赤い冬って名前なのにほぼ赤冬関係無い………。
闘争が終わった
長くはない、しかし、それは確実にトリニティに傷跡を残したのは間違いない
その責任は誰が取る?
内戦が起こった責任
調印式が破壊された責任
先生が撃たれた責任
この全てを請け負わされたナギサは可哀想な指導者以外の何者でもないだろう
戦いの後、会議という名前のいじめが始まった
広くはない部屋、しかしトリニティの装飾の華美さが伝わってくる
__そんな部屋で
「私は救護騎士団の団長として、道を誤った生徒を正すだけです………それがもしティーパーティーだとしてもです」
救護騎士団のミネがそう言い放つ
「…主に従い、隣人を愛し、全てに愛を現す。ナギサ様、私はそれが重要だと感じております」
シスターフッドのサクラコが厳しい目つきで問い出す
「………っ」
ナギサは黙ってそれを聞き、されるがままであった
部屋にいる4人の人間、そのうちの3人がナギサの敵かのように感じてしまう
「ナギサ様はシャーレの権限を使い無垢な生徒を退学させようとしました……これがいかに重大なことかはご存知でしょう」
「それでどれほどの生徒が傷ついたか、あの部員だけではありませんよ__特に、元アリウスの生徒」
紛れもなくアズサのことだろう
サクラコが続ける
「おかしいと思ってたんです。我々がどうやろうともカタコンベから来てるとは聞いたのですが……一向にルートが掴めなかった」
「そ、それは___アリウス分校から来た転校生に話を伺った所、地図の経路は毎回変わり、更に暗号化さえされているとのことです」
ナギサがやっとの思いでおずおずと弁明し始める__しかし
それが火種を産んだ
「………アズサさんを、取り調べたんですか」
「は、はいっ?」
「白州アズサ!彼女は十分に代償を払っています!!!そんな子に私達の事情を巻き込んでアリウスの情報を吐かせるなんて……なんと残酷な!!!」
激昂したミネはまるでゲテモノを見るような鋭い目つきでナギサを見下す
「あの子がそんな気持ちになるでしょうか!?いいえありません!ティーパーティーの権力を乱用してあの子に無体を働いたに違いありません!!!!!!」
「ち、違いますっ!」
「なんと非人道的なのでしょうか!?」
ミネの怒声が部屋を駆け巡り響き渡る
「我々救護騎士団にとって、人を傷つけるのは”悪”、そして人を愛し助けるのが”正義”ですっ!つまり!」
「っ!」ビクッ
「ナギサ様の愛の無い破壊行為には共感しかねるどころか、真っ向から否定させてもらいます!!!」
ナギサは完全に怯えてしまったようで、俯いて何も話せないでいる
__いつしか、その憤慨の眼差しは長官に向いていた
「ハイドリヒさん、貴方にも問わねばいけない問題があります」
「………」
「貴方はいち早く敵を察知し、命令し、迎え撃った…この功績は誰でもなくハイドリヒさんの物ですし誇ってもいい……ですが」
「__あの時、一人の敵が我々救護騎士団の元に流れ着いてきたのです。
彼女は目立った外傷さえ無いですが目から血を流し、苦しんでいる様子だったのをしっかりと覚えています」
「………」
「彼女はこう話してくれました。『SSの毒ガスだ!』…と」
ミネの目は再び怒りに燃え手は憤りでワナワナと震えている
「貴方…なぜ?あのような兵器を_使ったのですか!?」
「……恐らくミネさんは塩素ガスの事を話してるんでしょうか?」
「ええ!銃弾にこそ耐えられるキヴォトス人ですが内側は弱いっ!致死量の毒を喰らえば死にます!ましてや塩素ガスだなんて……ハイドリヒさん!!!」
「なんでしょうか」
「私は貴方を心から軽蔑します!!!」
「………」
ミネの怒号に机が響き、小鳥が飛び立ち、生徒たちは震え上がる
___だが
彼は反論したのだった
「___ミネさん。私は武装親衛隊です」
「……重々承知しておりますが」
「では一つ問わせてもらいます。我々にとって最大の武器とは何でしょうか?」
「……言っている意味が理解できませんが」
理解に拒んでいるミネを無視しながら彼は話し続ける
「我々親衛隊の最大の武器は戦車ではありません、頭脳ではありません。ましてや毒ガスでもありません」
「武装親衛隊の最大の武器、それは”忠誠”です」
「ちゅう……せい?」
「例え上官がどのように非合理的で非人道的な命令をしようと遂行する。
それが親衛隊の最大の武器です。我々の伝統です」
「そんな事が…許されるわけないでしょ!!!」
再びミネは叫ぶが、ハイドリヒはそれをものともしない
「貴方がたは私達を狂気的な人間だと敬遠するでしょう。それも何一つ間違っていません。
ですがいつまでも人間的に作戦を遂行せねば。敵は慰めてはくれません」
「私は古のトリニティの英霊であった上官の絶対的な命令である『トリニティの守護』というものに長官という職である限りは盲目的に遂行していくつもりです。
それが、最大の武器でありラインハルト家で代々受け継がれてきた美徳です」
「美徳…ですか………ハイドリヒさん。一心同体という言葉があるように我々トリニティの生徒たちは家族のように、体の一部のように団結すべきです。
それがいかに許されないような罪を犯した者であれトリニティの守護という名目で多数を守り、少数を見捨てるのはいかがなものかと」
サクラコがハイドリヒに力強く問い出した
「はい、トリニティの生徒は間違いなく腕であり、脚であり、体の一部です。それが反乱などで裏切り、従わないのであれば切り捨てる選択も必要になります」
「脳に従わない脚は切り落とすに限りますからね…ミネさんもサクラコさんも、もしその右腕が意思に従わずに動き始めたら切り離すでしょ?」
「__彼女らは腐って言うことの聞けない生徒だと?」
「___それに、勘違いされてるようであれば指摘します。
我々が守るべきなのはトリニティの生徒です。これはもちろん反逆者は含まれていません。
あくまで善良なトリニティ生徒のため戦う武装した親衛隊です」
「な、なんて野蛮な……!」
「自らの意思を持つことよりもトリニティの守護を目的としています。それが例え非人道的でも遂行します。胸が締め付けられる時は忠誠と言って誤魔化します」
「それが。代々続いてきた
「………」
まるで演説をするかのように言い放たれた言葉は、彼女らの脳内で反芻するかのように周り続ける
吐瀉物かの如く反芻された言葉は決して外に漏れることはなく。かといって決して彼女らに浸透することはない
「__ありがとうございます」
「……は?」
ハイドリヒの一言に一瞬理解が追いつかずミネは下品に返してしまう
「ミネさんが、そしてサクラコさんが
「………」
「我々が狂ってるのは先々代よりも前からの常識、狂気に飲まれるのは悪いことではありませんが必ずしも気持ちの良いものではないでしょう。
ですから、狂気から民衆を守り狂気が民衆を奮い立たせる__このような所業が達成されたのは他でもなく貴方がたのおかげなのです」
ミネの開いた口が塞がらない
それと同様にサクラコも内心は驚愕で満ちている
「……ですが。ミネさん」
「は、はい」
「貴方には以前ティーパーティーに参加する権利、すなわちホストになるよう懇願されたようですね?」
「__っ」
「……そうなんですか?」
皆の視線が一斉にミネの方向を指す
「失礼ながら申し上げさせてもらいますが_ミネさんは政治に疎いのは紛れもなく事実ですし、学園全体への奉仕という観点から見たら救護騎士団に残るという選択を取ったのも納得ができます。
だから断れたんでしょう___ですが」
再びミネの方向に身体を向き直して
「それ以前に、怖かったのでは?」
「っ!」
ミネの体に動揺のゆらぎが見える
「それもそのはず。理想はあれど、それに基づいて政治を進めるなどこの上なく難解な物です__貴方はやらないという選択を取りました。
何も悪くはありませんから、決して強制された義務でなんかないのです」
「…今、この場でそのような話をする意図が見えません」
彼女はさも当然に、当たり前な事を言う
「…しかし、ナギサ様は?」
「っ!?」
「………」
彼の一言でさっきまでの威勢は完全に消え失せた
「ナギサ様や私のように家柄だけで上に上がるのは簡単ですが、その逆は不可能と言っても過言ではありません。
不本意な選択を強制され、反戦歌を歌う口を縫われ、神に祈るための手を断ち切られる___
___そのような者にミネさんは非難をぶつけ蔑みました」
「そ、それは……」
「…我々が言えた立場ではないとは分かってます……ですが、貴方がたの正義は誰が保証するのですか?民衆?神?それとも……いえ、話が脱線しすぎましたね」
「本来の話に戻させてもらいますが…我々が使用した兵器が人道的ではないという話でしたっけ?それともトリニティの今後の活動について……?」
その一言には単純明快な含みがあり、誰も答えられないでいる
「……ミネさん」
「…はい」
「私がこういった行動に踏み切ったのは我々なりの正義に美徳、そして伝統があるからです。我々はこの道を生きて後戻りは出来ません。
それと同様にナギサ様も不本意の運命に操られたに過ぎないのです___なので言わせてもらいます」
ハイドリヒは視線とともに体を二人の方に向き直し、力強くこう言い放つ
「ナギサ様を、悪く言わないでください」
「あの時はほんとに救われました。改めて感謝させてもらいます」
「あ、あはは…いえ、私も言いたい事があっただけですから……」
うわぁ、結構前のこと掘り返すじゃねぇか……
しかもそれってガス兵器使った話から遠ざけるために言ったのだし、な、なんか感謝を受け取りにくいっていうか__
「………」
ま!感謝されてんだったら素直に受け取るのがトリニティ紳士だしな!
「他にも様々な面で私を助けてくれたのは、いつだってハイドリヒさんでしたからね」
「そうですか?……そうでしたっけ?」
「そうです…それで……その……お、恩を返さねばと思いまして……」
本来は遠慮する場面だろうが、俺は恩が欲しいから黙ってる
これぞトリニティ紳士
「………ふぅっ」
ナギサは息を吐き出し、どこか覚悟を決めた目つきになる
「ハイドリヒさん。目を…閉じてください」
「目を?」
「は、はい。お願いします__」
しょうがねぇなぁ、と思いつつも。彼はこれからの恩返しに期待と若干の不安を覚えながら言われた通り目を瞑る
「では……失礼します」
おいなんだよ失礼するって…え?俺これから何されんの?ちょ待ってなんか動悸がドキドキし始めてきた…
「………」
そして、ナギサは少しずつ_だが確実にハイドリヒの元に近づき
__体を近づけ…手を重ね……目を細めて……
……そして…唇を…………
「緊急事態だぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」シュンッ
扉を蹴破り、突如として乱入してくるマリナ
ロマンチックな雰囲気など関係ないかのように話を続けていく
「奴らがあそこまで迫ってきてるぞ!」
「奴ら?__工務部とかですか?」
「なっ!お前よく知ってるな!」
「………」
ジッとマリナを見つめるそのナギサの眼には、確かに殺意が籠もっていたという
果たして彼女が思いを伝えられる日は来るのだろうか?
いずれか……それが前になるか、後になるか………
なぜ赤冬に来させたのかは…コレが理由です。
てか赤冬学園の情報が知らなさ過ぎてあんまその場の話題を作れませんでした…すんません
__あと、どんまい!ナギちゃん!www