という説もありますが__一つ、興味深い説があります』
『雷帝による犯行説です___ま、実際は証拠があまりにも少なすぎて無くなりましたけどね』
『え?そうなの?』
『はい、証拠が燃えたのかそもそも落ちてなかったのかは分かりません……本人に聞けば分かるかもしれませんが、私は聞けません。恐ろしくて』
『はは、そうだね』
『先生が聞かれてみては?』
『はぁ?私が?』
『えぇ。先生は彼と仲が良いとお聞きしてます』
『____うん、そうだね。ありがとねカンナ』
先生は座っていた体制から体を起こし、カンナに一礼する
それにカンナは敬礼で返しながらもその眼は先生を追っていた
(片腕の男の子__か………)
何気ない道を通る
そこはここ最近通り慣れてきた道路であり、子兎公園への道でもあった
「___ふふんっ!」
先生の手にはビニール袋が握られており、その中には多種多様なカップラーメンが入っていた
きっとこれから会う生徒の喜ぶ表情が待ち遠しくて仕方がないのであろう
(サキは元気かな〜〜〜…またツンツンしてるかも)
(モエはちょっと危なっかしい子だから丁寧に接してあげないと)
(ミユはあまり人前に出たがるようなタイプじゃないからね_こっちから話しかけてあげなきゃ)
(ミヤコは………はやく心を開いてもらえるよう、頑張らなくちゃ___________________________________________________________________________________________________
ドサッ
「よし、先生を倒しました_さっすが正規品のスタンガン!生身の人間だったらよく効きますね!」
「これでコンビニの廃棄t…支給品は我々が再び得るのです!」