君はなぜアリスとハイドリヒを出会わせたのか分かるかい?
「スヤー、スヤー…」
ピピピピ!
カチッ
ムクッ
朝
いつも通り目覚まし時計の音で眠りから覚める
小鳥が嬉しそうにさえずっている中、朝特有の気だるい感覚はなく気持ちよく起き上がることが出来た
朝食は軽めに取り、コーヒーを楽しみながら武装親衛隊の長官の正装に着替える
こうゆう気持ちの良い朝って植物に水を掛けているシーンをよく見かけるが、あれはほんとうに素晴らしいことだ。
やはり前世も田舎にいたから体が植物を欲している
いざ植物を買って毎日やってみるととっても愛情が湧くのが実感できる
シュッシュッと、窓側に置かれている植木鉢に水を掛け、植物は嬉しそうに太陽光を反射させる
「〜〜〜♪」
自然と何処かで聞いたことのある歌を鼻歌で愛でながら、準備をする
カバンに書類を詰め、お土産であるノンアルコールワインが入った紙袋を持ち_俺は今、とある場所へ向かおうと歩みを進めていた
その足取りはとても軽く、まるで空へ飛んでいけそうな気がする
向かう場所はシャーレ、
俺は先生に会いに行くのだっ!いわゆる『当番制』ってやつ。
軽く説明すると___激務の先生を助けるために各学園からローテーションで一人、シャーレに来て先生と一緒に仕事する制度ってわけ
だから、普段は使わないような電車に乗る
トリニティへはいつも徒歩で通学していたし、それまで小学校と中学校はお迎えの車があった
だからなにげにこの世界の電車を使うのは初めてだ
車で行くのもアリだが……たまには電車を使うのも楽しいかもしれない
ガチャッ
そう考えながら、俺は自宅を後にした
__________
「……ここが……駅」
ゴクッ
俺は無意識に喉を鳴らす
__ああ、多分驚愕しているんだろう。この駅のデカさに
す、すっげぇ………たかが駅なのにここまでデカいのか!?
なにぃ!駅とデパートが繋がっている!?
いかんいかん。
前世は田舎の駅しか見たこと無かったから、めっちゃこうゆうのに驚いたわ
え?この前のカードゲームの大会にはどうやって行ったかって?そりゃあ車だよ
しかし、仮にも俺は武装親衛隊の長官だ。ここで驚いているようじゃあいけない
俺は周りに悟られないように静かに駅内に入った
_____
ゴウンゴウン
「………」
中は思ったよりも普通。特に面白みもない
駅は慣れてないけど電車だったら何度か入ったことがあるからね
しっかし、この時間は意外と乗っている人が少ない
俺はバレないように周りを見渡すと、あらゆる情報が目に飛び込んできた
一つはメイド姿の少女
__俺は夢でも見ているのか?
二つは二人仲睦まじくゲームをしている姉妹
あれ?この前大会で見たような………
三つは__特に無い
まぁ触らぬ神に祟り無し、だ。最寄り駅に着くまで静かにしていよう
そうだ、スマホでニュースでも見よう
そう思いついて俺は懐からスマホを取り出す
その時
「ねぇ!」
「?」
前方の方から何やら元気な声が聞こえてきた
その方に目を向けると__
まるでどデカい大型犬のようなメイド姿の女性が、満面の笑みで待ち構えていた
は?
言っていることが分からんかもしれんが俺にも分からん
だが
その言葉のまんまだ
「__あ!私の名前は
豊潤な胸を上下に揺らしながら、彼女はさも当たり前かのように自己紹介する
あれ?これって俺も自己紹介すべきか?
………
「えっと…私の名前はラインハルト・ハイドリヒです。長いのでハイドリヒだけで十分ですよ」
「うん!よろしくねっハイドリヒ君!」
お、おう……
彼女は大声でそう話すから、結構周りからの視線を集める
「な、なんで私と自己紹介を?初対面だし場所おかしくないですか?」
俺は率直な疑問をぶつける
それに対して彼女は、ユメ姉さんくらい明るくこう答える
「勘!!!」
「は?」
その時
『まもなく〜シャーレ前。忘れ物が無いよう、置きおつけてください』
「あ、私はここで降りますね。ではっ」
シュバッ!
「あっ」
俺は
__________
「行っちゃった………」
「おいアスナ。さっきのは誰だ?」
ちっちゃいメイド服がそう問いかける
「あの人はハイドリヒ君だよ」
「ふーん。で、どうしたんだ…まぁアスナが声を掛けるくらいだからなんかあんのは分かりきってるけどな」
「えっとね。なんか大きな雰囲気だった!」
「は?言語化されてねぇぞ」
「う〜〜〜ん……なんだろ」
「アリスちゃん、みたいな?」
「は?どこも似てねぇぞ」
ちびメイドはつっぱりとそう返答する
「でも、似てる気がするんだ」
「ふぅん、そうか」
__________
「はぁっ、はぁっ」
俺はやっとの思い出シャーレに着くことが出来た
なんだよまじで……ビルが爆発するとか聞いてねぇよ
これがキヴォトスさ
そんなどうでもいい考えをしながらも俺はシャーレの内部に入る
トリニティには遠く及ばないが、それでも綺麗だ
コンビニさえあるその建物はまさに利便性の塊だろう
トリニティの建物とは少し方向性が違うね_これはこれで好きだ
ウィィィン
備え付けてあるエレベーターに乗り、先生の仕事部屋がある階まで上る
__________
「…………」
カツカツカツ
特に面白みのないシャーレの廊下を進む
やはりトリニティのような綺羅びやかな場所に在中しているからだろうか、こうしてシンプル…いや、質素な壁を見ると何処か悲しささえ覚える
__考え方が違うからだろうが
しかし、こうして違った建物を見るのもまた一興
そのうち山海經とか百鬼夜行に行きたいなぁ、確かあそこらへんは和風っぽかったはず
トリニティはゴリッゴリの洋風だからたまにはそうゆう所に行くのも悪くないかもしれない。できればアズサと一緒がいい
カツカツカツ
ピタッ
俺は『先生❤️』という名札が掛けられた扉を前に、少しだけ身なりの整理をする
「………」
軽く襟を整え、ボタンは全て留まっているかを確認し、いざ入るためにノックをしようと手を前に出す
__すると
扉の奥から何やら騒がしい声が聞こえてくる
ん?
声の数にして3人ほど、先生と…………他二人は誰だ?
「…………」
俺は一応ホルスターにある拳銃に手を掛けながら、ノックはせずに静かに侵入する
その先でハイドリヒを待っていたのは驚きの光景だった
__________
「にはは〜〜〜!」
「こらコユキっ!まちなさぁーーーい!!!」
「………わ、私の__宝物が…………」
机を足場にして逃げるピンク髪の女
それを追いかけるユウカさん
死にかけてる先生
「__は?」
この状況になれるには少し時間を要したが、今は死にそうな先生の救助が優先だ
俺は先生のすぐ近くに滑り込み、事情を聞く
「せ、先生…大丈夫そうですか?」
「は、はははハイドリヒじゃん……今日はどうしてここに?」
やばい、目の焦点がまったくあってないぞ!?
「なぜって…今日は私が当番です」
「な〜っな、なるほどぉおおぉぉおおおっ」
駄目だこれ
先生はもう精神が壊れてしまったが、まだ知っている人間がいる
そう
「ユウカさん!今どんな状況ですか!?」
「あ、ハイドリヒさんじゃない!見ての通りよ!」
何処見れば良いんだよ
「ひとまず、あのバカコユキを捕まえてちょうだい!」
そう言って再び走り出すユウカさん。
その前方には小柄な少女が逃げ回っていた
「にははっ!遅いですよユウカ先輩!そんなんだから前から太ももは細くしろって………」
「くぉらぁぁぁぁ!!!あんた!捕まえたらただじゃおかないからね!」
「捕まらなければどうってことないですよーーー!!!」
「待ちなさーっい!」
「………」
カートゥーンアニメ見てるみたいでオモロ
__じゃなくて!
スッ
俺は紙袋からお土産として持ってきたワイン(ノンアルコール)を取り出し、床にそっと転がす
コユキの進行方向上に、だ
「にはははは〜〜〜!」
「待ちなさいってば!!」
勿論彼女は逃げている際、全くと言っていいほど前を確認していない
それが命取りとなるなって想像も出来ていないだろう
「にははっ「ツルッ」、あっ」
勢いよくワインに足をおいて、想像通りの体勢でずっこける
そして__
ガシャァァァンッ!!!
「ギャッ!!」
盛大にコケる!
「いたた………」
「このバカコユキ!」ダッ
「!」
ドゴォ!!!
「ッッッッ!!!」
ユウカは勢いよくコユキに向かって膝蹴りを食らわす。
コユキはあまりの痛さに声が上げられていない様子を見るに、とてつもない威力だということが一目でわかる
ハイドリヒは金輪際ユウカに対して歯向かわないようにしようと決心したのであった
__________
「すみませんでしたっ!」
「ず、ずびばぜんでじだ………」
「いえいえ、私はやるべき事をやったまでです」
「で、ですが___」
「大丈夫です。お金は後でセミナーに請求します」
「え」
ユウカさんの太ももアタックの後、俺と先生は謝罪を受けていた
「てかなんですかこれ、ぶどうジュースみたいな匂いがするんですけど………ぺろっ」
「こら舐めるんじゃありませんっ!」
「ワインですよ、ノンアルコールの」
「へぇ〜〜〜、だからぶどうみたいな味なんですね」
「自家製ですからね、とっても美味しいでしょう?」
「そうなんですか?今度私にごちそうしてくださいよ〜〜「ドガァ!!」いたっ!」
「まったく反省しないわね……いいわ、帰ったら反省部屋送りね」
「ええ!?あそこ退屈なんで嫌ですよ〜〜〜」
「文句言わないの!」
「あ、あはは……」
ここで俺はずっと聞きたかったことをようやく聞きだす
「そういえばなぜこのようになったんですか?」
その回答は以外にも、先生が答えてくれた
「ハイドリヒ」
「はい?」
「______」スッ
「?」
力なく指差されたその先は、ガラクタのような物が散らばっていたのが見える
それは___
「プラモデルですか?」
「」コクッ
そこには何かの人形のプラモデルが。顔は砕け、四肢はちぎれ、胴体は縦から真っ二つに割れている状態だった
普通ここまで酷くなるか?とは思うが、まぁここキヴォトスだし
「これをコユキさんが?」
「ちょ、ちょっと誤爆しちゃって………」
やっぱキヴォトスだな
「ああああっぁあぁぁあぁぁぁ」
「せ、先生…しっかりしてください!」
先生はいつの間にかシナシナになっている
「先生、また新しいのを買えばいいじゃないですか?それともこれはプレミア品なんですか?」
「違う」
即答かよ
「でもさ……これ見てみ?」スッ
「?」
そう言って先生は己のスマホを開き、とある画像を見せる
それは紛れもなく、その壊されたプラモデルのサイトだった。
どうやら公式サイトで販売されているらしい
「なんだ販売されてるんじゃないですか」
不幸中の幸い__だと思うじゃん?
「……嘘でしょ!?」
いきなりユウカさんが声を荒げる
「こんなにも値が張るんですか!?」
__どれどれ?
そこには確かに50万円と記載されているのが分かる
「そうだよっ!これに私の給料の大半を吸われたんだよぉ……」
「それは…災難でしたね!」
「コ〜ユ〜キ〜!!??」
確かに先生にとってこれはそうとう高価な物だろう
先生にとっては
「私が払います」
「「「!?!?!?」」」
「50くらい大したことはありませんよ」
「ほ、ほんとに!?」
先生はまるで命を取り戻したかのように若々しくなる
「さ、流石はトリニティね………」
「はい、まぁ今回壊されたワインと同じ価格らしいんで、すぐに払えますよ」
「なぁ〜〜〜んだ、安心した!」
「にははっ!これで私の罪もn「ちょっと待って?」な、なんですかユウカ先輩……」
「今なんて言った?」
うん?ちゃんと聞き取れなかったのかな?
「ですから、壊されたワインと同じ価格です__と」
「コユキが壊したワイン?」
「はい」
「それって誰が弁償するんだっけ?」
「ミレニアムのセミナーですね」
「結局−50万じゃない!!!」
今日もユウカは元気だ
結局どちらもハイドリヒ負担になった
コユキは磔刑に処された¹
__________
「あはは。今日はありがとね〜」
「いえいえ」
結局あの後、特に面白みのない業務が続いた
__いや、先生と一緒に仕事ができた事自体が素晴らしいことだがな
そんな微笑ましい事を考えていると、その空気を消し去るかのように通知の音が聞こえてくる
ハイドリヒのスマホじゃぁない。先生のタブレットだ
「ちょっとごめんね」
そう言って先生は俺とは反対方向を向き、通知の内容を確認する
俺はタブレットの中で何やら少女が困惑した表情で話しているのが見えた
無論、声も聞こえる
『先生、何やら怪しい通知が来てます』
「え?」
先生は思わず聞き返す
『はい、発信源も誰がこの通知を送ったのかも分かりません……』
「それはなんとも怪しいねぇ__どんな内容?」
『えっと…どうやら今日来てほしい場所があるらしいです。それも廃墟』
「よし、行くか」
『えぇぇ!?』
「大丈夫だって。なんかあったらすぐに逃げるし、なんてったって私には天才スーパーAIのアロナちゃんがいるからね!」
『えへへ………///』
「じゃあもう行くからね」
プツッ
そう言って先生はタブレットの電源を切った
「___先生」
「あ、今日はありがとね。もう遅いから帰りなよ」
「__今誰かと話してました?」
「えっ!、いや…わ、私さ!っ、通知来る時ちょっと声出すクセがあって……」
__なるほど
話を聞くに、どうやらタブレットの中の少女の声は普通の人間には聞こえないんだろうな
なぜか俺には聞こえたが、先生が慌ててるのは普通聞かれてないはずのものが筒抜けだったからだろう
___まぁ、先生は隠し通せてると思ってるだろうがな
「そうですか。ではっまた今度」
「うん、ばいばーい」
俺は見送る先生を背にして、帰路につく_______
わけねぇだろ
_______________
(着いた…人気がないところだなぁ)
先生は言われた通りの場所に来ていた
すると
ガサ
「ん?」
何やら奥から怪しげな人物が出てきた
「君かな?私を呼んだの」
先生がそう言うとその人は姿を現した
しかし、先生はその顔を知っていたのだ。忘れるわけも無いだろう
「サオリ……?」
そう、物陰から出てきたのはかつて先生の腹を撃ち抜いた、あのサオリであった
その瞬間
ガッ!
サオリが土下座の体型を取る
「!」
「アツコが……連れて行かれた………」
少しづつ、懺悔をするようにサオリが話す
「他のメンバーも…アリウスに襲われ、散り散りに………生死も不明だ」
「……」
先生はその姿をただ黙って見ている
「…あれから何日も逃げてきたが…私では彼女を止められなかった…」
(彼女?)
「このままでは……明日の朝アツコは彼女によって殺されてしまう」
(こ、殺される!?)
「私の話など信じられないかもしれないが……これだけは事実だ」
「……」
先生は黙ってサオリの話を聞く
「アツコは元々彼女の『生贄』にされる運命だった……」
「彼女は…アツコを救いたいなら自分の命令に従えと言ってきた…」
「そうすればアツコだけでなく、他のメンバーも救ってやる…と………」
「エデン条約を破壊し、ゲヘナとトリニティを手中に収めたら」
「アツコが『生贄』にならずに済む……と」
「だけど……エデン条約を破壊できなかった」
「しかもゲヘナとトリニティも制圧することが出来なかった……」
「私はまた仲間を助けれなかった………今はもうゲヘナやトリニティ、仲間であったアリウスからも命を狙われている」
「……」
「だから…もう頼れるのは先生しか……」
「先生…頼む、先生の言うことには何だって従う、もし信用できなかったら『ヘイローを破壊する爆弾』を使ってくれ」
「だから……だから……………」
「アツコを……助けてくれ…………!」
彼女の切実なる願い
その言葉はきっと先生にたどり着くはずだろう
「立って、サオリ。私は対等に話がしたい」
「……あ、あぁ」スッ
ほら言った通りだ、先生は優しいからなぁ__どんな生徒でも許してしまう
先生
それは先生の強みでもあるし、弱い所でもある
だから守らなくちゃね
「そこを動くな」
俺は拳銃を前に突き出し、サオリに照準を合わせながら前へ飛び出す
「なにっ!?」
「は、ハイドリヒ!?なんでここに?」
予想通りの反応だ。
先生は目を見開いて驚いている
サオリは今すぐにでも撃ち出してきそうだ
はははっ
「ハイドリヒだと!?そ、それはトリニティ武装親衛隊の長官……っ!?」
「はい、殺害対象でもありましたね。まぁ死んでませんが」
「くそっ!」チャッ
「おっとそこを動くのは頭の良い行動とは言えませんね。
今貴方は勝負の下り坂にいるんですよ?」
俺はわざとらしく相手を煽る
正常な判断をしずらくさせるためだ
「どういう意味だっ!」
「は、ハイドリヒ___」
「時間、ありますか?」
「っ!!!」
ビンゴ
明らかに動揺してるねぇ
「例えば今私と戦いましょう。それで果たしてベアトリーチェにたどり着けるでしょうか?」
「くっ、要件はなんだ」
「おや、意外と聞き分けが良い」
「早くしろ。時間がないんだ」
そんな急かすなって
「まず一つ目。
戦いが終わったら全員でトリニティの牢屋に入ってもらいます。ちゃんと罪は償ってくださいね?」
「___あぁ」
「そして二つ目。
今後アリウス生は全員我が武装親衛隊の傘下にくだってもらいます」
「了解した__言っておくが、私には何をしてもいいが…他の生徒に傷つけることは許さないからな」
「もちろんです__そして最後に
私もこの戦いに参戦します」
「なるほど。分かった___え?」
「え!?」
再び始まったエデン編!