乞うご期待!
「まず人員の確保から始めよう」
そう言ったのはサオリだった
「人員ですか……誰かアリウス内に信用できる生徒でもいるんですか?」
「勿論だ。腕にも自身がある奴らだ_少しばかり性格に難があるが信用してやってほしい」
「任せて!そんな生徒とは沢山接してきたから!」
やっぱシャーレってそうなんだよな。色々な学園を周ってるからその分難しい生徒とも出会うだろう
__うん?なんでこっちを見るんだ?先生
確かに俺は先生を人質にとったり自爆特攻したりしたけど聞き分けの良い生徒の分類だろ
頭の中でそう言い訳する
「では早速合流しましょうか。集合場所は?」
「………」
「はい?なぜ黙るんですか「知らない」」
「どこにいるか、知らずに来た」
「そ、そうなんだ………」
俺は思わず右手で顔を覆いかぶせる
普通離れるなら集合地点くらい決めとくのが普通だろっ!
「す、すまない………追ってから逃げていてそんな時間さえ無くて__」
「泣き言は聞きたくありませんね!」
「_すまない…………」
サオリは見るからに落ち込んでしまうが今はそんな事どうだって良い
なにか、何かしら策を練らなければ__
「ひとまず、紹介してくれませんか?」
「ああ。一人目はヒヨリ。強力なスナイパーライフルで武装している、強みは類稀なるその狙撃能力だ。どんな位置からでも命中することが出来る。食べるものに目が無い卑しい性格だ」
「二人目はミサキ、ロケットランチャーを担いでいる、強みは俊敏な判断力だろう。どんな難しい問題が来ようとミサキなら解決できると信じている。一番難しい性格だ」
「三人目は__「捕らえられてる。だよね?」__あぁ」
どうやらあらかた説明は済んだらしい
しかし__
「どうしましょう、まったく手段が思い浮かびません」
「う〜ん…どうしよっかね__ねぇサオリ」
「なんだ」
「ヒヨリってさ、どんくらい卑しいの?」
先生、それって今どーでも良くないか?こんな危機迫っている状況なのによく肝座ってるな
ハイドリヒはある意味関心を覚えながらも、サオリは答える
「配膳されたスプーンをかじり続けて粉々にするくらいには卑しい」
「あれ?アリウス分校ってプラスチックのスプーンを使ってるんですか?」
「普通に銀だ」
「「!?」」
それもう卑しいってかヤバいヤツじゃね!?
___待てよ
「サオリさん、いい案が思い浮かびました」
「なっ!流石ハイドリヒ!」
「サオリだけでいいぞ…それで、どんな作戦なんだ?」
「それは_______」
__________
「……はぁっ………はぁっ………」
廃墟の下で、どデカい
それもそうだろう。なにせつい先程まで追手達から尻尾を巻いて逃げていたのだから
「………」
チラッ
壊れた窓から外を確認する
視認できる範囲では敵は確認されない
「………ふぅーーっ」
その事で安堵した彼女は、一つ深く息を吐く
そして疲れ果てた体をどっしりと壁によしかからせ、思いにふけるのであった
(このままここで隠れていれば_サオリ姉さんと合流できるでしょうかね_)
(ミサキさんは無事でしょうか__姫ちゃんも。でもこのまま戻ったらマダムに殺されちゃいますよねぇ)
「…………」
「苦しいですね……」
無論、彼女はこのような機会に何度も苛まれたことがある
しかし、他のアリウススクワッドの仲間と一緒ではなかった時なんてものは一つもなかった
そんな慣れない孤独感がヒヨリを襲う
それと同時に、不幸の足音が聞こえてくる
それはヒヨリにとって何事よりも耐え難い苦痛である事は、彼女自身が一番理解できているであろう
グウゥゥゥ〜〜〜〜〜
「…………」
盛大にヒヨリの腹の虫が大合唱を始めたのだ
(お腹、空きましたね___思えばサオリ姉さん達とはぐれてからなんも食べてませんね。最後に口にしたのは雨水ですか……私の最後の晩餐としては、ちょっと物足りない気もしますねぇ)
何日もの間、ろくな補給もせずに逃走している彼女の体はもう限界だった
足の力は入りにくくもう走れない。目眩はする。挙句の果てには手が小刻みに震えるのだ
それは狙撃手を務める彼女にとって命とも呼べる精密射撃を困難にするものだとは、誰でも考えつくだろう
「___はぁ」
大きくため息を吐いた
その時
ガサッ
「!?」サッ!
わずかな音が聞こえた瞬間、彼女はすぐに臨戦態勢に入る
(も、もう追手がここに来たんですかぁ!?)
内心そう驚愕しながらも再び窓から外の様子を確認する
__すると
「っ!!!」
敵の姿はない
しかし
ヒヨリは外の様子に釘付けにされた
一体なぜ?
それは…………
「食料ですぅぅぅぅ!!!!」
ダッ!
彼女は駆けた
障害物を乗り越え、まるで獣のように垂れてくるよだれを気もとめずにただ突っ走る
なぜか不自然に置いてあるチョコレートのために
ガバッ!
(やった!久しぶりのご飯ですっ!!!)
彼女は一瞬、嬉しさで支配された
まぁ一瞬だが
「動かないでください」
チャキッ
「!!??」
(わ、罠だったんですか!?)
突然後ろから銃を突きつけられ身動きが封じられる
聞き覚えのない声。男性。新ら手の追手か?
などと、ヒヨリの頭は焦りと疑問で埋め尽くされる
「も、もう追いついたんですか……い、いい以外と早いんですね___「ヒヨリ!!」っ!」
クルッ
振り返ると、そこには見覚えのある人物が走ってこちらに向かってきているのが見えた
ガシッ!
「ヒヨリ……無事で良かった___!!!」
「なんか感動の再開みたいですね」
「実際そうでしょ」
「?????」
更に奥の方からは先生が歩いて向かってきていた
しかも後ろの男は銃をおろして敵対する行動をしない
ヒヨリの頭の中は疑問で埋め尽くされたのであった
_____
「〜〜〜とゆうわけなんだ」
サオリがひとしきり説明し終える
「はぇ〜〜もぐもぐ、ひょうなんでふね、もぐ。ひょれではぃもぐもぐどりぃふぁんがふぉふぉに」
「食べ終わってから話してください」
「ふ、ふみまふぇもぐもぐん!__もぐっ」
あれ?渡さなきゃ良かったか?俺のチョコレート
「ふえぇぇぇ。久しぶりのご飯でふぅから!」もぐもぐ
「もっと食べなさい」スッ
「ありがとふごさいまふ!」
「…ハイドリヒ、あまりヒヨリを甘やかさないでくれ」
おっと失礼
サオリに注意された俺は手渡そうとしたチョコレートを再び懐に入れる
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
「駄目だヒヨリ。相手にそれ以上迷惑をかけるな」
涙目になりながら足をジタバタと動かす様子を見てみると、なんだか既視感が湧いてきた
__ユメ姉さんみたいだ
「いえいえ。決して迷惑ではありませんから。どうぞ」
「いいんですか!?」
「ちょっとハイドリヒ」
豊潤な胸、薄い青緑色のその髪の毛
めっちゃ姉さんに似てるじゃん
そんな彼女にひもじい思いなんてさせん!
「もう一枚どうぞ」
「えへへ………こんな世界でも嬉しいことってあるんですね__」
「駄目だ没収」
「あっ」
無念!
まぁチョコレートは没収されたが、無事ヒヨリの確保は成功した
思ったよりも卑しい性格だな__まてよ?これよりも難しい性格のやつが待ち構えてるんだろ?
そう思うとなんだか面倒くさくなってきた…………どうする?武装親衛隊でも呼ぶか?
「そういえばハイドリヒ、武装親衛隊は?」
先生にも聞かれた
確かに彼女らは強大だ。キヴォトス最強の戦車部隊があるし個々人の戦闘力も申し分ない
呼ばない理由はないな
よしっ呼ぼう
そう思ってスマホに手をかけた_その瞬間
「あー、その事なんだが。武装親衛隊は呼ばないでもらえないか?」
サオリがそれを阻止する
「何故ですか?我が武装親衛隊は精強です、それはもう私達の役に立ってくれること間違いなしですよ」
「そこなんだ」
ん?
俺はサオリが言っていることを理解できない
「マダムは私達が今にも息絶えそうな蛆虫だと思ってる」
「まじか」
「しかし、そこに武装親衛隊が加わったらどうだ?決してマダムだって生半可な気持ちで迎え撃たないだろう」
「だから相手の危機感を無くすためにも、呼ばないでほしい」
__とは言うものの。俺がいる時点でもう手遅れじゃね?って思ってしまう
でも、確かにサオリの言う通りだ
「そう_ですか。では危機的な状況に落ちいいったらすぐさま救援を呼びますので」
「ああ」
彼女の了承を得てスマホを再び懐にしまう
「さて、じゃぁ食べ終わったようだしもう一人を探そうか」
「と言っても…どうやって探しましょうか?面倒くさい性格だったらどこにいるか分かりませんよ」
「__いや」
ん?
「一つだけ思い当たる場所がある」
__________
「__ミサキならここにいるはずだ」
ハイドリヒ達は今は誰にも使われていない、古びて所々にひびが入っている橋に来ていた
「………」
下を見ると、激しい川の流れが上流から下流へと流れていっている
「目眩がするほどの高さだね」
「はい、今にも吸い込まれてしまいそうです」
「それに下の川は水深5mもある。飛び込んだらただじゃ済まないだろうね」
「っ!」
まるで反応するかのような言葉が聞こえ、辺りは更に冷え込む
「………ミサキ」
そうハイドリヒ達が探していた少女、
「ほら見て、川の流れがいつもよりも早い__きっと上流のほうで雨が降ったんだ。だからこんなに早い」
「み、ミサキさん…………」
彼女は橋の手すりに座っていて、今にも落ちそうだ
「リーダーにヒヨリに、先生に………あんたは?」
「トリニティ武装親衛隊長官、ラインハルト・ハイドリヒです。長いのでハイドリヒだけで十分ですよ」
「ふぅん……まあ覚える気なんてサラサラ無いけどね」
なんだコイツ。ファーストコンタクト最悪じゃん
「武装親衛隊…それも長官様。なに?私達を捕まえに来たわけ?」
「もちろんでs、ムグッ!」
「ハイドリヒ?駄目だからね?」
俺は後ろから近づいてきた先生に口を封じられた
「そっか、リーダーはそんな選択肢を取ったんだね」
「…………」
「でもさ先生に長官さん。知らないようだから教えてあげる」
「なにがですか?」
「貴方を殺せば、私達は自治区に戻れる」
「知ってました?先生」
「まったく知らないよ」
「……そこにいる、リーダーとヒヨリからは教えてもらわなかったの?」
「………………あ」
おい何だその顔は、完全に「忘れてた」って顔してるじゃん
「_先生と長官を殺害すれば、裏切りは許すって」
おいおいおいおいっ。急に物騒だなぁ
「そんな事が貴方に出来ますか?お前のような人間にっ!」
「ふぅ〜ん?試してみようか?」
「お、落ち着いてください!」
ヒヨリが仲介に入る
「先生は私達が信用できるの?」
「もちろん、私の大事な生徒だからね」
先生が自信満々にそう返す
「それが殺そうとした生徒だったとしても?」
「あったりまえじゃん。サオリ達にはやるべき事があったんだし」
「ほんとうに?ほんとうにそんな大した事ない理由だけで許しちゃんだ」
「こいつ面倒くさ」
「しーっ、聞かれちゃいますよ?」
「そうだよ、それが先生として、大人としての責任だからね」
「………」スッ
「わーーーい!チョコレートですぅ!」
「___あっま。甘すぎだよ先生」
スッ
「み、ミサキさん__?」
彼女はまた一歩、川に近づく
「これから助けに行くつもりでしょ」
「うん。そうだよ」
「馬鹿げてる。このメンバーで助けに行くの?相手は分校レベルだよ?それをこんな少人数で夜明けまでに突破するなんて…………ちょっとはまともなジョークでもついたらどうなの?」
「っ」
「それに相手はまだ私達が知らない新兵器を使うかも……いや、多分絶対に使う。
それに___
「何が言いたいんだ、ミサキ」
眼の奥に怒りを隠したサオリが、ミサキに詰め寄る
「そもそもこんな事に何の意味があるの?この先様々な不幸が私達を待ってる。少なくとも長官さん基準の『普通』な生活なんて送れはしないだろうしさ」
「み、ミサキさん………」
「リーダー」
「なんだ」
「姫を助けるのは無理」
彼女の口から、冷たい一言が放たれる
ソソッ
「!?」
彼女は塀の上に登り、また一歩川に近づく
川の流れは依然として早いままだ
いくらヘイローを持ったキヴォトス人だとしても怪我ではすまないだろう
「…………」
「ミサキ……」
(ふえぇぇぇぇぇ!)
「__長官さんはさ、私達の事が信用できるわけ?」
「いいえまったく」キッパリ
「「「!?」」」
その場にいる全員に電流走る
(嘘でしょハイドリヒぃ?ここでそんな事言うのは違くない!?)
(この男……くそっ!連れて来るべきじゃなかったか………っ!)
(ふぇぇえ!?さっき
各々驚きが隠せないでいると__
「でも付いてきたんだ」
「だから、ですよ。もしサオリさん方が不自然な行動を取ればこの『ヘイローを破壊する爆弾』を使わなければなりませんからね」
「えっ!……あ、いつの間にか盗まれてるっ!?」
そう、さっき口を抑えられた時にちょっと拝借させてもらったのさ!!!
「それと……いつから勘違いしてたんですか?」
「それってどうゆう____
「いつから貴方に主導権が握られていると勘違いしてたのかってことですよ」
「っ!」
「!?」
「!!??」
「?」
「ふふふっ、ずっと自分の思い通りになると思ってる貴方の姿を見るのはお笑いでしたね」
「……つまりなんなの」
ミサキがムスッとしながらそう問いかける
「いいですか?私は今『ヘイローを破壊する爆弾』を持っています。これは威力こそ大抵の爆弾と同じでしょうが我々にとっては致命傷になるでしょうねぇ_______さて問題です」
「…………」
「もし貴方が私達と共に行動を取らなければ__
誰が真っ先に爆発するでしょーっか!!!」
「「「!?」」」
再び電流が走る
(嘘でしょハイドリヒぃ?今ここで脅すの!?)
(こいつ…めっちゃ私をチラ見してくる。多分私が最初だと知らせてるんだな)
(ふぇぇえ!?さっき
「____脅すんだ」
「はい、ほらほら!早く決めないとヒヨリさんが爆破しちゃいますよぉ!」
「えっ、私じゃないのか?」
「うわぁぁぁぁぁん!どうせ死ぬならもっとチョコレートくださいぃぃぃ!」
「ちょっ!やめなよ!?」
「頼む!もし爆発させるなら私にしてくれ!」
「うぅぅぅぅぅ、おいひぃでふぅ……もぐもぐ」
「いったん!いったんその爆弾手放さない!?いったん、ちょっとだけでいいからさ!」
「いいやっ限界だ!押すね!!!」
あーだこーだ
わんやわんや
「…………ふっ」
サッ
ミサキは塀の上から降りる
「ふはははは…………は?」
「仕方がないから一緒に行ってあげる」
「っ!!!」
「み、ミサキ!!」
「でも勘違いしないで、私はただリーダーが爆破されないために行くだけだから」
「とか言ってほんとは助けに行く気まんまんなんでしょうけどね」
「…………時間がもったいない。行くよ」
はははっ!こいつはツンデレだな!
何はともあれ、ミサキが仲間になった!
そのうち赤冬でも革命が起こると言っときますね