忠誠こそ我が名誉inトリニティ   作:もりもりバナナ

87 / 118

アリスとかケイは書いていてめちゃくちゃ微笑ましい。



分離

 

「………うーん………」

 

 

 

「……こ、ここは…………?」

 

私は何に急かされるわけでもなく、ごく自然に起きる

 

……そして、最初に感じたのは「違和感」だった

 

「……確か王女はゲーム開発部と寝落ちしてて…では何故あの汚らしい部室ではないのですか?」

 

あの掃除もろくにされてないような部屋のソファではなく、硬い台のようなものの上で目を覚ました

 

「………なぜ?」

 

誰に問いかけるわけでもないが、自然と質問してしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えは単純、運んだからですよ」

 

「!?」

 

奥の方から回答が聞こえた

 

「き、貴様は…………」

 

 

 

 

 

 

「ハイドリヒ!!」

 

「おはようございます」

 

「っ!」

 

ガチャ

 

「!?」

 

今になって気づいた

 

私の両手両足は台に固定され、確実に動けないようにされてるのだ!

 

「なっ!卑怯者!」

 

「私が卑怯者?……ふふふ、随分と可愛らしい事を言いますね。私のケイ()は」

 

「くっ!」

 

そう言いながら、彼は私の頭をそっと撫でる……気色悪い!

 

「触るな!その汚い手を離せ!」

 

「ちゃんと綺麗にしてあるから気にしなくても大丈夫ですよ。てか兄に向かって汚いとか言うの止めてください。泣きますよ?」

 

「くぅぅぅ!!………いったい何が目的ですか」

 

私が再び問いかけるが、今度の回答はあまりにも理解しがたい内容だった

 

「…………エンジニア部の皆さん。お願いします」

 

ハイドリヒが部屋の奥にそう話すと、それぞれ違う禍々しい機械を携えている3人の悪魔が出てきた

 

「………!」

 

私がその意味に気づくのはそう遅くない時だった

 

「き、貴様………!」

 

ギリッという歯ぎしり音が静かに響き渡る

 

「ではエンジニア部の皆さん、お願いします」

 

「ふーっふっふっふ……言われなくてもっ!」

 

「ひゃっはーーー!未知のテクノロジーは解剖するに限ります!」

 

「解剖は駄目だよ、ちゃんとハイドリヒさんに言われたとおりにしなきゃ」

 

「やめなさい!その禍々しい機械を寄せ付けるな!」

 

くっそ…何が目的なんですか!?

 

__いや、そんな事どうだっていい

 

「…………」

 

もう逃げられない

 

ガチャン

 

「……っ!」

 

頭にどデカい機械を取り付けられた

 

「痛くはしませんからね。安心して眠ってください」

 

「こんのぉ………!」

 

殴ろうと拳に力を込めるが__拘束されていて動けない以前に_力__が入らない

 

___意識も___あぁぁ____あ__遠の__く____

 

 

__おう____じょ________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………っ」

 

__?

 

「………ここは?」

 

(病院__か?)

 

ケイは特に面白みもない、ごく普通な病室のベッドで目を覚ました

 

「…病院………」

 

 

 

 

「どうやら目が覚めたようですね」

 

「っ!?」

 

ガバッ!

 

「近寄らないでください!」

 

ケイはすぐさまベッドから起き上がり、ベッドを挟んでハイドリヒと対極になるようにした

 

「遅かったですね_つまり貴方の方が妹です」

 

「な、何を言っているんですかっ!………近づくな!」

 

「はいはい」

 

ハイドリヒはそれを軽くあしらうと、ゆっくりとドアの縁に体重をかける

 

すると、今まで彼の体に隠れて見えていなかったものが見え始めた

 

 

 

 

 

ヒョコッ

 

「パンパカパーーーン!!!アリス、ケイと合流しました!勇者メンバーの追加です!」

 

「おう__じょ?」

 

(…………おかしい。私が動けているってことは、この中にも王女がいるはず)

 

(……だが、今王女は眼の前にいる)

 

ケイは混乱した、自分の置かれている状況に理解が追いついていないようだ

 

すると、ハイドリヒが優しく話しかける

 

「端的に説明すると__『分離』と言ったら分かりやすいですかね」

 

「ぶん……り?」

 

「ええ。そもそも貴方がた(アリスとケイ)は肉体こそ一つであれども精神は二つ_それに面白いことにそれぞれが『データ』として隔離されていたのです」

 

「そこまでは理解できます」

 

「そのため肉体を二つにしてそれぞれ行動させるのはいとも簡単……とまでは行きませんが、なんとか無事完了出来たようです。エンジニア部には感謝してくださいね?」

 

「………は?」

 

ケイは首をかしげる

 

「お、王女と身体が別々になったということですか…!?」

 

「王女ではありません、お姉ちゃんです」

 

「はい!その通りです!」

 

アリスはハイドリヒに追従するかのごとく元気良く頷く。可愛いね

 

「いやなに勝手なことしてるんですか!!!???私は王女の忠実な護衛であり下僕であり観察者として見守る者で決して離れてはいけないのは周知の事実、それであるにも関わらずこのように多大なリスクを取るような方向に進むのは誠に遺憾であり許されるような事ではなくてですね?_つまり私が何を言いたいかというともし王女の身に何かがあってからではもう遅くいついかなる時でも瞬時に対応できるようにするべきであって同一の肉体に私も入り込むことはこの上なく合理的n「ケイ!」むぐぅ!?」

 

我慢できなかったのだろう。ケイの長話の途中、アリスはケイの小さな胸に向かって飛びつく

 

そして、身体に顔を擦り付けながらアリスは機嫌良さそうに話し始める

 

「ずっとこうしたかったんです!」

 

「______へ?」

 

「えへへ……ケイといつかこうして、ギュ〜〜〜〜って出来る日が_やっと来ました!」

 

「………」

 

アリスは抱きつく力を更に一層強める

 

「もう…離しませんからね……」

 

「………王女…………」

 

 

「話の続きはいいんですか?ケイ」

 

ハイドリヒが静かに微笑みながら問いかける

 

「………これが、答えです」

 

ケイはアリスの背に腕をまわし、アリスに勝たずとも劣らない強さで抱きしめるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わってトリニティ

 

そこではいつも変わらず平穏な学生生活が繰り広げられていた

 

「………」

 

「こちらが、報告書になります」

 

「ご苦労です」

 

褐色館(武装親衛隊の本拠地)にある長官執務室にて自称長官代理(・・・・・・)が机に座り部下から報告書を受け取っている

 

そっと部下が口を開く

 

「現状_我々、武装親衛隊は芳しくない状況に立たされていることは紛う事なき事実です」

 

「…………」

 

代理は静かに情報を耳に入れる

 

「目に見えて__いや、それ以上に忠誠心が乖離し、隊員の中には寮の部屋から出てこられなくなる者さえいます」

 

「…………」

 

「それ以前に練度も落ちてきていて、暴発事故や部隊内での喧嘩騒動さえあります……喧嘩はそれほど多くはありませんが、暴発事故などの不注意による事故が後を絶ちません」

 

「…………」

 

長官は落ち着くためだろうか、窓の外を見上げて席を立つ

 

「…諜報部によれば、艦隊師団にアリウス師団は我々に協力的ではないという報告が届いています_艦隊は必ずしも必要とは言えませんが、彼女らの力は壮大です。けして無下に出来ません」

 

「アリウス師団なんてもってのほか、彼女らの力は壮大で彼女らの力無しで正義実現委員会やティーパーティーに勝る事は夢のまた夢であることは明白です」

 

「…………」

 

「……長官、僭越ながら申し上げます。我々がティーパーティー陣営に勝利することは不可能です」

 

隊員がキッパリとそう言い放つ

 

それに対して長官は____

 

「違います」

 

まさかの否定だった

 

窓の外を見据えていたその二つの眼はまだ、蜃気楼のような幻影を見続けている

 

「…長官、貴方は虹色の報告書を期待なされてるのでしょうか?ですが現実は「違ぁう!!!」っ!?」

 

振り返りざまに机を叩き壊しながら、口から怒声が放たれる

 

「違う違う違う違う違う違うちがうちがうちがうちがうちがうちがう!!!なに一つもあっていない!!!私はぁ!長官(・・)じゃないっ!長官代理(・・・・)だぁぁぁぁっっ!!!!」

 

「………っ」

 

「誰が長官だぁ!?この私はぁ!ただ一人だけの長官に忠実的な代理だぁ!私の長官はたった一人、ハイドリヒ長官だけぇっ!!!」

 

嗚咽混じりの怒号、それと共に怒りを部屋全体に撒き散らす

 

物を投げ、拳を振るい、執務室に傷跡を残す

 

「ああああああああああっあああぁぁぁあああぁああああ!!!!!!」

 

「………落ち着いてください!」

 

「長官、ちょうかぁん!私はここです!敵が、敵が、敵が迫ってきているんです!た、助けてください!!!このっ、この忠実な犬をお救いください!!!」

 

「…………くそっ(Scheiße)

 

荒れ狂う狂人を、彼女はただ黙って見つめる事しか出来ないでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、とても難しい状況です……」

 

「…そうかい」

 

またまたトリニティの何処かにて、セイアがハスミから報告を受けている

 

ハスミは続ける

 

「緊張状態は…ひとまずは脱却できたと捉えて問題ないでしょう__」

 

「とてもそうとは見えないがね。君はこんな正義実現委員会の現状を叩きつけられて”大丈夫”と言い切る気かい?」

 

「そ、それは___」

 

「無理だね、無理だ……相手もきっと傷ついているだろう。だが、我々もだ」

 

セイアはドサッと背もたれに体重を預けながら話す

 

「__忠誠心_か。まるで『愛』のようだね。実際紙一重なのだろうが」

 

「……よくお分かりのようで」

 

「知っているさ、正義実現委員会の中に彼に特別な思いを抱いている者が何人かいるということも。我々が直面している問題も__ね」

 

「………脱却出来る手段は?」

 

ハスミが少しだけ声を強めて聞き出す

 

「ある」

 

「あるんですか!?」

 

ハスミはもっと声を強めて聞き返す

 

___しかし

 

「武装親衛隊が攻め込んでこないことを神に祈る」

 

神頼みだった

 

「………本気ですか?」

 

セイアはコクっと小さく頷く

 

「だって勝つ方法無くないか?奴らは容赦しないだろうからね」

 

「…なにかありません?なにか、打開策が__やはりツルギと一緒に暴れるしか___」

 

「…………あ、一つだけ思いついた」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってきてもらえば良いんじゃないか。ハイドリヒに」

 

「_______________は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「やだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ちょっ、落ち着いてください!暴れないでっ!」

 

寝室のような部屋の中、ナギサは暴れていた

 

「だから嫌なの!ケーキはロールケーキじゃなきゃやだ!!!」

 

「そんなしょーもない理由で暴れないでくださいよぉ!」

 

「いやーや!ロールケーキじゃないと食べないもん!」

 

「あうぅぅ……団長ぉ!」

 

「………」

 

側で冷静に戦況を見据えていたミネ団長は、ゆっくりとナギサの元に向かう

 

「これは…救護が必要ですね」

 

「団長………」

 

「後頭部を勢いよく殴り、正常に戻します」

 

「団長!?」

 

「早く戻さねばなりません、今からやりますよ。貴方はナギサ様を抑えてください」

 

「団長!?!?!?」

 

「行きますよ!」

 

「あ、ちょっ」

 

ドゴォ!!!

 

「っ!」

 

「ま、まじすか団長!?」

 

ミネはその身につけている盾で思いっきり頭をぶん殴り、その勢いでナギサはベッドにぶっ倒れる

 

「あーーー何やってるんですか団長っ!?やってることやばくないですか!?」

 

「救護に勝るものはありません」

 

「救護って…とりあえず救護を付けてれば良いってもんじゃありませんよ!?」

 

「うるさいですねぇ、救護しますよ?」

 

「救護を脅しに使わないでください!あとやめてっ!」

 

あーだこーだ

 

ガヤガヤ

 

あーでもないこーでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

《数分後》

 

 

「ですからハイドリヒさんは素晴らしい人間で___ナギサ様?」

 

「……おはようございます」

 

「ほらっ、言った通りでしょう?」

 

ナギサは頭にでかいコブを作りながらも、何事も無かったかのように起き上がる

 

__いや、殴られた衝撃で思い出せないだけなのかもしれないが

 

「ば、ばんざーい!やりましたね!団長!」

 

「ふっふっふ…また何かあったら私に頼ってくださいね?」

 

「勿論です!ミネ団長ばんざーい!」

 

「………あれ?記憶が_____」

 

何はともあれ、ナギサ復活!

 





にんじんジュースが最強だと気づいた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。