ケイが来てくれませんでした。
雨は、世界と世界のあいだに薄い膜を張るみたいに降っていた。
放課後の教室には、私と、彼の席だけが残っている。
彼はまだ帰る気配がなく、窓際で空を見ていた。濡れた校庭を眺める横顔は、いつもより少し遠く感じて、声をかけるタイミングを失ったまま、私は鞄の紐を指でなぞる。
雨の日は、時間がゆっくりになる。
だからきっと、この気持ちも気づかれずに済むのだと思った。
窓に当たる雨粒が、一定のリズムで弾ける。
それに紛れて、胸の奥で何かが小さく揺れた。
「傘、持ってきた?」
不意に彼が振り返って、そう聞いた。
首を横に振ると、彼は少し困ったように笑う。
その笑顔が、どうしようもなく、好きだった。
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
たったそれだけの言葉なのに、雨音が急に大きくなった気がした。
頷くまでに、ほんの少し時間がかかったのは、雨のせいにしていいと思う。
並んで歩く廊下。
肩が触れそうで触れない距離。
濡れた窓に映る二人は、輪郭が曖昧で、今にも消えてしまいそうだった。
昇降口を出ると、雨は相変わらず静かで、傘の内側に小さな世界を作る。
彼の肩越しに、ほんのり石鹸の匂いがした。
このまま、何も言えずに終わるのだろう。
それでもいい、と言い聞かせながら、私は傘を少しだけ彼のほうへ傾ける。
その仕草に気づいたのか、彼も何も言わず、傘を寄せてくれた。
指と指が、雨よりも冷たく、確かに触れた。
その一瞬が、今日のすべてだった。
名前をつけなくても、消えない恋があることを、雨だけが知っている。
「…っはぁ〜〜〜〜っ…あだじもこんな恋がしたいです〜〜〜長官」
「そうですか」
時はデカルトとの騒動が落ち着いて、数日経ったとある
外は雨、ザァザァと地面に叩きつける大粒の水が地面に浸透している。この雨が書類仕事とクソゲヘナ全員を洗い流してくれればいいのに____
こんな土砂降りで、特にやることも無い……書類仕事以外何も無い。ずっと椅子に座ってパソコンとにらめっこだ
「今夜はずっと雨ですからね……まさかっ!このまま私は長官に食べられてしまうのでしょうか!?」
「一体何を言っているのかが分かりません…」
「はぁ〜っあ、私も恋がしたいなぁ〜〜〜」チラッ
こっち見んな
「てか長官!?最近私の扱いひどくないですか!?まるであまり喋りたくないかのような…私は一体何をしたんですか!?」
そりゃお前、クーデター未遂したからだろ
「やはり外が雨だから……」
「…………はい」
俺は考えるのを止めた
てか思ったんだが、武装親衛隊って罪の意識ある人間少なくね?
子供だから謝れば済むと思ってんの?いや、謝って済むのが子供の特権とか言われたらなぁ……
__すると
ガチャッ
「長官殿、客人がお見えです」
「超感度の…ふふっ///」
「黙りなさい。とゆうか客?本日は誰も予定していなかったはずですが…」
「えと……ヴァルキューレ警察学校の尾形カンナさんです。長官、とうとうそこまで……」
いやバレてないからな!?
「まぁいいです。通してください」
「はっ!」
すると、執務室の扉が重々しく開き、彼女の姿があらわになる
その姿は相変わらずといった所だろうか、目の下に隈を備えどこか気だるそうである
「お久しぶりです。カンナさん__」
「お久しぶりです……失礼ですが、他の方は席を外してもらっても?」
「了解しましt「嫌です!」……は?」
突然駄々をこね始める代理ちゃん_こいつホントに俺より年上か!?
「なんでこんな馬の骨に長官を渡さなければいけないんですか!」
「失礼ですよ。やめてください」
「どーせ私がいなくなったら二人で
「はいはい……後で構ってあげますから、今は出ていってくれませんか」
「………分かりましたよ………」
そして、代理ちゃんはしぶしぶと部屋を後にしたのだった
「Verdammt … dabei bist du doch mein Geliebter …!」(ちくしょう…でも、貴方は私の恋人ですからね…!)
ガチャン
「__おほん、失礼しました。全て私の教育不足です……」
「いえ、私としても急に来たものですから…」
お互いに気難しい部下を持っているため、どうやら話が合うようだ__まぁヴァルキューレの方は比較的マシだろ
それはさておき本題に入ろう
「それでカンナさん。本日はどういったご要件で?ラビット関連ですか?」
「いえ、本日付で
「なるほど、我が社と…破棄………なにぃっ!?」
ハイドリヒは理解できない顔でもう一度カンナの顔を見返す
どこか気まずそうな顔から、きっと上層部からの命令だろうと推測できるが、今はそんな事彼にとって重要じゃァない
「も、もう一度お聞きします……貴校は我が社と手を離すって事ですか……っ!?」
カンナは俯いて、一度だけコクリと頷く。
どうやら本気のようだ
………ふぅ
ハイドリヒはドシッと椅子の背もたれに全体重を預ける
「……理由をお聞きしても?」
「………」
「上層部の命令ですか?それとも___」
「………」
「我々に不手際があったのであればお伝え下さい。最善を尽くして改善します」
「………」
どれだけ話しかけようが、彼女から返答は一切返ってこない
ただ俯いたまま、ハイドリヒがこの話題に終止符を打つのを期待しているようだ
___だが
「カイザー」
「__っ」ピクッ
それで引くような男じゃない
彼は今の反応を見逃さない
「__なるほど、我々からカイザーに入れ替えたって話ですか……まぁ良いでしょう。アレらの方が良い銃を与えてくれるからとか、どんな利益があるのかはだいたい想像できます」
「___はい」
「そして、貴方がたがカイザーにチェンジした時の我々の損害も……」
「………」
H・G株式会社はグレーゾーンとホワイトゾーンを反復横跳びしている
商品の物販や卸売、その他のサービス業はだいたい完全に白。
それに比べて、軍事や兵器販売の殆どはグレーゾーンを突っ走っている
それでなぜ強制執行されないのか?理由は簡単だ
一つ、外部との機密保持は完璧にこなすこと
二つ、法の執行機関と手を繋ぐこと
__今回、この二つ目が完全に潰えた。今、まさにこの瞬間
カイザーはこのグレーゾーンをきっと察知していたのだろう。俺の首を絞め殺す気だ
「それとも、あの子ウサギ街からウサギを締め出す気か……それについては?」
「……っはい。私達はこれから、より潤沢になった装備でRABITTO小隊に終止符を打つ予定です…」
「それもカイザーからのお達しですか?公安局が企業の為に動いてはいけないでしょ…まったく__」
「………」
答えなんか聞かなくても分かる
もし、だ
「もし、ですよ」
「_はい?」
「もし、その取引している物的証拠が、我々の手に渡ったら?」
「それは…きっと、前の関係に逆戻りでしょうね」
「ふふっ___えぇ。了解しました…」
スッ
ハイドリヒはそれだけ聞くと、椅子から立ち上がりドアノブに手をかける
「は、ハイドリヒさん?何処へ__」
「決まってるでしょ」
「RABITTO小隊と、先生の所にですよ」
「________は?」
雨がザァザァと降っているその公園
「ちょっ、雨激しすぎだろっ!」
「がんばって〜〜〜っうへっ!?」
「先生っ!!!耐えて!」
ウサギ達と一人の大人が奮闘していた
「やばい…やむ気配が無いよぉ〜〜〜っ!」
「先生!ファイト!」
皆が各々スコップで雨と応戦しているが、やはり数の暴力
ゲリラ豪雨には勝てないでいる
ベチャッ!
「きゃっ!」
ぬかるんでいた地面のせいで、先生はこけてしまう
「大丈夫ですか?先生」スッ
「あ、ありがと……?」
先生は差し伸べられた、やけにゴツい手を取り、立ち上がる
「な、なんで………」
「………っ!」
「はぁ〜〜〜っ……ほんと最悪」
「ひ、ひゃぅぅ……」
「えっと……」
「な、なんでハイドリヒがいるの?」
「……………」
激しく降り注ぐ雨の中、ウサギと大人は、一人の生物兵器を手にしたのだった
「………」
そこで、一人のオートマタが頑丈な個室で作業を繰り返している
「…………」
パソコンには、黒く、はっきりとした文字で__
Operation Letzter Morgen《最終暁作戦》
と綴られていた____
そのままスクロールすると、作戦の全容が顕になる
Operation Letzter Morgen
《最終暁作戦》
【閲覧制限文書】
文書番号:OP-LM-0 / ████
機密区分:████████
複写:禁止
転送:禁止
保管期限:未設定
【概要】
本作戦は███████████████████████に該当する。
従来の██████████および████████████を前提条件とし、
██████████████████████████████の発生を目的とする。
【作戦目的】
█████████████████████
████████████の███
再█████████の████
【適用範囲】
地域:████████████
領域:████/████/████
同期条件:██████████
【実行条件】
発令後 ████ 分以内
████████の介入 不許可
██████判断 全面禁止
【成功判定基準】
█████████████ 不成立
████████ 不明
███████████ 消失
※上記████が同時成立した時点で
「████」と判定する。
【中止・修正】
████████████████████
████████████████████
(当該項目 ████)
【事後処理】
評価:██
記録:██████
証跡:████████
【備考】
本作戦名に含まれる「Morgen」は
████████████████████████。
時間的・象徴的解釈は████████。
【追記・最終行】
実行時刻は記録されない。
記録が不要になった時点が、実行時刻である。