祟り神の暴虐ライフ。   作:八尺様

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鏡華ちゃんと志村家の因縁が明らかに・・・


祟り神の蹂躙

「ガキはワタシが相手をします。そちらのリーマンは任せましたよ、治崎くん」

 

猛烈な速度で蛇の尾が振り抜かれ、ミリオの体が緑谷に向かって飛んでいく。

 

「まぁ、受け止めますよねぇ・・・」

 

ミリオを受け止めた緑谷に、鏡華は尾を振り下ろす。

 

ミリオ同様、緑谷では鏡華の尾の速度について行けず、攻撃を視認することさえできない。

 

「ふむ。何だか拍子抜け・・・ん?」

 

緑谷の意識を刈り取るはずだった鏡華の一撃は、割り込んできた黄色い影(・・・・)によって防がれた。

 

「小僧、下がってろ!」

 

「グラントリノ!」

 

AFO(オール・フォー・ワン)はとっくの昔にギガントマキアを回収しており、黒霧が目撃されることも無かった。

故に、グラントリノは予定通り死穢八斎會への突入に参加していたのだ。

 

「・・・チッ。何しに来やがったんですかぁ、酉野空彦?ジジイはお呼びじゃないんですけど?」

 

「テメェも実年齢はババァだろ、『タタリガミ』!!」

 

蛇の尾とグラントリノの蹴りが、目にも止まらぬ速さで激突する。

 

「ルミリオンを連れて、早く下がれ!」

 

「・・・でもっ!」

 

緑谷が見ても分かるレベルで、グラントリノは押されている。

ダメージこそ受けていないものの、攻撃を弾いて逸らすのがやっとの状態では、疲労が蓄積していく一方だ。

 

「いいから行け、ルミリオンが死ぬぞ!・・・コッチは大丈夫だ!」

 

その言葉を聞いた緑谷は、地面に横たわっているミリオを抱えて叫んだ。

 

「すぐ皆を呼んできます!!」

 

 

 

 

 

「ふふふっ・・・『大丈夫だ』なんて言っちゃってぇ。オマエなんぞじゃあワタシに勝てないことぐらい、分かってるでしょう?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、グラントリノに攻撃を続ける鏡華。

 

「あの女みたいに、クソくだらない自己犠牲でもするつもりですかぁ?ホント、ヒーローってのはそればっかりで芸が無いですねぇ・・・」

 

「・・・テメェ」

 

鏡華の言う『あの女』とはすなわち、OFA(ワン・フォー・オール)7代目継承者、志村菜奈。

 

「しょうもない死に方でしたよ、あの女。夫を殺したのがワタシだって教えてやったら、面白いくらい動揺しちゃってねぇ・・・ふふっ、今思い出しても滑稽ですねぇ」

 

「下衆がっ!」

 

楽しい思い出のように語る鏡華に、グラントリノは吐き捨てるように言った。

ここで挑発に乗っては、奴の思う壺だ。

 

「ふふふっ・・・馬鹿ですよねぇ。アナタ達も、あの女も。ちょっと絶縁した程度で、子どもに目をつけられない(・・・・・・・・・・・・)と思うなんて」

 

「・・・は?」

 

鏡華の言葉に、グラントリノの思考が一瞬停止する。

今、コイツはなんと言った?

 

「勿論死んでもらいましたよ?・・・あぁ、安心してください。ワタシやAFO()は手を下してませんから」

 

「児童虐待の末、息子に家族諸共皆殺しにされる・・・そんな惨めな最期を遂げてもらっただけです」

 

「・・・っ」

 

グラントリノは、怒りで我を忘れそうになるのを必死で抑えた。

 

落ち着け、落ち着け。

煽って冷静さを奪うのは、AFOと鏡華(こいつら)のお家芸だ。

 

「そ、れ、とぉ。志村家で唯一生き残った、あの女の孫について、ちょっとだけ教えてあげましょう」

 

鏡華は心の底から馬鹿にしたような笑みを浮かべ、最悪の事実を告げた。

 

「志村菜奈の孫・・・志村転弧くんの(ヴィラン)名はぁ・・・“死柄木弔“でぇ〜す♡」

 

「あっははははは!」

 

「テメェ!!!」

 

気がつけばグラントリノは、目の前の外道に飛び掛かっていた。

 

家族と別れる選択をした彼女の苦悩を、葛藤を、その全てを踏み躙って嘲笑った外道を、許せるはずがなかった。

 

「はい、おしまい」

 

そして、『激情に囚われた短絡的攻撃』という隙を、鏡華が見逃すはずもなかった。

 

 

 

 

「ハッ、ハッ・・・」

 

ミリオを地上にいた警察官達に渡し、緑谷は走る。

 

作戦に参加しているヒーロー達は未だ構成員達との戦闘中であり、グラントリノの援護に行けるのは彼のみ。

 

「ハッ、ハッ・・・」

 

グラントリノと言えど、あのバケモノに1人で勝てるとは思えない。

だから緑谷は走った。

 

前方から響く破壊音と、だんだん濃くなる血の香りに気付かないふりをしながら。

 

「グラントリノ!!」

 

緑谷出久が駆け付けた時には、そこにグラントリノの姿はなかった。

 

「ふふふふっ・・・遅かったですねぇ。壊理はもうお家に帰っちゃいましたよぉ?」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、緑谷を見つめる鏡華。

彼女の蛇の尾には、大量の血液がベットリとこびり付いていた。

 

「グラン・・・トリノ?」

 

緑谷は、姿が見えない師の名前を呼ぶ。

そんな彼の様子を、鏡華は心底馬鹿にしたような目で見る。

 

「現実を見ましょうよぉ。こんなに血が飛び散らかってるのに、生きてるワケがねーと思いませんかぁ?」

 

床どころか、壁や天井にまで撒き散らされた血。

どう考えても失血死する量だ。

 

でも、それでも、もしかしたらまだ生きているんじゃないか。

そんな僅かな希望も、鏡華によって打ち砕かれることになる。

 

「ハァ・・・ホントは、八木俊典を煽るのに使おうと思ってたんですけどねぇ。しょーがない、そんなに欲しけりゃくれてやりますよぉ・・・」

 

彼女が放り投げたのは、赤黒い肉塊。

 

「・・・こ、れは?」

 

「見て分かりませんかぁ?オマエが探してるモノですよぉ!」

 

グチャグチャの肉塊には、黄色の布切れが付着していて。

血塗れになったソレに、緑谷は見覚えがあった。

 

「あっ・・・」

 

「ちょっとやり過ぎちゃいましたねぇ・・・もうちょっと面影を残しとくべきでした」

 

「ああぁァァァぁっ!!」

 

瞳に怒りと憎しみを滾らせて、緑谷は鏡華に飛び掛かる。

『OFA』の出力に体が悲鳴を上げるが、そんなことは気にも留ない。

 

「よくないですねぇ緑谷出久。アナタ八木俊典から『OFA(ワン・フォー・オール)』を継いだんでしょう?ヒーローなんでしょう?」

 

怒りに任せた単純な攻撃が鏡華に通じる筈もなく、簡単に回避されて引き倒される。

 

「なら、笑わなきゃあ。ほら、笑えよ」

 

緑谷の顔を掴み、口角を両手の人差し指で無理矢理押し上げる。

 

「笑えよ、ほぉら!惨めでみっともなく、ヘラヘラ笑ってろよ!あははははっ!」

 

この時緑谷の中では、2つの感情が渦巻いていた。

 

1つは、強い怒り。

グラントリノを殺した鏡華に対して、そしてそれを防げなかった自分に対して。

 

そしてもう1つは、強い怯え。

ただしこれは、緑谷の抱いたものであるとは言い難い。

 

無論、緑谷の中に彼女への恐怖が無いと言えば嘘になる。

しかし今緑谷が感じているソレは、まるで子供の頃のトラウマ(・・・・・・・・・・)を刺激されたかのような感じだった。

 

「鏡華さん・・・こっちは片付いた」

 

治崎が、手袋を着けながら鏡華の方に歩いて来る。

 

「・・・そうですか。じゃあ、さっさと脱出しましょうかねぇ。黒霧(・・)!」

 

彼女が名前を呼ぶと、黒い靄を纏った怪人が姿を現す。

 

「どちらにお送りすれば宜しいでしょうか?」

 

「ワタシの本山に。壊理はちゃんと送り届けてくれましたか?」

 

「勿論です。本殿で貴女を待っていますよ」

 

そもそも、だ。

黒霧がいるのだから、彼女達は逃げるだけならヒーローと交戦する必要が無かった。

 

緑谷の仲間を殺して、彼の精神を削る。

そのための茶番に、ヒーロー達は付き合わされていたのである。

 

「よろしい。では・・・緑谷出久」

 

鏡華は彼の耳元に顔を寄せ、そっと囁く。

 

「オマエも、与一くん(・・・・)も。なんにも、だぁれも守れませんよぉ・・・」

 

緑谷だけをその場に残して、怪物達は霧の向こうに消えた。




鏡華ちゃんが志村菜奈の夫を殺したのはたまたまです。
遺体は鏡華ちゃんが食べちゃったので残っていません。

AFOは捕まってないですが、彼からの課題として敵連合は死穢八斎會と協力してみることになっていて、原作通りトガとトゥワイスが派遣されています。

オールマイトは他の所で敵退治してました(AFOの差し金)。
せっかく戦える力を取り戻したのに、肝心な時にいない。
それでサイドキックと師を同時に失う・・・悔しいでしょうねぇ。
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