お風呂に入って触れ合います。

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第1話

浴槽の静寂——女友達が自然に背後へ回る

 

 浴室の湯気がゆらめき、湯の中で静かに水音が響く。ウェディングは浴槽の端に背を預け、できるだけ無駄な動きをしないようにしていた。肩まで湯に浸かり、静かに呼吸を整える。

 

 しかし、すぐ隣で彼女の気配が動く。

 

 ——ふと、水音が変わった。

 

 ウェディングが目を細めると、彼女がゆっくりと体をずらし、湯の中で静かに移動していく。

 

「ふふっ……ねぇ、ウェディング?」

 

 先ほどまで向かい合うように座っていた彼女が、さりげなく体の向きを変え、足元の水を静かに揺らしながら、半円を描くようにウェディングの側面へと移動する。

 

 (……位置を変えていますね。)

 

 すぐに気づくが、あえて何も言わない。ウェディングはそのまま湯に浸かったまま、様子をうかがう。

 

 彼女は、ゆっくりと近づいてきた。

 

 次の瞬間、軽やかに、するりと背後へ回る。

 

 「……?」

 

 湯の中で足を曲げ、柔らかく水の抵抗を受けながら、ウェディングの背を自分の胸へと引き寄せるように位置を取った。

 

 「んふふ……ねぇ、ウェディング?」

 

 腕が回る。

 

 ふわりと肩にかかる感触、背中にじんわりと伝わる温もり。濡れた肌同士が触れ合い、湯に溶けるような柔らかな感触が背中を包む。

 

 「……何の意図が?」

 

 できるだけ冷静に返す。しかし、彼女はそれには答えず、腕の力を少し強めた。

 

「んー……こうしたら、ウェディングがどんな反応するのかな~って思って♪」

 

 まるで試すような言葉。

 

 (……意図的な行為ですね。)

 

 しかし、ウェディングはただ黙っていた。反応を見せなければ、すぐに飽きるはずだ——そう考えていた。

 

 けれど——

 

 「……あれ?」

 

 背後から囁く声が、微かに弾む。

 

「なんか、思ったより静かだね?」

 

 腕を回しただけでは、ウェディングの表情が見えない。期待したような反応もなく、彼女はただ湯に浸かっているだけ。

 

 「……うーん、これじゃつまんないなぁ。」

 

 その瞬間、彼女はそっと指先を動かした。

 

 「じゃあ、ちょっとだけイタズラしてみよっか♪」

 

 水の中で細い指が滑る。鎖骨から肩へ、そして背中へと、ゆっくりとなぞるような動き。

 

「……っ」

 

 ウェディングはかすかに呼吸を詰まらせる。

 

 「ふふっ、今ちょっと震えた?」

 

 彼女は明るい声で囁きながら、さらに指を滑らせた。背中の中心からゆっくりと、水の中を漂うように指先が肌を這う。

 

「……っ。」

 

 反応を見せないように、ウェディングは意識的に肩を落ち着かせる。しかし、それでも彼女には微かな震えを感じ取られていた。

 

「やっぱり……ねぇ、ウェディング、震えてるよ。」

 

 彼女の声が嬉しそうに弾む。

 

 ウェディングは、声を発しようとした。しかし、喉が強張り、言葉が形にならない。

 

(……拒絶すべきですが。)

 

 身体が動かない。

 

 背後の温もりが、まるで空気の層のようにまとわりつき、思考を鈍らせる。

 

 彼女はさらに密着し、今度は首筋へと顔を寄せた。

 

「ウェディング、耳……弱い?」

 

 息がかかる。

 

 耳朶をかすめるような微細な動きが、湯の温度とは違う熱を帯びて、じわりと神経を刺激する。

 

 彼女の指が、さらに肌を辿る。鎖骨から滑り降り、腕へとふわりと触れた。

 

「ねぇ……このまま続けたら、どうなっちゃうのかな?」

 

「……っ。」

 

 かすかな震えが、指先に残る。

 

 ウェディングは、動かせる範囲で手を持ち上げようとした。

 

(……やめてください。)

 

 しかし、言葉が出ない。

 

 彼女はそれを見て、いたずらな笑みを浮かべる。

 

「ん?どうしたの?」

 

 ウェディングは震える指で、そっと彼女の手を握った。

 

 ——それが、できる唯一の抵抗だった。

 

「……っ。」

 

 掠れた呼吸とともに、彼女の指をゆっくりと押し戻そうとする。しかし、腕にはほとんど力が入らず、ただ触れるだけの動作になってしまう。

 

 彼女はしばらく黙っていた。

 

 そして、そっと指を解き、ウェディングの髪を撫でる。

 

「……そっか、ごめんね。」

 

 湯の中で距離を戻し、腕の力を緩める。温かな水の揺れとともに、浴室に静寂が戻る。

 

 けれど、まだ指先には、彼女の肌の感触が残っていた。

 

「でもさ、ウェディングのこういう顔、初めて見たな。」

 

 ウェディングは、何も言わなかった。ただ、湯の温もりの中で、身体の力を抜くことしかできなかった。


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