今回はちょっと短めな話です。
それに今回の主人公はユメ!
ピピピピピッ!ピピピピピッ!
「………」
手を伸ばして目覚まし時計の上に付いているボタンを押す。するとさっきまでの騒がしさとは一変、静寂が戻される
このまま寝てしまおうか?二度寝もたまには悪くない
いや、結構いいかもしれない__眠い
「ふぁ〜〜〜あ」
長い欠伸の後、私は長い髪を起こしながら大きなベッドから降りてまず服を着替える
流石にパジャマのまま朝食に行くはずがないからね(前科19犯)
「はぁ……朝6時に起床って早すぎるよ___」
愚痴を吐きながらもいそいそと普段着に着替えて
そして部屋を出る
「ふんふふ〜〜〜ん、今日の朝ごはんは何だろな〜〜〜♪」
昨日はなんかパンだったし、一昨日もパンだったし__あれ?朝お米食べたのっていつだっけ?
もう覚えてないしいいや
てかここのパンもすっごく美味しいし…結果オーライ?
でも洋食しか無いのは辛い……たまには和食とか中華も食べたいよぉ〜〜〜
ハンバーガーとかジャンクな物が食べたい…
「はぁ」
ため息を吐きながらも朝食を食べに行くのであった
「〜〜〜♪」
今日の朝ごはんも美味しかった。
それだけでもう私の幸福度は100%アップ!
でもまたパンだったなぁ…ま、いいや
やっぱこんなお高いお家だったらご飯も偏っちゃうんだよね……あ、栄養の話じゃないよ?
”和洋せっちゅう”ってやつがどうも……洋食ばっかだ
聞いた話だったら昔っからそうなんだって。近くにある和風なお家だったらご飯は和食なのかな?
あ、この前ここの近所を散歩したら『不破』さんだっけ?その人のお家は凄く和風だったよなぁ
……塀を乗り越えて(住居侵入罪)ちょっと見てみたら赤い尻尾の人がいたんだけど…すっごいいい人だった!!!(太陽のように明るい笑顔なので無罪)
あの人達は和食ばっかりなのかな…それとも洋食も食べてるのかな?
そのうち自立して、一人で暮らせるようになったら食べよっと!
えへへ……なに食べよっかなぁ__じゅるり
カツ丼もいいし…やっぱお米を食べたいよぉ。リゾットも美味しいけど
あ!でも初めてのご飯は大事な人と食べたいな!ハイドリヒ君とか
「あとせんせいも、アリスちゃんにケイちゃんも呼ばなきゃな〜〜〜」
「それにホシn_______
言葉は続かない
私が今から言うであろう単語は知ってる
それどころか知り尽くしてるはず
___でも
言えない
言いたくない
まだ言えない
「…………急がなきゃ」
私は、この言葉の続きが言える日を待っている
でもただ待ってるんじゃない。私から迎えに行くために、やらねばならない
「………」
歩を進める
こんな私にこんな素晴らしい
なんにも出来なかった私が、黒服さんに頼み込んで技術を知って
それで自分で開発
「………」
こんな生活に嫌気はない…それどころか誇らしささえ感じてしまう
「………」
一つのビーカーに液体を足して、次に違う容器に移して加熱する
すると、容器の中にはとある緑色の液体が生まれた
それを慎重にフラスコに移す
『貴女と契約を結びたいです』
黒服さんは私にそう言った
とある水槽から目覚めた私にとって何を意味するのかは分からない
__でも
契約を結ばなかった未来を想像するのなんて容易かった
私は二つ返事で「はい」と答えた
その時も、黒服さんは笑っていたのを今でも鮮明に覚えている
その後アビドスに戻りはしなかった。だってそれが契約だったんだもの
でも、そのかわり私に力をくれた
資金面でも、住居も、そして私に知恵をくれた
そんな契約を私はあの時交わしたんだ
それからはあっという間だった
私は世間では死んだことにされ、戸籍さえなく隠居生活を余儀なくされた__不自由は無かったけど
借金もなく、追いかけてくる仕事もなく、責任もなく
何もかもが自由な日々だった…誰が見ても間違いなく充実した日々だと言えるだろう
__でも
心残りはあった
小鳥遊ホシノ
あの子は私を「先輩」と言って慕ってくれてた__慕ってくれてた?
__まぁ。小言は多かったけどなにかと私の行動に付き合ってくれた面倒見の良い子だった
きっと
いや、多分彼女の眼には私が
違う
実際は違うんだ
ほんとうは
殆ど人のいない教室で仕事をするのが嫌だった
誰もいない廊下を歩くのは嫌だった
明かりがまったく灯らない街を帰るのが嫌だった
砂と借金しかない学校で私の人生を潰すのが嫌だった
消去法で任された生徒会長という肩書に嫌気がさした。
その責任を背負うほうがもっと嫌だった
学校の借金に追われて、欲しいものも送りたかった青春も蔑ろにされるのが嫌だった
大嫌いだった
だから逃げた
結果として黒服さんに逃されたようになっちゃったけど、あの大嫌いな場所から逃げた
ほんとはホシノちゃんも一緒が良かったけど___でも
いや
一回だけ、目覚めてから数ヶ月経って会いに行った事がある
『………』
黒服さんに送ってもらって、校舎の前まで来た
校門には見慣れている寂れた名前がある
塀を乗り越えて、まだ明るい教室を見つけた
もう夜だっていうのに…仕事?
一人で仕事、それがどれくらいキツイか私は知っている
__少しだけ心が高鳴った
怒られるかもしれないけど_ホシノちゃんを説得しよう
ホシノちゃんも孤独には耐えられないはず
一緒に逃げてほしい
寂しさはいらない
ただホシノちゃんと一緒にいれればよかった
そんな私にとってホシノちゃんの孤立というのは最高のアドバンテージだったと思う
___窓から中を覗く
『……………ぇ?』
私は眼の前の悲劇に思わず声が漏れそうになった
中央で怒りながら騒いでいる猫耳の子
それを必死に止めようとする眼鏡の子に、抱きついてる白髪の獣耳の子
奥にあるソファで笑いながらその光景を眺めているおっとりした子
___そして
その隣で眠そうに横になっている__ホシノちゃん
『………』
そうして、また私は逃げたんだ
嫌な現実から尻尾を巻いて無我夢中で黒服さんのとこに逃げた
それを知ってか知らずか黒服さんは何も言わずに私を出迎えてくれた
『………』
最後に、一回だけ学校の方に目を向ける
__ねぇ
ホシノちゃん
私って駄目な女なのかな?
ボンッ!
眼の前のフラスコが爆発する
失敗した
「………」
コレで終わり?
いや
違う、違うはず
技術は理学と実験を糧に飛躍する
飛躍した技術は誰にも止められない。この先進化し続ける技術の飛躍を静観は出来ない
否、私は飛躍してみせた!
だが___私はどうすればいい?
否
___否!!
ねぇ、私に何が足りないっていうの?学力?資金?愛?技術力?
「…………っ」
何が足りない?何が駄目だった?
「……いや、そのうち……絶対に」
絶対に目標は達成する
全ての人達に__
奇跡のような科学を、科学のような奇跡を!!!
そうだ、絶対に成し遂げなきゃ駄目なんだ!
ホシノちゃんのためにも。アビドスのためにも
神様は存在する_そして神様は私に慈悲を与えてくれたんだ
すべての原因には原因がある。だが無限に遡ることはできない。だから第一原因としての神様が必要
___つまり、こうして私が存在しているのは親が産だから…でもその一番最初を辿れば神様が想像したからに違いない
だから__いや
それに
私は生きてる
私には意思がある
「………よし」
私は壁に書かれてる『アビドス緑地化計画』という文字を見て、再び研究を再開する
許されるかは分からない
でも、やるしかない
_これは、私なりの断罪だ