あれ?気づいたらなぜかアズサがハイドリヒから離れて行ってない?
「………っ」
コツコツコツ
無駄な場所がなく、徹底的に効率性を重視している建物の中を俺と先生は進んでゆく
「いやぁ、他の学園の生徒と違う学校に訪れるなんて初めてかも?」
隣にいる先生はそう言っているがそんなのまったく頭に入らない
それほど俺は緊張していた
「え、えっと……自然な雰囲気でゲーム開発部に入り、自然な雰囲気でアリスさんに近づき、そして自然な雰囲気で妹だと伝える__であってますか?」
「そう!絶対に成功するから安心して!大船に乗った気持ちで行こうっ!」
先生の場合泥の船な気がするが…いつまでも示談場を踏んでる暇はない
一刻も早く…アリスにお前が妹だと伝えねばならないのだっ!!!
「しかし__本当に上手くいきますかね、希望的観測の塊みたいな作戦ですけど」
「大丈夫!私の友達はそうやって告白して成功してたから」
これって告白よりも難易度高くね?
__あ、確かに俺みたいな非モテにはどっちも難易度が高いか
ちくしょうめぇ!
「…………不安?」
先生からの問いかけに、俺は首を縦に振る
「そりゃあそうでしょう。例えば少し中のいい友達が先生にいるとします」
「うん」
(友達って普通みんな仲いいものじゃないの?)
「その人が言いました、『お前は俺の妹だ!ガーッハッハッハ!』__信じますか?」
「ずぇったいに信じない自信が私にはある」
「それなのに勧めたんですか」
「うん」
___やばい
多分この先生は脊髄反射で会話してるんだ
「ほらシャキッとしなさい!ユメちゃんに笑われちゃうよ!」
めっちゃ仲いいやん。もう親友じゃん
うちの姉がお世話になっております!!!
「てか先生ってキヴォトスにユメ姉さん以外にお友達はいらっしゃらないんですk「うっ!!!(急死)」…」
いきなり死んだ挙げ句、急に言い訳をし始める
「いやでもさ?このキヴォトスにヘイローの無い生身の人間がいるのってメッチャ難しいからね?ベリーハードだからね?先生殉職しちゃうかもしれないからね?」
「重々承知しております」
「普通こんな超銃社会に来て職に就こうだなんて思わないから」
「でも先生は教師になりましたよね」
「______え?」
先生は一瞬にして驚愕で表情が埋め尽くされる
「あ、確かに私って先生じゃん」
今更!?!?!?
「これまでのキヴォトス生活ほぼ一般的な先生じゃなかったから忘れてたよ」
「………」
度重なる徹夜に襲いかかる書類の山、そして大量の危険が潜んでいる恐ろしい日常によって作り出された先生の目は視点が合わさってない
なるほど、これが社会人の”眼”かっ!!!
「はぁ…仕事したくない___でもお金は欲しい」
分かるわ、俺もそう思う
早くトリニティ総合学園から抜け出してぇ〜〜〜
「でもみんなに慕ってもらえてるのは嬉しいよ。唯一この仕事でやりがいを見いだせる私の命綱だね」
そんなに重たい人生なのか先生って
「給料低いけどそれだけの為に頑張って生けてるよ」
「_____そすか」
ピタッ
ちょうど先生との雑談が終わった瞬間、俺達はゲーム開発部の部室前に到着していた
「…………」
「お、いつの間にか到着してたね」
「…………」
「じゃあ早速入ろっか」
「…………」
「__ハイドリヒ?」
いつまで経ってもドアノブを握ろうとさえしないハイドリヒを疑問に思ったのだろう、先生は疑問符を頭に浮かべて問いかける
「__まだ躊躇ってるの?」
「ぎくっ!」
図干し!!!
「だ、だって不安しかないんですもん!絶対にぶん殴られてタコ殴りにされて魚の餌にされちゃいますよぉ!」
「__やっぱハイドリヒって肝心な時にメンタル弱くなるよね」
くそっ!なんも言い返せねぇ!
「ほらっ!行動に起こさないとなんも始まんないよ!」
「そ、それもそうですね……」
俺は恐る恐るドアノブに手をかけ、回そうと力を入れる___
___ことはなく
ガチャッ!
扉は俺の意志とは関係なく勢いよく開く
「あっ!ちょうどいいところに!」
そこには、まるで栗みたいな口を精一杯開いている少女がまるで救世主を見つけたかのような表情で出迎えてくれた
__いや、出迎えたっていうのか?
開けたのモモイの方だぞ?
「ほら入って入って!ちょっとだけ聞きたいことがあるからっ!」グイッ
「わっ!」
「よしっ!おじゃましまーす」
こうして俺達は半ば強引に部室に引きずり込まれたのだった
__________
「パンパカパーン!悪の軍団長がパーティーメンバーに加わった!」
「___なんですって」
俺はほぼ強引に以前掃除したばかりの薄暗い部室に置かれているソファに座らされる
「よしっ!これから取材を始めていくよ!」
「取材?なんのですか?」
「すみません…うちの姉がご迷惑をおかけして__」
「いえ、大丈夫です」
隣で心配そうに謝罪してくる少女はミドリ、妹なのに姉よりしっかりしている
「どんな経緯でこうなったんでしょうか」
俺は話の通じそうなミドリに問いかける
「あはは……ちょっとゲームのネタが無くて………」
「そう!ゲームに出てくる貴族についての話がまっっっっったくまとまらなくてね〜〜〜。それだったら本物の貴族の人に聞いたほうが早いって話だよ」
「貴族?この私が?」
確かに俺って金持ちだけど貴族なのか?__てか貴族とかまだキヴォトスに残ってるっのか?
「えっと…私は別に____うっ!」
俺はモモイとアリスからの期待の眼差しに完敗する
「トリニティってお嬢様学校でしょ!じゃあハイドリヒもお嬢様ってことだよね?」
「おじょう……さま?」
どう考えたってお坊ちゃまなのは言わないでおこう
「じゃあ早速質問するね」
モモイはカーペットの上に足を開きながらどっしりと座り、メモとペンを持って俺に質問してきた
「まず好きな食べ物は?」
「うーん……カツ丼ですかね」
「なるほど_____え!?!?」
うん?なんでそんなに驚いてるんだ?
「ファグラとかでも答えたほうが良かったでしょうか。あれあんまり好きじゃないんですよね」
「貴族なのにカツ丼!?」
「普通にたまに食べますよ。美味しくて大好きです」
チキン南蛮かハンバーグで迷ったけどやっぱカツ丼だわな
「思ったよりも普通の男子高校生なんだね」
どこか落胆した表情を見せながらも、モモイはしっかりとメモを取る
「じゃあさ、どんなゲームが好き?ほらっ、やっぱシューティング系?それともバトルロワイヤル?」
あー…すまん
「すみません、将棋です」
「将棋…………」
「しょうぎかぁ………」
「将棋ってなんですか?」
ただ一人だけ首を傾げて問いかけてきた
「将棋は棋は、2人で対戦し、相手の玉将(または王将)を詰ませる(動けなくする)ことで勝敗を競う、百鬼夜行の伝統的なボードゲームです。8種類の駒を使い、交互に駒を動かすことで、ゲームを進めていきますよ」
「なるほど、いつかやってみたいです!」
いいぜ。かかってこいよ
「てかハイドリヒってゲームできないのに将棋とかのボードゲームって出来るんだ」
「ええ、そもそもゲームを買ってもらったことさえ無i_____
「えぇ!?ハイドリヒってゲーム機買ってもらったこと無いの!?!?」
「ま、まぁ___
「ス○ッチとかプ○ステ5でさえもないんですか!?!?」
「そ、そうですk_____
「アリス!理解できません!!!!!」
「__すみません………」
なぜか俺はゲーム開発部の面々に罵声を浴びせられてしまった
「懐かしいなぁ。小さい頃は近くのコンビニのWi-Fiスポットに行って皆でゲームしてたっけ」
「あ、あったあった!」
「あの時お姉ちゃんがはしゃぎすぎて途中で転んでたよね〜〜〜」
「……………?」
先生とちびっこたちが思い出話に花を咲かせている__が
「なんで家のWi-Fiを使わないんですか?そっちのほうが効率てk____
「えぇ!?ハイドリヒの家ってゲーム無いのにWi-Fiはあるの!?!?!?」
「そりゃあありますよ___
「ゲームの通信以外にWi-Fiを使ってたんですか!?!?!?!?」
「ま、まぁ色々と___
「アリス!理解できません!!!!!」
___ちくしょう。そこまで言うかよ
「でもハイドリヒってなんでゲーム買ってもらえてなかったの?」
「……先生、貴方達の認識だったら小さい時から当たり前かのようにゲームが側にある環境だったんでしょう」
「うん」
「物心がついた時には身近にあったような………」
「アリスもそうでした!」
「私もずっとそうだったよ」
へぇ、皆いい環境だったんんだね
「私は幼い頃からゲームをする環境なんてありませんでしたからね?ヴァイオリンにマナーの講習、そして戦闘訓練さえありましたから」
俺は少しだけ昔の記憶を呼び起こした
今でもなぜトウモロコシは素手で食べるのがマナーなのかは分からない
上座と下座の見分け方は、だいたい入って奥のほうが上座だって覚えときゃ大丈夫だ
「ほう?そいつはまた貴族みたいな……ん?なんかメールが来てる___」
「娯楽もなんもないね」
「悪かったですね。英才教育で」
俺はぶっきらぼうにそう言い放つと、モモイが俺に…いや、俺達に話しかけてきた
「みんな!大変だよ!!!」
「ん?どしたの?」
「”歴史的な発見”があったって!」
それは興味を引くような単語だったが、どこか胡散臭さを醸し出している
「__なんですかそれ?」
「ヴェリタスがすっっっごい物を発見したらしいよ。来てほしいって!」
「アリス楽しみです!」
「へぇ___」
どうやら俺には関係ない話のようだ
……アリスに話せなかったのは残念だが、これから時間を掛けてじっくりと説明しよう
そうだ、それがいい
「ではお暇しますね」
俺はトリニティに帰るべくゆっくりと腰を上げると____
「ハイドリヒは行かないんですか?」
「っっっっっっ!!!!!!」
瞬間、俺に眩いほどの閃光が食らいついてきた
__そう、アリスだ!
くそう!なんて曇り一つない綺麗な眼してやがる!
「で、ですが私は部外者ですし……」
「行きましょう!きっとその方が楽しいですよ!」
「だ、だがしかし_____」
「行きましょう!!!!」
「……………」
__________
来ちゃった☆
だってあんな眼をされたらお兄ちゃん動かないわけにはいかないだろ!?!?!?
「………」
「これが『歴史的な発見』___?」
「そうっ!なんだかよく分からないけどさ、私達に解読が出来ないスッゴイものが落ちてたんだ!」
そう元気よく答えるのは、以前俺の車の中を覗いてきた少女だと見える
「__貴方は……あ!この前高級車に乗っていた人だ!」
「どうもはじめまして」
俺は実に簡単に挨拶を終わらすと、視線を眼の前の『歴史的な発見』とやらに移す
こう見えて俺は自分のことを好奇心旺盛な方だと思ってる
「ほう?タコ型の機械ですか」
「面白いよね〜私達が思うにはロストテクノロジーなんじゃないか?って思ってるんだ」
「それは歴史的な発見ですね」
「うん!これを公表して、このグッズを売りさばいて……そしたら億万長者になれる!」
横の少女、
「そうですか」
それを俺はどうでもいいかのごとく返すが、それをマキに指摘されてしまった
「あ!ハイドリヒ君はすでに大金持ちだからお金には興味ないってこと!?あたし達は違うから羨ましいな〜〜〜」
「貴方のスキルであればお金を稼ぐことぐらいなんてこと無いのでは?
例えばハッキングして身代金を請求したりとか………」
「ず、随分と物騒なことを話すね。ハイドリヒ君って」
若干引き笑いをしてくるがそんなの気にしない
「…………」
「アリスさん?どうされました?」
「わ、分かりません__でもなんだかこの機械が呼んでる気が___」
「なーにわけのわからない事言ってるのさ。壊れてるのかは分かんないけどこれ、動かないんだよね」
「で、でも………_____」
サッ
アリスはゆっくりとその機会に触れる
ブゥン!
「どうされました?どこか優れないところでも?」
「……………起動開始」
「?」
意味の分からない事を言うアリス
その瞬間、アリスは機械の方に向いていた顔をゆっくりとこちらに向けてきた
赤い
アリスの青く綺麗な目が、赤かった
「__アリス?」
その目が充血により作り上げられたのではないことは、この場にいる全員が瞬時に理解できた
「__目標を確認。可及的速やかに排除します」
スッ
__うん?なんでスーパーノヴァを構えてるんだ?
「危ない!!!」
「っ!」
ドオオオォォォン!!!
「うわぁっ!!」
俺は先生の声でなんとか意識をハッキリとさせ、瞬時にアリスの攻撃を回避する事に成功した
そのおかげか、なんとか死なずにすんでいる
___じゃなくて!
「いきなりどうしたんですかアリスさん!」
問題はアリスだ
「アリスっ!落ち着いて!!」
「モモイさんは下がってください!」
「___対象を撃破出来ず。引き続きtype,Aの攻撃を開始する」
何言ってるんだ!アリス!
___うん?
本当に彼女はアリスか?
「……誰ですか貴方は」
「__チャージ完了まであと40……50……60…」
俺の話を無視して、アリス?は再び攻撃をけしかけようとする
「…ハイドリヒ?」
いいぜ
かかってきな
「………」
俺は静かに愛銃を抜いた
__________
ドオオオォォォン!!!
躱す
俺めがけて放たれる光速に近い速さの弾丸をなんとか紙一重で躱す
ドオォン!ドオォン!
__すると、一際大きいいのを撃ち終えた後だからか今度は比較的緩い弾丸が放たれる
どうやらあの破壊光線にはチャージ時間があるらしく、それまでは弱い球で寄せ付けないようにしてくる魂胆のようだ
「ふっ!」
なんとか全て回避するが、いつまで続くかは分からない
ズドン!
「っ」
なんとか躱しながら一発を相手に叩き込むヒットアンドアウェイ方式をとっているが現状とても厳しい
………
今ミドリが救援を呼びに行ってくれてるため、なんとか希望だけは存在している
「…………」
俺はこの鍛え抜かれた足を使い弾丸を多少ばらまきながらもアリスを中心に円上に周る
「チャージ完了」
ドオオオォォォン!!!
「くっ!」
頭スレスレの場所に放たれたため少しだけ髪の毛が焦げたがどうってことない
__いや、ハゲになるのはやだな
「再び失敗」
「そうですね」
こっちとしては大成功だぜ
「チャージ再開_____
ドガアアアァァァァァン!!!
「!」
さっき俺がばらまいた弾丸が、急に光り輝きながらその場で盛大に爆ぜる
コレはミカ様と戦闘した時の経験からいかしたものだ!
「………」
だが、あいにくにもアリスはまだピンピンだ
「___」
別にこれで倒そうとなんか思っちゃいないが、ちょっと残念だ
「………視界不良」
アリスの周りは、土煙が天井まで届き何も見えない状態になっている
そう!これはアリスの視界を奪うための作戦だったんだ!
この一瞬の隙であいつを拘束するべく俺は再び足に力を入れる
粉塵の真ん中には、光り輝く楕円が見て取れる。多分こちらめがけて撃ってくるつもりだろう
音で気づかれたんだな__だが俺は避ける!さっきのごとくなぁ!
__そんな考えのもと突っ走ったが、それは間違いだった
「………楕円?」
普通俺をめがけてるのならその銃口はこっちに向いているはず。だからこの発射する前の銃口に溢れんばかりにこびりついている光も丸い形になるはずだ
__だが楕円だ
つまり、これは俺を狙ってるんじゃない
視線を移す
「ハイドリヒ!攻撃に気をつけて!音でバレちゃってるから!」
そこには、わざわざ遮蔽物から身を乗り出して俺に既に知っている情報を話してくれている少女がいた
大声を出して、腕を左右に大きく振って
「type,Z。発射準備完了」
っ!!!!
クソがっ!!!!!
ダッ
俺は今までにないくらい、筋肉が瞬時に悲鳴を上げるほど力強く地面を踏みモモイに急接近する
「危ない!!!!!」
「____へ?」
「発射」
ドオオオォォォン!!!!
次の瞬間、今までとは違ってとても細い流れ星のような弾丸が放たれた
それも複数発
「………っ」
ふぅ、なんとか間に合った
「大丈夫ですか?モモイさん」
「……………」
「怪我は?私が見えますか?」
俺の眼の前には怯えた表情をしている少女が佇んでいる
「まったく_貴方らしくないひょうじょうですよ」
「は、ハイドリヒ…………!」
うん?どうしたんだ?
あれ?せんせいまでかおがまっしろだ
「お、お腹……」
?
おれはじぶんのはらのほうにしせんをむける
バタンッ
「は、ハイドリヒ!!!」
「急いで救護班を呼んで!大至急!」
力なく倒れたハイドリヒ
この男の身体には、
これって多分トリニティとミレニアムの関係悪化するよね。